風呂とチキンとマ・ドンソク ー 最近観た映画の感想

メランコリック

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ニートの和彦がバイトに入った銭湯は深夜に洗い場を殺人の場として提供していた。

掃除は簡単、遺体はボイラーで焼ける。新しい銭湯の可能性を見いだした意欲作。見いだすなそんなもん。

ある日現場を目撃してしまった和彦は否応なしにこの銭湯の「ビジネス」を手伝うことになる。

良心の呵責に苛まれたりや足抜けのために悪戦苦闘するサスペンスになるかと思いきや、和彦君は予想外の収入に浮かれるが早いか、あっという間にこの異常な環境に馴染んでしまう。サイコパスかな?

上司も同僚もいい人だらけの優しい職場における、日常系のほほんお仕事映画。ごろごろ人死んでるけども。

めっちゃ殺したり殺されるような目にも遭ってるのに、ふんわりとハッピーエンドに着地して何故かじんわり良い気分になる謎の作風。

心が荒んで、優しい気持ちになりたいときに観るといいかもしれません。

人いっぱい死ぬけど。

エクストリーム・ジョブ

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韓国映画はバイオレンスとかサスペンスばっかり観てますが、コメディも相当レベル高いですね。配信は自宅でゲラゲラ笑いながら観られるので相性最高。

麻薬組織の摘発のために、組事務所の向かいにある潰れかけのチキン店を買い取った捜査チーム。不自然に思われないように偽装営業を始めたら、メンバーの一人が料理上手だったおかげでオリジナルのチキンがヒット、大繁盛して捜査どころではなくなってしまう。

立て続けに放り込まれるギャグはネタとしては結構古典的なものが多い印象なのですが、テンポも演出も良いので普通に笑える。やっぱり笑いは「間」が大事。

終盤に向けてどんどん「暖め」られていってるのが自分でも分かるし、喜んでその流れに乗っていける。

なんだかんだで刑事ものとしても構成もしっかりしてて、最後の大量摘発へなだれ込む展開は痛快のひとこと。

嫌う人があんまりいないタイプのひたすら楽しい映画なので、年末年始に大勢集まったタイミングで観るのもよいかと思います。

クライマックスに押収物のドラッグでガンギマリになってる新人刑事のジェフン君がかわいいです。

 

エターナルズ

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いきなり知らんヒーローを10人もぶっこんで来ても全く混乱しないほどに構成がしっかりしてるし、各ヒーローのキャラも立っている。

最近のハリウッドの無理矢理なダイバーシティ化が本作では顕著で鼻につく、みたいなコメントも目にしましたが、俺は断然肯定派です。全員属性がばらっばらなので誰が誰なのか分かりやすくて、新しいヒーロー物語の導入として非常に良い効果が出ていると思います。

なにより意図的に属性を散らしたおかげでMCUでマ・ドンソクが観れたし、マ・ドンソクがそのままマ・ドンソクなのも良かったです。他のメンバーがスーパーパワーで空飛んだりかめはめ波を出したりする中で、マ・ドンソクの能力は「パンチめっちゃ強い」なので、観てるとそれただのマ・ドンソクですよねってなるの最高です。

遥か昔から人類の発展を見守るエターナルズたち。その彼らが恋愛だ友情だ仲たがいだとわちゃわちゃやっているのはギリシャ神話の神にも通じる人間臭さ。というか彼らのうち何人かは実際にギリシャ神のモデルになってる設定なので、誰がどの神なのか考えながら観るのも楽しい。

話が神話レベル、全宇宙レベルのわりには皆さんあんまり強くなさそうなんですが、いずれも好感度高し。その中でもマ・ドンソクとアンジェリーナ・ジョリーのように恋愛ではない仲良しコンビがいくつかあって、それがまた良かった。

MCU映画としてはやや地味ではありますが、俺はかなり好きな方です。フェーズ4はよく知らないヒーローばっかだなあと思ってましたが、いやー、どれも面白い面白い。

 

アンテベラム

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ゲット・アウト』『アス』(未見)と同じプロデューサーということで、前2作と同じく人種差別をベースにしたサスペンスホラー。

ロッテントマトなんかだと評価の高い『ゲット・アウト』に比べて、結構ボロカスに言われているものの、俺はこちらの方が好きだったりします。

興味を持たれた方は以下を読まずに観ることをお勧めします。ネタバレはしませんが、勘のいい人が何かに気づいてしまっても責任とれないので。

 

どちらもぶっ飛んだ真相にぶん殴られるタイプの映画ですが、ぶっ飛び過ぎてB級ホラーの次元にまで飛び去ってしまった『ゲット・アウト』に対して、この『アンテベラム』で起きていることは(ちょっとだけ)現実味が増しており、その分逆に恐ろしい。

南北戦争当時の黒人奴隷の女性と、現代の社会学者の黒人女性にフォーカスをあてて、ふたつの時代を行き来しながら、物語は進んでいく。

女性はいずれもジャネール・モネイが演じており、言うまでもなくこのふたりの人物になんらかの関係があるということが示唆され続けるわけですが、そのリンクが明らかになる瞬間、何が起こってるのか分からずに混乱するのが楽しいです。

ただでさえキツい奴隷虐待シーンが、真相を知ることで数倍エグくなる構成が見事。こういう風に一度観たシーンの印象が後から塗り替わる映画、好きです。

 

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仏版シグルイ『最後の決闘裁判』他 ー 最近観た映画の感想

DUNE / デューン 砂の惑星

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古参SFファン待望の超大作SF小説、ついに(ちゃんとした)映像化! ってとこなんでしょうが、原作や今回の映像化にいたる歴史を知らずに観た俺にとっては正直退屈でした。

壮大な設定、中世と未来が混ぜこぜになった巨大機械やSFガジェット、複雑な設定に裏付けされたであろう美術の数々。映像としてはとても壮大かつ美しいんだけど、上映時間2時間半もあるのになかなか話が進まねぇので眠くなる。

たっぷり時間をかけて「俺達の戦いはこれからだ」で終わり。前後編か3部作かは知らないけれど、これが未完の「Part1」だなんて予告で言ってなかったじゃん、って思いました。ようやく話が動き出した、ってとこで終わるんだよなぁ。まあここまで付き合ったんだから次もたぶん観ますけどね。

正直なところ、後から観た『ホドロフスキーのDUNE』の方が数倍面白かったです。昔DUNEを映画化しようしたけど断念した経緯をアレハンドロ・ホドロフスキー監督が語るドキュメンタリー映画。ホドロフスキーというおっさんはいちいち頭のおかしい人で最高なのでおすすめ。

先にこっちを観とけば今回のヴィルヌーヴ版ももっと楽しめたかもしれない。

ホドロフスキーのDUNE(字幕版)

ホドロフスキーのDUNE(字幕版)

  • アレハンドロ・ホドロフスキー
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それはそれとして嫁さんに描いてもらったポッドキャストのサムネはお気に入りです。

「こんな感じで」とお願いしたらそんな感じになったと思います。ニャーン。

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死霊館

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実在した心霊研究家、ウォーレン夫妻の事件簿になる死霊館シリーズの1作目。

この頃『死霊館 悪魔のせいなら、無罪』の予告をやたら観たのでサブスクにあったこれを試しに観てみたんですが、エクソシスト系のホラーってあんまりピンとこないな、というのが分かっただけでした。

へレディタリー/継承』のときも思ったんですが、宗教観が違うせいか悪霊やら悪魔やらの恐怖があんまり伝わってこないんですよね。死霊さんも突然目の前に現れてビックリさせる以外にはポルターガイストぐらいしかやってこないし。

エクソシストものなら聖痕から吹き出す炎で着火した後、聖水をくべて丸焼きにするとか、聖なるメリケンサックで悪魔憑きを殴り倒すとか、そういうトンチキ除霊アクションに振ってくれた作品が好きですね。それはもはやホラーじゃないですが。

死霊館(字幕版)

死霊館(字幕版)

  • べラ・ファーミガ
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最後の決闘裁判

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これは非常に良かった。

久々に「よし、お前らみんな死ね」となるタイプの胸糞映画。そして俺はあんまり胸糞映画好きじゃないんですが、それでも「これは観て良かった」となる作品はあって、この映画はそれ。

夫の不在中に知人に暴行された騎士の妻。濡れ衣だと訴える知人の男。双方の訴えを受けて、戦い、生き残った方の主張が真実と認められる「決闘裁判」が執り行われることとなる。

それを娯楽としか考えていない狂王の御前で、命と名誉を賭けた果し合い。シチュエーションは完全に『シグルイ』ですねこれ。男が勝手に盛り上がって女が振り回されるあたりも含め。

3部構成で夫の視点、暴行した男の視点、妻の視点と同じ事件が3回描かれるのだけど、まあ男共がどちらもクソ野郎でして。「妻は夫の所有物」という価値観のもとで、妻の人間としての尊厳は徹底的に踏みにじられまくる。

男共がどちらも自分に都合よく記憶している出来事の真実を第3部では妻の視点で見せられる。彼らのクソムーブはどこまでも傲慢かつ身勝手、そしてシンプルにキモい。

「ああ……決闘で刺し違えて両方とも死ねばいいのに……」と間違いなく思えるこの手腕。そして決着後のジョディ・カマーの虚無としか言いようのない顔。

経緯も結果も最悪に後味が悪く、そんな気分に人を叩き込める名作と言えます。

あと完全装備の重騎士同士による決闘は大変に野蛮で迫力があって良かったです。

男の都合で国家に裁かれる人の顔。

9人の翻訳家 囚われたベストセラー

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世界的大ヒットをしたベストセラー小説の完結編となる第3作目。世界同時発売のために集められた9人の翻訳家は発売前のネタバレ流出を防ぐため、契約への合意のもと、外部への通信不可能な閉鎖環境にカンヅメとなり各国言語への翻訳を行うこととなる。

資産家所有の地下シェルターを流用した巨大な地下室はふんだんな資料に加え、豪勢な食事や娯楽も完備、出入りの不自由を除けば仕事をするには支障のない快適な環境。翻訳家同士も打ち解け合い、快調に翻訳が進みつつあったある日、極秘のはずの小説冒頭10ページがネットに流出、500万ユーロの支払いを求める脅迫メールが出版社社長のもとに届くのだった。

殺人事件ではないですが、シチュエーションだけで言えば「密室」で「館」なミステリー。こういうのはどんなに伏せようとしても感想にネタバレの匂いが乗ってしまうので余計なことは書きません。観ながら勝手に真相を想像して、それぞれ騙されたり見破ったりしましょう。俺はトリックや犯人の目的など、結構好きな感じのミステリーでした。

ひどいパワハラ野郎の出版社社長がどんどんダメージを受けていくたのしい映画です。

ポッドキャストはネタバレ祭りで感想言ってます。

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面白殺し屋ユニバース『最強殺し屋伝説 国岡 [完全版]』他 ー 最近観た映画の感想

昭和歌謡大全集

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(※ネタバレです)

コスプレをして昭和歌謡を歌うのを趣味とする若者たち。

この時点でもう意味がわかりませんが、なんかそういう集団がいるんです。そのうちの一人が唐突に通りすがりのおばさんを刺殺したことから、血で血を洗う抗争が勃発しました。調布で。

仲良しおばさんグループは犯人を突き止め、包丁を棒にくくりつけスクーターで突進、ランスチャージよろしく報復。若者はチャンチキおけさのメロディーにのせて血と小便を撒き散らし息絶える。

そして仲間の死を悼んだ若者グループは遥か群馬県の金物屋でトカレフを入手、おばさんたちへの復讐を企て……。

その後は昭和歌謡と共に銃殺・刺殺・ロケットランチャーで数人バラバラになったりしながら、最終的には調布市が吹き飛んで全員死にます。

完全にオチまでネタバレしてますが、事あるごとに「なんだこれ……」って思いながら観るのが楽しいので、正直なところストーリーはクソどうでもいいです。

過去に何があったんだってぐらいおばさんを敵視する金物屋の原田芳雄や、ブリの美味しいところを力説する武器ブローカーの古田新太など、殺し合っている若者やおばさんよりもサブキャラのほうが遥かに面白い。

本筋と全然違うところの方が楽しめるという、なんというか面白いクソゲーみたいな映画でした。なんでこれ映像化したんだ。

クリスマス・ウォーズ

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日頃の行いの悪さでクリスマスプレゼントに石炭を贈られたクソガキがサンタクロースを逆恨みして殺し屋を送り込むお話。

一方のサンタも数百年オーダーでこういう仕事やってるとそういう輩がよく来るんだよね、と迎え撃つ。

近年はプレゼントを貰えるような「良い子」の減少により、出来高で政府から支払いを受けているサンタの生活は苦しい。

そのためおもちゃを作るはずのサンタ工房で軍需用品を作りだしたり、工房で働いている妖精さんたちの労働条件がブラックだったりするなど、ブラックジョークとして色々面白くなりそうな要素はあるものの、全体としてはハジケきれずに少々退屈。殺し屋がサンタの居場所を突き止めて対決するまでのくだりが長いんだよね……。

あとメル・ギブソンは一度もサンタ服着ませんでした。

↓ ポッドキャストで感想喋ったやつです

最強殺し屋伝説国岡 [完全版]

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1ヶ月の間に4たび阪元裕吾監督作品。

関西殺し屋協会に所属するフリーの殺し屋・国岡の生活に密着取材をしたという体のモキュメンタリー。これも面白いなぁ。

2018年に公開された無印版のアップデートになるのかな。おそらく撮影時期は観た4作品の中では一番古くて、予算もあまりかかっていないのは明白。

それなのにもうこの時点で『ベイビーわるきゅーれ』に繋がる世界観がしっかり出来上がっていて、日常と地続きの面白殺し屋ユニバースがそこにある。あまりにもあっさりとして緊張感があったりなかったりする命のやり取りにニコニコしてしまう。やっぱりこの監督にはバイオレンスだけでなく日常も描いて欲しい。

他の人のようにきちんと社会に適応できないから、仕方なく殺しで生計を立てているという国岡。しがらみが嫌でこの業界に入ったのに、殺し屋同士の仕事の取り合いや、ウザ絡みの説教したがりオヤジ、とんでもないクレームを入れてくるクライアントなど、殺し屋の世界にもしっかり面倒くさい人間関係はあるのだった。

ストロングゼロを片手に愚痴を垂れるシーンは迫真の演技というかおそらく素。友達とダベったり、地方での仕事の後に現地の居酒屋に入るシーンの会話やカメラの生っぽさなども低予算が逆に良い方向に行っているように思います。

ラストバトルはちょっと長くて似た動きが多く、少々ダレるなという印象。とはいえまだまだ経験が浅いはずの若い役者の皆さんがこれだけ動けるのだから、出演者の今後にはめちゃめちゃ期待しております。

むやみに飛んだり跳ねたりしないアクションが個人的に好みです。

007 ノー・タイム・トゥ・ダイ

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ダニエル・クレイグ版の007シリーズを1本も観ていないどころか、1作目の『007 ドクター・ノオ』の導入部だけを観たっきり放置している「007何も分からん」勢でしたが、いきなりダニエルボンド完結編のこれを観ても十分面白かったですよ。

やっぱり王道は強いというか、全然観たことないのに既視感を感じるわけです。あらゆるところで模倣されまくっている画角や演出を大変ゴージャスに見せつけてくる。

そうなると「なんか観たことあるなぁ、つまんねぇ」じゃなくて、「おお、これが本家本元か!!」ってなるの面白いですね。

とにかく1枚画にしてもその気合が伝わってくるかのような美しいシーンが多くてそれだけで結構満足できちゃう。

最初の街中のカーチェイスだけでも、あの古くて美しい街並みの中で実際に撮ってると思うんですが、どんだけ金と手間がかかってんだか。

もちろん金かかってるからいい映画とは限らないんですが、この時期低予算映画を立て続けに観ていたところだったので、大作映画がちゃんと大作映画であるというだけでちょっと感動してしまったようなところはあります。

これを2000円弱で観れるのだから、劇場で映画を観るというのはコスパのいい娯楽だと思うのですよ。

話自体はジェームス・ボンドという男に全く思い入れがないので特にこれと言って思うところはないのですけども。いろんなところで言われてますが、アナ・デ・アルマスのアクションが良かったです。床に寝そべって銃を2連射するところを真上からのカメラで捉えたりとか。

ダニエル・クレイグとアナ・デ・アルマスの組み合わせは『ナイブズ・アウト』でも観ていたので、ふたりとも役どころが全く変わっているのは面白かったですね。

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メガネをかけるかかけないかで延々殴り合う映画 ー 最近観た映画の感想

ある用務員

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ベイビーわるきゅーれ』をいたく気に入ったので、過去の阪元裕吾監督作品をいくつか観ております。

恩義のあるヤクザの親分の娘を、高校の用務員に扮して密かに護衛する男の話。親分の死を機に大量に送り込まれた殺し屋から娘を守るアクション映画。

その辺の一般人っぽい殺し屋がわらわら登場する辺りが『ベイビーわるきゅーれ』にも通じる世界観を感じさせます。というか、『ベイビーわるきゅーれ』の二人組もコンビの殺し屋(別人)として出演しています。

阪元作品はこの後『黄龍の村』とか『最強殺し屋伝説国岡』なんかも観るんですが、中でもこれは一番シリアスでアクションに振った作品。

最近の作品だけあって完成度は高い方だけど、一番無難な感じでもあり。阪元作品の面白さってアクションやバイオレンスだけではなく、日常パートにおける妙なリアリティというか、それを生み出す小ネタのはさみ方や人物描写にもあると思うので、魅力の一部を自ら封じてしまっている気はします。

ニコニコしながら敵も部下もサックリ殺すラスボスのキャラクターとかすごく良いんですが、まあそこそこ普通の映画だなと。

ある用務員

ある用務員

  • 福士誠治
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サンズ・オブ・ザ・デッド

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ゾンビ禍の街から逃げ出すため、車で飛行場を目指し走る主人公と恋人。なんか色々あって車がスタック、単独で歩いてきたゾンビに恋人が食われる。

という導入を速やかにこなし、「砂漠のど真ん中でゆっくり歩くタイプのゾンビから延々逃げ続ける」という面白シチュエーションへ早々に突入します。

立ち止まると死ぬという点で『死のロングウォーク』を連想します。それと同様に極限状態に追い込まれた人間の心理がどのような変化を迎えるか、というのが見どころだと思うのですが。

諦めずにどこまでもついてくるゾンビに悪態をつきながら、孤独に耐えて歩き続ける主人公。ついには惟一の話し相手、健気なゾンビに情が湧きます。

いや、そうはならんだろ。

随所でそんな感じの変な笑いが出るんだけど、このずっと半笑いになってしまう感じというのが案外好きです。ゾンビつながりというわけではないですが『高慢と偏見とゾンビ』や『ロンドンゾンビ紀行』を観たときのような。あるいは無人島でバレーボールと喧嘩する人を観たときのような。

極限状態での狂気を描いている、というようなことは全然全くこれっぽっちもないB級バカ映画ですが、ずっと真顔でボケ続けてる人たちを眺めたい向きにはおすすめです。

いや、別におすすめではないわ。ごめん。俺は好きですが。

黄龍の村

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阪元裕吾監督作品3本目。これはめちゃくちゃ面白かったわー。

ミッドサマー』なんかと一緒に「村ホラー」というジャンルに括られるらしいんですが、人里離れたカルト集団の村に迷い込んだ他所者の恐怖体験を描くやつです。

確かにジャンルとしてカテゴライズできるぐらいには似たようなシチュエーションのホラー作品は多い気がします。が、この映画は途中からとんでもない方向に舵を切ります。

こんなもん絶対ネタバレしちゃ駄目なやつなので何も書けませんが、66分というかなり短い映画であるにも関わらず十分な満足感があるのは脚本の意外性からくる「盛りだくさん」感によるものだと思います。

ベイビーわるきゅーれ』や『ある用務員』と比べても低予算であることが露骨にわかる作りなのに、最早それすら面白い。

典型的な村ホラーのテンプレに則って、糞ウザいウェイ系の学生たちを殺していくんだけど、部分部分で妙にチープで「笑ってはいけない」みたいになってるのが逆にリアルに思えたりするわけです。

「昔から続けているけれど、もう理由も分からなくなってるので儀式の作法がだんだん適当になってきてる」的な。生贄の肉をバーベキューコンロで焼くんじゃない。笑うだろ。

上映館は少ないですが、観られる環境にあるのなら是非おすすめしたい。

ちなみに先日始めたポッドキャストの1回目がこの映画の感想になります。

ネタバレしかないので観てない人は聴かないほうがいいです。というか聴かないでいいので観ましょう。

自ら視聴者を減らしていくスタイル。

ゼイリブ

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異星人による地球侵略は既に始まっていた。人間に擬態した異星人を見抜くサングラスを手に入れて真実を知ってしまった男はレジスタンスの一員となる。

あらすじだけは知ってて前から観たいと思ってたんですが、そのストーリーはさておき、サングラスをかけることで明らかになる「真実の世界」のビジュアルがめちゃめちゃ面白いんですよね。

骸骨みたいな異星人もいいデザインですが、広告や新聞・雑誌の内容がアホほどシンプルに要約される画が非常に皮肉が効いていて良い。

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「OBEY(従え)」「NO THOUGHT(考えるな)」「CONSUME(消費しろ)」。こういうディストピアが現実ですよ、という資本主義に対する風刺は30年前の映画にもかかわらず未だ全く違和感がない。異星人のヒトたちは毎日これしか見えてないと思うんですがそんな星侵略してて楽しいんだろうか。

こういう唯一無二のビジュアルに加え、ワープしたり星間移動ができるほど文明が発達しているのに抵抗勢力を潰すのに警察権力を使う異星人とか、サングラスをかけるかけないで揉めて路地裏で殴り合うだけのシーンがやたらと長かったりとか、いい具合にツッコミを入れたくなるポイントも内包しており、カルト映画として語り継がれるのも納得の作品です。

この作品自体は飛び抜けて面白いというわけでもないのですが、引用のし甲斐があると言いますか。たまたまこのツイートがふと目に入ったときには大笑いしました。

どんなことでも知識として持ってると色々楽しめることが増えていいよね、という話。

ゼイリブ (字幕版)

ゼイリブ (字幕版)

  • ロディ・パイパー
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『ベイビーわるきゅーれ』に最高すぎるアクションを見た ー 最近観た映画の感想

オールド

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初シャマラン。『シックス・センス』も観てません(オチは知ってる)。

超スピードで加齢する謎のビーチに置き去りにされたリゾート客たち。脱出方法を模索する間にも一人ひとりと死んでいく、というスリラー。

仕掛けは「加齢」一本で超シンプルなので、予告を観て想像したそのままの映画でした。人の一生がビーチで超加速。よってトラブルも2時間弱の映画に超圧縮されて発生しまくります。

髪や爪が伸びない理屈とか、排泄はどーなってんのとか、成長した子供たちが異様に賢くなってるとか、細かいツッコミを入れようと思えばいくらでもできてしまうのですが、そこはどうでも良いんだよ、と分かってやってるんでしょうからいちいち指摘するのは野暮ってもんでしょう。

眩しい夏の日差しのもと、次にどんなイヤな事が起こるかとワクワクしながら観るのが正しい鑑賞態度だと思いました。言いたいこと、見せたいものはよく分かりますが、個人的には「人生の意味」とか読み取るほど深いメッセージ性を感じる映画ではないです(そういうレビューを見た)。

繰り返しますが、良くも悪くもびっくりするほど予告の印象そのまんまの映画なので、予告を見て面白そうだと思ったなら、その想像通りの映画が観れると思います。

あと、当然ながら子供はメキメキ成長するので、それに応じて演者が入れ替わるのですが、「年取ったらこうなりそう」という役者をスムーズにつないでいるのがすごい。

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こんなにアレックス・ウルフ(『へレディタリー/継承』のクソ兄貴)に成長しそうな子供をよく見つけてきたな、という感想に尽きます。

ベイビーわるきゅーれ

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邦画で。アクションで。低予算で。今年ベスト級の映画が来たことに俺は感動してるのですよ。何これ面白え! 邦画でこんなの観れんの!? っていう。

とにかくクライマックスのアクションのクオリティが無茶苦茶高い。高い身体能力を活かした超高速格闘!! 邦画でこのレベルのを観るのは始めてだわ。主演の一人、伊澤彩織さんはスタント出身っつーことですが、こんなんもうアクションスターじゃん……。

よく引き合いに出されている『ジョン・ウィック』シリーズの近接ガンアクションや『ザ・レイド』の打撃戦はもちろんのこと、個人的には『イップ・マン』シリーズの高速連打や『リベリオン』ラストの射線の捌き合いなんかも連想しました。

それぐらい多くの要素が一つの殺陣に込められて流れるように展開していく。それがワイヤーアクションや特殊効果なしに身体ひとつで繰り広げられるわけですよ。

俺、マーゴット・ロビーのハーレイ・クインを観るたびにこのキャラクターの強さに納得いかねえ、って言ってるんですが、それに比べてこの映画の説得力ったらねぇですよ。だって実際に素人には出来ないレベルの動きをやってんだもん。低予算だからこそ嘘や誤魔化しが無いことが明らかなわけで。(殺陣つけてる時点で虚構ではあるのですが)

しかも「アクションが最高」は単なる一要素にすぎません。脚本や演出、出演者の演技のレベルも相当高い。

一般人に紛れて生活している女子高生殺し屋コンビが、高校卒業を期に「表の顔」としての社会人と殺し屋の兼業を組織から指示される。ふたりはこれまで通り殺しのお仕事をしながら、自活生活やバイトなど一般社会に適応するために悪戦苦闘していく、というお話。

「市井に潜む殺し屋」って設定は結構ありふれていて、日本の作品だけでも古くは『必殺シリーズ』、今なら『ザ・ファブル』や『バイオレンスアクション』、女子高生殺し屋なら『デストロ246』なんてのもありますし、他にも枚挙に暇がない。

ちょっとゆるめの日常と、殺し屋稼業のギャップを描く。うん、よくあるある。よくあるんですが、本作は日常の比重が非常に大きく、かつ「日常系」作品としてのクオリティまでもが異様に高い。

器用にそつなく人付き合いをこなして社会に適合していく「ちさと」と、コミュ障でバイトも決まらない「まひろ」という正反対のキャラクターの同居生活。「殺し」と「日常」に境界のない生活の中での掛け合いや、世の中のちょっとした生きづらさ、正反対のふたりの仲違いや仲直りなど、自然に軽妙にコミカルに描く。

アクションはまひろ役の伊澤彩織さん(と、ラスボス役の三元雅芸さん)の独壇場でしたが、日常パートはちさと役の髙石あかりさんが素晴らしい。

他人と絡むシーンが一番多いから目立ちやすいというのもありますが、とにかくこの映画の土台とも言えるギャップ・二面性といったところを見事に体現。

凶暴性をむき出しにする演技、ピンチに「スン」と冷静に振る舞う演技、ちょっと多動症っぽく相棒に絡む日常の演技。表面上はうまく社会に馴染んでいるが、うっすら漏れ出すヤバさをきっちり表現しており、絶対「やらかす」のはこっちの子だと思わせて実際そうなるの最高ですね。

ちなみに一番好きなのは二面性とか関係なく最初のバイトで生クリームの盛り付けにいっぱいいっぱいになってるとこです。

悪役やサブキャラも大変良い味でして、特に組織の事務方とのやり取りや「掃除屋」に説教されるところなど、殺しと地続きの異様な日常を脱力感と共に馴染ませつつ、この世界における裏社会のありようを感じさせて非常に上手い。このまま『ジョン・ウィック』のコンチネンタルみたいに膨らませて、今後の作品と合わせて独特の殺し屋ユニバースを構成していったら面白いなと思います。

よくある設定ながら、これまで見たことがないタイプの作品に仕上がっているのが素晴らしい。こういう気の抜けた感じというのは邦画ならではという感じがします。日本人は何でも日常系に仕上げる習性があるしね。

惜しいのは、台詞が聞き取りづらい部分が多々あること。まあ邦画にはありがちな話ですが、もしディスクが発売されるなら(ていうかしてくれ。買うから)価格が上がってもいいから日本語字幕をつけて欲しいところです。

しかしコレ撮った阪元裕吾監督が25歳と知って思わず声をあげるほど驚いたのですが、こうやって若い人が頭角を表してくるの最高ですね。出演した役者さんたち共々、ぜひとも売れていっていただきたい。そうすれば今後20年30年と楽しめるから。

フリー・ガイ

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犯罪ゲームで襲われるだけのモブキャラ銀行員、「ガイ」がプレイヤーに恋をする。決まったルーチンで動くだけだったはずの彼のAIには変化が生じ、やがてゲーム世界を救うヒーローへと生まれ変わっていくのだった。

死ぬほど前向きでいい映画だと思いますよ。「人はなりたいものになれる」的な。ただ『ベイマックス』のときにも思ったけどディズニー流のクソポジティブな映画はのど越し良すぎて俺はうまく味わえないのですよねえ。20世紀フォックスもすっかりディズニー色になったもんだ。

大迫力のカタストロフが繰り広げられても「ゲームのデータだしなぁ……」って思っちゃう。仲間との別れも「この映画なら後で復活するだろう」と確信できて、実際そうなるし、悪役は最後に打ちのめされるためだけに愚かな行動ばかり取る。

ずっと「予定調和」って言葉が頭にちらついて素直に楽しめなかったというのが正直なところ。こういう綺麗な映画は夢いっぱいの中高生が観るべきだな。普通に面白いですよ。普通に。

あと現実側から見たゲーム画面が中国スマホゲーのクソ広告みたいなのはものすごく面白かったです。

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ポッドキャストを始めたら、ほとんど誰も聞いてないのに既に楽しい

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最近嫁さんがポッドキャストをよく聴いていて、その影響で俺も聞く(「聴く」ではない)ようになりました。

芸能人やアナウンサーのちゃんとしたラジオもあれば、個人がただ雑談してるだけの番組も多いんですが、作業しながら聞くには丁度いいんですよね。

俺、Youtuberの動画がどうにも苦手でして。解説動画を見るぐらいなら字で読んだほうが早いと思ってしまうタイプの人間ですし、出演者が必要以上にテンションあげてはしゃいでたりするともう辛い。

それに動画は時間を割いてちゃんと観ていないと情報を拾いそこねてしまいますが、その点ポッドキャストは「ながら」でいいのが性に合います。

何よりYoutubeと違って個人が収益化する手段がほとんど無いので、現時点でわざわざ配信している個人は「ただ好きでやってます」って感じで不快になることが少ないんですよね。金にならなきゃ「迷惑系」の配信者なんて発生しようもないですし。

で、こんなんで良いなら俺もやれるな、と配信を始めた次第。

映画の感想をふたりでダラダラ喋るやつ

サムネは嫁さんが10分ぐらいで描いてます。

説明も何もなく本当に感想を言ってるだけなので、お題の映画を観てないと聞いても意味がわからなかったり酷いネタバレを食らうという、対象が狭すぎる配信。

もともと俺は嫁さんと映画鑑賞後の会話を録音して後で聴き返したりしていたのですが、それの雑音や無言の部分を切ってアップロードするだけです。

配信に使っているのはSpotifyのAnchorというアプリ。

Anchor – ポッドキャストを作成

Anchor – ポッドキャストを作成

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音声ファイルだけ用意すれば拍子抜けするぐらい簡単に配信がスタートできます。

調べればやり方はいくらでも出てくるので詳細は割愛しますが、自分の適当な配信がSpotifyやApple podcast、Amazon musicといったメジャープラットフォームに紛れこんでいるのを見るのはそれだけで楽しいです。こんなふうに。

そして誰が聞くんだよこんなの、というと俺と嫁さんが自分で聞きます。

どんな趣味でも後から面白かったところを語り合う、あるいはつまらなかったところを腐し合うというのは趣味そのものと同じぐらい楽しい部分だと思うのですが、それを追体験できるんですよね。

何を話したか覚えていても、聞き返すとその時の空気が蘇ってきて全然楽しい。オチまで分かってても落語が面白いのと同じで、むしろ内容が分かってる俺自身が一番楽しく聞けると思います。

考えてみるとこれはGoogleフォトなんかの共有スペースに撮った写真をアップする感覚に近いですね。その場にいた人と、楽しかった記憶を画像の代わりに音声でシェアするという。

自分たちで聞くためといいつつ、一般公開もしてここにURLも載せてるわけですが、これはブログに感想を書いて公開するのと一緒で、あわよくば同じ部分に共鳴する「同類」がそのうち見つからないかという期待を込めています。

実際、こんな「狭い」配信でも聞いてくれる人が少しはいて、それも嬉しいですね。

 

こんな感じで、ただの雑談を配信するだけでも「自分だけは」とても楽しいので、趣味の会話をよくする人は仲間内にシェアするつもりでとりあえず配信してみても面白いと思います。

簡単だし、HTMLを手打ちしてた個人サイト黎明期みたいな感じがあって楽しいですよ。「テキストサイト」という言葉すらなかった頃の。(一部のインターネット老人にしか伝わらない例え)

ディズニー製カンフー映画で俺が大歓喜 ー 最近観た映画の感想

ザ・ハント

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目が覚めたら見知らぬ森の中。集められた人間は武器を与えられ、正体不明の敵から攻撃を受ける。ここは金持ちが娯楽で人間狩りを行う「狩場」だったのだ。

また理不尽デスゲームかよ、と思わなくもないのですが、フォーカスの当たった登場人物がめきめき死んでいくというあまりにも手際の良い導入で引き込まれ、軽~いおやつ感覚で観ることができます。嫌なおやつだこと(序盤にグロあり)。

終わってみれば「獲物」があらかた狩りつくされて、生き残りの反撃が始まる30分ぐらいまでがピークだったな、という感じではあります。

とはいえ、「調子こいた襲撃者が反撃を受けて酷い目にあう話」というのはそれだけで一定の面白さがありますよね。『サプライズ』とか『バクラウ』とか。

「その辺のおっさんにロシアンマフィアが壊滅させられる映画」がいくつもあるのと同じように、今後も手を変え品を変え作られ続けていくのでしょう。

襲撃者がセレブ集団なので、虐殺のかたわらで健康に気を使っていたり、「黒人」と言うか「アフリカ系アメリカ人」と言うかで揉めたりと無駄な意識の高さを発揮しているあたりは結構ベタな皮肉ですね。

これで「国の2極化を煽る」とかいって一時上映停止になったとかいうエピソードは流石に苦笑せざるを得ませんが、こういう犯人像とか、終盤に明かされるターゲットの選定基準とかはいかにも現代的で嫌いじゃないです。

ザ・ハント (字幕版)

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  • アイク・バリンホルツ
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Z Inc. ゼット・インク

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人間の本性を剝き出しにし、狂暴化させるウイルスにコンサル会社が丸ごと感染、会社は完全に封鎖された。散布されたワクチンが効果を発揮するまでの間、誰も外には出られない。

同僚のミスを押し付けられ、会社を追い出されるところだった男は「感染無罪」のうちに自分をハメた同僚と社長をブッ殺すべく、オフィス最上階を目指すのだった。

相棒は同じく会社の幹部をブッ殺したいサマラ・ウィーヴィング。俺がこの人を目にするときは大概ネジが外れた女の役ばっかしてる印象があるんですが、大変カッコいいので売れてもこういう役は続けて欲しいですね。

内容はといえば、「ホワイトカラーの会社員がオフィスの中で血みどろ大乱闘」の設定は面白いんだけど、他は特筆することもない並のB級映画という感じ。

感染者は別にゾンビになるわけでもないので、やたらと暴力的になるとは言え理性はある。オフィスにいる人間が見境なく襲い掛かってくるわけでもないし、何なら会話や交渉もできるので、暴れてるモブ会社員はただの背景でしかない。ポスターのメインビジュアルから期待するようなパニック映画の緊張感みたいなもんはほぼないです。

ちょっと良い話風に「成功への道は自分で掴み取るしかない」と、社長をブッ殺して幹部の座についた主人公に言わせて締めるところとか、助手に滅多刺しされてる上司を見て大爆笑してるサマラ・ウィーヴィングはとても良かったです。

Z Inc. ゼット・インク [DVD]

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  • スティーヴン・ユァン
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シャン・チー テン・リングスの伝説

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これは面白かった! これまでに観たマーベルの単独ヒーローものではトップクラス。

ブラック・ウィドウ』が毒のない「ディズニーの映画」って感じになっててあんまり好みではなかったので、本作もそれ程期待してなかったのですが、いい感じに裏切ってくれました。

後半は壮大な中華ファンタジーって感じで、これはこれですっかりディズニーの世界観を感じるものの、鼻につかないというか、新鮮さが先に来る。

俺、『ブラック・パンサー』のワカンダとか『アクアマン』の海底都市(DCだけど)とかの「独自の発展を遂げた近代文明」が大好物なのですが、中国武術の伝統的な武具に電撃を仕込んでいるテン・リングスとか、ター・ロー村の龍の魔力がこもった弓矢や縄鏢に同じ匂いを感じます。それだけでもう結構好きになれちゃう。

良さの大前提としてベースのカンフーアクションがハイクオリティだということもあります。ディズニーでこんなしっかりしたカンフー映画が観られるんだという驚きも大きい。

カーアクションと組み合わせたバス内での戦闘では慣性付きの閉所という環境を活かしたいかにも「らしい」アクションが見られるし、マカオの高層ビル足場での戦闘も鉄板のカンフー映画シチュエーション。カンフー映画と言えば竹の足場ですよ。ベタっちゃーベタだけど、マーベルヒーロー映画でスケールでっかくこれをやるってのがもう面白い。

そういう地に足の着いたカンフー映画から、空を飛んで戦う武侠もの、幻獣や龍が出てくるようなファンタジーへと大風呂敷を広げつつ、スムーズにこれまでのMCUと話を絡めてくるあたりも見事。新ヒーロー参戦の掴みとして文句なし。あんな地味なポスターと予告でこんな話になるとは思わなかったよ。

そしてサブキャラも魅力的。毒親のトニー・レオン、独学で強くなっちゃった妹のメン・ガー・チャン、いつ見ても強く麗しい叔母さんのミシェル・ヨー。

なにより親友ケイティ役のオークワフィナがめちゃくちゃ良いキャラでした。最初のシーンで中国映画にありがちなクソ厚かましくて空気を読まないタイプのコメディリリーフなのかと思いきや、明るく気さくで気遣いはできるわドラテクは一流だわ肝は据わっているわで一般人なのに頼れるサイドキックとしてどんどん好きになる。

ロマンスに持っていかずに親友ポジをキープしているのもいいし、今後のMCU作品にもぜひ登場させて活躍させて欲しいと思います。

とまあ、各種伏線や魅力的な新キャラの追加等、色々な面で今後のMCUの広がりを期待できる一本でした。

いや、本当こんなに面白いと思わなかったわ。想定外の喜び。

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神の啓示を受けたおっさんがレンチで人を殴って回る映画 ー 最近観た映画の感想

ゾンビランド:ダブルタップ

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ゾンビランド』から10年ぶりの続編。作中時間も10年経過。

ゾンビ禍により荒廃した世界で仲間となった生存者4人は10年後も楽しく生き抜いていた。ホワイトハウスに安全な居を構え、愛車をいじり、本を読み、時折ヒャッハーとゾンビを狩る。

もはや生活の一部なのでゾンビ退治は全員手慣れたもの。どうしたって必死のサバイバルになってしまう他のゾンビものと違って余裕のあるアクションが小気味良い。

疑似家族として暮らしている4人の「末の娘」であるアビゲイル・ブレスリンが外に男を見つけて出ていってしまい、それを連れ戻しに行くというのがストーリーの軸になっているのだけど、男がバークレー出身の非暴力主義者と聞いてブチ切れるウディ・ハレルソンが面白すぎてここだけ何度も観てしまう。

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爆発寸前、過呼吸気味でいっぱいいっぱいになったこの表情よ。これだけで無茶苦茶笑えてしまった。演技が上手すぎる。

ウディ・ハレルソンはタフガイであることを誇りに思っているタイプの典型的アメリカン頑固親父。アビゲイル・ブレスリンのことは実の娘のように可愛がってはいるが、それゆえに年頃の娘からはウザがられてしまうという、10年間でしっかり家族をこじらせている描写がとてもいい。

相棒のジェシー・アイゼンバーグは理屈っぽいナード男だけれども、正反対のタイプのウディ・ハレルソンと馬が合う。今作ではこの二人のコピペみたいなタフガイ&ナードコンビがもう一組出てきて、互いに相棒を自慢し合ったりサバイバルのルールを披露し合ったりで意気投合する。ここも男2人がめっちゃ仲良いのが分かって良し。

あとはファミリーワゴンに我慢がならないウディ・ハレルソンとか、エルビスのコスプレではしゃぐウディ・ハレルソンとか、とにかく今回このおっさんが面白すぎてもう最高でした。エマ・ストーンはちょっと存在感薄かったな。

前作同様、意味のない雑談をしながら夜通し運転するロードムービーのカットも好き。いまだにビル・マーレイネタを引っ張ってたりして、前作を観ていればなお楽しい。良い続編だと思います。

ザ・スーサイド・スクワッド ”極”悪党、集結

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前作はクソつまんなかったんですが、続編はジェームズ・ガン監督でR15+ということでめちゃくちゃ楽しみにしておりました。邦題はダサいと思います。

流石の手腕で、とにかく出だしから異様にテンポ良く進む。

やたらと多いヴィランや、特別チームであるスーサイド・スクワッドの立ち位置・ミッションをあっという間に説明しつくす。

そしてババーンと格好良く合衆国国旗の前に集結させて、いわゆる「Gメン歩き」をさせてからあっさり全滅させて人員整理する。多いと思ったんだよ14人て……。 

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ただマッハで死ぬ人たち含めて格好いいイラストアイコンが用意されてて、これを見るだけでも分かる通り、みんなばっちりキャラ立ちしてんのですよね。半分以上をあっさり使い捨てるこの贅沢さ。

誰が死ぬかで賭けをしている司令部スタッフとか、前作では描かれなかったゲスい描写がいやが上にも期待を高めます。ディズニーの軛から解き放たれたジェームズ・ガンのやりたい放題を観に行く映画です。

誰が序盤を生き残って活躍するかは予告やポスタービジュアルからお察しなのですが、デッドショットとハーレイ・クインばかりが目立っていた前作と違って、チームの全員を万遍なく活躍させつつ、最後は予告の「ヤベー怪獣」でしっちゃかめっちゃかにしてから締める。

インパクト抜群の導入と終盤の突き抜けたバカバカしさで、最初から最後までずっと楽しい。悪役チームらしく躊躇のない残虐描写や不謹慎ギャグもキレが良いし、ジェームズ・ガンはR15+でやらせてもらえるDCに行って本当に良かったと思う(『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー3』も楽しみだけども)。

ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』の感想にも書いたようにハーレイの格闘戦の強さには相変わらず納得がいかないし、悪党は悪党らしくもっと身勝手な理由で世界を救って欲しかった(無茶振りだとは思うけど、ジェームズ・ガンならうまくやるかも、という期待はあった)というのはあるけれど、サメのナナウエたんが大層可愛かったので個人的には全部許した。

スターロ大王も「よいしょ」って感じの足運びがとてもキモ可愛らしく、グッズ売り場ではこの2人のポストカードを買いました。数え方は「2人」でいいのかこれ。

スーパー!

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スーサイド・スクワッドが楽しみすぎて、同じジェームズ・ガン監督作品のDVDを注文していたのでした。届くのが遅れて観る順番は逆になりましたが。

神の啓示を受ける幻覚を見たおっさんが手製のスーツに身を包み、ヒーロー「クリムゾンボルト」として悪党を巨大なレンチでボコって回る、ポップでたのしい暴力映画。

バットマンのような金も力もない、冴えないおっさんが自己認定した悪をたどたどしくブッ飛ばす。ヴィジランテ系ヒーローがどれだけ頭がおかしいかを見事に戯画化しています。

薬の売人、ひったくり、児童買春、行列割り込みなどの悪党に忍び寄り、死角から鈍器で殴り倒すヒーロー。悶絶する悪党。ドン引きするギャラリー。

Q.「なんでアンパンマンは技名を叫ぶの?」

A.「アンパンマンが無言でばいきんまんを殴り倒したら子供が泣くだろが」

を地で行くやつ。

同じく素人ヒーローものの『キック・アス』は、やがて本物の悪党と敵対して真のヒーローとなっていく物語でしたが、クリムゾンボルトのヒーロー活動は基本的に最後まで通り魔です。

「神の啓示」によって暴力をふるって回るクリムゾンボルトは平たく言って単なる狂人なのですが、ヒーローマニアの女がサイドキックの「ボルティー」として加わることで活動はさらに暴走。

彼女は正義の名のもとに人をぶちのめしたいだけなので、物語の中盤からはクリムゾンボルトはまだ良識がある方だったと分かる最悪のチームアップが誕生します。

そして最終的にはガチな裏社会の人間と本気の命の取り合いになるのですが、ガソリンで火だるまにしてからメッタ刺しとか、手製の爆弾で人間を粉々に吹き飛ばすとか、素人ゆえの過剰な殺し方が普通に怖ぇという。

通り魔同然だったヴィジランテがやがて真のヒーローになるのではなく、「すげえ通り魔」にクラスチェンジする物語。

スーサイド・スクワッドでも顕著だった残虐かつポップな演出やギャグはこの頃から健在で、ブラックではあるけれど笑えてしまうし、B級らしい(不謹慎な方面の)爽快感もばっちり。主人公がささやかな幸せと心の平穏を手に入れるラストも哀愁に満ちていて良いですね。

何でコイツ捕まらないんだろ、とは思いますが。 

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B級ホラービッチ無双『ファイナル・ガールズ 惨劇のシナリオ』他 ー 最近観た映画の感想

プロミシング・ヤング・ウーマン

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予告がもう面白い。

泥酔した振りをして、自分を「お持ち帰り」する男に鉄槌を下す女、キャシー。彼女は学生時代に巻き込まれた性犯罪によって自身の前途有望な将来を失っていた。

手当たり次第だったお持ち帰り男への復讐は、偶然学生時代の知人に再会することで一変する。かつて事件に関わった人間たちの幸福な現在を知り、キャシーは彼らにターゲットを定めた復讐を開始するのだった。

バカ学生が酒の勢いと集団のテンションで行った性暴力。「こんなこと」で将来有望な若者の未来を閉ざしてはいけない、とそれを庇護した大人。被害者に寄り添わず、自業自得とあしらった傍観者。復讐の対象は加害者のみに留まらない。

同じような事件が報道されるたびに吹きあがる「自業自得」論には俺は心底うんざりするのですが、そういった既視感を覚えるような映画がアメリカで制作されたことにちょっと驚く。女性の人権に関しては日本より余程進んでいる印象があるのですが、こうやって問題提起されているということは実際のところは日本と大差ないんですかね。

まあこの手の事件で被害者を責める論調は本当にクソだとよく分かる映画でございます。

痛快な復讐と、それに伴い徐々に明かされていくキャシーの動機。展開がスリラー映画としてよく出来ているのは勿論のこと、キャシーの復讐方法が決して加害はせず、相手と同じ所に落ちないということを徹底しているのが良かった。

それでいて自分が何をしたかを自覚させ、それを心底後悔するような恐怖をきっちり与えているし、そういう復讐だからこそ真に反省し悔いている人間には手を出さない。そのことが結末に綺麗に結びついているあたりも見事。

最終的に何もかも巻き込んで諸共に地獄へ落ちんとするかのような復讐を遂げるわけですが、キャシー本人含め誰一人幸せにならないラストには本当に気が滅入ります。だからこそこの結末には圧倒される。加害者連中が残らず燃やし尽くされるであろう未来に爽快感を覚えつつ、かつ悲しい。

あと音楽が良かったです。

ファイナル・ガールズ 惨劇のシナリオ

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亡くなった母親が20年前に出演していたカルトB級ホラー映画の世界に入り込んでしまったヒロインが、若き日の母と共にファイナルガール(ホラー映画で最後に生き残る女の子)となるべく奮闘するホラーコメディ。

殺人鬼の設定や映画の展開を知っていることを逆手にとって作戦を立てるメタ展開はホラー映画のお約束をいじり倒す『キャビン』を想起させますが、こちらは登場人物がそれに自覚的である分だけよりコミカル。

独特の効果音で殺人鬼が近くにいることに気づいたり、謎エフェクトが降ってきて回想シーンへ突入することが分かったり。

そしてヒロイン一行の介入でB級ホラーなら真っ先に死ぬはずのビッチさんが長生きしたりする。彼女の扱いが狂おしく好き。

一緒に映画に迷い込んだイケメンに対する特殊な求愛行動とか、現実から持ち込まれた向精神薬をバカ食いして最終決戦前にガンギマリになってたりとか。

ビッチが服を脱ぐと殺人鬼が現れて殺されるのがお約束だから、服の上からライフジャケットや手袋まで着こまされて待機。いざ殺人鬼との対決の準備ができたら「獣を解き放て!」の合図と共にリリースされて音楽に合わせて脱ぎ捨てていく。彼女がフラグ用アイテムとして作戦に組み込まれる展開が大変お気に入りです。

B級ホラー映画の世界だから人はバンバン死にますが、血はほとんど出ないしグロもなし。登場人物の雑でコミカルな死に様は笑いを誘いすらする。

ビッチさんがオッパイを出して殺人鬼をおびき寄せる瞬間もきっちり顔のアップにカメラを切り替えることでエロ回避。全編通して配慮が効いてて安心して観ることができる。無理に過激な展開なんか入れなくても面白い映画はちゃんと面白いんだよな。

B級ホラーらしく時間も短く、しっかりお約束を踏襲するオチもいいね。 

G.I.ジョー

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何だかすげえ装備の特殊部隊が大活躍する、何の変哲もないアメリカ万歳映画だ! ひゃっほう!

近々公開される3作目の「未曽有の忍者テロ」というコピーに惹かれて1作目のこれを観ましたが、これだけでお腹一杯になっちゃったよ。どうしよう。

「あらゆる金属を高速で腐食させる超兵器」が登場し、それの輸送任務が始まった時点で嫌な予感しかしませんが、言うまでもなく悪の組織に奪われて世界が征服されそうになります。

こういう投げやりな導入や、武力で世界を牛耳ろうとする悪の組織の陳腐さは様式美すら感じさせて嫌いじゃないです。脚本なんてどうでもいいからアクションと爆発だけ見てればいいというのが分かりやすいので。

どっからどう見てもCG丸出しのメカ戦闘とか、酸素マスクと片眼鏡をつけた古式ゆかしいデザインの悪のプロフェッサー等、2009年の映画とは思えない作りが逆に癖になる。

大作並みに金のかかった贅沢なB級映画ですねこれ。酒飲んだりスマホいじったりしながら適当に観ましょう。

パワードスーツで車を追いかけるカーチェイスは良かったです。なんか一杯爆発してました。市民めっちゃ死んでると思います。

あとはイ・ビョンホンが白いなあと思いました。登場するたびに「白い」「白いなあ」「ほんと白い」って。最後は無意味に脱ぎます。

刺されて海に落ちて死んだので多分続編で出てくるだろうなと思ったら、普通に2のポスターにでかでかと顔が載っていて面白かったし白かった。含みを持たせて退場させたんだから、ちょっとは隠そうとしてほしい。 

G.I.ジョー (字幕版)

G.I.ジョー (字幕版)

  • チャニング・テイタム
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ATOM Cam2が安いし楽だしすげえ面白い

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うちの自治体、ゴミ出しは決まった曜日に自宅の前に出しとくと業者さんが回収していってくれるんですが、マナーの悪い人がうちの前に時間外のゴミを捨てていくことがありまして。

腹立ったんで監視カメラを取り付けました。ATOM techのATOM Cam2。

前身のATOM Camはクラウドファンディングで企画された格安のネットワークカメラなんですが、最近リリースされたこの2でIP67防水防塵になり、屋外でも使用可能に。監視カメラとして使えるようになったわけです。

うちは設置してから3週間ほどになりますが、2つ目を買い足すぐらいには良いです。

まず屋外に置けるカメラとしてはアホみたいに安い。1個2980円(送料別)。安いWEBカメラぐらいの価格なんで、ぶっちゃけ半年ぐらいで壊れても許せる。

そして一般的な監視カメラに比べて設置のハードルが非常に低い。

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この同梱品の右上の円盤はただの鉄のプレートですが、これをネジないしは両面テープ(赤いの)でどこかに固定してやれば、本体台座に仕込まれた強力な磁石がくっついて本体の固定も画角の調整も簡単にできます。本体が軽いのでそんなもんで十分なんですね。

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うちは玄関が引き戸でレール部分がせり出しているので、ひとつはその上に乗せてます。もうひとつは窓枠にプレートを両面テープで固定。

台風などでずれたりしないかという点は未検証ですが、位置を直すのは簡単だし、万が一落ちて壊れてもまあ安いし。

あとはUSB 5Vの電源を確保するだけ。「だけ」といっても屋外なのでこれが一番の難関ではあるのですが、見ての通り専用ケーブルはきしめん状の平ケーブルなので、窓越しに引っ張り出すのは簡単です。うちは普段開け閉めしない明かり取り用の高窓を利用しました。場所が合うなら換気システムの吸気口とかエアコンの配管用スリーブを使ってもいいですね。

ネットワークカメラなのである程度の強度でWi-Fiが届いている必要がありますが、その辺は中継器なりメッシュWi-Fiなりを使えば済む話なので、自宅設置の制約としては軽いものです。

ネットワークのセットアップも楽で、Wi-Fi接続済のスマホでアプリにログインしてバーコードを読ませるだけ。 

ATOM - スマートライフ

ATOM - スマートライフ

  • ATOM tech Inc.
  • ライフスタイル
  • 無料

電源を入れてものの数分で、スマホでリアルタイム映像を見ることができます。 

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場所が特定できそうな要素をぼかした結果、アスファルトしか残らず訳わからん事になってますが、自宅前の通りの映像です。これは深夜の映像なのですが、街灯のみの明るさなのにある程度アスファルトのディティールが分かるぐらいにはノイズは少ないので、監視カメラとしての役割は十分に果たせることがわかります。

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動体は自動検出してクラウドに保存。おかげで我が家の前は毎晩この茶トラさんがパトロールしてくださっていることが分かりました。最高かよ。

このクラウドデータは無料で14日間分保存。1回の記録は12秒間、一度記録するとその後5分間は検知OFFになってしまうので、イベントのタイミングによっては取りこぼしが出ます。

全てを記録しておきたければ月額500円のプランで記録無制限にするか、内部スロットにmicroSDを挿してローカル記録することになります。

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インターフェースはこんなんで、動体検出で記録されている特定の時間に飛んで再生開始。無料クラウドだけなら12秒で再生終了、SDがあれば12秒過ぎても再生が続くし、動体検出前にさかのぼって記録を見ることもできます。

ストレージはいつまでたっても満杯にならず、ずっと記録できているので、ドラレコのように古いデータを上書きし続けているのだと思います。

再生画をスマホに保存することもできますし、スマホからSDをフォーマットすることももちろん可能です。

このアプリ、Amazonを見るとものすごく評価が割れていて、まともに動かないというレビューも散見されますが、ありがたいことにうちでは今のところ大きな問題はありません。

時たまクラウドが重くて、なかなか再生が開始されなかったりコマ送りになることがあるぐらいでしょうか(時間をずらせば改善します)。基本的には外出先の4Gでもスムーズに動いています。

以上、安いうえに使い勝手のいい監視カメラとして、個人的な用途には申し分なしでした。何より設置が簡単で業者の工事が不要なのが一番嬉しい。耐久性がどんなもんかはまだ分かりませんが。

クラウドに情報を流すということに抵抗がなければ、とりあえず遊んでみるだけでも面白いかと思います。

先にも書いたように評価は割れているので、買う買わないはひとまずAmazonの高評価・低評価、両方のレビューを見て判断するのが良いです。

ちなみに買うなら公式サイトのストアのほうがちょっとだけ安いです。

(2021/08/22 追記)

Amazonも公式サイトと同じ値段(本体2980円+送料700円)になってました。