面白殺し屋ユニバース『最強殺し屋伝説 国岡 [完全版]』他 ー 最近観た映画の感想
昭和歌謡大全集
(※ネタバレです)
コスプレをして昭和歌謡を歌うのを趣味とする若者たち。
この時点でもう意味がわかりませんが、なんかそういう集団がいるんです。そのうちの一人が唐突に通りすがりのおばさんを刺殺したことから、血で血を洗う抗争が勃発しました。調布で。
仲良しおばさんグループは犯人を突き止め、包丁を棒にくくりつけスクーターで突進、ランスチャージよろしく報復。若者はチャンチキおけさのメロディーにのせて血と小便を撒き散らし息絶える。
そして仲間の死を悼んだ若者グループは遥か群馬県の金物屋でトカレフを入手、おばさんたちへの復讐を企て……。
その後は昭和歌謡と共に銃殺・刺殺・ロケットランチャーで数人バラバラになったりしながら、最終的には調布市が吹き飛んで全員死にます。
完全にオチまでネタバレしてますが、事あるごとに「なんだこれ……」って思いながら観るのが楽しいので、正直なところストーリーはクソどうでもいいです。
過去に何があったんだってぐらいおばさんを敵視する金物屋の原田芳雄や、ブリの美味しいところを力説する武器ブローカーの古田新太など、殺し合っている若者やおばさんよりもサブキャラのほうが遥かに面白い。
本筋と全然違うところの方が楽しめるという、なんというか面白いクソゲーみたいな映画でした。なんでこれ映像化したんだ。
クリスマス・ウォーズ
日頃の行いの悪さでクリスマスプレゼントに石炭を贈られたクソガキがサンタクロースを逆恨みして殺し屋を送り込むお話。
一方のサンタも数百年オーダーでこういう仕事やってるとそういう輩がよく来るんだよね、と迎え撃つ。
近年はプレゼントを貰えるような「良い子」の減少により、出来高で政府から支払いを受けているサンタの生活は苦しい。
そのためおもちゃを作るはずのサンタ工房で軍需用品を作りだしたり、工房で働いている妖精さんたちの労働条件がブラックだったりするなど、ブラックジョークとして色々面白くなりそうな要素はあるものの、全体としてはハジケきれずに少々退屈。殺し屋がサンタの居場所を突き止めて対決するまでのくだりが長いんだよね……。
あとメル・ギブソンは一度もサンタ服着ませんでした。
↓ ポッドキャストで感想喋ったやつです
最強殺し屋伝説国岡 [完全版]
1ヶ月の間に4たび阪元裕吾監督作品。
関西殺し屋協会に所属するフリーの殺し屋・国岡の生活に密着取材をしたという体のモキュメンタリー。これも面白いなぁ。
2018年に公開された無印版のアップデートになるのかな。おそらく撮影時期は観た4作品の中では一番古くて、予算もあまりかかっていないのは明白。
それなのにもうこの時点で『ベイビーわるきゅーれ』に繋がる世界観がしっかり出来上がっていて、日常と地続きの面白殺し屋ユニバースがそこにある。あまりにもあっさりとして緊張感があったりなかったりする命のやり取りにニコニコしてしまう。やっぱりこの監督にはバイオレンスだけでなく日常も描いて欲しい。
他の人のようにきちんと社会に適応できないから、仕方なく殺しで生計を立てているという国岡。しがらみが嫌でこの業界に入ったのに、殺し屋同士の仕事の取り合いや、ウザ絡みの説教したがりオヤジ、とんでもないクレームを入れてくるクライアントなど、殺し屋の世界にもしっかり面倒くさい人間関係はあるのだった。
ストロングゼロを片手に愚痴を垂れるシーンは迫真の演技というかおそらく素。友達とダベったり、地方での仕事の後に現地の居酒屋に入るシーンの会話やカメラの生っぽさなども低予算が逆に良い方向に行っているように思います。
ラストバトルはちょっと長くて似た動きが多く、少々ダレるなという印象。とはいえまだまだ経験が浅いはずの若い役者の皆さんがこれだけ動けるのだから、出演者の今後にはめちゃめちゃ期待しております。
むやみに飛んだり跳ねたりしないアクションが個人的に好みです。
007 ノー・タイム・トゥ・ダイ
ダニエル・クレイグ版の007シリーズを1本も観ていないどころか、1作目の『007 ドクター・ノオ』の導入部だけを観たっきり放置している「007何も分からん」勢でしたが、いきなりダニエルボンド完結編のこれを観ても十分面白かったですよ。
やっぱり王道は強いというか、全然観たことないのに既視感を感じるわけです。あらゆるところで模倣されまくっている画角や演出を大変ゴージャスに見せつけてくる。
そうなると「なんか観たことあるなぁ、つまんねぇ」じゃなくて、「おお、これが本家本元か!!」ってなるの面白いですね。
とにかく1枚画にしてもその気合が伝わってくるかのような美しいシーンが多くてそれだけで結構満足できちゃう。
最初の街中のカーチェイスだけでも、あの古くて美しい街並みの中で実際に撮ってると思うんですが、どんだけ金と手間がかかってんだか。
もちろん金かかってるからいい映画とは限らないんですが、この時期低予算映画を立て続けに観ていたところだったので、大作映画がちゃんと大作映画であるというだけでちょっと感動してしまったようなところはあります。
これを2000円弱で観れるのだから、劇場で映画を観るというのはコスパのいい娯楽だと思うのですよ。
話自体はジェームス・ボンドという男に全く思い入れがないので特にこれと言って思うところはないのですけども。いろんなところで言われてますが、アナ・デ・アルマスのアクションが良かったです。床に寝そべって銃を2連射するところを真上からのカメラで捉えたりとか。
ダニエル・クレイグとアナ・デ・アルマスの組み合わせは『ナイブズ・アウト』でも観ていたので、ふたりとも役どころが全く変わっているのは面白かったですね。