ジャンルはバラバラですが今回はおすすめが多いです。並べてみるとつくづく思うのですが、観る映画に節操がないですね俺は。
西遊記~はじまりのはじまり~
西遊記世界を舞台にして妖怪退治をするオリジナルストーリーかと思ったら、割とガチで西遊記でした。「はじまりのはじまり」とはつまり、悟空・八戒・悟浄の三妖怪を折伏して天竺への旅に出るまでのストーリーということ。
チャウ・シンチーの映画は日本でもヒットした「少林サッカー」と「カンフーハッスル」しか観ていないんですが、作風は全く変わっておらず一発で同じ監督だと分かる仕上がりです。
アニメや漫画のような演出がチャウ・シンチー作品の特徴ですが、先の2作品のようなカンフーアクションではなく西遊記という異能バトルものになったことで自然に溶け込んでいる反面、人間離れした技を使う達人の凄みは少し薄れてしまったような。「そりゃ妖怪と戦うならこの位はできるだろ」と。
人間同士の戦いの中にアホみたいなエフェクトが入る違和感も面白い部分だと思うので個人的には良し悪し両方という感じ。
とはいえ、コミカルで勢いのあるアクションは相変わらず。ギャグもいつも通りくどいけど、今回は割と好きな方。血が止まらない人とか。
そして主人公や仲間を落とす時は本当に落としまくるのも相変わらず、そこから覚醒した主人公が圧倒的な力で大ボスをねじ伏せるのも、もう全くカンフーハッスルと同じ流れ。
これをマンネリとみるか安定した面白さとみるか。俺は両方感じてしまいましたが、そもそもどれも十分面白い映画ですからね。これだけブレがないというのも大きな価値だと思います。
クリッシュ
「ニート兼スーパーヒーロー 、カレーの国から参上」。
ああ。日本語コピーのセンスの無さよ。映画の日本語ポスター問題は本当になんとかなんないものですかね。これ書いた奴と通した担当者は突き指とかすればいいのに。
障害を持つローヒトは、体は年相応に成長するも心は幼いまま。皆から笑われることを悲しみ神に祈ると宇宙船が飛来、宇宙人ジャードゥの力で天才となったローヒトの名は世に知れ渡る。ローヒトはシンガポールのアーリヤ博士に招聘され、直後に死ぬ。(原因不明)
悲しみにくれるローヒトの母を支えたのが、孫であるローヒトの子クリシュナであった。クリシュナには生まれついての特殊能力があり(中略)実はローヒトは生きて(中略)クリシュナは(中略)スーパーヒーロー・クリッシュの誕生である。
というストーリーが開始してからの2分間で展開されるんだけど何すかこれ。って思ってたらタイトルがバーンと「KRRISH3」って。これ前作までのあらすじかよ!!
クリシュナが超人ってことだけ分かってればOKということです。ローヒトのくだりはいらないよね。2分で終わるからいいんだけど。
クリッシュは生身の体に覆面+ロングコートというアメコミスタイルのヒーロー。能力はサイキック系ではなく、ごくシンプルな超絶身体能力。空が飛べないので高層ビルの屋上を飛び移って高速移動するのですが、高さをこれでもかと見せつけるようなカメラワークで浮遊感がものすごい。ヴィランとのバトルも派手な動きとスピード感たっぷりで本場のアメコミ映画に全く劣らない。インドってこういう映画も撮れるのね。
劣らないどころか、インド映画の義務としてちょくちょくダンスが差し挟まれる分だけこちらの方がお得といっても差し支えないでしょう。*1
あとラスボスのデザインのダサさは必見です。
TOO YOUNG TO DIE 若くして死ぬ
うーん。面白いこた面白いんですが。
バカ映画として振り切れてないというか、計算された笑いになんとなく賢しさを感じちゃって入り込めないというか。観たことないけどNHKのコント番組とかこんな感じじゃないかというイメージ。
予告で何となくそれは感じていたのだけど、たまたま劇場で安く観られる機会があったので観たらだいたい予想通りでした。まあ単に俺の好みでなかったというだけ。
ただ、キラーK役の長瀬智也がとても楽しそうでそこは何となく幸せな気分になりました。「うわーんマザーファッカー」って泣いてるとこが好きです。
PK
クソ面白かった「きっと、うまくいく」の「監督:ラージクマール・ヒラニ」と「主演:アーミル・カーン」コンビだってんで公開初日に観に行きましたが、まさかいきなりUFOが出てくるとは思わなかったよね。よくみたらポスターにUFO写ってるし。
pkことアーミル・カーンは地球に観光へ来た宇宙人。とある事情で故郷の星に帰れなくなってしまいます。
そして帰る方法を探し求めるpkが出会ったのが宗教。
「困ったならば神様に祈れ」。神頼みをしろという助言は「あきらめろ」と同義なのですが、神という概念自体を持たないpkは真に受けてありとあらゆる宗教の教えを実践するのでした。
で、案の定ありとあらゆる宗教団体でめっちゃ怒られては追い掛け回されるドタバタコメディとなるのですが、これが宗教というものが内包する欺瞞をバッサリ斬っていて実に爽快なのです。無知で無垢な宇宙人に仮託して、宗教の坩堝たるインドでこれをやるから面白い。というか舞台がインドでないとこの作品は成り立たないのかも知れない。
大オチのネタはベタなんで割と早い段階で想像がついてしまうのだけど、見せ方がうまいのでついつい心のなかで快哉を叫んでしまう。
こんな厄介なテーマをを誰も貶めずに笑える映画に仕上げるのだから本当このコンビの作品は見逃せない。あと久々に小太りのオッサンが大挙して踊るシーンが観れたので満足です。
ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア
格好いいタイトルに葉巻と銃でキメた小洒落たジャケット。クライムロードムービーだってんでノワールを想像していたら意外にもすげー優しい世界がそこにはありましたよ。
不治の病で余命を宣告されたマーチンとルディの二人組が、死ぬ前に海が観たいと車を盗んだらそれは大金を積んだギャングの車でした。そうとは知らず、どうせ死ぬからと強盗を繰り返し旅を続ける二人はギャングからも警察からも追われることに。
二人は所々でピンチに陥りながらもうまく切り抜けつつ、仲良く楽しく海を目指します。そう、仲がいい。チンピラのマーチンに引きずられるような形で一般人のルディも犯罪を犯していくのですが、マーチンも気のいい奴ではあるし、共犯関係ということもあって二人がどんどん気の置けない友人となっていくのが実にいい。それを眺める映画です。
銃弾は飛び交いまくるのだけれど、一発も当たらず全く血が流れない。基本的にギャングも警察も間抜けなのでなんとも平和。ガイ・リッチー作品だったらギャングの手下共は腹を立てたボスにあっさり殺されるだろうなあと思いながら観ておりました。
だからリアリティは全くないんだけど、しかしそれがいい。これは冒険と友情の物語であってクールな犯罪とは相反するものなので。
終盤にかけて、短い旅の間に互いが心の拠り所になっていったことを象徴するシーンがあってそれが非常に印象的でした。BL好きの人にはたまんないんじゃないでしょうか。(台無し)
キャビン
序盤ですぐ判明することですし、ネタバレされたほうが絶対興味を引くと思うのでやんわり書いちゃいますけど、嫌な方は次の段落から目の焦点をずらして読み飛ばしてどうぞ。
(以下ゆるバレ)
スプラッタホラーのお約束ってありますよね。舞台が湖畔の別荘、キャンプ場。どこにでも神出鬼没な殺人鬼。ビッチのブロンド女が屋外で男といたしている時に最初に殺されるとか、ピンチなのに何故か全員別行動を取ろうとするとか。
実はあれ、そうなるように仕向けている謎の組織がいるからなんですね。彼らは最新鋭の技術、専門の科学者・技術者を惜しみなく投入して、裏方から哀れな若者たちを虐殺していく。
ホラー映画における数々の疑問にきっちり説明を付けていく、そんなメタい映画です。
スプラッタ系は苦手なんでほとんど観ない俺でも分かるテンプレートな演出の数々。さあ死ぬぞ、それ死ぬぞと緊張感を高めるだけ高めといて、まさに殺されるその瞬間、それを監視するモニター室のおっさんのアップに切り替わったりするので全然怖くない。本当に登場人物は死んでるんですけどね。
お作法に則って若者たちを殺し尽くすための仕掛けは盛りだくさん。思い通りに動かない彼らに悪態をつき、技を駆使して仕留めたときには大喜び。楽しそうな職場だなあオイ。
しまいにはストーリーはテンプレから外れて大暴走。もうやりたい放題のメッチャクチャになりますが、大盤振る舞いの超展開には突き抜けた馬鹿馬鹿しさがあって俺は好きです。何気に伏線もしっかり回収してるし、メタ視点の一発ネタだけではなくて意外としっかりした映画です。
ゴア描写は結構あるんですが、どれも引きのカメラで「遠くでなんかやってる」感じなので苦手な人でも大丈夫。多分。全く怖くない事は請け合いますので是非どうぞ。
マチェーテ・キルズ
ダニー・トレホが鉈を振り回して滅茶苦茶テックスメックスする映画「マチェーテ」の続編。今回もあったウソ予告「マチェーテ・キルズ・アゲイン…インスペース」だけで100万点は余裕です本当にありがとうございました。
前作はB級感満点でありはすれど意外と真面目(?)な脚本でしたが、今回は前作の3倍は低能になっており、これはこれで非常に俺好みです。やたらとヘリのローターを活用するのはやめるんだ。いい加減にしろ。
オッパイガトリング、チンコリボルバー、当たると臓物が飛び出るわくわくスペースガン。なるほど、ロバート・ロドリゲス監督が本気を出すとこうなるのだねえ。まあ興行的にコケたという話には「ですよね」以外の感想がありませんが。
あからさまにネタ予告につなげる気満々の本編は、そのせいもあって若干消化不良気味に終わってしまうのがやや残念。ゆえに80点。合計100万80点。つよい。
わざわざ大金をかけてこんなに頭の悪いものを作ってくれるのだから、いやー、映画って本当に素晴らしいですね。
本当にスペースマチェーテを制作するなら次は劇場で観るぞ。
スモーキン・エース
うん。これ群像劇に失敗してるよね。
大勢の個性的な暗殺者が一人のターゲットを狙う。それぞれの思惑がすれちがい、重なり、一つの流れを作るような綺麗な連鎖が観られるかと思ったら、ただ単にしっちゃかめっちゃかになっただけだった。
またガイ・リッチー作品を引き合いに出しちゃうけれど、やっぱりロックストックとかスナッチは良く出来てるんですねえ。 あんまり好きじゃないんだけどさ。
マネーボール
2001年のメジャーリーグ。最後まで優勝争いをし、惜しくも破れてしまったアスレチックスは翌シーズンにスター選手を高額の年俸であらかた引き抜かれてしまう。
もはや貧乏球団が金持ちと同じやり方をしても勝負になるわけがない。そう考えたアスレチックスのGMビリーは全く新しいチーム作りを画策する。資金力で勝てなければ何で戦う? それは統計だ!!
作中で「マネーボール理論」と呼ばれるそれを参謀役となる若者ピーター君が説明してくれるのですが、それをちょっと聞いただけでもうこの映画は面白い予感しかしない。
いわく、野球は27個のアウトを取るまでに1点でも多く取ったほうが勝つゲームであるのに、選手を取ってくるスカウトたちはそれが分かっていないと。
例えば、点を取るためには塁に出なくては始まらない。ならば重視すべきは打率や足の速さではなく出塁率だ、と言うんですね。
四球だろうが死球だろうが塁に出られる選手が偉い。高齢でも怪我人でもなんでもいいから、データ上で塁に出ている選手をとにかく集めてくる。むしろいわくつきで人気がない選手の方が安く雇えて良いといった徹底ぶり。ちょっと株式投資を連想させます。
あまりに奇抜なこのやり方は「選手を数字としてしか見ていない」とスカウト陣や監督からは反発を受けるのですが、断固実施するためにビリーは何でもする。本当に何でもする。暴走めいたビリーの振る舞いや、それを諌めつつも対外的には100%ビリーを支持する姿勢を見せるピーター君など、球団経営の裏方なんていう地味そうなテーマに反して見どころは沢山。ピーター君は良いメガネデブだ。
そこら辺は実際に観ていただければと思います。散々足を引っ張られ、批判され、を経た後にようやく始まる快進撃は痛快の一言。
漫画にしろ映画にしろ、野球のジャイアントキリング物語は大抵面白いイメージが俺にはあるのですが、この作品もそれに違わず。しかもこれ実話ですからね。
ユージュアル・サスペクツ
観終わったあと、ご多分に漏れず最初から観なおしました。
ただそれは「驚愕の結末に衝撃を受けて」というよりは「ああそうなのね」という感想に伴う確認作業という感じ。
ミステリー作品ってのは出会うタイミングも重要で、観る側と作品のマッチングが適切じゃないと最大限には楽しめないと俺は思っているのですよね。
ちょっと観るのが遅すぎた。要するに「どっかで観たような話だなー」と思ってしまった。元ネタと言われる小説も既読だったし。
うちの近所に10年ぐらい前に全国ランキング一位をとったとかで有名な人気ラーメン店があるんですが、食ってみたら「割とどこでも食える味だな」と思ったのに似てる。
きっと名作であるがゆえにリスペクトされ、オマージュされ続けた結果、既視感を覚えやすくなってしまっているのでしょう。そういうことにしといてください。
前の
*1:ある