無限ループって怖くね? 「パラドクス」他 ー 最近観た映画の感想

デビルズ・メタル

f:id:baumkuchen:20210511230855j:plain

メタルを聴くと救われる。

f:id:baumkuchen:20210511231805p:plain

時折Twitterのタイムラインに流れてきてたこのカットが面白すぎるのでずっと観たかったんですが、わりと普通の悪趣味スプラッター映画かなあと。

高校生メタルバンドがひょんなことから手に入れた魔王を召喚する楽譜を演奏してしまい、街中の人間が悪魔憑きになって襲いかかってくる。

あとはチェーンソーやら斧やらでバッサバッサと悪魔憑きを殺しまくるし、受肉した魔王も殺す。血ィドバドバ出る。内臓もボロボロこぼれる。

この手の映画、一応普通に観れますけども、基本的に俺はゴア描写好きじゃないんですよね。血がアホほど出るまではギャグの範疇でいいんですが、人間の断面とか観たくない。

それらを塗りつぶして有り余るほどの突き抜けた頭の悪さがあるかと言えばそうでもなく、ガワにメタルをかぶせただけのありがちな映画って感じ。というかB級スプラッターって全部内容同じなんじゃないだろうかと思うぐらい既視感がすごい。

ゴリッゴリのメタルをBGMに、手近な武器としてディルドーやバイブレーターといった大人のおもちゃで悪魔憑きに襲いかかる(そして勝つ)とか、面白がる人は面白がるんでしょうけどね。個人的には方向性が合いませんでした。

観た後で知ったんですが、これ「ガンズ・アキンボ」と同じ監督なんですね。いずれも悪趣味には違いないけれど、ガンズ・アキンボはきっちり一般受けするようにブラッシュアップされてるのがすげーなと、変な感心をしてしまいました。 

機動警察パトレイバー THE MOVIE

f:id:baumkuchen:20210516140149p:plain

パトレイバーは漫画版を既読。TV版は未見ですが、評価の高い劇場版を観てみたかったのです。

パトレイバーはレイバーが徹底して「汎用的な重機」として描かれているのがいいですよね。ロボットアニメとしてよりはお仕事モノの部分に軸足が置かれている。

公開は30年前、劇中内の時間でも20年前だというのに内容は全く古びない。漫画版にもOSがハックされる話がありましたけど、より大規模に首都壊滅レベルのテロ事件として持ってくるその先見性がスゲエし、それを刑事モノの「足で稼ぐ捜査」的描写で地道に進めていくのもいい。

なのでぶっちゃけレイバー同士の格闘は無用というか、最後の零式とのバトルは蛇足に感じます。ロボットアニメとしての建て付けを考えたら入れなきゃいけないのは分かりますが、個人的には警備ロボットと作業用レイバーまでで良かった。

30年前から見た「未来の東京(20年前)」という世界はちょっと良いですね。バラック街の中を進む人型レイバーとか再開発地区の廃墟とか。

実際の世界とは似ても似つかない風景なのに、今観ると20年前だったらこういう場所が本当にあったのではないかという気がしてくる。妙なリアリティがあるんですよね。

映像も脚本も好みでした。2はこれに輪をかけて名作だという話なので楽しみ。 

パラドクス

f:id:baumkuchen:20210516152535j:plain

ポスターがサイコホラーとかスラッシュホラーみたいですが、こんな人は出てこないし、こんなシーンはありません。

古くは「Cube」なんかを連想させる不条理系のシチュエーションスリラー。ループものなんですが、近年よく見る時間遡行のループではなくて空間がループする。

非常階段は1階の下に最上階が現れ、一本道は何度でも同じ看板とガソリンスタンドが現れる。そんな不可解な空間に囚われた人間たちのお話。

ループしているのは空間だけなので、時間は普通に経過する。食料などの物資は消費してもなぜか定期的に初期化されてもとに戻るので生存自体は問題なし。

数日、数ヶ月、数年。あるいは死ぬまで脱出できないかもしれない空間に監禁された人間の精神はどのような変貌を遂げるのか。個々の全く異なった振る舞いと、閉鎖空間・極小人数でも生まれる独自の文化、宗教じみたもの。思考実験としてめっちゃ面白い。あといかにも金かかってなさそうなのもいい。

一応ループの理由も説明されるけれど、まあ何の説明にもなっていません。元より超現実的なシチュエーションなので俺は全く気になりませんでしたが。

最近は少しづつ刻んで映画を観ることが多いのですが、これは最終的に一体どういうオチを付けるのかが気になって一気に最後まで。人によってはちゃぶ台ひっくり返すかもしれませんが。 

パラドクス [DVD]

パラドクス [DVD]

  • エルナン・メンドーサ
Amazon

エル・マリアッチ

f:id:baumkuchen:20210516232106p:plain

俺が愛して止まない痛快クソバカB級ガンアクション「デスペラード」を含むマリアッチ三部作の一作目。

ギターケースに銃を詰め込んだ殺し屋と勘違いされたギター弾き(マリアッチ)の兄ちゃんがギャングに命を狙われて追いかけ回される。

相当シンプルでありがちな筋書きなのにちゃんと面白くなるのが監督の力量、画作りの妙というやつなのでしょうかね。ザラザラのグレインノイズがメキシコの乾いた町並みによく似合う。

明らかな低予算映画なので続編2作のような派手なガンアクションはありませんが、必死で逃げ回りながら、時には敵を返り討ちにしていく、本当にただそれだけの映画がちゃんと面白い。

主人公がアントニオ・バンデラスじゃないのでデスペラードの原型になる別の話なのかと思ってたんですが、改めてデスペラードを見直すと設定上は同一人物っぽいですね(この映画での出来事を夢に見るシーンがある)。バンデラス自身がギターケースに銃を詰め込んだ「エル・マリアッチ」となるまでの前日譚。

このときはちょっと幼さの残る顔をした気のいい青年なのに、一体何喰ったらバンデラスに成長してしまうんだと思うと笑いが止まりません。 

前の

一覧