理不尽無理ゲーやりこみRTA「コンティニュー」他 ー 最近観た映画の感想

武器人間

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B級ホラーかくあるべし。ナチスお抱えのマッドサイエンティスト謹製・面白クリーチャーがソビエト兵に襲いかかる!!

もうナチスって言っときゃ何やってもいいだろってぐらい雑に扱われるB級映画界の万能食材・ナチス党。しかしながら本作ではトンチキ兵器×人体実験というお題があまりにもマッチしております。 

「おはよう!」「オッスオッス」「おかわり!」ぐらいの軽いノリで機械と人間の悪魔合体、というかニコイチにされたクリーチャー兵器が次々登場、ソビエト兵は戦い、そして逃げ惑う。

ほぼそれだけの映画ではありますが、博士の趣味だけに振り切って設計された実用性皆無のクリーチャー兵器は鉄分多めで悪趣味カッコイイ。

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これは公開時に先着でもらえたポストカードだそうで。超ほしい。

まあとにかく博士がウッキウキでバケモン量産しているのを見ると、これはまんま監督の心境を写してるんだろうなあと思います。こんなん作るの楽しすぎるだろ。

部隊の一人が記録映像を残しているという体のPOV映画なので、クリーチャーが出るときほどカメラが揺れがちでじっくり観察できないのが残念なのですが、脚本にもちょっとした捻りがあり、クソ野郎にきっちり因果応報が行く結末はどっかで観たことあるような気がするものの、結構好き。まあクソ野郎以外も大体死にますけど。

なお博士だけは最期までずっとウッキウキです。

グロは大分少なくて大体は安心して観られるんですが、時折生身の脳を出したがるので、その辺り苦手な人はご注意を。(俺は苦手です)

あとドイツ人もソビエト人もみんなめっちゃ英語で喋ってんのに、アイン・ツヴァイ・ドライだけ唐突にドイツ語になって字幕出るのがアホっぽくて面白かったです。 

武器人間

武器人間

  • カレル・ローデン
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コンティニュー

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最近本当によく見かけるようになった死に戻りループものなんだけど、これは本当に面白かった。

ある日突然、次から次へと殺し屋に狙われるようになった主人公は、必ず殺されて終わるその一日をなぜか何度も繰り返す。銃殺・墜落・首チョンパ。殺されると寝起きをマチェットで襲われる最悪の目覚めまで時間が巻き戻る。

フランク・グリロ演ずる主人公は元デルタフォースの戦闘のプロ、かつ映画が始まった時点で既に100回以上のループを経験済み。朝起きてからの一連の流れはアクションゲームで言うところの「パターン化」が完全にできており、ゲームのやりこみ実況解説のような異様にテンポのいいアクションが展開されます。

『マトリックス』のキアヌ・リーブスは超人的能力で弾丸を回避しましたが、本作のフランク・グリロは何度も死んで覚えた「安地」でくつろぐ。反射ではなく経験と学習によって成される落ち着き払った無双アクションが超楽しい。

それでも死に続ける難所を少しづつやり方を変えて試してみる、あるいは無限に繰り返される時間を利用して地道に訓練することで乗り越える。

『コンティニュー(原題:Boss Level)』というタイトルや昔のアーケードゲームのようなフォントといい、明らかにビデオゲームを下敷きにしながらも、全くゲームの話になっていないあたりもとても良い。

ゲーム的演出といえば『スコット・ピルグリムVS.邪悪な元カレ軍団』を連想しますが、1UPアイテムが現実に現れたり、格闘ゲームのような必殺技を繰り出す『スコット~』と違って、こちらはプレイスタイルがゲーム的なんですよね。随所で「あるある」と思わせてくれるのが本当に上手い。

加えて離れて暮らす息子とのコミュニケーションはゲーセンでの対戦プレイとか、もう本当にゲーム好きすぎだろこの映画は。ゲームをテーマにしただけのクソ映画とは比べ物にならないくらい「ゲームらしさ」を丁寧に扱っていると感じます。

殺し屋軍団のキャラ立ちっぷりもいいし、最終的にただの攻略からRTAになって彼らが雑にスキップされるのも、もう本当大好き。

結末があっさりしすぎで余韻がない、みたいな感想をいくつか目にしましたが、グリッチを駆使したRTAなんてそんなもん(なんの脈絡もなくいきなりエンドロールが始まる的な)なので、俺はそれも含めて「それっぽい」なあと感じました。

ゲームそのものではなく「ゲーム的なるもの」の映像化として満足度高し。 

ピエロがお前を嘲笑う 

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小物ハッカー集団が小物扱いにキレて大きなヤマを仕掛けたら大事になってしまい慌てふためく映画です。

ハッキングって画が地味なので、フィクションのスーパーハカーさんは無闇に大量のウィンドウを開いたり、自作の攻撃プログラムに「よーし、良い子だ」とか呟きがちなのですが、本作ではそういう定形表現がなくて良かったです。

地道なソーシャルハッキング主体だったり、ダークウェブのフォーラムでのやり取りをメトロ内に集まるアバターで表現するのもいいですね。

一方で、この映画の売りらしい(知らずに観た)「100%見破れないトリック」なんですが、俺は全くもって気に入らないというか、「騙された!」という気持ちがこれっぽっちも湧きませんでした。それをやる合理的な理由がなく、トリックを仕掛ける事自体が目的になってしまっているように思えるので。

この先はオチについての不満を書きますので、ネタバレが嫌な人は先に観てください。 

じゃあ書きます。

この映画のトリックは

  1. 主人公ベンヤミンが証言するハッカー仲間は実はベンヤミンが作り出した多重人格であり、実在しない
  2. と、捜査官に思わせることでベンヤミンは証人保護プログラムの適用外となり、気の毒に思った捜査官が5分間だけ警察のデータベースへの侵入を許可、自己の情報を書き換えることで単なる証人保護以上の自由を得て(でないと1.で単独犯だと証言しない理由が分からない)仲間と逃亡する

の2段オチ。

なんで作戦が警察の同情ベースなんだよって話だし、捜査官もそんな理由でハッカーに侵入を許すんじゃないよ。

100%騙される、ってそりゃ見破れないよ、必然性が全然ないんだもん。仕掛ける意味のないトリックでドヤ顔されても困るわ。

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