「ピクセル」観てきた

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予告の時点で嫌な予感はしてたんだ。でもゲーム好きとしてはやっぱ観ずにはいられなかった。字幕派だけど、時間が合わなかったので吹き替え。

うん、この映画、俺には合わなかった!! twitterで検索すると褒めてるツイートが大多数なので、面白い映画なんだと思いますよ。俺には合わなかったというだけ。そして今、もんにょりとした気分でこれを書きはじめているわけです。

注・貶します。だいぶ貶します。

 


嫌な予感というのが何かといえば、何度も見せられたパックマンのシーン。開発者の岩谷教授が「父親」としてパックマンに話しかけ、右手を食われる。劇場版の予告ではほうほうの体で逃げ出しながら「このバケモノを殺せ!!」発言のおまけつき。

聖人君子ぶった人間が豹変するというギャグ。感動のシーンと見せかけて殺伐に持っていくというギャグ。こういうのはよく見ますけど、俺はこの手のベタネタが大っ嫌いだということを自覚しました。これの何が面白いの? 指を食いちぎられてもライオンをかばった畑正憲を見習えってんだ。

「ゲーム愛」だとか「日本へのリスペクト」ってワードをチラホラ見るけれど、実在の開発者をこんなボンクラに仕立ててしまう描写のどこに愛やリスペクトがあるというのだよ。

さらに教授の説得を見てる奴が「感動のシーンだ……」とかつぶやくのね。セリフで状況を説明するのは映画の演出としちゃ下の下なんじゃないですかね。どうなの詳しい人。 

予告編はそれを「見どころ」として取り上げているわけで、あんまり期待はできないな、とは思ってましたよ。でもうまーくカットを繋いでぜんぜん違う話に見せる予告詐欺ってのもあるじゃないですか。実際観たらちゃんと予告どおりだったんですけどね。ちょっとした小ネタをあえてピックアップしてるのかと思ったら、全編このノリ。登場人物にノータリンしかいねえよ。

 

以下、ネタバレあり。

 

まず主人公チームの「アーケーダーズ」が全く好きになれない。冒頭1982年のシーンで、子供の頃に夢中で遊んだアーケードゲームの描写があるのはいい。でもなんでそれを女の子から巻き上げた小銭で遊ばせる? 不愉快でしかない。

そして現代、大人になった彼らはさらにひどい。祖母に「うるせえババア」と怒鳴り散らす糞ナードに、尊大なだけのハッカー。比較的まともな主人公のブレナーもヒロインに袖にされた腹いせに煽り倒すような超小物。そんな素直にオタクの嫌な部分を盛り込まなくていいんだよ。

「19歳、シナモンという名前のピラティストレーナー」なんかも、それがアイコンとしてどういう意味を持っているのかは分かりませんが、「情弱」「スイーツ(笑)」みたいな無意味に見下した視点が感じられて嫌でした。2chまとめサイトを見に来たわけじゃないよ俺は。

 

全編に散りばめられたアメリカンジョークも笑えなかった。軍のお偉いさんが「Googleを殲滅しろ!!」とか喚きだすけど、馬鹿が馬鹿なことを言っててもギャグとしては薄ら寒いだけだし、ラドローが屈強な海兵隊の前でテンパッてハートマン軍曹ばりの演説をしてしまうシーンも痛々しい。大統領とイギリス首相の掛け合いに関しては「そのシーン必要なの?」としか思わなかった。何から何まで俺の感覚には合わない。

Qバートの「仲良くなって情報を引き出してから殺そう」だけはちょっと笑ったけど。

 

そして繰り返しますが、俺はこの映画にあまり「ゲーム愛」は感じませんでした。最新のゲームを遊ぶ子供に対して、パターンがないだの残酷だのとほざいてましたが、そんなのは「俺が若い頃は……」と説教たれるオッサンの戯言でしかない。ゲーム愛じゃねーよただの懐古主義だよ。

ゲーム愛というのなら、最新のゲームを子供と一緒に遊ばせて、そこから世界を救うヒントでも見出すべきだろう。「キャラの気持ちになるんだ」って子供に言わせるのは何というか、安っぽすぎる。

安いといえば、世界の危機も随分安かった。緊張感が全くない。建物は派手に壊されてるけど、人的被害が見えないのがその一因。指導者たちは登場すればギャグしかやってないし、ギャラガのトラクタービームでバラバラにされた人間は最後のドンキーコングで全員(3人)人質になってて、むしろ「ほかに被害者いねえのかよ!!」って心のなかで突っ込んだわ。あとは海兵隊員が一人だけセンチピードで粉々になってたか。そのぐらい。

ドンキーコングの終盤も、樽ゴロゴロ転がってきてるはずなのに突っ立ってるし。己の命と地球の命運を賭けているようには全く見えない。

おまけにプログラムをいじったチートがルール違反とされて総攻撃を受けているのに、最後の決め手は原作ゲームにないアクション。ドンキーコングはそんなゲームと違う。リスペクトって何だ。

おちゃらけたチームに世界を救わせるのはいいんだけど、いろいろと締めるべきところが締まってない。それが積み重なった結果として、「ゴーストバスターズ」の出来損ないみたいになっているという。

 

もちろん良かったところもあります。フォントとか。

あと、レゲーキャラが3Dになって動きまわるのはそれだけでワクワクしますね。だからゲームプレイシーンは概ね楽しめました。センチピードが一番良かったかな。

ネタはいいんだから脚本さえまともだったらと。もっと大真面目にやったほうが絶対面白かったと思うんだよなあ。

エンドロールも良かった。映画全編を2Dドット絵でおさらい。

このぐらいかな。主にフォントが良かったですよ。

 

結論

「シュガー・ラッシュ」観ようぜ。