『ベイビーわるきゅーれ』に最高すぎるアクションを見た ー 最近観た映画の感想

オールド

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初シャマラン。『シックス・センス』も観てません(オチは知ってる)。

超スピードで加齢する謎のビーチに置き去りにされたリゾート客たち。脱出方法を模索する間にも一人ひとりと死んでいく、というスリラー。

仕掛けは「加齢」一本で超シンプルなので、予告を観て想像したそのままの映画でした。人の一生がビーチで超加速。よってトラブルも2時間弱の映画に超圧縮されて発生しまくります。

髪や爪が伸びない理屈とか、排泄はどーなってんのとか、成長した子供たちが異様に賢くなってるとか、細かいツッコミを入れようと思えばいくらでもできてしまうのですが、そこはどうでも良いんだよ、と分かってやってるんでしょうからいちいち指摘するのは野暮ってもんでしょう。

眩しい夏の日差しのもと、次にどんなイヤな事が起こるかとワクワクしながら観るのが正しい鑑賞態度だと思いました。言いたいこと、見せたいものはよく分かりますが、個人的には「人生の意味」とか読み取るほど深いメッセージ性を感じる映画ではないです(そういうレビューを見た)。

繰り返しますが、良くも悪くもびっくりするほど予告の印象そのまんまの映画なので、予告を見て面白そうだと思ったなら、その想像通りの映画が観れると思います。

あと、当然ながら子供はメキメキ成長するので、それに応じて演者が入れ替わるのですが、「年取ったらこうなりそう」という役者をスムーズにつないでいるのがすごい。

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こんなにアレックス・ウルフ(『へレディタリー/継承』のクソ兄貴)に成長しそうな子供をよく見つけてきたな、という感想に尽きます。

ベイビーわるきゅーれ

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邦画で。アクションで。低予算で。今年ベスト級の映画が来たことに俺は感動してるのですよ。何これ面白え! 邦画でこんなの観れんの!? っていう。

とにかくクライマックスのアクションのクオリティが無茶苦茶高い。高い身体能力を活かした超高速格闘!! 邦画でこのレベルのを観るのは始めてだわ。主演の一人、伊澤彩織さんはスタント出身っつーことですが、こんなんもうアクションスターじゃん……。

よく引き合いに出されている『ジョン・ウィック』シリーズの近接ガンアクションや『ザ・レイド』の打撃戦はもちろんのこと、個人的には『イップ・マン』シリーズの高速連打や『リベリオン』ラストの射線の捌き合いなんかも連想しました。

それぐらい多くの要素が一つの殺陣に込められて流れるように展開していく。それがワイヤーアクションや特殊効果なしに身体ひとつで繰り広げられるわけですよ。

俺、マーゴット・ロビーのハーレイ・クインを観るたびにこのキャラクターの強さに納得いかねえ、って言ってるんですが、それに比べてこの映画の説得力ったらねぇですよ。だって実際に素人には出来ないレベルの動きをやってんだもん。低予算だからこそ嘘や誤魔化しが無いことが明らかなわけで。(殺陣つけてる時点で虚構ではあるのですが)

しかも「アクションが最高」は単なる一要素にすぎません。脚本や演出、出演者の演技のレベルも相当高い。

一般人に紛れて生活している女子高生殺し屋コンビが、高校卒業を期に「表の顔」としての社会人と殺し屋の兼業を組織から指示される。ふたりはこれまで通り殺しのお仕事をしながら、自活生活やバイトなど一般社会に適応するために悪戦苦闘していく、というお話。

「市井に潜む殺し屋」って設定は結構ありふれていて、日本の作品だけでも古くは『必殺シリーズ』、今なら『ザ・ファブル』や『バイオレンスアクション』、女子高生殺し屋なら『デストロ246』なんてのもありますし、他にも枚挙に暇がない。

ちょっとゆるめの日常と、殺し屋稼業のギャップを描く。うん、よくあるある。よくあるんですが、本作は日常の比重が非常に大きく、かつ「日常系」作品としてのクオリティまでもが異様に高い。

器用にそつなく人付き合いをこなして社会に適合していく「ちさと」と、コミュ障でバイトも決まらない「まひろ」という正反対のキャラクターの同居生活。「殺し」と「日常」に境界のない生活の中での掛け合いや、世の中のちょっとした生きづらさ、正反対のふたりの仲違いや仲直りなど、自然に軽妙にコミカルに描く。

アクションはまひろ役の伊澤彩織さん(と、ラスボス役の三元雅芸さん)の独壇場でしたが、日常パートはちさと役の髙石あかりさんが素晴らしい。

他人と絡むシーンが一番多いから目立ちやすいというのもありますが、とにかくこの映画の土台とも言えるギャップ・二面性といったところを見事に体現。

凶暴性をむき出しにする演技、ピンチに「スン」と冷静に振る舞う演技、ちょっと多動症っぽく相棒に絡む日常の演技。表面上はうまく社会に馴染んでいるが、うっすら漏れ出すヤバさをきっちり表現しており、絶対「やらかす」のはこっちの子だと思わせて実際そうなるの最高ですね。

ちなみに一番好きなのは二面性とか関係なく最初のバイトで生クリームの盛り付けにいっぱいいっぱいになってるとこです。

悪役やサブキャラも大変良い味でして、特に組織の事務方とのやり取りや「掃除屋」に説教されるところなど、殺しと地続きの異様な日常を脱力感と共に馴染ませつつ、この世界における裏社会のありようを感じさせて非常に上手い。このまま『ジョン・ウィック』のコンチネンタルみたいに膨らませて、今後の作品と合わせて独特の殺し屋ユニバースを構成していったら面白いなと思います。

よくある設定ながら、これまで見たことがないタイプの作品に仕上がっているのが素晴らしい。こういう気の抜けた感じというのは邦画ならではという感じがします。日本人は何でも日常系に仕上げる習性があるしね。

惜しいのは、台詞が聞き取りづらい部分が多々あること。まあ邦画にはありがちな話ですが、もしディスクが発売されるなら(ていうかしてくれ。買うから)価格が上がってもいいから日本語字幕をつけて欲しいところです。

しかしコレ撮った阪元裕吾監督が25歳と知って思わず声をあげるほど驚いたのですが、こうやって若い人が頭角を表してくるの最高ですね。出演した役者さんたち共々、ぜひとも売れていっていただきたい。そうすれば今後20年30年と楽しめるから。

フリー・ガイ

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犯罪ゲームで襲われるだけのモブキャラ銀行員、「ガイ」がプレイヤーに恋をする。決まったルーチンで動くだけだったはずの彼のAIには変化が生じ、やがてゲーム世界を救うヒーローへと生まれ変わっていくのだった。

死ぬほど前向きでいい映画だと思いますよ。「人はなりたいものになれる」的な。ただ『ベイマックス』のときにも思ったけどディズニー流のクソポジティブな映画はのど越し良すぎて俺はうまく味わえないのですよねえ。20世紀フォックスもすっかりディズニー色になったもんだ。

大迫力のカタストロフが繰り広げられても「ゲームのデータだしなぁ……」って思っちゃう。仲間との別れも「この映画なら後で復活するだろう」と確信できて、実際そうなるし、悪役は最後に打ちのめされるためだけに愚かな行動ばかり取る。

ずっと「予定調和」って言葉が頭にちらついて素直に楽しめなかったというのが正直なところ。こういう綺麗な映画は夢いっぱいの中高生が観るべきだな。普通に面白いですよ。普通に。

あと現実側から見たゲーム画面が中国スマホゲーのクソ広告みたいなのはものすごく面白かったです。

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