人とウサギの心温まる殺し合い「ピーターラビット」他 ー 最近観た映画の感想
諸事情につきしばらくブログ書いてなかったんで、全然「最近観た映画」じゃないんですが。
ピーターラビット
ピーターラビットといえば以前から原作のキャラクター紹介がなかなかにロックだということがWeb界隈で話題になってはいました。
その辺忠実に映像化してくるとは思わなかったよね。
「ウサちゃん大好き♡」なヒロインのビアと、隣に引っ越してきたトーマス。いい感じに意識しあう二人の仲を引き裂こうとガチのトーマス殺害計画を立てるウサギのピーターのお話です。イカス。
ピーターの策謀でトーマスは2回ほど本気で死にかけるし、トーマスはトーマスで軽く心を病んでいるので害獣のピーターを駆除することに一切の躊躇がありません。結果、絵本原作とは思えないハートフルな殺し合いが展開されます。
「トムとジェリー」を連想していただければそれに近いと思います。「なんだ、微笑ましいじゃないか」って思います? あのアニメが「仲良くケンカしな」なんて言ってられるのはトムが何をやっても死なないからであって、ジェリーの悪意と殺意は半端ねえですよ実際のところ。あのドタバタ劇を普通に殺したら死ぬ人たちがやってると思えばこの映画のバトルシーンの深刻さはお分かりいただけるかと思います。
映画のキャッチコピーは「ケンカするほど、好きになる」。
1ミリも好きにならないどころかみるみる憎悪が募ってバトルが過激化したあげく最終的にはヒロインの家が半壊するんですが、担当者は一体何を思ってこのコピーを書いたんでしょうね。
人物相関図を書けばトーマスとピーターの間は揺るぎない「殺す」の相互矢印で結ばれるわけですが、話が進むにつれてビアからトーマスへの矢印が「ちょっと気になる」から「狂人」に変わるあたりも見どころのひとつです。
デッドプール2
面白かったし、1より評判いいみたいなんだけど、俺は1の方が好きかなあ。ダルいオリジンストーリーを差っ引いても俺は前作冒頭のアクションシーンが好きすぎる。
今回チームを組んだおかげであんまりウェイドの活躍するアクションが観られなかったというのと、メインヴィランのジャガーノートが強すぎて歯が立たないのでいまいち爽快感がないこと、そもそもジャガーノートはオマケでファイアフィスト君とのちょっといい話がメインになっていること。
ちょっといい話、というのは1も同様なんだけど、今回ウェイドがいい子すぎて「無責任ヒーロー」でも何でもないのだよね。その辺を無理に残虐描写で埋めているような気もしてちょっとちぐはぐな感じ。あと俺はデッドプールとケーブルのバディアクションが観たかった。
とはいえ、とめどない小ネタの応酬には磨きがかかっているし、オリジンに尺が取られない分、アクションシーンも大幅増量。チームメンバー募集の面接からチーム壊滅の流れとかすげえ好きです。
エンドロール後もこの作品ならではのやりたい放題で最高でした。
スリー・ビルボード
「なんか聞いたことある」って理由だけで概要も知らずに飛行機の中で観たんですけど、最初から最後まで全く目が離せない映画でした。
娘をレイプされ殺害された母親が、進まない警察の捜査に業を煮やして道路沿いの貸し看板に警察署長を批難する声明を出す。あまりにも目を引くそれは即座にニュースになり、事件は瞬く間に世間に知れ渡る と、導入からいきなり面白い。
そこで警察の堕落だとか汚職と孤独に戦う母親、的なお話かと思いきや、警察は警察で真摯に捜査はしてるんですね。で、名指しで叩かれた署長(いい人)だとか、彼を慕う警官、貸し看板を出している広告屋などといった人間関係が、狭い田舎町でゴリッゴリにこじれていくという。
こういう風に書くとあんまり気持ちのいい話ではないですが、事のおこるテンポがいいのと、登場人物の誰をとっても心情はよく分かるので、事件そっちのけでやってやりかえして、という流れにある種の爽快感があるのです。
結末を曖昧にするラストは賛否があるようですが、俺は好き。犯人が捕まるかどうかよりもその前の相互理解と赦しが描きたかったんだろうなと。ここにも謎の心地良さがあります。
バットマン&ハーレイ・クイン
これも飛行機の中で。カートゥーンネットワークな絵柄のアニメ映画。日本で観れるアメコミアニメはTVシリーズも含めてマーベルよりDCの方が充実してる気がする。
最新アニメなのに、何故か感じるノスタルジー。
ポイズン・アイビーとフロロニックマンがなんか企んでいるので、ヴィランをやめてカタギに戻ったハーレイ・クインの手を借りて止めましょう、という話。
バットモービルの中でハーレイ・クインがした屁に悶絶するバットマンと、最後にバーンと出てきて何もしないスワンプシング、フロロニックマンに散々苦戦したあげくに「あいつ植物だから火つけりゃいいじゃん」で終わるオチぐらいしか覚えてない。
スーパーどうでもいい内容なんだけど、こういう全然頭使わない映画って飛行機の中で観るのに丁度いいんだよね。
ニンジャバットマン
図らずもアニメバットマン2連続。
バカだなお前らは!!(制作陣に向かって)
の一言で片付くやつなんで、お好きな方は観に行けばいいと思うんですが、それだけじゃ何のことか分からない諸兄へ簡単に説明すると、日本の戦国時代にタイムスリップしたバットマンと、各地の有力大名に取って代わり群雄割拠を演じているスーパーヴィラン達が戦う話です。
観れば一発でどういう映画か分かると思うので、公式の本編映像貼りますね。
バカだなお前らは!!(制作陣に向かって)
この動画ものすごいネタバレなんですけど、まあ大丈夫。本編でこの辺観る頃には何もかもがどうでも良くなってるから。
制作は神風動画。ジョジョ3部のオープニングとポプテピピックしか知りませんが、ジョジョのクオリティからの期待を全く裏切らない。キャラデザもアメコミとジャパニメーション両方のいいとこ取りをしたような、超俺好み。
この格好いいキャラクターたちを動かして、序盤からバリバリに眼福なアニメーションが展開されます。
が、大きな欠点もありまして、これずっと観てると胸焼けしてくるんですよね。「何もかもどうでも良くなる」というのはそういう理由。
観せたらおじいちゃんが処理落ちしそうな映像がガシガシ詰め込まれてるんで、中盤以降は感覚が麻痺してきて超絶アニメーションに対する感動や興奮といったものが目減りするという現象が起こります。何とも勿体無い。これ30分3本に分割してTVシリーズとして観たいわ。
加えて、ストーリーは虚無に等しいので、映画というより長い技術デモを観ているような感じではあります。とはいえ、高い技術力をただ眺めるというのもそれはそれで楽しいものです。