神の啓示を受けたおっさんがレンチで人を殴って回る映画 ー 最近観た映画の感想

ゾンビランド:ダブルタップ

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ゾンビランド』から10年ぶりの続編。作中時間も10年経過。

ゾンビ禍により荒廃した世界で仲間となった生存者4人は10年後も楽しく生き抜いていた。ホワイトハウスに安全な居を構え、愛車をいじり、本を読み、時折ヒャッハーとゾンビを狩る。

もはや生活の一部なのでゾンビ退治は全員手慣れたもの。どうしたって必死のサバイバルになってしまう他のゾンビものと違って余裕のあるアクションが小気味良い。

疑似家族として暮らしている4人の「末の娘」であるアビゲイル・ブレスリンが外に男を見つけて出ていってしまい、それを連れ戻しに行くというのがストーリーの軸になっているのだけど、男がバークレー出身の非暴力主義者と聞いてブチ切れるウディ・ハレルソンが面白すぎてここだけ何度も観てしまう。

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爆発寸前、過呼吸気味でいっぱいいっぱいになったこの表情よ。これだけで無茶苦茶笑えてしまった。演技が上手すぎる。

ウディ・ハレルソンはタフガイであることを誇りに思っているタイプの典型的アメリカン頑固親父。アビゲイル・ブレスリンのことは実の娘のように可愛がってはいるが、それゆえに年頃の娘からはウザがられてしまうという、10年間でしっかり家族をこじらせている描写がとてもいい。

相棒のジェシー・アイゼンバーグは理屈っぽいナード男だけれども、正反対のタイプのウディ・ハレルソンと馬が合う。今作ではこの二人のコピペみたいなタフガイ&ナードコンビがもう一組出てきて、互いに相棒を自慢し合ったりサバイバルのルールを披露し合ったりで意気投合する。ここも男2人がめっちゃ仲良いのが分かって良し。

あとはファミリーワゴンに我慢がならないウディ・ハレルソンとか、エルビスのコスプレではしゃぐウディ・ハレルソンとか、とにかく今回このおっさんが面白すぎてもう最高でした。エマ・ストーンはちょっと存在感薄かったな。

前作同様、意味のない雑談をしながら夜通し運転するロードムービーのカットも好き。いまだにビル・マーレイネタを引っ張ってたりして、前作を観ていればなお楽しい。良い続編だと思います。

ザ・スーサイド・スクワッド ”極”悪党、集結

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前作はクソつまんなかったんですが、続編はジェームズ・ガン監督でR15+ということでめちゃくちゃ楽しみにしておりました。邦題はダサいと思います。

流石の手腕で、とにかく出だしから異様にテンポ良く進む。

やたらと多いヴィランや、特別チームであるスーサイド・スクワッドの立ち位置・ミッションをあっという間に説明しつくす。

そしてババーンと格好良く合衆国国旗の前に集結させて、いわゆる「Gメン歩き」をさせてからあっさり全滅させて人員整理する。多いと思ったんだよ14人て……。 

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ただマッハで死ぬ人たち含めて格好いいイラストアイコンが用意されてて、これを見るだけでも分かる通り、みんなばっちりキャラ立ちしてんのですよね。半分以上をあっさり使い捨てるこの贅沢さ。

誰が死ぬかで賭けをしている司令部スタッフとか、前作では描かれなかったゲスい描写がいやが上にも期待を高めます。ディズニーの軛から解き放たれたジェームズ・ガンのやりたい放題を観に行く映画です。

誰が序盤を生き残って活躍するかは予告やポスタービジュアルからお察しなのですが、デッドショットとハーレイ・クインばかりが目立っていた前作と違って、チームの全員を万遍なく活躍させつつ、最後は予告の「ヤベー怪獣」でしっちゃかめっちゃかにしてから締める。

インパクト抜群の導入と終盤の突き抜けたバカバカしさで、最初から最後までずっと楽しい。悪役チームらしく躊躇のない残虐描写や不謹慎ギャグもキレが良いし、ジェームズ・ガンはR15+でやらせてもらえるDCに行って本当に良かったと思う(『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー3』も楽しみだけども)。

ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』の感想にも書いたようにハーレイの格闘戦の強さには相変わらず納得がいかないし、悪党は悪党らしくもっと身勝手な理由で世界を救って欲しかった(無茶振りだとは思うけど、ジェームズ・ガンならうまくやるかも、という期待はあった)というのはあるけれど、サメのナナウエたんが大層可愛かったので個人的には全部許した。

スターロ大王も「よいしょ」って感じの足運びがとてもキモ可愛らしく、グッズ売り場ではこの2人のポストカードを買いました。数え方は「2人」でいいのかこれ。

スーパー!

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スーサイド・スクワッドが楽しみすぎて、同じジェームズ・ガン監督作品のDVDを注文していたのでした。届くのが遅れて観る順番は逆になりましたが。

神の啓示を受ける幻覚を見たおっさんが手製のスーツに身を包み、ヒーロー「クリムゾンボルト」として悪党を巨大なレンチでボコって回る、ポップでたのしい暴力映画。

バットマンのような金も力もない、冴えないおっさんが自己認定した悪をたどたどしくブッ飛ばす。ヴィジランテ系ヒーローがどれだけ頭がおかしいかを見事に戯画化しています。

薬の売人、ひったくり、児童買春、行列割り込みなどの悪党に忍び寄り、死角から鈍器で殴り倒すヒーロー。悶絶する悪党。ドン引きするギャラリー。

Q.「なんでアンパンマンは技名を叫ぶの?」

A.「アンパンマンが無言でばいきんまんを殴り倒したら子供が泣くだろが」

を地で行くやつ。

同じく素人ヒーローものの『キック・アス』は、やがて本物の悪党と敵対して真のヒーローとなっていく物語でしたが、クリムゾンボルトのヒーロー活動は基本的に最後まで通り魔です。

「神の啓示」によって暴力をふるって回るクリムゾンボルトは平たく言って単なる狂人なのですが、ヒーローマニアの女がサイドキックの「ボルティー」として加わることで活動はさらに暴走。

彼女は正義の名のもとに人をぶちのめしたいだけなので、物語の中盤からはクリムゾンボルトはまだ良識がある方だったと分かる最悪のチームアップが誕生します。

そして最終的にはガチな裏社会の人間と本気の命の取り合いになるのですが、ガソリンで火だるまにしてからメッタ刺しとか、手製の爆弾で人間を粉々に吹き飛ばすとか、素人ゆえの過剰な殺し方が普通に怖ぇという。

通り魔同然だったヴィジランテがやがて真のヒーローになるのではなく、「すげえ通り魔」にクラスチェンジする物語。

スーサイド・スクワッドでも顕著だった残虐かつポップな演出やギャグはこの頃から健在で、ブラックではあるけれど笑えてしまうし、B級らしい(不謹慎な方面の)爽快感もばっちり。主人公がささやかな幸せと心の平穏を手に入れるラストも哀愁に満ちていて良いですね。

何でコイツ捕まらないんだろ、とは思いますが。 

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