注意
- このエントリーはポッドキャスト「映画の感想をふたりでダラダラ喋るやつ」の当該エピソードを文字起こししたものです
- 読みやすいように音源を要約・補足しています
- 思いっきりネタバレしている上に、映画を観ていないと何言ってんだか分からない記事です
話がとんでもない方向にぶっ飛んでって面白かった。
なんかすごいシュールだったね。
めっちゃ大暴投したブーメランが、ちゃんと手元に戻ってきて終わった感じというか。死の象徴というか、もうそのまんま死神であるところの「終わりの鳥」。
を、食べたオカンが終わりのジャイアントオカンになると思わないじゃん。
そうね。
wwwwwwwwwwwwwwwwww
看護師さんが入ってきて、まず一言目が「どういうことなの?」って。
「本当にな!」ってなるよね。
もう字幕が適切すぎてびっくりしました。
なんか、「そっちかー」ってなったよね。
「そっちかー」だよね。
意外と終わりの鳥が話せるやつでさ、死を目前にした少女との交流で仲良くなっちゃって、でも殺さなきゃいけなくて、みたいなアンビバレンツな話になるかと思ったら、母親が乱入して。そこからがもうね、個人的にはすごい面白かった。
そっちが主役でしたかーって感じ。
最後のエンドロールもさ、あのお母さん役の人が最初に名前出てきたでしょ、多分。
結局のところ「大切な人を失ってもそれでも人生は続くのだから、立ち上がって何とかしなくちゃね」っていうお話ではあるんだけども、途中過程がやばすぎでしょこれ。
「何食ったらこんな話を脳から引き出せるの?」って。わかんないってなった。
最初の、小粋なジョークで鳥を和ませて笑い合ってっていうのはね、落語っぽいなって思ったんだよね。
落語ですか。
実際に「死神」っていう噺だとさ、口のうまい男が死神を利用して、みたいな噺で、最後は自分が死ぬ羽目になっちゃう。
あとちっちゃくなった鳥を手の中に入れて、っていうのはさ、日本昔話でも海外の童話でも鬼やら悪魔やらを騙して小さくさせてパクッと食べちゃうみたいな話あるじゃない。
『三枚のお札』とかでしょ。
『三枚のお札』は違くない?
和尚さんがうまく騙くらかして、「そんなにでかくなれるんだったら小さくもなれるんだろう」って。「おや、できないのか? やってみろ」って。
「ムキー!」って小さくなったところを食べてたお饅頭にコネコネして食べるっていう。
『三枚のお札』のオチがそれだったっけ。
逃げるときに三枚のお札を切り切っても逃げられなくって、最後和尚さんに泣きついてっていう話だったと思う。
豆にして餅に包んで食べちゃったとか、そういうオチの話っていっぱいあると思うんだけども、そういう方向に行ったりするのかなとは思った。
本当に食べると思わなかったけどね。
洋画でそういうのって初めて見るかもしれない。
海外の童話でも与しやすい相手に変身させてやっつけちゃうって話はあったと思う。
で、あの、デス(終わりの鳥)さん。結構愛嬌のあるやつじゃないですか。
そうですね。
ね、喋ると気さくだしさ。
長いことね、人と喋ってなかったからなかなか言葉出てこないっていうの、「あ、わかる」ってちょっと思ったんだけど。
でも「やらねばならぬ、やらねばならぬのだ(命の刈り取りを)」って感じでさ。
死神的にも人の命を刈り取って回ることは義務ではあるんだけど、気は乗らなくて、だからパニック障害を起こしたり、呼吸が荒くなったり、なんかぼやっとしちゃったりとか、小さくなったり大きくなったりって不安定なんだけど。
そうね、紀元前からずっとやってるっぽいけれども。
(歴史上の人物写真を見て)「あ、こいつ知り合い」「こいつろくなこと言わないよね」とかそんな事言ってて。
で、「どういうことなの?」のところに戻るけどさ、もう世の中が大混乱になってる中を必死で走って逃げてきて、ドアに駆け込んだら、精神的にいっぱいいっぱいになってる巨人がこっち見てるってめちゃめちゃ怖いよね。
なんかさ、外も中も質は違うんだけど、どっちもパニック起こってて。
要するにデスさんが仕事できなくなっちゃったから、死という概念がなくなって、みたいな感じで混乱してたんだよね、きっと。
そう、死んで消えていかねばならないっていうのがなされてない状態なんだよね。だから、命がなくなってておかしくない状態の生き物が跋扈している。
そうなんだよね。ただ、それより前のハエが大量発生してたりとか、公園で「助けてくれ」って声かけてきたおじさんとか、あの辺はよくわからないんだよね。
ハエって何か、そこらへんのものに卵を産みつけて、ウジ虫がわいて、またいっぱい増えますよね。そのハエが増えたまま、死ななかったりすると、あんな風にどんどんどんどん渦を巻く程。
チューズデイと一緒に母を待ってて、その間デスさんが仕事できなかったから増えちゃったってことなのかな。
一日であのざまですよっていうことだと思う。
ああ、なるほどね。あとは公園でお母さんに話しかけてきた「助けてくれおじさん」なんだけど、あれジャイアントオカンが木の上で命を刈り取った人かな?
多分同じ人だと思う。
あと、両足なくなった警備員ジャケットを着た人? あのおじさんも一体何があったのかっていう。
わかんないんだよね、その辺が。
街の様子がさ、音とか様子を聞いてるとテロっぽく見えるんだけど、ただ何が起こってるかって定かにされないじゃない?
そうね、ただ阿鼻叫喚になってるってことだけがわかる、音で。ナース8号さんは生首の犬に追いかけられたとか言ってたし。
死の概念がなくなってるとはいえ、そうそう犬は生首にならないし、人の足もちょん切れないと思うんだけども、一体何があったんだ、とは思うよね。
ナース8号さんはさ、お母さんの携帯に「ナース8」って登録されてたわけなんだけども、母親は看護師にほとんど関心を持ってないというところが見て取れるじゃない? 娘の介護に対してもあんまり興味がない人なのかなと思ったのね。
で、実際に娘の側に居てやらないで外うろつき回ってて、仕事もしないでチーズ食って帰るだけ。
まあ介護疲れとかもあるんだろうけれども、そんなに子供を愛していない母親のように見えたんだよね、前半は。だけども最後は涙の別れじゃない?
そういう動きをとっちゃう母親の心境っていうのは何だったのかなっていうのを思った。
あれは娘の死に向き合いたくがないための逃避ですよ。
デスさんが来る前から死を予感してたってこと?
介護そのものからの逃避ってのもあるんだろうけれども。
チューズデイさん、最初の方って死にそうな人に見えなかったんだよね。
でもちょっとナース8号さんと庭に出てちょっとお喋りをするだけでもすぐ息切れしちゃう。ゼハー、ゼハー、ってちょっと喋るだけで息が荒くなってるし、デスさんにその絶えそうな息が届いちゃって「オムカエデゴンス」って来ちゃうぐらいには。
まあそうなんだけども、なんか血色も悪くないしさ、頬がこけてるでもないしさ、その晩に死ぬ人には見えなかったのよ、俺には。
見た目でそういうのが分かるケースと分からないケースってのは本当にあるからさ。なんかパッと分かりにくいけど、あそこは演技で、急に状態がね、悪くなって死んじゃう可能性のある子なんだなって私は思いました。
最初は24時間お母さんがつき添ってたんじゃない? で、金銭的に困窮して家具を売り飛ばしたっていうのは本当だし、仕事に身が入るかっていうと、それも難しかったんじゃないかと思うんだよね。
だからもう介護に倦み疲れて、もうどうでもよくなっちゃってる人のように見えたのよ、お母さんが。だからもう放置しちゃってるように見えたんだよね。
その目を背けていた娘の死に向き合うまでのストーリーなわけでしょ。だから、その母親側の心境は分からなくはないなって思ったよ。
なるほどね。
で、ジャイアントオカンになってからの話だけどさ、チューズデイさんを背負って各国を行脚するじゃない? あれ、終わりの鳥の能力だと思うんだけど、世界中ワープとかできるのかね?
オープニングの時の死の鳥さんっていろんな言語の人のところを渡り歩いてたし、ジャイアントオカンも明らかに近所じゃない所にも刈りに行ってた気がするよね。顔が半分焼けただれてる人とかさ、戦場かどっかじゃないのかなって思ったんだけども。
そうだったのかな。
そこにチューズデイさんを背負って、どうやって行ったんだろうなとね。だからデフォルトでワープ能力があるのかなと思いました。
あとチューズデイさん背負ってるとき、お母さん微妙に大きくなってるよね、多分。
まあね、大きくなった方が力持ちになっていいみたいな感じなんですかね。
「これをフルタイムの仕事にしたらどうかしら」って。
言ってたね。
ちょっと面白くなっちゃった。何言ってんだこの人はって。
波打ち際で、なんかチューズデイの遠くでさ、ペーって鳥吐き出して、話し合いが始まるじゃん。そこで仕事にさせてもらえないかっていう相談をしてたのかと思ったんだよね。
チューズデイが手振ると遠くからデスさんが手振るところとかさ、愛嬌があるんですよあの人。
愛嬌っていうか、なんかちょっとコメディみたいな感じがあるよね。
あとあれだね、チューズデイさんが亡くなった後、「様子を見に来た」って。
いい奴だよね。
いい奴なんですよ。そこでウイスキーを出すオカン。
ひどい。
テーブルで向かい合う二人っていうのがさ、『ウルトラセブン』のメトロン星人のシーンを思い出しちゃって。
ちゃぶ台だよね。
見たことはないけどシュールなシーンとして有名じゃない?
そうね。ミームとして知ってる。
で、その後ね、「飲んで」って。
デスさん飲もうとしても嘴が引っかかるからグラス持ち上げて……ガシャン!
オカンが「なるほど」ってwww
wwwww
「なるほど」じゃないんだよ。わかるじゃん。あんな入れ物に入れてさ。
で、その後話してるシーンでずっとひっくり返ったグラスがそのままになってるのがすごい面白くてさ。
「ちーん」ってね。
まあとにかく話がさ、明後日の方向に飛んでって、でも最後には最初の目的通り、チューズデイさんの命を刈り取って去っていくというところなんで、「あ、帰ってきたよ」ってなったんだよね。
俺はね、これ結構好き。
ハートフルまではいかないんだが、かといってすげー嫌な気分にもならない。なんかシュールな、サスペンス?
サスペンスでもスリラーでもホラーでもないね。しいて言うならヒューマンドラマ?
ちょっとコメディー味があって、なんか拍子抜けして笑っちゃうようなとこもあるし。
あと序盤なんだけど、この鳥の中の人、ニコラス・ケイジとかだったら私すごい腑に落ちるなって思ったのね。
君の中のニコラス・ケイジってそうなの?
前の白いやつ*1よりはオウム役ってなった方がね、ちょっとしっくりきそうな感じでしたね。愛嬌というか、なんというか。
予告も見なかったし、事前の情報も全然なしで観に行ったからさ、「こんな話ですか?」ってなってね。
予告見てないよね。チラシ見たかもしれないけど。
先週だか先々週ぐらいに初めてフライヤー見た。予告は見なかった。
見たかもしれないけど記憶にないし。
で、まあ案の定パンフもない、グッズもないって、ないない尽くしのあれなんですけど。まあなんかちょっとこう、ちょっと味がある映画でしたね。
死っていうのを、なんか刈り取る係の人がいてっていうタイプの世界観で、死という現象がなくなってしまった場合、世界がどのような状況になるのかっていう、まあ一種の思考実験というか、そういうのとして、ちょっと面白かったんだよ。
まあ思考実験は途中のパニックのシーンだけだけどね。
まあね。
そっちがメインではないよね。「人の死にどう向かい合うか」っていう結構普遍的なテーマ。
メインテーマはそこなのよ。
娘の死と向かい合える勇気というかさ、そういう気持ちのできないまま、モラトリアムじゃないんだけど、目を背け続けているってことに、どうやって向かい合うかっていう。
それがちょっと奇妙な死そのものが、オムカエデゴンスすることによって、具体的に向き合う。
確かにね、そこに現存する死が。
なんかどうやら幻じゃないみたいだっていう。
概念じゃなくてね、チューズデイだけに見えるものでもなく、誰からも見える死がそこに。
最初こそ、生い先短いチューズデイちゃんが見ちゃった幻で、イマジナリーフレンドみたいなやり取りでほっこりするっていうか、『千夜一夜物語』とかさ、あんな感じでやり取りをしていくとか、そういう話なのかなと思いきや、母ちゃんが出てきて「そっちかい!」って。
「効くよ……? 物理。」って。*2
本当に物理が効いてたもんね。
燃やせるし。
叩いて潰して、飲んじゃってっていう。
なんかオカンがこう、異形のものになっていくみたいな話かなと思ったけどね。
いや異形ではあったけどさ。
異形の出方が凝ってないんだよ。大きさなんだよね。
大きさだね。雑で面白かった。
こんだけとんでもない方に大暴投されてるけど、思いのほかシンプルな話で。
何でしょうね、生活に入ってくる闖入者的なイメージで『ドラえもん』とか『オバQ』とかね、そういうのもなんとなく思い出したんだよね。藤子不二雄漫画。
なんか死神がこう、異種で、現実のものならぬ存在が入ってくるって話は結構ありそうなんだけどね。
なんかああいうオウムの死神みたいなのが何かであるんですかね。
南米あたりにありそうな気がする、なんとなく。
オウムまたはインコだよね。しゃべる系のやつ。*3
そう、声を真似るっていうところも話のポイントではあったからね。
「お前、チューズデイにこんなこと言ってたやろがい」って。
「お前、嫌な奴だな」って言われてたけど。
海でのやりとりを逐一聞いてたんだ。完全再現。
完全再現。そりゃ、逐一聞いてますよ、オカンの中にいたんだから。
耳の中に入ってるとか、ああいうシーン面白かったね。
大きくなったり小さくなったりっていうのを、画面の撮り方で表現してるんだけど、工夫でシュールな絵を作ってて、すごい面白かったよ。
なんかヒッチコックとかあの辺の映画っぽい感じになった。
昔の映画の工夫で撮ってるみたいな感じ?
これはこれでなんかいいもんだなって思って。
いいものを見ました。経験のひとつとして。