仏版シグルイ『最後の決闘裁判』他 ー 最近観た映画の感想

DUNE / デューン 砂の惑星

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古参SFファン待望の超大作SF小説、ついに(ちゃんとした)映像化! ってとこなんでしょうが、原作や今回の映像化にいたる歴史を知らずに観た俺にとっては正直退屈でした。

壮大な設定、中世と未来が混ぜこぜになった巨大機械やSFガジェット、複雑な設定に裏付けされたであろう美術の数々。映像としてはとても壮大かつ美しいんだけど、上映時間2時間半もあるのになかなか話が進まねぇので眠くなる。

たっぷり時間をかけて「俺達の戦いはこれからだ」で終わり。前後編か3部作かは知らないけれど、これが未完の「Part1」だなんて予告で言ってなかったじゃん、って思いました。ようやく話が動き出した、ってとこで終わるんだよなぁ。まあここまで付き合ったんだから次もたぶん観ますけどね。

正直なところ、後から観た『ホドロフスキーのDUNE』の方が数倍面白かったです。昔DUNEを映画化しようしたけど断念した経緯をアレハンドロ・ホドロフスキー監督が語るドキュメンタリー映画。ホドロフスキーというおっさんはいちいち頭のおかしい人で最高なのでおすすめ。

先にこっちを観とけば今回のヴィルヌーヴ版ももっと楽しめたかもしれない。

ホドロフスキーのDUNE(字幕版)

ホドロフスキーのDUNE(字幕版)

  • アレハンドロ・ホドロフスキー
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それはそれとして嫁さんに描いてもらったポッドキャストのサムネはお気に入りです。

「こんな感じで」とお願いしたらそんな感じになったと思います。ニャーン。

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死霊館

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実在した心霊研究家、ウォーレン夫妻の事件簿になる死霊館シリーズの1作目。

この頃『死霊館 悪魔のせいなら、無罪』の予告をやたら観たのでサブスクにあったこれを試しに観てみたんですが、エクソシスト系のホラーってあんまりピンとこないな、というのが分かっただけでした。

へレディタリー/継承』のときも思ったんですが、宗教観が違うせいか悪霊やら悪魔やらの恐怖があんまり伝わってこないんですよね。死霊さんも突然目の前に現れてビックリさせる以外にはポルターガイストぐらいしかやってこないし。

エクソシストものなら聖痕から吹き出す炎で着火した後、聖水をくべて丸焼きにするとか、聖なるメリケンサックで悪魔憑きを殴り倒すとか、そういうトンチキ除霊アクションに振ってくれた作品が好きですね。それはもはやホラーじゃないですが。

死霊館(字幕版)

死霊館(字幕版)

  • べラ・ファーミガ
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最後の決闘裁判

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これは非常に良かった。

久々に「よし、お前らみんな死ね」となるタイプの胸糞映画。そして俺はあんまり胸糞映画好きじゃないんですが、それでも「これは観て良かった」となる作品はあって、この映画はそれ。

夫の不在中に知人に暴行された騎士の妻。濡れ衣だと訴える知人の男。双方の訴えを受けて、戦い、生き残った方の主張が真実と認められる「決闘裁判」が執り行われることとなる。

それを娯楽としか考えていない狂王の御前で、命と名誉を賭けた果し合い。シチュエーションは完全に『シグルイ』ですねこれ。男が勝手に盛り上がって女が振り回されるあたりも含め。

3部構成で夫の視点、暴行した男の視点、妻の視点と同じ事件が3回描かれるのだけど、まあ男共がどちらもクソ野郎でして。「妻は夫の所有物」という価値観のもとで、妻の人間としての尊厳は徹底的に踏みにじられまくる。

男共がどちらも自分に都合よく記憶している出来事の真実を第3部では妻の視点で見せられる。彼らのクソムーブはどこまでも傲慢かつ身勝手、そしてシンプルにキモい。

「ああ……決闘で刺し違えて両方とも死ねばいいのに……」と間違いなく思えるこの手腕。そして決着後のジョディ・カマーの虚無としか言いようのない顔。

経緯も結果も最悪に後味が悪く、そんな気分に人を叩き込める名作と言えます。

あと完全装備の重騎士同士による決闘は大変に野蛮で迫力があって良かったです。

男の都合で国家に裁かれる人の顔。

9人の翻訳家 囚われたベストセラー

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世界的大ヒットをしたベストセラー小説の完結編となる第3作目。世界同時発売のために集められた9人の翻訳家は発売前のネタバレ流出を防ぐため、契約への合意のもと、外部への通信不可能な閉鎖環境にカンヅメとなり各国言語への翻訳を行うこととなる。

資産家所有の地下シェルターを流用した巨大な地下室はふんだんな資料に加え、豪勢な食事や娯楽も完備、出入りの不自由を除けば仕事をするには支障のない快適な環境。翻訳家同士も打ち解け合い、快調に翻訳が進みつつあったある日、極秘のはずの小説冒頭10ページがネットに流出、500万ユーロの支払いを求める脅迫メールが出版社社長のもとに届くのだった。

殺人事件ではないですが、シチュエーションだけで言えば「密室」で「館」なミステリー。こういうのはどんなに伏せようとしても感想にネタバレの匂いが乗ってしまうので余計なことは書きません。観ながら勝手に真相を想像して、それぞれ騙されたり見破ったりしましょう。俺はトリックや犯人の目的など、結構好きな感じのミステリーでした。

ひどいパワハラ野郎の出版社社長がどんどんダメージを受けていくたのしい映画です。

ポッドキャストはネタバレ祭りで感想言ってます。

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