巨獣が微妙に小さい「ランペイジ 巨獣大乱闘」他 ー 最近観た映画の感想

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「カメラを止めるな!」のネタバレがあります。

 ネタバレ厳禁と言われるわりには意外性はあんまりない映画だと思うのですが、たぶん、泣いた笑った怒った驚いたといった「人がどういう感情をこの映画に持つか」という点を知らずに観たほうが楽しめると思うので、未見の方は適当に回避してください。

ダンガル きっと、つよくなる 

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 インドの女子レスリング金メダリストとコーチのスパルタ親父のお話。実話ベース。

 アーミル・カーン主演だし、まあ外れはないだろうと思って観て、確かに面白かったよ。面白かったんだけどさあ。気に食わないことも山盛りだわこれ。

 レスリングでオリンピックのメダルを取りたかった親父が、自分の子供に夢を託そうとするも娘しか生まれず落胆。でもなんか娘が近所悪ガキと喧嘩しても勝つぐらい強かったので、急に目の色変えてスパルタトレーニングを始める、と。

 明らかに嫌がっているのに早朝から叩き起こしてランニングさせたり、女の子なのに髪を短く刈り込んで近所の笑いものにさせたり。BGMでは「お父さんやめて 私たち体を壊すわ」って歌詞が延々と流れ続ける。

 厳しい訓練からの小さな成功 → 躍進 → 挫折 → 挫折を踏み台にしての大成功と、サクセスストーリーのお約束はきっちり踏襲してて、ちゃんと面白いんですよ。谷が深ければ上り詰めたときのカタルシスも大きい、ってのも分かるんだけど。俺は正直不快。

 最後の試合前に親父が映画の主題っぽい良いことを言うんですよ。女性が抑圧される社会がどーのこーのと。それで逆にそこまでの苛立ちが固定化されちゃった感がある。「お前絶対それ後付けだろ」と。自分の夢を娘に押し付けたことへの言い訳にしか聞こえなかった。

 これ、最終的に娘たちが成功を掴んだから美談になってるけど、そうでなきゃ本当にただのクソオヤジですよこれ。

 あと、この「きっと、つよくなる」って邦題が明らかに「きっと、うまくいく」の二番煎じで内容に合ってないのも気に食わない。ひらがなで書くな。

 総じて「面白かったけど、嫌い」という、自分としても珍しい感想を持ちました。そもそも感動感動うるさいマーケティングは嫌いだし、単にスポ根が性に合わんのかもしれない。

 アーミル・カーンが作中で年取って、腹の出た中年男に変わっていく体作りはすげえなと思いました。 

カメラを止めるな! 

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 最高に面白かった。何行か後からゆるいネタバレ書くので嫌な人は目の焦点をずらしてスクロールしてください。

 ポスターで一目瞭然のゾンビものだという情報すら入れずに観に行ったので、序盤は逆に拍子抜けしたんですよね。「ゾンビ映画を撮っていたら、まさかのリアルゾンビが出てきてしまう」なんていうありきたりの話なのかと思って。

 でも、POVっぽいカメラのブレがあるのに、その視点がカメラを持ってるはずの監督じゃないので途中で第三者のカメラマンがいることに気づく。だから「そういう映画を撮っているという体の映画」というメタ構造自体は割と早い段階で想像がついたのです。

 めちゃめちゃ前評判が高かったので、そこからどうやって予想を裏切るか、あっと驚く結末に持っていくのか、ということを期待しながら観ると。

 もう全然予想通り。思った通りの構造が思ったとおりに説明されていく。

 のだけど、その「予想通り」がもう図抜けて面白いの。ぎこちない、駄作にしか見えない映画の背景にいったい何があったのか。演出だと思われた各シーンの真相が畳み掛けるようにこちらを笑わせにくる。

 作品が意図したものと全く違ったものになってしまう、という点で「ラヂオの時間」を想起させるけれど、あちらと違って出来上がった作品から入るので、後半がまるで答え合わせのようというか、作中感じた数々の違和感が爆笑を伴いつつスッと解消されていくのが気持ちいい。

 作品が変容してしまう原因が役者のわがままにあった「ラヂオの時間」と違って、あくまで原因は不可抗力である点も良い。あれも面白いけど、主人公の鈴木京香が可哀想で観てらんなくなるんだよね。

 だから、ただ面白いだけの「カメラを止めるな!」は偉大だと思うのです。

オーシャンズ8

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「はいはいオシャレオシャレ」以外の感想が出てこない。

 完璧な犯罪計画を立てて、うまくいきました終わり。といってその計画が特別面白くもない。バタバタと下準備を行って、本番は大したトラブルもなくサラッと成功する。

 仲間集めとか仕込みの集大成たる盗みのシーンになんの意外性もないし、そもそも犯人あっさりバレてる。周りが気を使ってお目こぼししてくれる犯罪映画て。

 スタイリッシュな女性を観て「女性がスタイリッシュだなあ」という感想を持ちたいときに観ればいいと思いました。 他に観る理由は思い浮かばねえわ。

ゲット・アウト

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 サイコホラーかと思ったら、なんかものすごい方面に話がブッ飛んで行って驚いた。

 真相をどれだけスムーズに受け入れられるかで怖さが変わりますね。急展開とともに俺の中からは現実味までブッ飛んでいってしまって、あんまり怖くなくなってしまいました。前半は薄気味悪くて良かったんだけれど。

 とはいえ、後半の盛り上がりはB級的に十分面白かったので、普通におすすめできます。 

タクシー運転手 約束は海を超えて

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 光州事件。大雑把に言えば、民主化を求めて蜂起した光州市民と韓国軍の衝突、でいいのかな。それを世界に伝えるべく取材に来たドイツ人記者を高額の報酬目当てで乗せたタクシー運転手のソン・ガンホが巻き込まれていく。

 こういう実際の事件を描いた映画の中でも、時代が近く、同じアジア人ということもあって生々しさが尋常ではない。

「お隣の国でこんな凄惨な事件があったことを知らなかったなんて恥ずかしい」とかそういう殊勝な感想は出てきませんが(よくこういう感想言う人いるよね)、 観終わったあとすぐに光州事件について調べてしまう位にはズッシリ来る映画です。

 よく言われているような泣いた笑った感動したというのは個人的にはなかったのだけれど、こういう時代のこういう空気を感じられるだけで価値を感じます。歴史ドキュメンタリー的な楽しみ方。

 畳み掛けるように事態が深刻化していくのにもかかわらず、ソン・ガンホがソウルの自宅に逃げ帰ると、何事もないかのように事件と切り離されるのも妙にリアル。だと思ってたからいきなり光州のタクシー軍団と韓国軍のカーチェイスが始まったときには何事かと思ったけれど、それはそれで熱かったのでよし。

アントマン&ワスプ 

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 アントマンって「小さいけど強い」じゃなくて「小さいからこそ強い」だと思ってたのね。ピム粒子の力で質量はそのままに体積を極度に圧縮するから、小さいけれどもすごい密度&超パワーの弾丸ボディになれる、という。

 実際、前作は指先サイズの体で大の男をバッチンバッチン吹き飛ばしててそれが斬新かつ爽快だったんだけど、シビル・ウォーと本作ではただ小さくなったり大きくなったりできるだけの人って感じ。

 まあ前作だってアリに乗って移動できてる時点でおかしいんだけど、今回は設定がさらに一層ガバガバになったなあと。小さいからこそのスーパーパワーが観たいのだけどねえ俺は。

 今回小ささを活用したのって、敵の攻撃を避けるとか、羽アリで飛んで移動するぐらいか? それ以外は巨大化した方が強いってのはこのヒーローのアイデンティティがへし折れてないか。原作もそうなの?

 普通にヒーロー映画として楽しいんだけど、アントマンである必要はないかな。娘が大事で大事で仕方ないスコットのキャラはマーベルヒーローの中でも好きな方なんだけどね。

ランペイジ 巨獣大乱闘

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 巨獣ちっちゃ。(10m)

 いや、もちろん10mのゴリラだって十分にモンスターなんですが、キングコングが30mオーバーだったからもうなんとも。

 内容は見たまんまというか、高層ビルがボッカンボッカン壊れる中で、ドウェイン・ジョンソンとCGのホワイトゴリラの2大ゴリラ大暴れを眺めるだけの映画です。

 悪党姉弟が巨獣よりも頭が悪く、非常にほっこりしました。時間つぶし以外の何でもないので、飛行機の中で観るにはぴったりです。

IT/イット "それ"が見えたら、終わり。

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 旧版のコラ画像とかで有名な冒頭、排水口のシーンがピークかなあ。田舎町のいじめられっ子軍団ルーザーズクラブと、殺人ピエロ・ペニーワイズの対決の物語。

 多分原作に忠実に作られているとは思うのだけど、前半でルーザーズの面々がそれぞれのトラウマの象徴のような怪異に出会うシーンがひたすらダルくて、おまけにあんまり怖くない。それを6人分だか7人分だかやるから本題に入るまでが長い長い。

「ホラー版スタンド・バイ・ミー」と呼ばれる所以はまあよく分かるんだけど、こんなに主人公チームいらねーわ。

 ペニーワイズがやたら高速で動くのは好き。そこだけリピートで観たい。

オリエント急行殺人事件

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 ポアロ役のケネス・ブラナーがなんか知らんがすっげえポアロ面だなあと思えたのと、夜間、雪の中を疾走するオリエント急行の映像が美しくて良かったです。

 本格ミステリーをやるには映画の2時間では尺が足りないのか、証言がババババッと揃って、はい犯人はあなたでーす、とトントン拍子で片付いてしまう(ように感じる)のでちょっと食い足りない感じはある。事件発生までが長いのでよりその印象が顕著に。ストーリーを楽しむのならば原作を読んだほうがいいのかもしんない。

 それはそうと、高級寝台列車っていいなあと思える映像でした。そういう意味では車内がじっくり観られる前半の長さも悪くない。家に帰ってからカシオペアの料金とか調べちゃったよ。

トレイン・ミッション

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 通勤列車で出会った謎の女から、大金で人探しの依頼を請け負ったリストラサラリーマン。徐々に明るみになる事実から、自分がとんでもない陰謀に巻き込まれたことを知るのであった。という、限定状況サスペンス。

 ランペイジからここまでの4本全部飛行機の中で、最後のこれはただ到着時間までに終わりそうという理由だけで観はじめた結果、ラスト3分ぐらいでブツ切れました。

 それで感想書くのも何なんですが、少なくとも切れるまでは無難の権化のような映画でした。適度に謎めいて、適度にアクションがあって、適度にありきたりな真相が。面白いかっつーと別に面白くないんですが、つまらなくもないという、一番コメントしづらいやつ。

 オチをネットで漁ってたら「安定のリーアム・ニーソン巻き込まれ映画」的なことが書かれてて、この人こんな目にばっか遭ってんのかよ、と笑いました。 

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