人を殺すタイプのバットマン『刑事グロム vs 粛清の疫病ドクター』他 ー 最近観た映画の感想

新感染半島 ファイナル・ステージ

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つまんなくはないんだけどね。

って最初に書いてしまうくらいコレジャナイ度が高い。

パンデミック発生の前作から4年後、半島はゾンビに埋め尽くされていた。香港へ避難して生き延びた主人公のチームは大量のドル札を積んだトラックを回収しに半島へ戻ってくる。

ミッションは成功するかと思われたが、暴徒化した民兵部隊の介入により回収チームは半島脱出の機会を失うのだった。

その結果展開されるのがゾンビサバイバルじゃなくて、ゾンビワールドでのマッドマックス。ゾンビじゃなくて、ヒャッハー共から逃げるカーチェイスがこの映画のメイン。それはそれで悪くはなかったんだけど、ゾンビがあんまり怖くないのですよね。

光や音に反応するというゾンビの修正を利用して車のヘッドライトで誘導したり、照明弾で敵にゾンビを集めるというのはいいアイデアで、ゲームならすげえ面白いと思うんですが、それはゾンビがある程度制御可能なオブジェクトに成り下がってしまっているということでもあるので。

悪役も無闇にヒャッハーしていて不快さがスリルを上回っちゃってるし、崩壊後の大都市を描くにはCGが安っぽい。車はマリオカート並にファンタジーな挙動をするからなおの事CGであるということが引き立ってしまう。

前作は特急列車内という閉鎖環境だから良かったんだなあ。 

トゥモロー・ウォー

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アマプラ独占配信。劇場で観たいという感想を多数見ましたが、俺はむしろ金曜ロードショー感覚でお茶の間で観たい映画だなと感じました。『T2』とか『エイリアン』とか、昔の大作映画の匂いがするので。

エイリアンとの戦争で世界人口が激減した未来。最後の手段として人類はタイムトラベルを開発し、エイリアン襲来前の世界(現代)に派兵を求めた。

タイムトラベルには適正があるため、軍隊をそのまま派遣することはできない。世界規模での徴兵が合意され、生還率20%のミッションに訓練を受けていない民間人が次々と送り込まれるのだった。行きたくなさすぎる。

ガバガバ戦略でいたずらに兵力を損耗させまくっている各国政府にはツッコミどころしかないのですが、アクション大作として初手から絶望的・いきなりクライマックスという話の早さは美点でもあります。細けえことはいいんだよ。

いきなり未来への転送座標ミスって派遣した兵士の大半が墜落死したのはあんまりだと思うけど。

エイリアンはでけぇわ速いわタフだわリーチが長いわ、おまけに圧倒的多数で人類を追い詰める。『スターシップ・トゥルーパーズ』を思わせる物量攻撃と紙クズのように死んでいく兵士。並の映画2本分ぐらいのエピソードがみっちり詰め込まれて、爆発炎上もドッカンドッカン。お茶の間で観るB級大作として文句なし。 

トゥモロー・ウォー

トゥモロー・ウォー

  • クリス・プラット
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ブラック・ウィドウ

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そつなく面白かった。けど優等生すぎてあんまり言うことがないな。

誰でも受け入れられそうな後味が『ベイマックス』とか『ズートピア』とかのディズニーアニメを観た後のそれにそっくりで、MCUはすっかりディズニー作品になったんだなぁと感じるなど。

事前に全く情報を入れていなかったので、まさかのファミリー映画だったのにも驚いた。「孤独な暗殺者は、なぜアベンジャーズになったのか。」というキャッチコピーは内容にかすってもいません。

Smells Like Teen Spirit」のダウナーなカバーで始まるオープニングに期待したら、コメディ要素たっぷりのほのぼのファミリー映画になるなんて思わないよ。面白いけど拍子抜けはしたよね。ヒーロー着地いじりはデッドプールでやってんだからもういいよ。

わだかまりを残しつつの姉妹のチームアップとか、パラシュートなしの垂直方向アクションとかすごく良かったですけどね。久々のMCUで観たかったのがこれかというと、俺は違いました。

刑事グロム vs 粛清の疫病ドクター

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NETFLIXオリジナルのロシア映画。邦題があんまりすぎるので思わず観ましたよね。

「自分がこの街を守らなければならない」という妄想に取り憑かれた金持ち(のツレ)が、財力にあかせて自作した装備で夜な夜な悪人を燃やして回る。

明らかにバットマンを意識した作りで、作中でもバットマンに言及しているのですが、触発された市民がマスクを被り模倣犯となることで治安が悪化する流れは『ジョーカー』もミックスされており、アメコミにおけるヒーローとヴィランの紙一重ぶりを思わせて良いです。

それを追うのが刑事グロムというわけで、特殊能力を持たない人間がどうやってヴィランを捕らえるのかという、アメコミヒーローものを逆転させたような建て付けの映画です。

こういう見た目も内容もコテコテにアメコミの影響を受けた映画がロシアで制作されているのがもう面白い。社会悪という「疫病」を火炎放射器で焼き払うペストマスクのヴィランというデザインはあまりにベタだけど格好いいし、ヴィジランテを追う刑事というのもド定番。

熱血刑事のイーゴリ・グロムは有能だが暴走しがち。犯罪者を捕らえはしたものの、街に大被害を出すところから映画は始まり、署長にクビだとなじられる。よくある「石頭の上司と目の敵にされる不良刑事」なのかと思いきや、この署長がすんげぇ良いキャラでして、次の登場シーンではイーゴリを自宅に招いて仲良くピロシキを包んでいたりする。

立場上、仕事で厳しく当たりはするけれど実際のところはイーゴリを実の息子のようにかわいがっている署長がめっちゃ好き。

加えてはみだし刑事と新人刑事のバディものでもあるし、自分の力しか信じない男が仲間の助けを借りることを覚える成長物語でもある。

ヴィランだけでなく、署長や仲間といった登場人物周りの造形が良かったので、続編が制作されるならぜひ観たい。だいぶ好みのやつでした。 

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