最近観た映画10本-2016年11月

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 パニック映画が3本も入ってるのでこの頃の俺はよっぽど頭を使いたくなかったのだと思います。

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宇宙人ポール

宇宙人ポール (字幕版)

宇宙人ポール (字幕版)

  • サイモン・ペッグ
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オタク友達のイギリス人グレアムとクライヴ。彼らはアメリカの有名なUFOスポットを巡る旅行中に本物のグレイ型宇宙人を拾ってしまう。

ポールと名乗った宇宙人は政府機関から逃亡中だという。グレアムとクライヴはポールを助け故郷の星へ帰してやるために、彼が目指す北へとキャンピングカーを走らせるのだった。

オタクコンビとベタなデザインの宇宙人による珍道中系ロードムービー。タイトルもジャケットも自分からはまず進んで観ない類の映画ですが、異様な高評価とともにAmazonビデオのおすすめに出てきたので視聴。なるほど、確かに面白い。

この手のコメディはトラブルメーカーが人をイラつかせるタイプだと途端に魅力を失うものですが、その点ポールは実にいいキャラをしています。

アメリカの映画やドラマにはしょっちゅう出てくるノリのいいお調子者タイプ。常に軽口を叩き、時にはすっげえゲスい顔で下ネタジョークを飛ばす。

「男二人で旅行? お前らゲイ?」

「大好きな曲だ!! 踊ろうぜ!! ホラ照れんなよ!!」

完全にアメリカのカルチャーに染まりきっているポールは、内向的で善良なオタクの二人組をグイグイ引っ張り回す。途中でヒロインも旅の仲間に加わり、命がけの逃避行なのに皆どんどん仲良く楽しげに。パッと見はグロいポールが本当にいいムードメーカーになってるのね。

気の置けない友人と旅をするロードムービーと、追手から身を隠し躱し続ける逃亡ドラマが無理なく同居。終盤にはちょっと意外な展開もあったりして。派手さはないけど万人におすすめできるタイプの良作です。  

スパイダー・パニック 

スパイダー・パニック (字幕版)

スパイダー・パニック (字幕版)

  • デイビッド・アークエット
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最近、脳を1ミリも使いたくないときにはパニック映画を観ればいいという学びを得ました。どれ観ても同じだからね。

湖に流れ込んでしまった化学薬品で巨大化した蜘蛛が人を襲い始める。生き残った人間はショッピングモールに立てこもる。以下同文。的な。

最初に襲われた蜘蛛マニアのおっさんが、飼ってる蜘蛛の水槽を不自然なまでに全部ぶちまけながらのたうち回るのが見事だと思いました。

舞台になっているアリゾナの大自然は美しく、画面いっぱいに広がるとなかなかに壮観。そこにCGの蜘蛛が現れた途端とてつもなく安っぽくなるのがたまらんね。

最後はちゃんと大爆発して終わります。よかったですね。 

ザ・シューター 

ザ・シューター/極大射程 (字幕版)

ザ・シューター/極大射程 (字幕版)

  • マーク・ウォールバーグ
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原作小説を読んだのは10年以上前なのでうろ覚えなのですが、細部が結構原作と異なるような。でも映画版もかなり面白いですね。

主人公が凄腕スナイパーで、ジャケットは爆炎と銃を構えた主人公。どうしてもミリタリーアクションを想像しがちで、それは間違ってはいないのですが、この作品の本質はミステリー。

罠に嵌められて指名手配犯となった主人公ボブが潔白の証を立てるため真相を求め逃亡を続ける。追手を返り討ちにしながら真犯人をどんどん追い詰めていくのがこの作品の醍醐味です。情報と証拠をもってして悪党を震え上がらせ、最後にはしっかりと落とし前をつけさせる。

それを成り立たせるのはボブの圧倒的戦闘力なので、アクション映画としての見どころも満載。基本的にボブ無双で彼は超人には違いないのですが、その強さは軍隊仕込みの正確な動きや先読み能力。やりすぎてファンタジーになったりはしない実直なアクションです。でも爆発はボッカンボッカンと派手にする。好みです。

それだけにラストの改変はなんだかなぁという感じでしたが。ちょっと客層の想定をアホ側に振りすぎなんじゃないですかね。それを差し引いても十分おもしろい映画ですけどね。 

マーズ・アタック! 

マーズ・アタック! (字幕版)

マーズ・アタック! (字幕版)

  • ジャック・ニコルソン
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ティム・バートンといえば、昔下北沢で観た演劇内のコントでココ・シャネルに捕まって香水の原料にされていたのが俺の中で有名です。    自分で書いてて何だが「ココ・シャネルに捕まって香水の原料にされるティム・バートン」って文字列は面白すぎるな。何だったんだあのコント。

演劇は置いといて「マーズ・アタック!」ですが、まあ悪趣味ですよね。グロもブラックユーモアも別にいいんだけど、キッチュっていうんですか、こういうテイストのは性に合わないですね。単純に趣味の問題。  

帰ってきたヒトラー 

帰ってきたヒトラー(字幕版)

帰ってきたヒトラー(字幕版)

  • オリヴァー・マスッチ
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原作未読。

1945年、ベルリンの地下壕で自殺をしたはずのヒトラーは、実は現代にタイムスリップをしていたのだった。

コスプレ芸人だと思われたヒトラー(本物)は、テレビ屋のザヴァツキにネタとして拾われて、討論番組へ出演。持ち前のアジテーション能力を駆使して、現代のドイツでも一躍スターとなってしまう。

売り文句は「ひとしきり笑った後でぞっとする」でしたっけ。「誰の中にもヒトラーはいる」的な展開は想定の範囲内で別にぞっとはしませんが、「ひとしきり笑う」の方は実際笑えました。

これでぞっとする人ってのは余程生真面目なんじゃないかな。俺は上手に扇動されたらあっさり乗っちゃうだろうなと思うぐらいには自分の理性を信じていないから、作中の市民に己を映すまでもありませんでした。信じてないからこそ流されてしまうことに対して警戒ができる、などと自分では良いように考えているのですが。

原作は大ヒットしただけあってストーリーもよくできており、ザヴァツキの目線が「やべえ、こいつ本物(のアレな人)だ……」から「やべえ、こいつ本物(のヒトラー)だ……」に変わってからの虚構と現実の境が曖昧になる感じが実に良かった。伏線もいい感じに効いている。

ヒトラーやナチス関係なんてドイツご当地じゃ日本の戦時ネタ以上にデリケートな題材だと想像されますが、こんな風におちゃらけつつしっかり皮肉を効かせる自己言及力ってのは素晴らしいですね。 

スーサイド・スクワッド

予告がやたらハーレイ・クイン推しだったのはハーレイ・クインしか観るとこが無いからだなこれ。

悪党悪党言ってるけど大した悪事も仲間割れもせず皆さん粛々と任務についていらっしゃる。終いには酒を酌み交わして身の上話で打ち解ける。何なのお前ら。BvSのバットマンの方がよっぽどはっちゃけてるじゃないのよ。

そもそもスーサイド・スクワッドの存在意義もよく分からんし。バットを振り回す発狂ヤンキー女より訓練を積んだ正規部隊のほうが余程強いだろうに。

スリップノットの死ぬためだけに出てきた感と、カタナさんが「ドコダァー!! ミエナイー!!」って片言で叫んでたのは面白かったです。幻惑されてるのを全力で宣言してどうする。  

アルティメット

アルティメット (字幕版)

アルティメット (字幕版)

  • シリル・ラファエリ
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いいね。こういうオチの話大好き。

犯罪の温床と化したパリの郊外13街区に持ち込まれた時限爆弾。その起爆を阻止するためにエリート警官ダミアンと地元の青年レイトが奔走する。

アクションはパルクール(フリーランニング)主体。スタントや特撮なしの身体能力一本でビルをよじ登り、屋上から屋上へと飛び回る。全編追いかけっこをするばかりですが、動きが立体的で飽きません。

俺は映画全体を彩るギャングスタ文化的なものとの親和性が絶望的に低いので序盤はやや入り込みづらいところもありましたが、アクションはひと目で分かる超絶技巧、ストーリーは単純明快な勧善懲悪。そして短い上映時間と、サクッと観るのに最適でした。 

トレマーズ ブラッドライン 

 5になっても相変わらずトレマーズでした。5作目にしてついにグラボイズの生態が判明!! まあどうでもいいんだけど。

トレマーズはトレマーズなのでトレマーズだったとしか言いようがないのですが、トレマーズがHD画質になったのでよかったなあとおもいました。おわり。 

ズートピア  

ズートピア (字幕版)

ズートピア (字幕版)

  • ジニファー グッドウィン
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大絶賛されていますが、俺はこの映画を手放しで褒めたくはないんだよなあ。

差別や偏見といった普遍的かつ重たいテーマに切り込み、大人の鑑賞にも十分耐えるという評価に間違いはありませんが、そういう視点で観るのならば。

話を転がすため、メッセージを伝えんがために登場人物に目に見えて愚かな行いをさせるストーリーテリングってのが嫌いなんですよ俺は。

ジュディのスピーチのことですけどね。感情の流れとして理解できるなら愚行も暴走も構わないんですが、そうではなかった。ジュディとニックを気まずくさせて、ジュディに涙を流して反省させるためのギミックに過ぎないという印象。

だからテーマを深読みしちゃうとその辺が急激に説教臭く感じられちゃうんだよね。わざわざそんなエピソードを突っ込んで説教しにくるんじゃねえよ、と。

要約すれば「ジュディはそんな事言わねえ!!」なので、そこを不満に感じる程度には俺はニック&ジュディというコンビを気に入っているのかもしれない。面白かったよ。

むしろニックとジュディが正式なバディになってからの後日談が観たい。 

ウェイヴ  

ウェイヴ(字幕版)

ウェイヴ(字幕版)

  • ユルゲン・フォーゲル
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ザ・サードウェーブという、アメリカの高校で実際に行われた社会実験をモチーフにした映画。舞台はドイツに置き換わっていますが。

この辺を読めば興味がそそられること請け合いですが、ざっくり説明すると独裁政治について教える歴史の授業で行われた実習で、内容は簡単、細かなルールを作って皆でそれを守るだけ。

この映画の中では例えば指導者役の教師を授業中だけ「様」付けで呼んでみる、制服代わりに白シャツとジーンズで登校する、仲間同士では決まった挨拶をする等。ほんの些細な規律を作ることで生徒たちは団結という名の同調圧力にのめり込み出し、従わない者を排除しだす。

ウェイヴと名付けられたその活動は生徒たちの間で話題を呼び、授業の枠を越えて拡大、教師の思惑を越えて暴走していく。ナチスは最悪だ、と発言した生徒たちがたった数日で全体主義の虜となり、見る見る間に活動が手に負えない代物に成り下がる様は、なるほど邪悪という形容がしっくりくる。だってこの授業自体に悪意はなく、受けてみれば絶対面白いに違いないもの。

実話と異なり、やや物語としての脚色が入っていますが、それでも全体的に抑えめの描写がリアリティを感じさせていい。この空気の中にいたら自分も確実に白シャツとジーンズを着てしまうだろうと。

たまたまですが「帰ってきたヒトラー」から間を空けずに観たもので、大分味わい深いものがありました。俺はあんまり物語から教訓めいたものを受け取ったり語ったりはしたくないのですが、この映画はわりとダイレクトに教訓様を胃の腑にねじ込んでくるので「実話ベース」の破壊力たるや恐ろしいものがあります。

ここで「私も~を心がけたいと思う」などと、夏休みの読書感想文のような締めをしてしまうと俺の負けなので、「ウェイヴの挨拶って "アイーン" みたいだよね」という感想を書いて終わります。

俺は何と戦っているんだろう。