俺、アリ・アスター監督作品と相性悪いらしい。
スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム
気づいたら観たのが半年以上前で、もう記憶がおぼろげなんですが。
当時のメモを見返したら「ヘリの風圧でめっちゃ吹き散らかされてたチューリップが気になってしょうがない」とだけ書かれていて、そうそう、気になった気になった。俺の馬鹿。この馬鹿。
「アベンジャーズ エンドゲーム」後の大きく変わった世界において、ヒーローとしての重責に悩むピーター。前作でも思ったけれど、この辺の悩みがバットマンみたいな狂人(何度でも書くけれど、バットマンは映画になるような有名アメコミヒーローの中ではぶっちぎりの狂人だと思っている)と違って、等身大の高校生らしくていいよね。
要するにもっと遊びたい、恋もしたい、高校生らしい青春を送りたいのに大人たちは責任ばかりを押し付けてくる。ヒーローなんてやってられるかと。
1作目でオリジンストーリーの「大いなる力には大いなる責任~」のくだりをやっていないから、この辺の子供っぽさにも違和感がないし、ヴィランにまんまと出し抜かれる流れも実際そんなもんよね、と腑に落ちる。よかった、死んだベンおじさんなんていなかったんだ。
ヒーロー映画としてはここまで軽いのはあんまり好みじゃないんですが、青春コメディ映画と考えると本当によく出来てると思うし、普通に次も観る。
ところでスターク社製アイテムの扱いを誤ってうっかり同級生を殺しかけてめっちゃ怒られるシーンがあるんだけど、そんなもん高校生に渡すなよ。やたらとウェブを「即死モード」に設定したがるスーツといい、トニーがセキュリティガバガバな殺人兵器を作りまくってるのすげえ面白いなこのシリーズ。
あとMJが今までに観たスパイダーマン作品にはなかったタイプのMJで、非常にクレバーな感じが良かったです。というかウザくないというだけで評価がストップ高なので、俺の中でMJというヒロイン像がだいぶ最悪に近いレベルに設定されていたことが判明しました。
MEG ザ・モンスター
主人公にステイサムを据えてしまうと生身でも普通にメガロドンに勝つんだろーな、と思えてしまうのでスリルはあんまりないです。
サメ映画じゃなくて怪獣映画のカテゴリーとして見ときゃいいんですが。
「ステイサムを餌にしたサメ一本釣り」のシーンでニコニコしてしまいました。
サマー・オブ・84
アメリカ郊外で子供ばかりをターゲットにした連続殺人事件が発生、近所に住む警察官を犯人と疑った主人公は友達と共に捜査を始める。
ざっくり言うと「スタンド・バイ・ミー」とか「IT」みたいなやつのスラッシャー版。最終盤に怒涛のごとく話が展開するんですが、そこまでが結構ダルい。
ぬるい青春ホラー展開はそれこそ「IT」あたりへのオマージュなんだろうなと分かるけど、俺「IT」もダルいなあって思いながら観てたからねえ。
とはいえ、結末のイヤーな後味は嫌いじゃないです。
マリアンヌ
普段まず観ないタイプの映画なんですが、ちょっと仕事の関係で観ることに。
普通に綺麗で良く出来た作品でしたが、切なさに満たされた美しいラブロマンスが、「凶暴化した寿司が人を襲う映画」とか「ダニエル・ラドクリフの死体でジェットスキーする映画」とかを好んで観る人間にフィットするかっちゅー話なんですよね。
いや、それなりに面白かったけどね。序盤のモロッコの町並みの乾いた感じとかすごい好きですよ。
あとホームパーティ文化のある国に生まれなくてよかったと思いました。
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド
タランティーノはなんか「歴史に復讐する」系の映画を撮る人になったんですかね。
ナチスとか奴隷商人とか、問答無用の悪とされるものを歴史を捻じ曲げてぶっ潰す。エンタメとして面白いからいいんだけど、今回もそうで「あれ? またか」とはちょっと思った。
シャロン・テート殺害事件に関しては情報として知ってるだけで、特に思うところがあるわけでもない、というのが理由の一つだろうと思う。俺は別にシネフィルというわけじゃないからなあ。
そんなわけで取って付けたような痛快爽快クライマックスは個人的には割とどうでもよくて、そこに至るまでのブラピとディカプリオのやりとりがただただ楽しかった。
話にそれほど波があるわけでもなく、それでいて長いんですが、当時のハリウッドの空気感というものが(本当にそんな感じだったかは知らんが)垣間見えて退屈しない。俺は単純にこの時代の絵面が好きらしい。
好きなシーンは、ふがいない演技をしてしまい、前夜の深酒を後悔しながらも自然と酒を注いで飲んでる自分に気づいて戦慄するディカプリオと、ドラッグガンギマリでラリっているブラピです。
ゾンビ・サファリパーク
ゾンビアポカリプスを乗り越えた世界で、人類は捕らえたゾンビを放って安全に狩るというクソろくでもない娯楽を生み出していました。
なんやかんやあってお約束どおりゾンビが逃げ出してさあ大変、というやつ。ロゴを見れば一目瞭然、ジュラシック・パークのパロディなんだけど、クソバカ映画を期待して観てみたら、意外なほどちゃんとしてて驚く。
低予算は明らかなのに画作りに工夫があって、思ったほど安っぽくないんだよね。馬鹿がいらんことをして収集がつかなくなるのはゾンビ映画だからそういうもんだとして、案外辻褄のあってる脚本も悪くなかったです。(セラピーのためにゾンビを殺しに来たと抜かす導入部は横に置いとく)
まあ期待してたもんとは全く違ったけど。俺は全身全霊でノータリンな映画が観たかったんだよ。
ロボット2.0
というわけでこれで満たされてきました。
全然上映館がなかったので、川崎のチネチッタまではるばる出向いて観てきましたよ。
インド中から集まった大量の空飛ぶスマホが人を殺す。スーパースター・ラジを主人公に据えて、とんでもない予算と技術が注ぎ込まれているはずの映画の作りがその辺のクソB級パニックホラーとまるっきり変わらないの最高ですよね。
この事態に対応するためには、前作で暴走して封印された最強ロボットのチッティを投入するしかない! となるまでに何度もスマホによる猟奇殺人と人々の手からスマホが離れて飛んでいくシーンの天丼芸を見せられるのは少々ダルいのだけど、すげえ金のかかったB級映画と考えればこんなに贅沢なもんはないです。
インド映画によくある2部構成で、休憩を挟んだ後半からは前作同様の悪夢みたいなバトルが嫌ってほど観られるので、自然と顔がほころんでしまいました。それを観るためだけに行ったようなもんですが、そこにB級パニックホラーまでついてきて2倍お得、みたいな映画です。
パラサイト
公開のだいぶ前から話題になってた庭バージョンのポスターが気になって、できるだけ情報入れないようにして観に行ったんですが、いろいろ心配ではありました。
というのも、「パラサイト」というタイトルから「魔少年ビーティー」とか「魔太郎がくる!!」の家庭乗っ取り撃退的な話なんじゃないかと思ったわけで。
俺、「最後にスカッと」を売りにしてる話苦手なんですよ。そこに至るまでにやたらと胸糞展開を強調したりするので。登場人物が不遇な目に遭わされたり、結果としてバッドエンドになるのは別に構わんのですが、「後で持ち上げるために一旦徹底的に落とす」ような脚本都合が露骨だと観てて嫌んなっちゃう。
結論から言うとその心配は無用で、半地下暮らしの貧乏一家がIT長者の家庭に上手いこと取り入って家庭教師やお抱え運転手といった職を得るというだけのこと。その手段はさておき、みんな真っ当に働いているという点で想像よりは全然かわいいもんでした。
痛烈な皮肉をもって描かれている韓国の格差社会については良く知りもしないことなので言えることはないですが、それを抜きにしても単純にエンタメ作品として面白い。
ちんけな詐欺で金持ちの家庭に入り込んでいく半地下一家の手腕とか、恵まれた環境にいるが故に傲慢で疑うことを知らない金持ち一家の滑稽さとか。どう考えたって愉快な物語ではないのに、そこかしこにコメディの笑いをぶっこんで来るあたりとか。決定的に取り返しがつかなくなるヤバいシーンで、あまりにテンポが良すぎるゆえに劇場内に笑いが巻き起こったのは凄えなと思いました。
すべてがうまく回って調子こいてるときにバレそうになるお約束のシーンが当然のごとくあって、その綻びがすんげえ斜め下からやって来てからの超展開、どっからどう見ても救いようのないラスト。でも不思議と嫌じゃない。
なんだろうねこの感じ。皆が皆まんべんなく不幸になっているせいで、終始描かれ続けていた格差が多少なりとも均されたような心持ちになるのかもしれない。
あとFilmarksの感想に「時計回り」とだけ書いたらいっぱい「いいね!」が付きました。
ナイスガイズ!
80点! 個人的にものすごく80点感のある映画でした。
荒くれの示談屋とヘタレの探偵が依頼をこなすために奔走するバディもの。普通に隙なく面白いんだけど突出したところもなく。優等生な感じというか、なんか妙な既視感があるんだよねぇ。わかりやすく好対照な凸凹コンビ設定のせいかもね。
そこにアクセントを加える探偵の賢い娘が結構なキーパーソンになってるんだけど、この子の演技が上手くてなんか感心してしまいました。子役が上手い映画ってだいたい面白い気がする。総じて好き。80点。
ミッドサマー
俺、この作品も「へレディタリー」も「えっ、そんだけ?」ってなったのね。最初に書いたようにアリ・アスター作品を楽しむ素養が俺には足りてない。
「異郷の変わった風習に付き合わされました」以外の何もなくない? この映画。いや、それはそれで面白かったんだけど、絶賛されてるのが分からない。
解説とか読んで回ると「こんなに伏線が!」みたいなことが描かれてるけど、その後の展開をそのまま絵に描いてるとか、視聴者に読めないルーン文字に意味がありました、ってのは伏線って言わねーだろ。ディティールの作り込みに後から感心することはあっても、初見の「そうきたか!」って感動にはつながらないもの。
徹頭徹尾「そのままだー!! うわあ、そのままー!!」って感じの映画だった。
あ、でもセックスシーンで応援が入るところは予想外でクソ笑いました。
前作とは対照的な花咲き乱れる明るい画の中でも相変わらず終始イヤーな感じを出し続けられるところとか、ダメ人間のダメなところを描くのは本当に上手いと思うので、いっそホラーとかグロとか無理に入れずに、ドロドロした人間関係の後味悪ーい映画とか撮ればいいんじゃないですかねこの監督は。そっちの方が余程怖い気がする。