ディズニー製カンフー映画で俺が大歓喜 ー 最近観た映画の感想

ザ・ハント

f:id:baumkuchen:20210914225304j:plain

目が覚めたら見知らぬ森の中。集められた人間は武器を与えられ、正体不明の敵から攻撃を受ける。ここは金持ちが娯楽で人間狩りを行う「狩場」だったのだ。

また理不尽デスゲームかよ、と思わなくもないのですが、フォーカスの当たった登場人物がめきめき死んでいくというあまりにも手際の良い導入で引き込まれ、軽~いおやつ感覚で観ることができます。嫌なおやつだこと(序盤にグロあり)。

終わってみれば「獲物」があらかた狩りつくされて、生き残りの反撃が始まる30分ぐらいまでがピークだったな、という感じではあります。

とはいえ、「調子こいた襲撃者が反撃を受けて酷い目にあう話」というのはそれだけで一定の面白さがありますよね。『サプライズ』とか『バクラウ』とか。

「その辺のおっさんにロシアンマフィアが壊滅させられる映画」がいくつもあるのと同じように、今後も手を変え品を変え作られ続けていくのでしょう。

襲撃者がセレブ集団なので、虐殺のかたわらで健康に気を使っていたり、「黒人」と言うか「アフリカ系アメリカ人」と言うかで揉めたりと無駄な意識の高さを発揮しているあたりは結構ベタな皮肉ですね。

これで「国の2極化を煽る」とかいって一時上映停止になったとかいうエピソードは流石に苦笑せざるを得ませんが、こういう犯人像とか、終盤に明かされるターゲットの選定基準とかはいかにも現代的で嫌いじゃないです。

ザ・ハント (字幕版)

ザ・ハント (字幕版)

  • アイク・バリンホルツ
Amazon

Z Inc. ゼット・インク

f:id:baumkuchen:20210919173605j:plain

人間の本性を剝き出しにし、狂暴化させるウイルスにコンサル会社が丸ごと感染、会社は完全に封鎖された。散布されたワクチンが効果を発揮するまでの間、誰も外には出られない。

同僚のミスを押し付けられ、会社を追い出されるところだった男は「感染無罪」のうちに自分をハメた同僚と社長をブッ殺すべく、オフィス最上階を目指すのだった。

相棒は同じく会社の幹部をブッ殺したいサマラ・ウィーヴィング。俺がこの人を目にするときは大概ネジが外れた女の役ばっかしてる印象があるんですが、大変カッコいいので売れてもこういう役は続けて欲しいですね。

内容はといえば、「ホワイトカラーの会社員がオフィスの中で血みどろ大乱闘」の設定は面白いんだけど、他は特筆することもない並のB級映画という感じ。

感染者は別にゾンビになるわけでもないので、やたらと暴力的になるとは言え理性はある。オフィスにいる人間が見境なく襲い掛かってくるわけでもないし、何なら会話や交渉もできるので、暴れてるモブ会社員はただの背景でしかない。ポスターのメインビジュアルから期待するようなパニック映画の緊張感みたいなもんはほぼないです。

ちょっと良い話風に「成功への道は自分で掴み取るしかない」と、社長をブッ殺して幹部の座についた主人公に言わせて締めるところとか、助手に滅多刺しされてる上司を見て大爆笑してるサマラ・ウィーヴィングはとても良かったです。

Z Inc. ゼット・インク [DVD]

Z Inc. ゼット・インク [DVD]

  • スティーヴン・ユァン
Amazon

シャン・チー テン・リングスの伝説

f:id:baumkuchen:20210920141012j:plain

これは面白かった! これまでに観たマーベルの単独ヒーローものではトップクラス。

ブラック・ウィドウ』が毒のない「ディズニーの映画」って感じになっててあんまり好みではなかったので、本作もそれ程期待してなかったのですが、いい感じに裏切ってくれました。

後半は壮大な中華ファンタジーって感じで、これはこれですっかりディズニーの世界観を感じるものの、鼻につかないというか、新鮮さが先に来る。

俺、『ブラック・パンサー』のワカンダとか『アクアマン』の海底都市(DCだけど)とかの「独自の発展を遂げた近代文明」が大好物なのですが、中国武術の伝統的な武具に電撃を仕込んでいるテン・リングスとか、ター・ロー村の龍の魔力がこもった弓矢や縄鏢に同じ匂いを感じます。それだけでもう結構好きになれちゃう。

良さの大前提としてベースのカンフーアクションがハイクオリティだということもあります。ディズニーでこんなしっかりしたカンフー映画が観られるんだという驚きも大きい。

カーアクションと組み合わせたバス内での戦闘では慣性付きの閉所という環境を活かしたいかにも「らしい」アクションが見られるし、マカオの高層ビル足場での戦闘も鉄板のカンフー映画シチュエーション。カンフー映画と言えば竹の足場ですよ。ベタっちゃーベタだけど、マーベルヒーロー映画でスケールでっかくこれをやるってのがもう面白い。

そういう地に足の着いたカンフー映画から、空を飛んで戦う武侠もの、幻獣や龍が出てくるようなファンタジーへと大風呂敷を広げつつ、スムーズにこれまでのMCUと話を絡めてくるあたりも見事。新ヒーロー参戦の掴みとして文句なし。あんな地味なポスターと予告でこんな話になるとは思わなかったよ。

そしてサブキャラも魅力的。毒親のトニー・レオン、独学で強くなっちゃった妹のメン・ガー・チャン、いつ見ても強く麗しい叔母さんのミシェル・ヨー。

なにより親友ケイティ役のオークワフィナがめちゃくちゃ良いキャラでした。最初のシーンで中国映画にありがちなクソ厚かましくて空気を読まないタイプのコメディリリーフなのかと思いきや、明るく気さくで気遣いはできるわドラテクは一流だわ肝は据わっているわで一般人なのに頼れるサイドキックとしてどんどん好きになる。

ロマンスに持っていかずに親友ポジをキープしているのもいいし、今後のMCU作品にもぜひ登場させて活躍させて欲しいと思います。

とまあ、各種伏線や魅力的な新キャラの追加等、色々な面で今後のMCUの広がりを期待できる一本でした。

いや、本当こんなに面白いと思わなかったわ。想定外の喜び。

前の

一覧