風呂とチキンとマ・ドンソク ー 最近観た映画の感想

メランコリック

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ニートの和彦がバイトに入った銭湯は深夜に洗い場を殺人の場として提供していた。

掃除は簡単、遺体はボイラーで焼ける。新しい銭湯の可能性を見いだした意欲作。見いだすなそんなもん。

ある日現場を目撃してしまった和彦は否応なしにこの銭湯の「ビジネス」を手伝うことになる。

良心の呵責に苛まれたりや足抜けのために悪戦苦闘するサスペンスになるかと思いきや、和彦君は予想外の収入に浮かれるが早いか、あっという間にこの異常な環境に馴染んでしまう。サイコパスかな?

上司も同僚もいい人だらけの優しい職場における、日常系のほほんお仕事映画。ごろごろ人死んでるけども。

めっちゃ殺したり殺されるような目にも遭ってるのに、ふんわりとハッピーエンドに着地して何故かじんわり良い気分になる謎の作風。

心が荒んで、優しい気持ちになりたいときに観るといいかもしれません。

人いっぱい死ぬけど。

エクストリーム・ジョブ

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韓国映画はバイオレンスとかサスペンスばっかり観てますが、コメディも相当レベル高いですね。配信は自宅でゲラゲラ笑いながら観られるので相性最高。

麻薬組織の摘発のために、組事務所の向かいにある潰れかけのチキン店を買い取った捜査チーム。不自然に思われないように偽装営業を始めたら、メンバーの一人が料理上手だったおかげでオリジナルのチキンがヒット、大繁盛して捜査どころではなくなってしまう。

立て続けに放り込まれるギャグはネタとしては結構古典的なものが多い印象なのですが、テンポも演出も良いので普通に笑える。やっぱり笑いは「間」が大事。

終盤に向けてどんどん「暖め」られていってるのが自分でも分かるし、喜んでその流れに乗っていける。

なんだかんだで刑事ものとしても構成もしっかりしてて、最後の大量摘発へなだれ込む展開は痛快のひとこと。

嫌う人があんまりいないタイプのひたすら楽しい映画なので、年末年始に大勢集まったタイミングで観るのもよいかと思います。

クライマックスに押収物のドラッグでガンギマリになってる新人刑事のジェフン君がかわいいです。

 

エターナルズ

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いきなり知らんヒーローを10人もぶっこんで来ても全く混乱しないほどに構成がしっかりしてるし、各ヒーローのキャラも立っている。

最近のハリウッドの無理矢理なダイバーシティ化が本作では顕著で鼻につく、みたいなコメントも目にしましたが、俺は断然肯定派です。全員属性がばらっばらなので誰が誰なのか分かりやすくて、新しいヒーロー物語の導入として非常に良い効果が出ていると思います。

なにより意図的に属性を散らしたおかげでMCUでマ・ドンソクが観れたし、マ・ドンソクがそのままマ・ドンソクなのも良かったです。他のメンバーがスーパーパワーで空飛んだりかめはめ波を出したりする中で、マ・ドンソクの能力は「パンチめっちゃ強い」なので、観てるとそれただのマ・ドンソクですよねってなるの最高です。

遥か昔から人類の発展を見守るエターナルズたち。その彼らが恋愛だ友情だ仲たがいだとわちゃわちゃやっているのはギリシャ神話の神にも通じる人間臭さ。というか彼らのうち何人かは実際にギリシャ神のモデルになってる設定なので、誰がどの神なのか考えながら観るのも楽しい。

話が神話レベル、全宇宙レベルのわりには皆さんあんまり強くなさそうなんですが、いずれも好感度高し。その中でもマ・ドンソクとアンジェリーナ・ジョリーのように恋愛ではない仲良しコンビがいくつかあって、それがまた良かった。

MCU映画としてはやや地味ではありますが、俺はかなり好きな方です。フェーズ4はよく知らないヒーローばっかだなあと思ってましたが、いやー、どれも面白い面白い。

 

アンテベラム

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ゲット・アウト』『アス』(未見)と同じプロデューサーということで、前2作と同じく人種差別をベースにしたサスペンスホラー。

ロッテントマトなんかだと評価の高い『ゲット・アウト』に比べて、結構ボロカスに言われているものの、俺はこちらの方が好きだったりします。

興味を持たれた方は以下を読まずに観ることをお勧めします。ネタバレはしませんが、勘のいい人が何かに気づいてしまっても責任とれないので。

 

どちらもぶっ飛んだ真相にぶん殴られるタイプの映画ですが、ぶっ飛び過ぎてB級ホラーの次元にまで飛び去ってしまった『ゲット・アウト』に対して、この『アンテベラム』で起きていることは(ちょっとだけ)現実味が増しており、その分逆に恐ろしい。

南北戦争当時の黒人奴隷の女性と、現代の社会学者の黒人女性にフォーカスをあてて、ふたつの時代を行き来しながら、物語は進んでいく。

女性はいずれもジャネール・モネイが演じており、言うまでもなくこのふたりの人物になんらかの関係があるということが示唆され続けるわけですが、そのリンクが明らかになる瞬間、何が起こってるのか分からずに混乱するのが楽しいです。

ただでさえキツい奴隷虐待シーンが、真相を知ることで数倍エグくなる構成が見事。こういう風に一度観たシーンの印象が後から塗り替わる映画、好きです。

 

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