人はバーフバリさえあれば生きていける。崇めたい。称えたい。
キングスマン:ゴールデン・サークル
何者かの手によって壊滅したキングスマンがアメリカの兄弟ステイツマンを頼って反撃開始、というストーリーは実にアツい。電磁投げ縄とかのアメリカンな馬鹿スパイアイテムもそそるものがある。映像としてはとにかく観てて楽しい映画で大満足。
悲しむのは後だ、と一杯だけ手向けの酒を注いだマーリンさんがいつの間にか瓶を空にしたあげくべろんべろんに酔っぱらって号泣してるところとか最高でした。
細々と引っ掛かる部分はあり。もともとブラックなシーンは多かったけれど、今作の「ハンバーガー」は、ちょっと引く。痛そうなの苦手なので。まだらボケしたハリーさんが裏切り者に気付いた経緯も不明だし、終盤いきなり絶好調に戻っているのもよく分からん。エルトン・ジョンに至ってはどう捉えてよいのやら。
とはいえ、ずっと観たかった師弟のバディアクションがついに観れたことで概ねチャラ。世界一カッコイイ「カントリーロード」も聴けるしね。
あからさまに続編を意識してるし、今から楽しみ。
SPY
スパイ映画2連発。いろいろあって、オペレーターをやっていた四十路の小太りおばちゃんがエージェントになってしまうというやつ。基本コメディテイストなんだけど、きっちりスパイしてていい。おばちゃんだからこそ溶け込めるシチュエーションというのは確かにあるわけで。
そしてコメディリリーフとして登場するのがジェイソン・ステイサム。同僚の自称腕利きエージェントなんだけど、徹底して何の役にも立たないステイサムってのがそれだけで面白いので一見の価値あり。
毎回いいところで現れては速攻撃沈するステイサム。言うことだけは異様に偉そうなステイサム。多分このステイサムは地獄のミサワが作画している。
テーマは「女の友情」ですかね。敵の女ボスとの悪態のつきあいに一種の信頼関係を感じてすごく良いな、と思ったね。
バーフバリ 伝説誕生
普通のよくできたアクション映画で普通によく踊るインド映画でした。
これ単体なら。
続編の「王の凱旋」のための長い序章にしか過ぎないのねこの映画。バーフバリ様のすばらしさについては「王の凱旋」の方で。
ターボキッド
「自転車のマッドマックス」で有名な本作。
力が支配する文明崩壊後の世界で、自転車に乗ったヒャッハー共が 緊張感のないバトルを繰り広げる!!
このお手製トゲトゲアーマーのヒャッハー共が。
こうやって自転車一列縦隊で集結するの反則レベルに面白すぎる。寄せ集めだからチャリが明らかに小さいし、その上この格好だと心底漕ぎづらそうでもう……。
チェイスシーンのスピード感の無さも、もう最ッ高。と言わざるを得ない。低予算を取り繕う気など全くなく、自転車しか用意できなかったから自転車で撮りましたといういさぎ良さがいっそ清々しい。それなのにゴア描写だけは異様に気合入ってるのもバカ映画ならでは。
あとヒロインの顔がめちゃくちゃ怖いというのも特徴で、主人公のピンチに駆けつけて敵を後ろから串刺しにした直後の笑顔がこれですよ。
この後ノームの人形を括り付けたバットで虫の息になった敵を撲殺します。この笑顔で。
怖い怖い怖い。
バーフバリ 王の凱旋
序章である前作と合わせて、父のアマレンドラ・バーフバリ、息子のマヘンドラ・バーフバリという2人の英雄を描いた一大叙事詩なのですが、何はともあれアマレンドラの王たる器が凄まじい。
アマレンドラは強い。マジ強い。暴走する象とか一人で止める。蛮族との戦いでは一騎当千バーフバリ無双。マヒシュマティ国の王位を争う従兄弟バラーラデーヴァからの妨害を物ともせず、知略を巡らせて大きな戦功をあげる。敵が卑怯にも自国の民を壁にしても傷つけることなく救い出す。
強く、聡明で、誰よりも優しく。だからアマレンドラは愛される。バラーラデーヴァの奸計により王位を譲るも、本人は気にするそぶりもない。将軍として出席した戴冠式ではアマレンドラを称える民の声が地響きを起こす。
嫉妬したバラーラデーヴァはさらに奸計を巡らせ、アマレンドラを王城から追放するも、マヒシュマティの民は大喜び。「バーフバリ様が我々と共に生きてくださるんだ!!」。
民と共に働いて汗を流し、時にはその深い知見と学識で、民の生活を助ける。子供はアマレンドラの後をついて走り回り、女達は我も我もとアマレンドラにご飯を食べさせる、そしておじいちゃんおばあちゃんはアマレンドラの頭をなでなで。
皆の尊敬を集めつつも、年配者からはめっちゃ可愛がられるアマレンドラ。何これかわいい。え、何。何この気持ち。腐女子の人がよく言う「尊い」って奴なの? アマレンドラちょう尊い。カッタッパさんみたいに助走をつけてスライディング崇めたい。
なおスライディング崇めとはこんな感じです。
「バーフバリー!!」
アマレンドラが如何に素晴らしい王だったか。インド映画特有の大げさな音楽とダイナミックな映像でこれでもかこれでもかと描写する。全てにおいてやりすぎで、全てにおいて格好いい。やりすぎの演出をやりすぎと思わせない、むしろそう語られて当然の英雄、それがアマレンドラ・バーフバリ。
インド映画のご多分にもれず長いのだけど、観ていて退屈する瞬間がない。インド映画って必ず男女が一対一で歌い踊る恋の歌が入って、俺はその辺いつもちょっと退屈に眺めていることが多いのですが、この映画はそれすらも格好いい。
最高のアクション、最高の音楽、最高の脚本でぶん殴られる神話、バーフバリ。今のところ俺の中では2018年ぶっちぎりトップ。俺はマヒシュマティ国民になりたい。王を称えたい。
殺人者の記憶法
ビョンスはアルツハイマーの元殺人鬼。殺人者の嗅覚で、別の殺人犯が娘を狙って近づいていることに気づく。娘を守るために犯人を告発しようとするが、自分の記憶ですらあやふやな状態ではそれもままならない。ビョンスは果たして娘を守ることができるのか?
現役シリアルキラー対元シリアルキラーという構図がもう面白い。作中進行形で起こる連続殺人が犯人のものなのか、それとも記憶を失ったビョンスのものなのか。そもそもビョンス以外の殺人鬼など存在するのか? 現実と妄想の境界をひたすら曖昧にしていったその先で、ある瞬間にバシッと鮮明な線を引く。そのコントラストが鮮やかで気持ちのいいサスペンスでしたよ。
でもラストのカットはよく分かんない。なんか混ぜっ返された感じがしてどうにも。
殿、利息でござる!
羽生結弦の麗しさの形容に「戦国時代なら殿様が側に置くために故郷の村を焼くレベル」ってのを以前見たんだけど、今録画したフィギュアのエキシビション観ながら「そりゃあ村焼くわ……」って嫁さんがつぶやいてた
— baumkuchen (@baumkuchen_) 2018年2月25日
村を焼くのもさもありなん、という嫁さんに「そういやこの映画の殿って羽生結弦らしいよ」と言ったら観たいというので付き合うことに。
このタイトルにこのポスターでコメディだと思っていたら、まさかの人情噺。
ずっと金策してるだけの話なんだけど、これが意外と面白い。チャンバラなしの、人が死なない時代劇も悪くない。落語を聞いてるみたい。
ドリーム
NASAのマーキュリー計画で活躍した3人の黒人女性の物語。実話ベースの伝記映画。NASAといえども1960年代、いまだ根強い女性蔑視と人種差別に抗って成功を勝ち得るか、という。
掛け値なしに良い話なんだけど、2時間という映画の尺に収めるためにメインのキャサリンのエピソードが「上司が有能」「パイロットの兄ちゃんがめっちゃいい奴」で解決しちゃうのが拍子抜けというか、現実はそんな簡単じゃないだろうと思ってしまう。キャサリンは天才だから「見いだされる」のを待つしかないのは分かるけど。
一方で、誰よりも先にIBM PCの使い方を覚えて自分や仲間たちの存在価値を高めたドロシーのサバイブ方法は非常に好み。割と手段選んでないあたりも。
要するに俺は強い女性が差別を乗り越えたことに爽やかな快感を感じつつも、多くの人が言うような感動は覚えてないということなんだな。
なんというか、「いい話」を見ると自分のねじくれ方を目の当たりにすることになるので困る。
ブラックパンサー
マーベル映画らしく、深く考えずに観られるカッコイイアクションヒーローものでした。ただ、タイマンシーンは妙なもっさり感がある。スーツはシュッとしてるのに。
主人公よりもサブキャラ入り乱れての面白ハイテクウェポンバトルの方が楽しかった。
こんな民族衣装チックな恰好をさせといて、その実、槍やら曲刀は超科学ウェポン。デザイン担当はいったい何考えてんだ外連味しかないじゃないか。かざすとバリアになる刺繍のケープでファランクスとか、完全に絵ヅラの面白さしか考えてない発想じゃないか。もうバカ。大好き。
あとヴィランのキルモンガーが残忍ではあるけれど、卑怯でも邪悪でもなく、正々堂々と王位を簒奪していくというのが斬新。これ一作で使い捨てちゃうのが勿体ないのでワカンダの超技術で何とか生かしてほしいもんです。
シェイプ・オブ・ウォーター
ギレルモ・デル・トロ監督は強くて格好いい怪獣やモンスターが好きな訳じゃなくて、全てのクリーチャーを分け隔てなく愛しているのだな、と強く思わされる。
水棲クリーチャーと人間女性のラブストーリー。異種族だけれど見ようによってはイケメン、という「美女と野獣」パターンではなく、完全なる異形。というか片言の言葉ですら最後まで通じない。うん、監督はやっぱりちょっと頭がおかしい。
しかしその上でラブストーリーを成り立たせるのだから目が離せない。後から考えると研究所のセキュリティがガバッガバ(一介の掃除婦が最重要機密とあっさり秘密の逢瀬を重ねられたり、秘密なのに蓄音機でめっちゃ音楽流してたりとか)なのは気になるけど、観てる間はその辺横に置いて忘れてしまうぐらいには引き込まれるね。
あと個人的には研究所のディティールがすげえ好き。空気の湿り気と、機材の古びた感じ、科学研究所なのにおとぎ話的ないい塩梅の嘘くささ。ティール増し増しのオレンジ & ティールも水中をイメージさせていい。こう書いて気付いたけど、研究所に限らず全体を通してトーンが統一されていて映像にちぐはぐな部分がないんだな。
こういう細かいこだわりを思うに、やっぱり「パシフィックリム・アップライジング」も監督自身で撮ってくれればよかったのになあと思っちゃう。つくづく勿体ない。