ロシアンマフィアがブチ切れたおっさんに壊滅させられるやつ ー 最近観た映画の感想
移動都市/モータル・エンジン
かつての文明を吹き飛ばした「60分戦争」の後、人類は移動する都市を作り出し、荒廃した世界でわずかな資源を奪い合いながら生き延びていた。
他の移動都市を駆逐し、捕食することで拡大を続ける巨大移動都市ロンドン。逃げる小都市とのクソデカだんじり祭りに始まり、水上都市や空中都市、人間を襲う自律機械や古代文明の超兵器。
ポストアポカリプス、そして元より俺が愛して止まない超巨大建造物ものが錆びたスチームパンクに彩られ、なおかつ変形しながらゴリゴリ動きまくる。
こんなん好きな要素しかないんですが、残念なことにびっくりするぐらい面白くねぇんですよねこの映画。この設定でこんなにワクワクしない映画が作れるのは逆にすごい。
ヒロインの過去と復讐、<復活者>との約束、だいぶ要らない恋愛要素に反移動主義や超兵器の復活阻止等々、エピソードが山盛りで妙に話がとっ散らかってる割にその運びがやたらと間延びしてるので一つ一つが異様に薄味です。だもんで登場人物にも共感できないし、ずっと茶番を見ている感じで話が全然頭に入ってきませんでした。
映像自体は頑張ってるので単純に作業用BGVとして流しっぱなしにしとく、というのはアリかもしれません。
ラブ&モンスターズ
NETFLIXオリジナル映画は面白くもつまらなくもない中途半端な映画が多い印象ですが、これは良かった。
化学物質で動物や昆虫が人間を襲うモンスターとなってしまった世界。95%の人口を失った人類は地下シェルターで助け合いながら生き延びていた。
観た映画が連続で世界崩壊してますが、人類同士で争っているモータルエンジンに対してこちらはずいぶん優しいです。
主人公のジョエルはパニックに陥ると固まってしまうため、地上での物資調達には参加できない。しかし仲間たちは彼が料理や機械の修理で役に立っている、とフォローしてくれる。
ゾンビ映画で閉じ込められたショッピングモールだったら必ず性格最悪の奴が一人はいてギスギス人間関係が話のメインになってくるのですが、この映画はそうではなくて、それがいい。
それでも自分が役立たずだと考え孤独を感じているジョエルは、遠く離れたシェルターに恋人が避難していることを知り、モンスターで溢れる地上を通って単身で向かうことを決意する。そんなジョエルの身を案じ、本気で寂しがりつつも送り出す仲間たち。いい奴らなんですよ。
地上で出会う生存者もジョエルにサバイバルの手ほどきをしてくれる頼もしい仲間だし、相棒になる犬のボーイはこれまで観た映画のなかでもトップクラスに賢い&かわいい。そして死なないので安心して観ていられる。
登場するモンスターのデザインにも愛嬌があり、狂暴な奴から人畜無害のものまで様々。それらとの遭遇を経てヘタレのジョエルがきっちり生き延びられる人間に成長していくのもド定番でよし。
人類の95%が死んだ世界にしてはだいぶヌルくて結構のほほんと旅ができてしまうのは拍子抜けなのだけれど、この映画で見るべきは命がけのサバイバルではなくて、前述のような優しい世界なので、これぐらいがちょうど良いと思います。必要以上に痛そうだったりハラハラさせられたりするのは合わない。
タイトル通り、全編にラブとモンスターが満ち溢れております。人間同士、ペット、果てはモンスターとの間にも確かに生まれる愛。ラブ。犬かわいいよ犬。
心に負担のかからないポストアポカリプスもの。人類が食物連鎖の頂点からころげ落ちてもなお自然は美しい。そして人がみんな優しいのがなんか嬉しくなってくるので、心身が疲れてるときに観ましょう。効きます。
Mr.ノーバディ
「ロシアンマフィアがブチ切れたおっさんに壊滅させられるやつ(ジャンル名)」です。ハリウッド映画界におけるロシアンマフィアはいつだって手頃な巻き藁みたいな扱いをされていて、いっそ哀れになってきます。
「いつものやつ」と注文したらいつものやつが出てくるこの安心感よ。こういう映画こそ劇場の大スクリーンで観たいやつ。
ジャンル名が全てなので多くの説明は必要ありませんが、キレるまでの描写が非常にテンポよく進むのが良いです。にしても毎週毎週ゴミを出し損ねすぎじゃないでしょうか。
ボブ・オデンカーク演じる本作のおっさんは類似の作品とはちょっと毛色が違って妻子持ちです。求めて家庭を持ち、求めて「普通の生活」を送っているものの、心の底ではかつてのような戦いを望んでもいる、というようなキャラクターに見えました。
なので、偶然遭遇しただけのチンピラも必要以上にボコるし、自宅を襲撃した敵は死体か瀕死にしたあとソファーに並べて説教します。あと燃やします。スタイリッシュにスパッと敵を倒すアクションではないので、より一層「暴力」感が増している感じ。
同じく「ロシアンマフィアがブチ切れたおっさんに壊滅させられるやつ」である『ジョン・ウィック』や『イコライザー』なんかと比べても一番「普通のおっさん」をやっているのに、狂人度合いが頭一つ抜けているのが楽しいです。
クラシックカーでちょっと古い感じのポップスをかけながらのカーチェイスとか、ラストバトルの舞台にいきいきとお手製トラップを仕掛けているところも好き。
ラストバトルでしれっとおっさんが増えてるのも笑ったし、中でもBTTFのドクをやっていたクリストファー・ロイドがめちゃめちゃ元気かつ楽しそうに暴れるので最高でした。