「パシフィック・リム アップライジング」に落胆するなど ー 最近観た映画の感想

 

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 期待を全力でスカしてきたパシリムと、全然期待していなかったのに面白かったレディ・プレイヤー1、期待を超えて面白かったアベンジャーズ。観る順番が逆じゃなくて本当に良かったと思う。

パシフィック・リム アップライジング 

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 賛否両論なのは承知していますが、個人的な意見を言うとクソつまらなかったです。ギレルモ・デル・トロ本人が撮れないなら無理に続編作るこたーなかったんじゃないですかね。

 もうね、観ててパイロットもイェーガーもどうでも良くなっちゃうのよ。パイロットはろくすっぽ紹介もなかったポッと出の練習生たちだから誰が誰だかわかんないし、イェーガーもみんなで突撃して殴り合うばかりなので、形や武器が違うという事以外に何の印象も残らない。

 前作もパイロットやイェーガーの紹介はサラッとしたもんだったけど、やられ役のチェルノ・アルファやクリムゾン・タイフーンにしたって、そのビジュアルと個性的な動きから来る強烈な存在感があった。パイロットは歴戦のロシア人軍人夫婦に、中国人の三つ子兄弟。どちらも台詞ひとつ無いにもかかわらず1回見れば忘れないし、死なせるには惜しいと思わせるだけの魅力があった。

 そういうパワーが今作には全然ない。俺は巨大ロボットの戦闘「だけ」が観たいわけじゃないんだよ。どんなパイロットが操るどんな特性の機体なのか、それが分かんなきゃいくら格好良くアクションしたって盛り上がらんじゃないの。ラストのメインバトルの作戦に至っては「みんなで突撃」でしかないし。

 もっとこう、前作の格闘みたいに重量感と泥臭さを大事にして欲しい。コンテナ握り込んでぶん殴るだとか、タンカーを木刀のように引きずって歩くだとか、怪獣を「むしる」だとか、ケレン味たっぷりで最高だったでしょうに。

 怪獣も宇宙人の尖兵だということが分かっちゃってるので、得体の知れない物に対する恐怖や絶望感もなく。ニュートが操られて現地で指示出してるとことかもう完全にニチアサヒーロータイムの敵幹部状態だし、「ポチッとな」で怪獣が合体・巨大化って何なん。ビックリドッキリメカかよ。

 もちろんニチアサヒーロータイムはニチアサヒーロータイムで良いものだけれど、ニチアサヒーロータイムが観たければニチアサヒーロータイムを観ればいいやって話でね。なんだこの文章。

 無人イェーガーが操られて暴走だとかも含めて、日本のロボットアニメや特撮のオマージュなのかな? と思えるような部分も散見されるんだけど、雑にガンダムが出てきた時点でもう何もかもがどうでも良くなった感がある。制作サイドは本当に好きでやってるのかもしれないけれど、俺は「お前らオタクだからこういうの喜ぶだろ?」って言われてるように感じたよ。

 そして最後の雪合戦に至っては薄ら寒くて目もあてらんない。

 ありとあらゆる部分でコレジャナイを食らわされるこの感じ。今作のつまらなさは期待値の高さからの落差だけでは決してないです。

 もちろん良い部分もありますよ。戦闘が昼間メインで頑張ってるとかイェーガーの名前がかっこいいとか。ロボットが派手に暴れることを求めて観るのならば、十分満足のいく映画です。それならトランスフォーマー観ときゃ良い気もするけれど。

レディ・プレイヤー 1

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 予告を観た段階では、「大乱闘スピルバーグブラザーズ」みたいなお祭り映画かと思い、スピルバーグ映画自体そんなに観ていないこともあって大して期待してなかった(あとカタカナのタイトルがすげえつまんなそうに見える)んだけど、お祭りの規模が想像を遥かに超えていた。

 一度や二度観た程度じゃとても追いつかない程大量かつ新旧幅広い世代のポップカルチャーが網羅されていて、とても70の老人の作品とは思えない。もちろん若いスタッフからのアイデアも多分に含まれているのだろうけれど、それらを知り、受け入れ、取り入れるだけでも膨大なエネルギーが必要となるはずなんだ。スピルバーグお爺ちゃんは途轍もないな。

「VRゲームだから何でも有り」といって本当に「何でも」入れてしまうその姿勢には感服するより他にない。月並みな言い方をすれば、俺達がスクリーンに見るのは人生を賭けてきたオタク文化への愛。愛をひたすら物量&密度という形で投げつけてくる。同じガンダムひとつとっても存在の重みがパシリムとは桁違いなんだよ。

 借金のカタに閉じ込められてVRゴーグルをつけて肉体労働させられるとか、金的ダメージをわざわざスーツにフィードバックさせるとか、現実側で失笑もののシーンが結構あったりしますが、この世界のリアルはVRワールド内にあるのだということを表現しているのでしょう。きっとそうに違いない。そういうことにしよう。強制労働のくだりなんかは原始的なのか近未来的なのか訳わかんなくなってそれはそれで面白いし。

 でもVR廃人だったくせに金と名声と彼女を手に入れた途端「人間は現実に生きなきゃダメだよね」とか言い出す主人公は普通にクソ野郎だと思いました。

アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー

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 ネタバレ厳禁ってことで詳細は伏せますが、MCUの10年間の集大成にふさわしい出来だと思います。

「シビル・ウォー」でも思ったけれど、これだけの数の主役を集めて複数のストーリーラインを並行して動かしつつ、それぞれのキャラに見せ場を持たせ、なおかつ破綻はさせない手腕に圧倒される。こんなアクの強いキャラばかりを何故こんなに綺麗にまとめることができるのかと。

 それぞれの主役たちにピンの映画があって、キッチリとキャラを作ってきていること、それらが大集合してもブレていないこと。まさしく10年間の積み重ねの上にようやく成り立つ映画であって、いくつか歯抜けとはいえアイアンマン1から追ってきた身としては感慨深いものがあります。

 これまでずっと存在を匂わせるだけだったサノスもようやくちゃんと出てきた。俺の世代の人間には多いと思うんだけど、俺のアメコミ文化への入り口はカプコンのマーヴル・スーパーヒーローズで、これこそがまさにこのインフィニティ・ガントレットのエピソードを原作としたゲームなんですね。そういう意味でも結構思い入れのある作品だったりします。シュマゴラスは出てこないけれど。

 基本シリアスで悲壮な戦いの物語のはずが、ガーディアンズやソーの絡みでゴリゴリとギャグを入れてくるあたりも良かった。あとストレンジ先生のマントちゃんは今作でも超かわいい。

 サノスは狂人だけれど、一本筋の通った思想を持った理知的なゴリラとして描かれていて魅力的なヴィランになってますね。ひと仕事終えたあとの穏やかな表情もいい。

「衝撃のラスト」は確かに凄まじい結末なんだけど「こんだけ主役をアレしたんだからまあ何とかなるよな。逆に」って思っちゃって緊張感は若干減りました。若干スレてる自分がちょっと悲しい。続きはよ。 

君の名前で僕を呼んで

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 全然分からんかった。

 男性同士の恋愛ものなんだけど、男同士云々以前にこういう情緒的な描写にとことん縁のない俺。彼らが何故惹かれ合ったのか理解できず。

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 こんな顔でただただ美しい南イタリアの風景を2時間眺め続ける作業となりました。

 そもそも恋愛映画は俺が自分から観ることはまずなく、タイムラインでの圧倒的高評価を見た嫁さんに誘われて行ったわけです。この作品は男同士のカップルとはいえ、むしろ女性の方が共感を覚えるところも多いのでしょうね。

「タイトル通りに互いの名前で呼び合って走るところってさ」

 うん。

「”鉄雄ォー!!” ”金田ぁあああ!!” って感じだったね」

 あ、こいつも駄目だ。

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 二人でアホ面さげて帰りました。

メン・イン・キャット 

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 家庭を顧みない仕事人間のおっさんの人格が、事故により猫の中に入り込んでしまう。人間の本体は意識不明の重体。そんな事にはもちろん気づかない家族にペットとして飼われるうちに、家族の愛情に気づき、父親としてのあり方を見つめなおすおっさん。という、よくある話。

 いや、どこによくあるんだか知らんけど。この手の話に何故か感じる鉄板のお約束感って元は何なんでしょうね。「(俺だよ! 分からないのか!!)」からのドタバタと、ペットに本音を漏らす登場人物たち、それを聞いて心を新たにする主人公、最後は人間に戻ってなんかいい感じにまとまる大団円、みたいなやつ。

 短いし、お約束だけに気楽に見られる映画でした。実際の猫もよくやるおっさんみたいな動きを撮りたかっただけかも知れないが。

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