「ブルース・ブラザーズ」が楽しすぎた ー 最近観た映画の感想

トマホーク ガンマン vs 食人族

f:id:baumkuchen:20210502225218j:plain

アメリカ西部の田舎町で数名の住人が原住民に拉致される。さらったのはネイティブアメリカンの間でも人喰いとして恐れられる蛮族と判明。一刻も早く住人を救い出すためさらわれた女医の夫や保安官など、4人のガンマンが旅立つ。

なんとも描写が淡々としていて、2時間超えの作中の大半が移動と野営、それに伴う会話ばかりという渋い作り。

と、思いきや、何の前触れもなく野盗の襲撃やらなんやらの事件を差し挟んでくる。映画的な溜めの演出を設けずに、効果音やBGMをつけることもなくヌルっと事が起こるので逆に妙な臨場感があります。

ドラマというよりは蛮族と戦うドキュメンタリーを観ているような。何だ蛮族と戦うドキュメンタリーって。

長らくダラダラ旅をしていたかと思えば「目線をフッと横に向けたらそこに蛮族がいました」ぐらいの勢いでいきなり戦闘が始まって、そのまま一気にクライマックスまで。ペース配分がいろいろとおかしいのだけれど、だからこそ終盤が印象に残る。

それまで淡々と旅をしてきたように淡々と命のやり取りが始まって、淡々と大ピンチに陥る。それはもうスルッと絶望的状況に陥るので全く助かる気がしねぇ。露骨な伏線や溜めがないのがここでも逆に良い効果になっていると思います。

邦題がどうみてもB級バカ映画のそれなんですが、思いの外しっかりした映画でした。

前半のロードムービー部分は多くの人には退屈だろうし、敵は食人族なので食材として人体を解体するエグめの描写もある。なのでなんとも人にはおすすめしづらい作品ではあるのですが、ちょっと変わった後味の映画で嫌いじゃないです。

いや、本当はB級バカ映画を観るつもりで再生したんですけどね。 

ファイティング・ダディ 怒りの除雪車

f:id:baumkuchen:20210504191431j:plain

そんなわけで今度こそB級バカ映画を観ようと思ってこれを再生したら、これもシリアスかつ普通に良い出来の映画でした。配給会社は何考えてこんな邦題付けてんだよ。

重機での除雪を生業にする真面目で勤勉な男ディックマンはある日、一人息子を薬物のオーバードーズで失う。息子が薬物など使うわけがないと確信するディックマンは警察に捜査を求めるが、警察は自死として取り合わない。

そんな中、何者かによる他殺であるとの真相を知ったディックマンは真犯人を見つけ出し、復讐を果たすべくひとり孤独な捜査を始めるのだった。

この手の映画って復讐者が特別な戦闘技術を持っているってケースが多いのですが、この親父さんはもともと善良な一般市民。正面切ったバトルはできないので犯人グループの下っ端が1人きりのときに不意打ちで殴り倒しては情報を吐かせ、殺していく。死体は金網でぐるぐる巻きにして滝に捨てる。

これを必要な情報が揃うまで何度か繰り返すんだけど、妙にテンポが良くて笑えてしまう。

殴る→吐かす→殺す→捨てる。毎回同じコーラスをBGMにスローモーションで滝を落下していく簀巻き。天丼芸かよ。

さらには死人が出ると画面が暗転して十字架と名前が出る演出があって、異様なスピード感に拍車をかける。途中からは殺害シーンも省略して「彼は死にました」。とにかく分かりやすいんだけど、日本で言ったら遺影のアップにチーンと鐘の音が鳴るようなものなので、どうしても面白くなっちゃうのは仕方ない。

派手なアクションはほぼなし。肉体労働者ゆえワンパンで人を殴り倒すだけの腕っぷしはあるものの、殴りつづけると息が切れちゃうような親父さんが主人公なので。それでも前述の異様なテンポの良さや、妙な愛嬌のある第3勢力、重機のカッコ良さなどで終始楽しく観れちゃいます。

というか、そもそもこれアクション映画じゃないですね。サスペンスとかスリラーとかそっちのジャンルです。ジャケットも邦題も勘違いを狙って作ってる感じが気に入りませんが、中身は良作です。 

ブルース・ブラザーズ

f:id:baumkuchen:20210507122739j:plain

5月からNETFLIXが値上がりしたので、ひとまずU-NEXTの31日間無料に切り替えて様子を見ています。

月額は高いけど、さすがに作品数No.1を謳ってるだけあって、NETFLIXやAmazn Prime Videoで観られなかった映画も多数。最初に契約するVODサービスとしては全くおすすめしませんが、ある程度他のサービスを使ったあとに一時的に乗り換えるのは有りだな、と思いました。

で、名作と名高い「ブルース・ブラザーズ」。いまのところU-NEXTにしかないので早速観てみましたが、確かにめっちゃくちゃ面白いなこれ!

刑務所帰りのジェイクと弟のエルウッドが、経営難の孤児院を救うために昔の仲間を集めてバンドを結成、一攫千金を目指す。

バンドで金を稼ぐためには手段を選ばない兄弟。警察に追いかけ回され、飲み代を踏み倒した酒場の主人やステージを奪ったカントリーバンドからも恨みを買い、ネオナチや神出鬼没の謎の女からは命まで狙われる。

そうなるのも当然の悪事を働いている兄弟なのですが、視聴者的には音楽シーン(ミュージカル・ライブ)の楽しさで全部チャラになってしまうのが非常にずるい。

教会の牧師はジェームス・ブラウン。説法の最中にめっちゃ歌い出して参拝者は跳ねるわ踊るわの大騒ぎ。楽器店の店主はレイ・チャールズで、一緒に中古の楽器を試奏すれば街中がツイストする。クライマックスのライブシーンの熱狂は言わずもがな。40年前の垢抜けないダンスがダサいやら可愛いやら格好いいやらでずっと観ていられる。

コメディに関しても全力でスラップスティックをやってやろうという気概たっぷり。

VFXがない時代のスラップスティックを作り出すのは物量と破壊。カーチェイスはショッピングモールであらゆるショーウインドウをぶち抜き、商品を撒き散らしながら駆け抜ける。アパートは粉々に崩れ落ち、電話ボックスは空を舞う。あり得ない台数のパトカーは兄弟を追いかけ回し、跳んでぶつかりひっくり返る。しまいには狙撃部隊や陸軍が数百人規模で出動ときた。

コント的演出を過剰にド派手にビッグタイトルならではの金をかけまくった力技で押し切る。もちろん現代の映画ならもっと派手な画はいくらでもあるんだけど、全て実物・実写でここまでやるかってのがとてつもなく贅沢に感じられます。コメディ映画だよねこれ?

この映画に関してはまさしく「古き良き」という言葉を使いたい。昔は良かった、ではなく昔だからこその(今とは違う)良さが全編に詰まってる。

5日前に初めて観たこの映画、作業中のBGVとしてもう何度も流してます。音楽シーンのたびに見入って手が止まるのでBGVには絶望的に向いてませんが。 

前の

一覧