バレーボールとガチ喧嘩する人を見た ー 最近観た映画の感想

キャスト・アウェイ

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飛行機墜落・遭難からのサバイバル映画なんですが、遭難シーンが下手なディザスター映画よりよっぽど怖い。だからむしろサバイバルの右往左往は癒やしのシーンだったりする。少なくともすぐには死なないからね。

生存のために必要だから火をおこすとか飲み水を確保するとか無人島サバイバルものってみんな同じことをやるんですけど、同じことを何回見てもやっぱり面白いんですよね。期待に外れず努力と工夫、少しばかりの運によるブレイクスルーが見られるのが分かっているので。苦心の末にようやく火をおこして狂喜乱舞するトム・ハンクスを観られるのは予定調和といえども嬉しいに決まってるわけです。

そしてバレーボールと大喧嘩をするトム・ハンクス。バレーボールと仲直りするトム・ハンクス。海に流されたバレーボールを命がけで助けようとするトム・ハンクス。

俺、別にトム・ハンクスが好きってわけじゃないんですが、バレーボールを親友とすることでギリギリ精神の均衡を保っているというその演技には、やはり目をみはるものがあります。映画の大半が一人芝居なのにその感情の起伏の激しいことよ。喧嘩のシーンとか普通に笑っちゃったもんなあ。

あと、サバイバルにおけるほぼ全ての問題を解決するダニエル・ラドクリフの死体がどんだけ反則なのかよく分かりました。

なんとか救出され、文明社会に復帰したあとの尺も結構長くて、山程食べ残されたホームパーティの料理や、簡単に火のつくライターなどに感じる虚しさには「ミノタウロスの皿」に近しいものがあって好み。最後はポジティブに終わるので、ハッピーエンド好きにも安心しておすすめできます。

それはそうとNETFLIXは「キャスト・アウェイ」で検索したときの候補に「スイス・アーミー・マン」を入れるのを止めてください。

新解釈・三国志

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福田雄一作品は「HK/変態仮面」とかすごい好きなんですけども、これは心底合わなかったですね。

変態仮面の後に勇者ヨシヒコを観てみて、ブス連呼するところでこりゃ無理だ、とそれっきり続きを観ていないのですが、まさか今更同じネタを見せられるとは思わなかったよ。

道徳とかマナー以前に、美醜感覚の違いをなんのひねりもなくそのままギャグにするのはあまりにもセンスが古すぎじゃねえの、という話。単純に全く面白くない。

全編にわたってずっとそんな感じでした。

あと佐藤二朗は佐藤二朗でした。

ワンダーウーマン1984

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DCEUのビッグタイトルだし、一定以上のクオリティがあることは認めるけれど、それにしたってあまりにも脚本が雑じゃないですかね。

願いを叶える代わりに、その願いに見合った代償を奪われるという、いわゆる「猿の手」的な石の争奪戦がストーリーの主軸なんですが、肝心の「代償」周りの設定がガバガバなんですよねぇ。

「願いを叶えた代償として、願いで手に入れたものを全て奪い取る」みたいな、ルールというにはあまりに乱暴な、屁理屈みたいなチートがまかり通ってしまうので興ざめしてしまう。かと思えばスーパーパワーを手に入れたヴィランの失ったものは「優しい心」とか。なめてんのか。

願いを放棄すれば代償はあっさり戻ってくるし、石を創った邪神さんが設定を間違えてるとしか言いようがない。

観てればこの辺の設定でもってやりたかったことはよく分かるんだけど、あまりにも分かりやすすぎと言いますか。要するに意図が露骨すぎて安易とのツッコミは免れないでしょこれは。お涙頂戴はもっと上手くやれよという話。やる前から「感動の展開」がまるわかりなんだもん。

あと前作のラストバトルなんかもそうだったんだけど、時々CGがクソダサくなるのなんなんでしょうね。

ダイアナとスティーブで「文明についていけてない人」が逆転してるくだりは好きです。

アフリカン・カンフー・ナチス

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第2次世界対戦を生き延びたヒトラーと東条英機はガーナへと落ち延び、新たな「ガーナアーリア人」の帝国を作り上げていた。

カンフー使いの主人公は師匠の敵を討ち、恋人を救い出すために新生ナチスが開催する殺人格闘トーナメントに身を投じるのであった。

ちょっと前にB級好きの間で盛り上がっていましたが、面白くはなかったです。

字幕がみんな関西弁だとか、旭日旗にハーケンクロイツだとか、顔に白い粉をはたいただけの「ガーナアーリア人」だとか、東条英機役の下手すぎる演技だとか、「大きい黒人の女の子(役名)」だとか、B級好きが大喜びでツッコミを入れそうなネタには事欠かないのですが、あえて作ってる感じが強すぎて天然物のパワーを感じない。

ショボさを笑いの要素にしようとするなら実際はどうあれ「狙ってる」感じを出しちゃうのは下の下だと俺は考えていて、そういう意味で字幕を関西弁にしたのは初っ端から大失敗だと思うんですよ。これはボケですよと喧伝してるボケじゃ笑えない。

ドヤ顔のボケにいちいちツッコむのも野暮の極みというか、自分がすげえ面白くない人間に思えてくるので語る口も重くなろうというもんですよ。

ヒトラーや東条英機は多少なりとも本物に寄せる努力をしている(?)のに、ゲーリングだけ何の説明もなく現地ガーナ人の役者を使ってるので、そこだけは普通に笑いました。

燃えよデブゴン/TOKYO MISSION

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昔ながらのカンフーコメディをやろうとしてるのはわかるんだ。わかるんだけど、その手の作品に出がちなお約束キャラクターを今の時代に目にするのはキッツイわ。

全然人の話を聞かないで喚き散らす恋人や、なにかと自分の支払いや借金をドニーに押し付けようとする上司、わざとらしく棒読みの竹中直人とか。トラブルメーカーしか居ない人間模様の中でたびたびギャグを挟んでくるけれど、全然笑えない俺は中国ギャグに向いてないらしい。

そんな中で相変わらずドニー・イェンのアクションはキレがあって、この映画唯一の救いと言えます。デブの特殊メイクついでに肌もツヤツヤになってえらく若返って見えますね。

セットで作られたウソ東京の繁華街。屋根や看板に登ってアクションしだすと、馴染みのあるチェーン店や標識が映っててもテイストが完全に香港映画になっちゃうのは面白かったです。

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