最近観た映画10本-2017年2月

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 ようやく「この世界の片隅に」を観ました。

 そして直後に「パージ」を観ずにいられなかったあたりに俺の限界があります。綺麗な物語を観るとなぜか中和しようとしてしまう体質です。

インターステラー

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 久々に濃いSFを観たなあ。SF者の人にとってはどうだか知りませんが俺基準でね。死にゆく地球から人類を救うために新天地を求めて宇宙へ飛び立つクルーのお話。

 近年で記憶にある宇宙モノと言えば「オデッセイ」と「ゼロ・グラビティ」ぐらいのもんですがこの2作品は比較的現実に近い世界でのスペクタクルが中心であったのに対して、本作はワームホール、相対性理論によるウラシマ効果、高次元存在なんてものが理論上だけでなく実際にぽこぽこ出て来るガチSF。

 なのに物凄く分かりやすいのが素晴らしい。重厚なんだけど説明は明瞭かつ簡潔で、上手に「わかったような気分」にさせてくれる。俺の乏しいSF読書記憶だと「時間封鎖」なんかを読んだときの感覚に似てます。

 伏線撒きまくって最後にばしばし回収していく脚本や、クルーやそれを補助するAIのいかにも人間臭い行動も素晴らしいのですが、何より特筆すべきは暴力的なまでの映像のパワー。ワームホールを抜けるところや探査対象の惑星、ネタバレのXXXだとか。誰も見たことはないが、しかし圧倒的なものを技術と想像力で映像に落とし込んでいる。これ劇場で観たかったなあ。

 小学生のときの担任が「2001年宇宙の旅」を好きで、授業中に観せられたことがあります。もう内容なんか全然覚えちゃいないのですが、それを観たときの記憶が軽くフラッシュバックしました。というかこの作品、「2001年」のオマージュを多分に含むよねラストらへんとか。

インターステラー(字幕版)

インターステラー(字幕版)

 

X-MEN:ファースト・ジェネレーション

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 マシュー・ヴォーン監督なので観た。X-MENという組織のオリジンでプロフェッサーXとマグニートーのお話。1960年台ってことでメカ造形やスーツの絶妙な垢抜けなさ。それを今の技術で作るのは大変にダサ未来感あってよろしいね。

 オチはマグニートーがヴィラン落ちするのが分かってるからまあそうですよねとしか思わなかったが。フツーに面白いフツーの映画でした。

ドクター・ストレンジ

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 アメコミ映画って市民権を得たんだねえとしみじみ思うよね。こんなに金をかけて贅沢な映像化してもらうなんて。これも映画化第一弾のオリジンストーリーなんで脚本はどうでもいい感じ。いろいろあって修行してヒーローになります。すごいね。

 細々したギャグは好きです。マントかわいい。あと「そりゃ事故るだろ」と思いました。

 そんなことより魔術だよ魔術。その圧巻の映像ときたら。って「インターステラー」でも同じこと言ったばかりだけども、こちらはガラッと毛色が違って空間をガッキンガッキン折り曲げて捻じ曲げて組み合わせて噛み合わせる超絶CG!! 序盤も序盤からそんな頭のおかしい万華鏡バトルを展開してくれる。素晴らしい!! 機械!! 歯車!! 歯車最高!!

 魔法って言えばなんでも許されると思って好き放題やってる感。

 真っ先に連想したのは「インターステラー」と同じクリストファー・ノーランの「インセプション」だけど、さらに外連味が強い。原典が何かは知らんのだけど、巨大時計塔の機構部の中で歯車を飛び移り戦う、みたいなシーンが俺は好きで、そういう世界を自在に作り出して戦うこの映画は大好物といわざるを得ない。「時間」がひとつのキーワードになっているあたりにも引っ掛けて時計塔バトルを意識してんじゃないかなーと。

 映像技術の進化には感謝しかないね。今んとここれは映画でしか観れないやつだ。 

Ost: Doctor Strange

Ost: Doctor Strange

 

将軍様、あなたのために映画を撮ります

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  北朝鮮映画界の作品レベル底上げのために韓国から拉致された映画監督と女優のドキュメンタリー。脱北した監督の作品映像と関係者のインタビュー、再現映像で構成されているのだけど再現映像が古い映画に合わせたザラついた画像処理をされていて、記録映像のような生々しさがあるのが面白い。画質が悪いほうがスリリングでリアリティを感じるという。

 淡々とインタビューをするだけといえばそうだし、北朝鮮の内情も報道でさんざん見聞きしてきたイメージから大きく乖離したものではないのだけど映画監督として金正日からそれなりに信用されて恵まれた待遇にあった人間の話というのはやはり特殊。

 好待遇でも命がけで亡命するのだから、かの国の全体主義の異常さを際立たせるものであるよなあ。金日成の葬儀で泣き叫ぶ人民の映像は実際のものなんだろうか。ありゃ怖ぇわ。

 金正日が「映画監督連れてこい」って言ったらとりあえず拉致してきて監獄にぶち込んじゃったので実際に撮影始まるまで5年かかりました、って話はひどすぎて笑っちゃいけないんだけどちょっと笑った。ちゃんと連絡せーよ。

将軍様、あなたのために映画を撮ります [DVD]

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マグニフィセント・セブン

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「七人の侍」「荒野の七人」共に未見。それでも十分面白かった。

 とある西部の開拓街。土地に目をつけた悪い奴に不当な立ち退きを強要されたので用心棒を雇ってやっつけよう。わー。ってだけの話です。

 雀の涙程の報酬に対し、義侠心や利害の一致、その他なんだかよく分からないけど力を貸してくれるガンマンは総勢7人。街の人間や開放した鉱山労働者に戦闘の手ほどきをして無法者の軍団を迎え撃つ。

 どこで手に入れたんだそれだけの銃を。何でそんなにあるんだ銃弾が。いいんだいいんだ気にするな。数百人規模でバンバラバンバラと撃ち撒かれる銃撃戦をシンプルに愉しめばよろし。

 西部劇のアクションってやっぱり早撃ちが基本で、それは集団戦においても変わらない。敵が視界に入るや否や、抜き打ち、ライフル、二丁拳銃に弓矢、投げナイフ直ナイフとそれぞれのスタイルで瞬時に仕留めていく。全員が達人級なので走ってようが馬の曲乗り中だろうが銃弾は100%当たる。

 だから後はスピードだ。殺られる前に殺ってしまえば何百人を相手にしたって負けやしないぜ。そういうスマートな銃撃と埃っぽい画面の組み合わせが西部劇を観慣れない目にはなんとも新鮮でいい。

 まあ俺のお気に入りは聖書の一節を口ずさみながらナイフをドスドス刺してクリッと抉るホーンさん(熊)なんで早撃ち関係ないんだけど。 

マグニフィセント・セブン (字幕版)
 

この世界の片隅に

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 なんか観た後は言葉少なになっちゃう映画だね。よい映画なんだけど「面白かった」は適切ではない気がして、かといって何といっていいか俺にはよく分からん。よい映画です。はい。

 物資の不足する中楽しそうに料理してるところと、玉音放送を聞いたときのリアクションが良かった。悲しむでもなく安堵するでもなくというあのシーンには謎の納得感があってね。そこまでなんとなくホワッと描かれていた一般市民にとっての戦争というものに、いきなりくっきり輪郭がついたような感覚とでもいいましょうか。

 この映画のおかげで子供たちは「はだしのゲン」とかでいらぬトラウマを植え付けられることもなくなるのだね。それって心底いい話だと思う。  

この世界の片隅に 劇場アニメ公式ガイドブック

この世界の片隅に 劇場アニメ公式ガイドブック

 

パージ

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「マグニフィセントセブン」からイーサン・ホークつながりで視聴。別にイーサン・ホークがものすごく良かったとかそういう訳ではないのだけど、前から観たかったやつなので。

 近未来のアメリカでは犯罪対策として、年に一度だけ殺人を含むいかなる犯罪も認められるパージ(浄化)の日が制定されているという設定。人の中にある獣性を定期的に解き放つことで平時の治安安定を図るという超理論でございます。

 まあその辺りの設定は、家屋襲撃ものを作るための材料にしかすぎないので野暮な突っ込みはしない。にしてもパージ支持者が家に侵入する過程が間抜けすぎてどうかと思う。

 暗闇の中での殺し合いはそれなりにハラハラするけれど、大ピンチ → 横から誰かが助けてくれる、って流れがやたら多いのは気になったかな。あと素人のくせに銃相手に斧で襲いかかる人は勇者だなあと思いました。蛮族かよ。

 イーサン・ホークは下がった眉毛のせいか、素で困り顔に見えるので、大変な目に逢うパパさん役は似合ってたね。 

パージ (字幕版)

パージ (字幕版)

 

キング・オブ・エジプト

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 圧倒的プレステ感、および圧倒的教育テレビ感。

 キンキラデラデラのゴージャスなエジプト世界でメタモルフォーセ神バトル、というコンセプトはよく分かるのだけど、悲しいかな技量のほうが追いついてない。

 Youtubeで予告を見る限りは気づかなかったけど、これCGの風景が妙に綺麗で質感がないんだよね。もうちょっと汚しとかないと人間がカキワリの背景の前で演技してるみたいになるんだ、という面白い発見がありました。テレビゲームの中に生身の人間をブッ込んだみたいというか。(プレステ感)

 馬車のシーンなんかも、揺れてる主人公と恋人のアップの後ろで背景だけがビューンと流れてく。これは演技のせいもあると思うんだけど、実際に走ってる感じが全くしなくて、この人ら今ブルースクリーンの前で自前で揺れてるんだろうなあって思っちゃった。走るシーンではその場で足踏みして手書きの背景を流す「お~い! はに丸」を思い出すなど。(教育テレビ感)

 あと神のデザインに関してはなんかパチンコのキャラみてえだなあと思った。いっそのこともっとメカメカしくしてしまっても良かったのではと思うけれど、メタリックなボディに他の神から奪った能力を鍛冶で叩き込むって設定は好き。

 あとアヌビスは真っ黒いボディに入ったヒビから赤い光が漏れ出す、他の神々とは一線を画したデザイン。嫁さんが「ヘビ花火」って言ったせいでそれにしか見えない。

 冥界への行き来に変なツイストを加えるのもやめてくれ。笑う。 

キング・オブ・エジプト(字幕版)
 

グッド・バッド・ウィアード

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 これも「マグニフィセント・セブン」つながり。イ・ビョンホンの華麗なナイフ捌きは見どころのひとつで俺も格好いいなあと思っていたのだけど、嫁さんは俺以上に気に入っていたらしく、なんかビョン様の出るDVD借りてきたので前情報全くなしに視聴。

 満州国でまさかのウエスタン。たった一文でウエスタンという言葉の意味が自壊してますが、そうは言ってもこれは西部劇以外の何物でもない。馬賊による列車強盗、闇市のバラック群での銃撃戦、原野では馬とバイクに日本軍まで交えてマッドマックスを思わせる集団チェイスアクション。

 音楽もアクションももう完全に西部劇。満州なのに。韓国映画なのに。ガンスピンは常にくるくる回り続け、ライフルですら無闇にブンブン振り回してリロードをする。かっこいい事以外にまるで意味のないムーブの連続。それでいいんだ、かっこいいんだから。

 イ・ビョンホンつながりで観たわけですが、「ウィアード」担当のソン・ガンホがとても良かった。どうみても三枚目の小悪党キャラなのに演技もアクションもこれがいい動きをするんだ。何故か「三匹が斬る!」の三遊亭小朝を思い出した。

 ビョン様は中二病こじらせたまま大人になったような人の役でした。

アベンジャーズ エイジオブウルトロン

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 「アベンジャーズ」「シビル・ウォー」だけ観てたので中間が抜けた状態でした。そのせいもあってか後になってから観るとヒシヒシ感じる「つなぎの話」感。

 とはいえそれが悪いわけではない。みんなで酒飲みながらじゃれ合ってたりといったキャライメージを強化するようなシーンは中継ぎストーリーならでは。ここで仲良さそうにしてるからこそ「シビル・ウォー」での戦いが盛り上がるわけだし。

 全体的にはなんか話がぶつ切りで、他のアベンジャーズ2作品よりちょっとまとまりがない感じがする。でもキャップとソーが何度もいい感じの連携アクションを決めてくれたり、ホークアイが地味だったり、ハルク対ハルクバスターがガッツリ映像化されてたり、ホークアイが地味だったりと、相変わらず喰らえこのやろうとばかりの全乗せマシマシ。全員が一箇所に集まって背中を預けあいながらザコ軍団と大乱戦するシーンなんか本当に眼福としか言いようがない。

 ちなみに話は「スタークが全部悪い」の一言で片付くやつだったのでスタークが全部悪いと思いました。

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