俺は昔からコリドラスという熱帯魚が好きでして。
突発的に高まったコリドラス欲を収めるために17cmのキューブ水槽を買いました。小さい水槽なので、飼うのはいわゆるチビコリと呼ばれる品種のひとつ、コリドラス・ハブロースス。
本日迎え入れました
— baumkuchen (@baumkuchen_) 2017年7月20日
コリドラス好き pic.twitter.com/8GNqRyEhLg
コリドラスはずんぐりした体型と、どこ見てんだか分からないまん丸の目、控えめな口ひげが愛らしいナマズの仲間です。普段は水槽の底にぽってりと鎮座して、沈んできた餌をもふもふ食べる。
さて、上記のツイートがおよそ2ヶ月前。
それから俺は長らく意識を失っていたのですが、気がついたら水槽が3つに分裂していました。
怖いですね。
熱帯魚の飼育は初めてというわけではなくて、もう20年ぐらい前、実家暮らしの頃にもコリドラスやグッピーを飼っていました。なので勝手はそれなりに分かってはいます。
餌やり、水換え、掃除、フィルター交換。適当にやってても初心者向けの丈夫な品種ならすくすく育って、どんどん繁殖していきます。
数年経ったある日、ヒーターが壊れて一晩で全滅して以来、飼うのを止めてましたが。
そして今。思い立って再度熱帯魚を飼うにあたり、当時と変わったことはと言えばネット上の情報量。色々調べて、かつては何となくやっていた水槽のメンテナンス、その意味をキチッと理解すると、水槽に「魚を愛でる」以外の意味が立ち上がってきました。
すなわち、水槽とは育成ゲームなんですよ。
魚を飼育するんだからそりゃ育成だろ、って思いますよね。違うの。魚の育成ゲームじゃなくて、「魚を含めた環境」を育てるゲームなんですよこれ。そういう目線で見ると魚は変数のひとつに過ぎません。
色々と面倒を見ながら、シムシティとかの箱庭ゲーが好きな人は水槽買えば良いんじゃね? と思ったのでそういう事を書きます。
生体ユニット
水槽を箱庭ゲーと捉えた場合、その究極目標は水槽の中だけで閉じた生態系を作ることだと思います。要するに、水換えや掃除をしなくてもずっと綺麗で、魚も元気なままいられる環境づくり。もっともそれは事実上無理なので、極力メンテをしないで良い水槽、と言い換えます。
水を綺麗にするといえば水槽に取り付けるろ過フィルター。これはフンや枯れた水草などのゴミを取り除くものというイメージがありますが、実際にはもっと高度な事をしています。それらのゴミから発生するアンモニア(有毒)を、フィルターについたろ過バクテリアが比較的無害な硝酸塩にまで分解するのです。
水槽を買ってきて最初にすることが、このバクテリアを繁殖させることです。バクテリアは空気中にもいるので、水槽にフィルターをセットして水を循環させていると勝手にじわじわ増えます。
3~4日水を回してある程度バクテリアが繁殖した頃を見計らって、死ににくい丈夫な魚を少しだけ水槽に投入。そうすることで魚の排泄物からアンモニアが発生し、それを分解する(餌にする)バクテリアがさらに繁殖することになります。
バクテリアは餌を獲得して繁殖し、魚は有害なアンモニアを分解してもらって元気に生き続け、排泄物を出し続ける。この時点で既に小さいループが出来てますよね。こういう話が俺は非常に好きなのです。環境内の相互作用で物事がうまく循環するシステム。
そんでバクテリアが十分繁殖したら分解能力がさらに上がるのでもっと魚が入れられる。「魚は変数のひとつ」と書いたのはこういうことで、システム全体で見れば魚は「餌を消費してアンモニアを生産するユニット」なんですね。
また、魚には品種ごとに固有の特性を持っておりまして、水槽の状況を鑑みてこれらを投入するのが楽しいのです。うちのコリドラス水槽のユニット(魚)たちは以下。
コリドラス・ハブロースス
- 一般的なコリドラスをそのまま3cmぐらいまで小さくしたような姿
- かわいい
- スキル:食欲旺盛で底に落ちた他の魚の食べ残しを綺麗に片付けてくれる
- でも餌を食べるのがすごく下手。餌をよく土管の下の届かないところに入れてしまって諦めてたりしてる
- かわいい
- よく水草の上とかで憩ってたりする
- かわいい
オトシンクルス
- コリドラス同様、ナマズの仲間
- スキル:水槽の内壁に貼り付いて茶ゴケをめっちゃ食べる
- 水槽に投入したら一晩で壁面と水草についた茶ゴケが全消滅してドン引きした
- 緑コケは食わないが、しょっちゅうガラスをモフモフしているのでコケ自体生えづらくなってる気がする
- 結果、ガラス面がすごい綺麗になって維持管理が楽。偉い
- 時々胸ビレでちょこんと葉っぱに掴まったり底砂の上に立ってたりする
- かわいい
カージナルテトラ
- 特徴:青い
- 以上
魚はただ眺めているだけでも楽しいのですが、生体それぞれに役割を持たせて水槽というシステムを機能させることを考えだすと途端に箱庭ゲー要素が高まって面白さが格段に上がります。刻一刻と変わっていくパラメーターのバランスをとって安定した環境を作り上げる遊びでもあるのです。
水草コンボ
バクテリアによりアンモニアを無害化した最終生成物が硝酸塩。これは比較的無害とは言え、水中に蓄積するとやはり魚には悪影響を与えます。
なので、水槽は定期的な水換えをして硝酸塩を減らしてやる必要があるのですが、硝酸塩って要するに植物の成長に必要な窒素化合物なんですよね。つまり水草を入れてやれば、めきめき成長して結構な量を吸収してくれる。
ここに水槽内の連鎖に連なる要素がまたひとつ。
餌 → 魚 → 排泄物 → アンモニア → バクテリア → 硝酸塩 → 水草(new!)
どんどんコンボが繋がっていく。楽しい。
おまけに水草は産卵場所や魚の隠れ家になったり、コケを生やしてオトシンクルスの餌場になったりもする。水を浄化するメインコンボの他にも魚の成長や繁殖、水草自身を増殖させレイアウトする等の分岐が発生し、ゲームは拡大再生産の要素まで盛り込んでどんどん複雑化していきます。超楽しい。
生体を増やしたければ浄化能力を上げるためにフィルタを大型化したり、水草の成長を早めたければ光合成を促すためにライトを強力にしたり二酸化炭素を添加したりと、パラメーターをブーストするための課金・カスタム要素にも事欠きません。
こう書くと難しい上に金もかかりそうですが、そんなに色々考えたり高価な機材を揃えなくとも、定期的に水を交換して綺麗にしてやれば魚は元気に育ってくれます。基本イージーモードだけど、きちんとシステムを理解した上で管理して狙ったとおりの効果や効率が出せるとより楽しいよ、というお話。
芝生の養生を眺めるのが好きな人におすすめ(狭い)
俺、芝生の養生を眺めるのが好きなんですよね。地ならしして、肥料を撒き、長方形の芝生シートを敷き詰める。上に薄く土をかぶせてあとはじっと待つ。芝生は根付き、伸び、横に広がって徐々にシートの継ぎ目は塞がり、ちょっとやそっとじゃびくともしない一面の強固な芝のフィールドとなっていく。
何が言いたいのかいまいち伝わらない気がしますが、「勝手にじわじわ成長する環境」を構築して眺めることに喜びを感じる人間は結構いるのですよ。
その自覚のある人はさっさとでっかいホームセンターにでも行って水槽買ってきましょう。初めてでもこのゲームの攻略情報はネットに死ぬほど転がってるので大丈夫です。