スパイ映画って一本も観たことがないのですよ。007やミッション:インポッシブルですらも。そんなスパイ映画の文法を分かってない奴が言うのも何なんですが、これスパイじゃないよね。
正義のため、平和のため、金の力にあかせた奇想天外面白ひみつ道具と腕力で悪をねじ伏せる新時代の騎士たち。それがキングスマン。
俺そういう変態他にも知ってる。バットマンっていうんだけどね。
劇中のセリフにもあったように、昔のスパイ映画というのはそういうものなんでしょう。駄菓子屋玩具「スパイ手帳」から連想されるような古き善きスパイ観。
思い浮かべるスパイ像のギャップもあってか、視聴後に感想をざっとさらってみるとそりゃまあ綺麗に賛否が分かれてますね。俺はといえばバーファイトの予告で観ることを決めた口なので全く問題ありませんでした。大好物ですよこういうのは。
あと「キングスマン」と変換しようとすると「キングすまん」になるので「ジャイアントさらば」みたいですよね。どうでもいいけど。
以下、ネタバレ。
- 爆撃で崩れたガレキが文字になっていくオープニングがちょっと面白い
- ちょっとだけね
- ランスロットによる教授の救出劇シーン、誘拐犯たちを華麗になぎ倒し、サイレンサー付きの銃をスチャッと構えて「あなたを救出しに来ました」
- あー、このポーズはどこからどう見てもスパイだ。元ネタ分からんけど
- 一から十までこういうスパイ映画へのオマージュに満ち溢れているんだと思いますが俺にはさっぱり分かりません
- 散弾使用可のトカレフとか頭おかしい。イギリス人が使うことも含め
- だがそれがいい
- 直後ランスロットがサジタル面でズンバラリン
- 人間を大きくふたつに分けると死ぬ
- わあゴーゴー夕張が出てきた
- 両脚のアスリート用義足で人をスパスパ分割するゴーゴーさん、いやガゼルさんのキャラ造形が素敵
- 歩けるのかなこれ
- ランスロットに乾杯のシーン、全員メガネで七三なのでアバターが全員ハリーさんというギャグなのかと一瞬思った
- 全員同じメガネなのは通信用なので仕方ないと直後に思い至る
- バック走行のままパトカーとカーチェイスを繰り広げるエクストリーム無職エグジー。逮捕の窮地に追い込むのと、エージェントとしての才能の片鱗を見せるのを兼ねてんのかな
- ロンドンって野良キツネがいるの?
- 「ブローグではなくオックスフォード」
- よく覚えてたな
- バーファイト。パリッと上等なスーツを着こなした紳士が逃さねえぞとばかりに鍵をかけていくのに痺れるね
- 傘を杖術のように使いこなすアクションから、先端から色々飛び出す面白アイテムとしての傘のお披露目まで
- このトンチキな絵ヅラがたまらん
- ハリー役のコリン・ファースはこの歳でアクション初体験というのだから一流の役者の凄みが分かろうというもの
- スーツが全く着崩れないのすごくいい
- 「マナーが」「作るんだ」「人間を」
- このセリフをはじめ、人間は生まれじゃない、紳士には学んでなるものだ、と全編通してイギリスの階級社会に対するメッセージが散りばめられている
- 振り返ってみればいわゆる労働者階級を見下した発言をする登場人物はみんな三下のボンボンか悪役だったので分かりやすいっちゃ分かりやすい
- 日本人から見るとあまりにも露骨すぎて、こんなイジメっ子いないだろと思うんだが、この辺の空気はイギリス人じゃないので分かんないな
- 国家に所属しないキングスマンの成り立ちが大戦で後継者を失った富豪たちの資産によるもの、という設定が狂気じみていて良い
- やっぱりバットマンを連想するなあ
- お兄ちゃんの本業はバットマンなんだ。全人類をたった一人で救ってみせるという空想に取り憑かれているんだよ
- 「マイ・フェア・レディみたいに?」「それは観たのか」ここ好き
- 掌紋認証のエレベーターから本部直通の地下チューブ。乗り込むポッドにそこはかとないレトロを感じたんだけどあれも何かのオマージュなのかな
- アッパークラスの若者ってみんな普段からこんな格好してるの?
- 大学を自慢したり、水をかけて嫌がらせしたり、とても上流階級の人間に見えないのが違和感。紳士であることが条件ならば、こいつらを後継者として連れてきた担当キングスマンの目は節穴じゃないのか
- 寮が水没。出だしからこういう突拍子もない適正試験をやってくれるとその先に待ち受ける訓練も期待できていいよね。話の本筋ではないので大分端折られた感はあるものの
- ところでこの寮トイレにまったく仕切りがないのだけどいいのかこれで
- おまけに向かいの壁が巨大な鏡ってどんなプレイだ
- 小さい体でふんばって意地でも走らないJBかわいい。懐に入れられて、走る振動に合わせてわふわふいってるJBもかわいい
- ハリーが意識不明になった理由がよく分からない。教授の爆発で顔に飛んだへんな汁が原因なのか
- 昏睡状態のハリーの髭や赤ん坊の成長で時間の経過を説明。訓練期間は半年~1年ぐらい?
- 悪役のヴァレンタインはIT富豪のアメリカ人。ヤンキースの帽子をかぶり、ディナーに招いた客にマクドナルドのハンバーガーをふるまう。イギリス人はどんだけアメリカ人が嫌いなんだ
- 人類を凶暴化させて殺しあいをさせ間引くという計画の荒唐無稽ぶりは昔のスパイ映画に倣っているのだろうね。これをバカ扱いするのは野暮ってもの
- 「スーツは現代の鎧だ」
- 実際防弾防刃なので比喩にも何にもなってないあたり笑える
- 第3試着室で面白スパイグッズ大公開
- 靴・ライター・万年筆。日用品に武器を仕込むのがスパイのたしなみ
- スイッチを入れると即死する毒ってなにそれこわい
- 「ドイツ貴族のあいさつを真似てみろ」
- こういう小ネタ好き。左手がいいよ左手が
- 犬を撃つ最終試験はいまいちピンと来ず。あの場で撃つことに必然性がないので、覚悟や決断力のジャッジにはならないと思う
- 英国無双・ジェントル大虐殺@教会
- 凶暴化したハリーが髪を振り乱し、至近距離でのガンアクション&スパイグッズを駆使しての大虐殺。それでも乱れぬスーツはもはやエロいな
- ここでドン引きという感想も結構あった。確かにえげつない人体破壊描写が多いんだけど、「中身」が出たりしないし出血もあまりないからそれほど気にならなかった
- スーツも返り血で汚れなくていいよね
- 一般市民を皆殺しという点に関しては、全員が凶暴化して殺しあった結果、単にハリーが一番強かっただけというのと、死んだのは原理主義をこじらせた糞カルト集団ということで個人的には中和されてる
- 「でも素人のヴァレンタインに正面からあっさり撃ち殺されるのはどうなのよ」「ハリーさんもいい年だから激しいアクションで疲れててん」「なるほど」
- 凶暴化の反動だと思うことにする
- 師匠と弟子のバディものだと思ってたから簡単に死んでちょっと驚いた
- エグジーがピンチになったら王大人に蘇生されたハリーが絶対出てくるぞ、と思ってたけど出なかったね
- 毒万年筆がきっちり使われるのは良かった
- アーサー以外の裏切り者が存在する可能性は示唆されてたけど、パーシヴァルは作戦メンバーに入れても良かったんじゃないかな
- 高所が苦手なロキシーに衛星撃墜ミッションを与えるマーリンは鬼
- あの古臭いデザイン、というか実際古い飛行ユニットもなんか他の映画で出てきたものだろうか。アメリカ製がどうとか言ってたけど
- 「それ大気圏を出ると爆発するから」
- 金あるんだからちゃんとしたの作れよ
- 潜入のために、ハリーが仕立ててくれていたスーツに身を包むエグジー
- 一人の紳士として。ガラハッドの名を継ぐキングスマンとして。燃えるシチュエーションのはずなのに「紳士スタイル」という言葉とともにこの動画がちらついて台無しに
- 最近のフィクションのハッキングシーンは大体USBメモリーを接続するだけで完了してるイメージがある。スーパーハカーはすごいなあ
- マーリン(魔法使い)と「ウィザード」がかかってんのかな、とちょっと思った
- 追いつめられて情報を吐いてしまうかどうか、という試験までやっているのに、それで不合格になった候補生をそのまま野放しにしているの間抜けすぎない?
- 腕時計に記憶消去モードあったろ
ここまでは奇想天外・荒唐無稽なスパイアクションとして、普通に楽しんでたのね。そしてエグジーが武装した敵に包囲されて絶体絶命のピンチに!!
- 「威風堂々」が流れだしたときの俺の脳内
— Space Cats (@ItsSpaceCats) 2015, 7月 5
- ここで笑かしにくるんじゃねえよ!!
- 誰でも聴いたことのあるクラシックを効果的に使っている例としてマッドマックスの「レクイエム」が思い出されるけれど、これは違う。明らかに違う異次元の何か
- 威風堂々をドリフの場面転換みたいに使うんじゃあない
- リズムに合わせて花火をあげるのもやめろ!! 笑うに決まってんだろこんなの!!
- まさかこの映画で大爆笑するとは思っていなかった
- 声を出さずに爆笑するのはなかなかつらい
- 日本人としては回鍋肉のCM曲として馴染みがあるだけに余計つらいものがある。無人の本部でアーサーの頭が人知れずクックドゥしてると思うとそれだけで笑える
- どんだけピーキーな精神構造をしてたらこの流れ、このタイミングでこのシーンをぶっ込めるんだ、と思ったが逆に考えると最初からこれがやりたかっただけだなきっと
- 後から監督が「キック・アス」のマシュー・ヴォーンだと知って納得。納得しかない。人体破壊描写といい気の狂った音楽の使い方といい。凶暴化SIMの発動中に流れるポップスはヒットガールの虐殺シーンを彷彿とさせるよね
- 監督も知らずに映画を観てた俺
- まあ70点ぐらいの「普通に面白い」映画だと思って観てたんだけど、この瞬間ベタなバラエティのクイズコーナーみたいにそれまでの得点が300倍になった
- ここで笑えるか否かがまさに賛否の分かれ目だと思う。俺は笑える側だった。「労働者階級の青年が立派な紳士となっていく成長物語」とか何もかもがどうでも良くなるわ
- 悪趣味であることは否定のしようもないが
- 「世界を救ったら後ろの穴も使っていいわよ!!」
- スウェーデン王室は怒っていい
- 母親が赤ん坊の部屋のドアを破壊するシーンは「シャイニング」のパロディかしら
- 未見だけれど「お父さんがドアの隙間に顔を挟まれて困る映画」との解説をどっかで見た
- ジャケットだけで適当な解説するのやめろ
- ガゼルとの戦いに関して、新米のエージェントが手練の暗殺者と互角に渡り合えるもんなのか、というツッコミがあった。それはもっともだと今では思うが、観ているときはまだ脳内で楽しい仲間(の頭)がポポポポーンしてたので全く気にならなかった
- ガゼルさんいい動きするなぁ。本業はダンサーだということで納得
- ヴァレンタインに関してはあんまり印象残ってないんだよなあ。諸々の手配をしてるのは全部ガゼルだったし
- サミュエル・L・ジャクソンは「てめえドジャンゴ!!」とか喚いてたときが最高にウザくて最高だった
- Dは発音しない
- 「真のキングスマンとは何かを教えてくれた母キャリーにこの映画を捧げる」だったかな? AFの直後に捧げちゃうのはどうかと思うの
- あ、AFとはAナルFァックの略です
- ハリーの立ち振舞いをなぞるラストはとてもいい
この映画、結果として俺はメッチャクチャ楽しめたわけですが、評価が割れるのは当然でしょうね。紙屑のように人を殺しまくるので。
俺は俺でスパイ映画は初めてだったわけで、今後この作品が自分の中でスパイ映画の基準になってしまうことに関しては不安しかありません。面白さのベクトルがおかしいんだよこの映画。*1
あと嫁さんがコリン・ファースのメガネスーツアクションにめろめろになっていましたので、そういう嗜好をお持ちの方にもおすすめできるかと思います。なんとも麗しいので年に2、3回しかスーツを着ない俺でも良いスーツと靴を揃えたくなる程でしたよ。防弾防刃で踵叩くと致死毒の刃が出るやつ。
*1:一部のDECOゲーを遊んだあとの気分に似ている