「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」の面白さについて考える

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「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」(以下BotW)をやっています。現在プレイ時間27時間ほど、メインクエストが半分ぐらい終わったところです。このゲーム、すげえ面白いと思うので現時点での感想を書きます。ネタバレはないと思います。

 まず俺のゼルダ歴を書いておくと

  • 「ゼルダの伝説 神々のトライフォース (1991)」ー クリア
  • 「ゼルダの伝説 時のオカリナ (1998)」ー 序盤で積み。水の神殿にすら行ってない
  • 「ゼルダの伝説 風のタクト (2002)」ー 葉っぱで空飛びだした辺りで積み

 俺には3Dゼルダ向いてないんだろーなという自己判断で以降はスルー。携帯機で2Dゼルダをやる気もせず、今回が15年ぶりのゼルダになります。

 さらにオープンワールドのゲームはこんなもん。

  • 「GRAND THEFT AUTO (1997)」ー 積み。PC版初代の2D見下ろしのやつ
  • 「COURIER CRISIS (1998)」ー 積み。難しい
  • 「INFAMOUS (2009)」ー クリア
  • 「Batman: Arkham Asylum (2010)」ー クリア
  • 「Skyrim (2011)」ー 序盤で積み
  • 「FALLOUT4 (2015)」ー クリア。全勢力のエンディングまで

 いわゆるサンドボックスタイプのゲームはやったことがありません。そのぐらいの薄めなゼルダ歴およびオープンワールド歴の人間の感想だと思ってください。

オープンワールドと「自由」

 今回のゼルダはオープンワールドです。オープンワールドのゲームって、「どこにでも行ける」「何でもできる」といった自由さが売りになっている事が多いんですが、そもそもみんなそんなに自由なゲームが好きなの? という疑問が俺にはあります。

「NPCを殺せる」とか「強盗その他の犯罪行為ができる」とか、従来のゲームではシステム上試みることすらできなかったことが可能になっていたりしますが、俺は別にそれを楽しいとは思わないんですよね。

 だってそれらの行為は大抵ゲーム進行を著しく不利にするだけなんだもの。商店の主人を殺して買い物ができなくなるとか、犯罪者として警察に追い掛け回されるとか。それって自由なのか?

 BotWでも村の人が大事にしている梅を爆弾でふっ飛ばした画像が話題になってて、それはそれで俺も笑ったけど、俺にとってそれはゲームとは別の「ネタ画像としての面白さ」なんですよね。

「どこにでも行ける」も同様に大した魅力を感じない。行けるからなんなの、ってことが多いから。だだっ広い世界の果てまで時間をかけて歩いていって、なんか現時点では入れない遺跡を見つけました、とか。あるのは素晴らしい景色だけでした、とか。でも俺はゲーム内の絶景に感動できるほど感受性が強くないんですよ。

 他のプレイヤーと遊ぶMMOならそれもありですが、一人でゲーム内観光してもなあ……という感じです。結局、メインクエストを追いながら細かいサブクエストをこなしつつ、言われた場所に言われたとおり向かうのが一番無難にゲームを楽しめる方法だったりする。そういう世界の「自由」を楽しむには、様々なことに遊びを見出すような創造力が必要になってくるのだと思います。

行くと、ある

 一方、BotWの面白いところは広大なフィールドのあらゆる場所に冒険する価値を与えていることだと思います。未知の場所には必ず「来てよかった」と思わせる何かがある。

 それはリンクをパワーアップできる祠だったり、持ち物のポーチを拡張できるコログの実だったり、あるいは何らかのクエストだったり。

 オープンワールドのゲームってやたらフィールドが広いから、正直移動がめんどくさいんですよ。えっちらおっちらと野を越え山越え辿り着いた先にあったものが「絶景」だけだと徒労感を感じて嫌になってしまう。だからこそ確実に何らかのイベントが起こるクエストを追うばかりになってしまうのですが、BotWにはその徒労感がほとんどありません。だって行った先には必ず何かがあるから。

 それはオープンワールドの「どこへでも行ける」に価値を与えたことに他なりません。BotWの世界は走り回り探求する喜びに満ち満ちている。「絶壁をよじ登って山を超えられる!! スゲエ!!」って言われてますが、みんな絶壁をよじ登れることが嬉しいんじゃないんです。よじ登ったその頂上から周りを見渡せば、目指すべき「何か」を見つけられるのが嬉しいんです。

 魔物や動植物を写真におさめる「ハイラル図鑑」の要素もいい。新しいエリアには見たこともない新種がいて、それを集めていくコレクター的な喜び。これにより、祠やアイテムを探す道中ですら楽しめる。

 もちろん他のオープンワールドゲームにもそういう面はあるのですが、今回ほとんどストレスを感じずにすんなり楽しめているのはこれらの目標設定が巧みなバランスで配置されていることに理由があるのだろうなと思います。

 俺、オープンワールドであること自体を楽しんでいるのは初めてかもしれません。世界がだだっ広いことが嬉しいの。

攻略順序が(本当の意味で)自由

 最初に設定される「ラスボス倒せ」以外のメインクエストは「世界中巡ってこい(大意)」という非常にざっくりしたものなので、行動指針が縛られません。

 心置きなく世界中を旅して回れるのはこの「どういう順番で攻略してもよい」という自由によるものです。どこかを攻略した後でないと来ても無駄、という場所がないのでスタート地点からどちらの方向へ向かっても、何かをすればしただけゲームが進むしリンクは強くなる。「無駄足がない」という安心感はこんなにも移動を楽しくするものなのかと。

「徒労感がない」「無駄足がない」と、同じことの繰り返しになっていますが、つまりは「どこにでも行ける」と「どういう順番でも攻略できる」は表裏一体ということ。攻略手順の幅が狭いと、どこにでも”行けてしまう”オープンワールドは移動のダルさばかりが強調されてしまうのだということを理解しました。

 また、無駄足がないという安心感はゼルダシリーズの醍醐味のひとつである謎解きにも良い影響を及ぼしていると感じます。爆弾だとかマグネットだとかの謎解きアイテム類は最初のチュートリアルですべて手に入るので、仕掛けは発見した時点で絶対解けることが予め分かっています。

 そうでなければ「どういう順番でも攻略できる」ということにはならないので当然の話なんですが、その認識は攻略するモチベーションに大きな影響を与えるんですね。

 いわくありげなオブジェクトが気になって弄くり回してみるも、実は後で手に入れるアイテムでどうにかするためのものだからまだ使えませんでした、試行錯誤はただの徒労でした、という状況がない。だから謎を見つけたら解けるまで積極的に何でも試す、という行動に結びつく。

 謎解きも複雑な手順を求めないものが多くて非常に好み。それでいて解くにはワンアイデアの気付きが必要になったりするので、攻略する満足感も得られます。

アクションゲームの良さ

 任天堂なのでアクションゲームとしての良さは言うまでもなく。リンクは飛んだり跳ねたり斬ったり投げたり、軽やかに動きまわります。オープンワールドは移動がとにかく多いので、動きにストレスがあってはいけません。

 物理エンジンを使った世界の作り込みは細やかで、松明をもったまま林檎の木の下にいくと焼きリンゴになって落ちてきたり、川に爆弾を投げ込んでガッチン漁法まがいのひどいやり方で魚が取れるなど、できそうだと思ったことは結構できる。

 戦闘でいえば木刀を燃やして炎の剣にしたり、磁力で操った鉄の箱で直接敵をボコるとか、それを頭の上に落として倒すなんて事も可能。

 だから逆にできないこと(切れない大木は武器がすり抜けるとか)に違和感を感じたりすることもありますが、総じて満足。こんなところまで作ってあるのか!! と驚くようなことが頻繁にあり、その掘り下げぶりはなんとなく「どうぶつの森」を思わせる部分があります。全く別カテゴリのゲームですが、できることの深度が呆れるほど深いという点において。

 俺はどうぶつの森は1ヶ月ぐらいで止めちゃったし、細部のディティールそれ自体に楽しみを見いだすタチではないのですが、広大な世界の細やかな作りこみは常に新しい発見につながり、それは退屈を遠ざけてくれます。あくまでメインのアクションゲームが真っ当に楽しく、その上で仕込まれた数々の仕掛けで遊ぶこともできるということ。それが大事。

 一方ボス戦なんかは実にゲームらしいゲームで、ちょっとしたコツや工夫で隙を作り大ダメージを与えられる辺りは、ああ、任天堂のゲームだなあ、としみじみ。

不満もあるよ

 ゲーム自体は満足なんですが、アイテム周りのインターフェースが使いづらいのはどうにかならんものかと思います。

 武器防具には耐久度があり頻繁に壊れ、かつ敵が持っているものを奪って使う仕様なので荷物は常にストックの武器でパンパン。だからいい武器を見つけたら手持ちのものと入れ替えたい、ということが度々起こります。その時いらないものを捨てるのがめんどくさいんですよ。

 メニューで武器ポーチまで入っていって捨てるを選択するだけなんですが、武器以外にも料理や薬の素材が大量にあるのでページを何度もめくらないと武器ページに辿りつけない。剣→弓→盾→服→素材→料理といったアイテムのカテゴリ間移動と、素材ページ内移動は別の操作にして欲しいのですよね。

 今は剣→弓→盾→服→素材1→素材2→素材3→素材4→素材5→料理となってるから、カテゴリ間移動が死ぬほど遠い。正直アホかと思います。

 その大量の素材を使った料理も面白いんだけど、必要素材を全部「手に持って」から鍋の前で「料理する」を実行するって手順はどうかと思うわ。鍋の前で「料理する」を選んでから放り込む素材を選ぶ、でいいじゃない。鍋から狙いを外して全部地面に置いちゃった時にはヴァーって声が出たわ。

 もっと言えば一度作ったレシピは何度も素材を選ばせないで登録できるようにして欲しいし、同じ料理は材料さえ揃ってれば複数まとめて作れるようにして欲しい。

 細かい不満ではありますが、とにかく頻度の高いことですからアップデートでなんとかしてもらえねーかな、と思っております。

 雨で山が登れなくなるとか、雷で身動き取れなくなる事なんかも結構ストレスだけど、これは冒険のリアリティと考えればまあいいや。

おわり

 最初に書いたとおりまだ途中も途中、メインクエストでいえば半分弱をこなした程度なので、ここに書いたことに当てはまらない部分も出てくるかと思います。

 ただ、プレイ終了まで待ってると多分それまでにいろんな人の意見を目にすることになり、自分の感想なんだか人の受け売りだかわかんなくなってしまいそうなので今の時点で感想を書きました。*1終わったら何か追記するかも。

 このように、これまでのゼルダが合わなかった人間でも楽しめています。ニンテンドースイッチが買えない人はWiiU版をさっさと買ってしまえばいいと思いますよ。俺もスイッチは供給が安定するまで様子見なのでWiiU版です。

 そもそもWiiUを持ってませんかそうですか。流石にWiiUごと買えとは言いませんが、持っている人は試す価値はあります。

*1:「シン・ゴジラ」でそういう状態になった