Steamerデビューして今さらFTLにはまる

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 FTL(Faster Than Light)はSteam他で配信中のインディーズゲーム。面白い面白いと聞いてはいたんですが、手は出していませんでした。

 だって全然面白そうに見えねーんだもの。

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 これがゲームのメインとなる宇宙船同士の戦闘画面。左が自機で右が敵機。ときどきビームとかミサイルが飛び出してぺっちぺっち叩き合うという地味な。なんとも地味な。(公式動画

 ところが遊んでみるとアナログゲームテイストあふれる良質な管理運用ゲームでございましたよ。もうそこら中で面白さについては言い尽くされてる感がありますが、それでも俺みたいに面白そうと思えなかった人はいると思うのでちょっと書きます。

 

 プレイヤーは宇宙船の艦長。壊滅しつつある連邦軍を救うため、反乱軍Rebelの追手をかわしながら重要なデータを基地まで届けるというのがゲームのメインミッションです。

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 タイトルにもなっているFTL(ワープエンジン)をチャージして、宇宙空間に点在するビーコン間を移動します。左の赤いWARNINGエリアがRebelの支配圏で、これに追いつかれないようにEXITビーコンを目指します。EXITビーコンからは次のセクターにジャンプすることができて、最終第8セクターにいるラスボスを倒せばゲームクリア。

 ビーコンでは敵対的な種族やRebelの偵察船と戦闘になったり、遭難者の救出や味方からの援助等、さまざまなイベントが発生します。その結果として、物資が増減したり装備やクルーを入手できたり。

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 イベントは全てテキスト。選択肢やその時の装備によって結果が変化するものも多々あり、この辺はゲームブックを連想させます。

 例えば海賊に襲われている民間船を助けるかどうか。隠れて見過ごせばノーダメージでやり過ごせる代わりに収入はなし。海賊と戦えば船体への被害は免れないが、勝てば宇宙船のスクラップ(通貨代わり)や装備を入手できる。運がよければ民間船からの謝礼も期待できるかもしれない。といった具合にリスクとリターンを考えて選択をすることになります。

 もっとも序盤は敵が弱いんで、物資を稼ぐ意味でも戦闘一択な感じですが。

 

 RebelのAI巡視船「抵抗は無意味です。死ぬべきです」

 そうか! よし! 殺す!!

 

 宇宙海賊「ここを通りたければ通行料を置いていきな」

 そうか! よし!  殺す!!

 

 傭兵「お困りのようですね。我々を雇いませんか?」

 そうか! よし! 殺す!!

 

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 ひどすぎる。

 片っ端からスクラップにして宇宙の平和の礎になっていただくもよし。ゲーム上の効率は横に置いておき、清廉潔白な艦長のロールプレイをするもよし。いろいろと想像で補う必要があるのも実にアナログゲーム的です。

 

 で、その戦闘。これが非常によく出来たリソース管理ゲームなんですね。

 攻撃やシールド、ドアの開閉や酸素の供給等、宇宙船の各機能は船内の部屋にそれぞれ割り振られていて、そこを破壊されると動作しなくなります。火器管制室がダウンすると武器に電力が供給されなくなり、エンジンルームにダメージを受けると回避率が落ちる、といった具合に。 

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 中央にグレーのアイコンがあるのが機能を管理している部屋。敵も同様のシステムを持っていて、基本的に攻撃はどの武器でどこを狙うかということを指定するだけなんですが、互いの装備によって戦法が全く変わってきます。

  • 敵のシールドが厚ければ、実弾兵器か連射可能なレーザーでシールドを貫通して制御装置を破壊、シールド消失を確認したら火力の高いビームで火器管制室を焼き払い無力化
  • 逃げる気満々の敵はコックピットやエンジンを破壊して機動力を奪う
  • クルーを皆殺しにしても勝ちなので、ワープ爆弾を船内に送りこみ直接攻撃、もしくは自分のクルーをテレポーターで送り込み、格闘戦で制圧する

等々。もちろん敵も同じことをやってきますし、各機能に割り振れる電力には上限があるので大抵の場合こちらも何らかの機能が制限された状態で戦うことになります。

 

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 画面下部のこれらの表示が各機能への電力配分と、武器の状態を示しています。これは敵の攻撃で火器制御に異常が起きていて、本来3ゲージ分使えるはずの電力が供給できず、2ゲージ分の電力を消費するバーストレーザーしか使えない、という状態。

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 それを修理中のクルー。ちくちく動いていてかわいい。

 こんな具合に、自機も敵の攻撃や小惑星の衝突などで常にどこかが故障していくので、刻一刻と最適解が変わっていくんですね。そこにスペオペ的なドラマが生まれる。

俺「磁気嵐で武器に回す電力が足りないだと? ならばエンジンを切れ。敵の兵装は光学兵器だ。回避を捨ててシールドで持ちこたえる!!」

俺「まだ足りない? ならば酸素供給機もだ!! 窒息死する前に敵艦を撃沈すれば済む話!!」

俺「ピーという発信音のあとにドリルミサイル発射。何い? 無くなった? よく探せ」

 戦闘はリアルタイムで進行するので敵も自分も装備が充実してくる終盤では大忙し。ただ、ポーズをかけてじっくり指令を出すことができるのでRTSストラテジーのような操作技術は不要なのがうれしい。

 CDの音声でリアルタイムに発生するトラブルに対応していくスペースアラートというボードゲームがあるんですが、FTLを開発するにあたって原型のひとつになっているのではないかと推測します。敵に遭遇するたびに船内を駆けまわるクルーやシビアなリソース管理とか共通点が多いんですよね。こんなところにもアナログゲーム感。まあこれは余談ですが。

 

 FTLの戦闘中に発生するトラブルは多種多様ですが、それらの対処法にも柔軟性があるのが素晴らしい。例えば敵の攻撃によって船内に火災が発生することがままあるのですが、クルーやドローンを送り込んで消火する他に「ドアを開放して部屋を真空にする」という解があります。

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 赤い斜線の部屋が真空状態。まもなく火は消えます。

 火災の規模や部屋の位置によって効率のよい対処法が変わってくるというのがポイント。船外に繋がるドアから遠いコックピットなんかはこの手が使いづらいし、ドアの開閉装置が故障中だったら修理するのと直接消火するのとどっちが速いか、って話になる。

 さまざまなトラブルと、さまざまな選択肢。それが大変なドタバタ感を演出。それらをかたっぱしから片付けていくのが超楽しいんですよね。

 なお、この真空状態はテレポーターで乗り込んできた敵クルーを窒息死させるのにも使えます。調子こいて乗り込んできた海賊がドアをガンガン叩きながら息絶えていくのを眺めるのも味わい深いですし、本来ならば敵船に送り込む爆弾を敵が乗り込んできた部屋に転送して一網打尽にするなんて荒業もあります。柔軟性の一端が分かるでしょう?

 

 これだけいろいろ要素があると覚えるのが大変なのでは? という懸念があるかもしれませんが、あまりその心配は要りません。俺もチュートリアル直後はピンときませんでいたが、3回も宇宙の藻屑になってみればおおよその勘所は掴めます。

 というのも、このゲームが開発者いわく「ローグライクゲーム」だからかな、と思います。ローグライクゲームといえば「不思議のダンジョン」のようなものを連想すると思いますが、FTLも「入手できるアイテムや展開がランダムで、ゲームオーバーでいちからやり直しになる」という点で広義のローグライクゲームといえます。

 

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 スクラップで買える多数の武器や、船体のアップグレード、雇うクルーの種族による特性等、要素は多いのですが1回のプレーで手に入るのは一部のみ。だから全てを把握する必要はないし、手に入ったものでどうやりくりしていくかを考えることが楽しいのです。格闘戦に強いクルーが仲間になったので敵船に乗り込んで制圧する戦い方をメインにするとか、火災を発生させやすい武器を入手したので敵船内を混乱させることを念頭にターゲットを選ぶとか。

 死ぬことで学んでいくというのもローグライクか。どんなにうまく進んでいても不幸な事故であっさり死ぬ辺りもね。そして死んでも、落ち込む間もなくすぐリスタートしてしまう中毒性があります。ちなみにまだラスボス倒せてません。

 

 これほど「やれば分かる」という言葉が似合うゲームも珍しいでしょう。繰り返しますけど、本当に面白そうに見えねえもん、これ。好みに合う合わないはもちろんあるでしょうが、よくできたゲームであることは「見て分からなかった」俺が保障しますよ。価格も980円と安いしね。

 iOS版もありますが、海外ゲームなので英語が苦手ならば日本語化MODのあるPC版をおすすめします。