「ガールズ&パンツァー 劇場版」観てきた

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 嫁さんが「ガールズ&パンツァーの劇場版がマッドマックスらしいよ」などと訳の分からないことを言い出したのです。

 この手の「女の子×マニア好きのする何か」というアニメは普段観ないので当然これも未視聴だったのですが、Amazonプライムビデオで無料だったのでとりあえずTV版を観てみるとこれが面白い。晩飯どきに流し続け、4日間でTVシリーズとOVAを総予習をしたうえで劇場版を観るに至る。

 このアニメ、とにかく戦車が描きたかったってのがガンガンに伝わってくるんですよね。時には軽いフットワークとスピード感で、時にはイメージ通りの重量感と火力で、活き活きと動き回り、吹っ飛ばされる個性的な戦車たち。

「パンツァー」がそうである一方で「ガールズ」の方も何十人といる女の子がきちっとキャラ立ちまくっていて区別がつくのはスゲエなあと。

「戦車道」という設定はあまりにも荒唐無稽で、企画を通すためにむりやり女の子を乗っけてるのは明らかなんですが、観てみるとこれはこれで良いと分かる。普通の男だったらむさ苦しいし、だからといってアニメ風のキャラ付けをされると違和感で痛々しいことになりそう。

 最初から戦車に対しては異物である女の子を乗っけてしまうことで、どんなに異様なキャラ立ちの仕方でも「そういうもんだ」と納得できるんですね。だって背景となる設定自体がおかしいんだもの。何を今更としか。 

 

 なお、分かってたことですが客はほぼ男しかいませんでした。完売していたチケットの99%が男、70%がメガネ、50%がおっさん。メガネのおっさんである俺は完全に劇場内の空気と化しました。なんだこれ。

 この日は同時にエグザイルのライブビューイングもやっていたらしく入り口が大行列になっていたのですが、客層のコントラストが実に鮮やかで。多分見た目だけで判断しても間違いは起こらないと思います。ガルパン客に特典を渡して奥の小シアターに誘導するスタッフのお姉さんたちはベテランひよこ鑑定士のように客を振り分けておりましたよ。

 

 以下、ネタバレあり。 TV版の感想も混ざりつつ。

  • 華道、茶道、戦車道。乙女のたしなみである戦車道の説明とTVシリーズのおさらいが本編開始前に3分ほど。知らないで観にくる人はいるんだろうか
  • 戦車道についてツッコミを入れるのは全く意味のない行為
    • ひとつだけ野暮を承知で言うと、砲撃戦中に顔出しまくってるのは観てて心配になる。「杉野はいずこ」ってワードがちらついて仕方ない
    • あとは爆発しようがグルグル回転しながら吹っ飛ぼうが「特殊なカーボン」万歳ってなもんです
  • 死人が出ないかという心配に関しては戦車道連盟の運営に王大人がいて生き返らせてくれると思い込むことで事なきを得た
    • 死ぬらしい
  • いきなりエキシビジョンマッチから始まって2~30分ぐらいの戦車戦、ちょっとのインターバルを挟んで残りずっと戦車戦。終始やりたいことだけやるスタンスが実に清々しい。マッドマックス扱いされる要因はこの辺でしょうね
  • 紅茶に茶柱
    • 戦車の中でも紅茶を飲み続けるグロリアーナ女学院の適当なキャラ造形は分かりやすくて好きです。激しく走り回る戦車の中でこぼさないのも英国淑女のが身に付けておくべきスキル
      • 豆腐屋か
    • サンダースはハンバーガーを食うし、プラウダはボルシチを食う。アンツィオはどこでもパスタを茹でたがる。いいぞその調子だ
  • 一方、「無能な味方は敵より怖い」を体現する知波単学園
    • 旧日本軍のイメージはいつもこんなん
  • 市街戦に移行。プラウダ高校の登場シーンでカチューシャ(民謡の方)が流れるのはとても良いね
    • ここに限らず全体的に音楽がとても良いアニメ。やはり進軍には音楽ですね。歌ですね。ドーフ・ウォリアーですね

 

  • 市街戦。「アニメで町興し」の成功例だけに、もはや公認って感じで景気よく大洗のランドマークを吹っ飛ばして回ってますね
    • 砲撃の威力高すぎだろ
  • TV版で感心したのが肴屋に戦車が突っ込むシーン。俺も嫁さんも「肴屋あぁぁぁ!!」と声をあげたものですが、直後に店主が「やった!! 改築できる!!」と喜び、連れが羨ましがる。戦車道の試合で破壊されたものには何らかの保障があることが示唆されたわけです。それまでこんなに街をぶっ壊していいのかなと思いながら観ていたのがその一言でスッと腑に落ちた
    • 明らかな大嘘にほんの一摘みだけそれっぽい説明を加えることでなんとなく説得力が出るという
    • なお劇場版で肴屋は全壊しました
      • やりたい放題
  • 「重量差があるから大丈夫、突っ切ってください」とか「逃げてるけど逃げきれない感じで走行」という指示が玄人っぽくて素敵
  • 神社の石段が心配
    • 「ミホーシャ」って呼び方は打ち解けてる感じで良かった
  • ショッピングモールは普通に人がいる砲撃禁止地帯
    • そんな場所をバトルフィールドに組み込むな
      • エスカレーターは丈夫
  • あえてTV版と同じパターンで立体駐車場を使って裏をかく
    • 知波単のメガネ子に学びを与えるという伏線にもなっててよろしいね
  • 水族館はペンギン逃しといてやろうよ
  • 大洗の街は壊滅しました
  • 試合後みほが「勉強させてもらいました」と言うところで一瞬沙織が苦笑いのような微妙な表情をする
    • こういう細かい表情の芝居が丁寧だなと思う。やらなくても良さそうなもんだけどこういうとこでちゃんと仕事してると好感度高い
  • 廃校の危機は去っていなかったってのは戦いを促すギミックとしてはいいんだけど、文科省の七三メガネはちょっと無能すぎだなあ。口約束を反故にするのはいいとして、何故廃校が早まる? 転校先も決まってないのに追い出して何がしたいんだ
    • なんだろうな。分かりやすい三下の悪役にしてしまうよりは約束を守って廃校を中止にするために尽力したけれど力及ばず、みたいな感じのほうが良かったんじゃないかな
    • 学園艦の上に一つの街があることを考えるとどうしても解体するほうが経済的に厳しいと思えちゃうしなあ。やたら廃校にしたがる理由が分からんのよね
  • 夜の学校に誰とはなしに集まる戦車道メンバー。そこに現れるサンダース高の輸送機は音楽も相まって異様に格好いい
    • 生徒会長が手を回したと考えるのが自然か。「普段ちんたらしてるけど実は仕事ができる」っていう生徒会長キャラ多いよな
  • そういえば生徒会の片メガネも会長不在中にちゃんと仕事していた。TV版では冷静な参謀っぽい見た目のくせに無能キャラだったので、良いところも作ってやらないとね
  • 「彼氏と別れるよりつらいよ」「別れた事もないのに?」
    • 免許の写真を見て「無駄に気合入ってますね」とか華さんは親友? に対してひどくないか
    • 「タイマン張ります?」とか言ってたし、口調だけ丁寧で何気に口が悪い
  • 「夜のコンビニでアイスと焼き鳥を買い食い」という風紀チームのやさぐれ方
    • 戦車でコンビニに行く世界 

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  •  最近「The Last of Us Remasteredをプレーしたばかりだったので、ボコミュージアムの荒廃ぶりには「クリッカー出そう」としか思えなかった
    • 忍び足で近づいてナイフで仕留める
  • 歴女チームが遊んでいたのはアドバンスド大戦略だろうか
  • 学園の存亡を賭けた殲滅戦。30対8の絶望的な戦いを前に集結するかつてのライバル達!! ベタだインフレだと言われようが俺はこれが観たかったんだ!! みんなそうだろ!?
    • 「お茶会の会場はここかしら?」聖グロリアーナ女学院!!
    • 「Hey!! 私達も参戦するよ!!」サンダース大学付属高校!!
    • 「私達がかっこよく最初に登場したかったのに!!」プラウダ高校!!
    • 「今度は間に合ったぞー!!」アンツィオ高校!!
    • 「戦車道は人生」意味深なスナフキンの人!!
    • 「助太刀するぞ」お姉ちゃん!! あとやたら喧嘩腰だったくせに全国大会でいまいち役に立ってなかった副隊長の人!!
    • テリーマン「俺もいるぜ」 キン肉マン「テリーマン」 ブロッケンJr「お前だけにいいカッコさせるかよ」 キン肉マン「ブロッケンJr・・・」 ロビンマスク「正義超人はおまえだけじゃないんだぜ 」 ウォーズマン「コーホー」 キン肉マン「みんな・・・」 悪魔超人「こ、これが友情パワーか」
      • 参戦時の台詞は覚えてないので適当です
  • スナフキンの継続高校はドラマCDか何かのキャラクターかと思ってたら映画版の新キャラなのね。参戦理由は分からないけれど活躍シーンがとても良かったので許す
  • ここまで書きながら素で知波単学園を忘れていた
    • 転校までしたのに試合に出られなかった知波単メンバーが本作で一番可哀想な人たち
  • 俺は元気で素直なアホ共であるアンツィオ高校が好きです
    • ちょこまか動く軽戦車部隊というのも好み
  • 嫁さんはプラウダ高校が好きとのこと
    • 幼女と大人の組み合わせを見るとデュフフコポォとなる病気ゆえに
      • おまわりさんこの人です
  • 「とりあえずパスタ茹でようぜ!!」
    • 砂漠でパスタを茹でてて全滅したというイタリア軍ジョーク
      • 似たような話で下が雪だからとパラシュートなしで降下して全滅したロシア軍の話を調べてみたら実話と分かって震える
  • 「203高地ー!!」「意味分かってんのか」
    • ちょっと笑ったけど言ってたのはカチューシャだったっけ? ならあながち間違いではないのでは
  • カール自走臼砲
    • 作中でも言ってたがもはや戦車じゃねえ
      • かまわん続けたまえ
  • 殿を務め、カチューシャを逃がすために一両、また一両と散ってゆくプラウダ高。みんなカチューシャ大好きだな
    • どう見ても死別シーン
      • やっぱり死人出てる説
  • 軽戦車部隊どんぐり小隊によるカール自走臼砲攻略
    • 継続高校の立ち回りが実に良かった。履帯が切れてもハンドルをつけて装甲車として動けるってのは実際の仕様なのか。面白いな
      • 戦車道ってモータースポーツだよなぁと思っていたが、その辺りを地で行っている
  • かたや空飛ぶアンツィオ高校。砲弾と交錯する瞬間スローになるのは使い古された手法ではあるけれど、銃弾じゃなくて600ミリ砲弾だと迫力が違う
  • 戦車をカタパルトにしたスカイラブハリケーン!!
    • あの位置でひっくり返った時点でやるかと思ったが本当にやった
    • 空中戦のある戦車アニメ
  • どんぐり小隊の戦いは前半戦の見せ場として大満足
  • 戦場は遊園地へ。「各自が出来ることを」の指令どおり、それぞれに持ち味を活かした活躍のシーンがある。各キャラクターがTV版からちゃんと成長しているのもよい
    • 「出来ること……突撃? いや違う」
      • はい
  • 「転身」「後退的前進」「撤退的前進」という便利な言葉を覚えた知波単学園
  • 巨大迷路での戦いはバトルシティーだな
    • 制限されたスペースをうまく使って砲塔を回転させる様は何らかのメカニカルな機関を見るかのように美しい
    • 上から情報を与えるアンツィオ高もいい役どころだった。ジェットコースターはさすがにやり過ぎだと思うが、まあいいよいいよ祭りなんだから
      • 「何だか知らんがとにかくよし!!」
        • 散さまもそう言っている
    • レールから降りるときに戦車でごっちんと受け止めたのはちょっと可愛かった
      • 「戦車がかわいい」という感想が出るのもこの作品ならではな気がするな
  • 非力ゆえTV版では怪我の功名ぐらいでしか役に立たなかったネトゲチームが筋トレでパワーアップ。重たい砲弾をホイホイ投げ渡すように
    • 成長ってそういうことなの?
      • 俺は装填手という役どころを軽く見ていたのだけど、おらっしゃあ!! と砲弾を込める様は格好良かったし、その重要性も分かってきた
  • 窮地を打開した一年生チームも成長著しい
    • 外れた観覧車がゴロゴロ転がるシーンは過去2~3回は見た覚えがある
      • 元ネタはスピルバーグの「1941」らしい。「ミフネ作戦」って言ってたからまさにそのものの様子
      • 試合前に観てた映画がそれなのかも
  • 自動車部のブースト
    • エキスパートとしての仕事をきちんとこなすキャラクターは大好き
      • TV版でもエンジン不調を「ぐずりだした」「なだめてくる」という言い回しが実に職人ぽくて好きだった
  • 重戦車を橋の下から仕留めた聖グロリアーナ
    • 対大洗戦無敗のお嬢様高にあえてエレガントではない捨て身戦法を取らせたのがいい。敵の強さ、それを仕留めることの戦術的重要性がよく分かる
  • 最終戦、西住流と島田流の一騎打ち
    • 一騎打ちっつーか西住流は姉妹タッグだが
  • お姉ちゃんの頼もしさは異常。本来非常に仲の良い姉妹であることは中盤の回想シーンで分かっているし、不運なすれ違いで袂を分かってはいても息はぴったりというのが観ていてとても嬉しくなってくる
  • 味方を砲撃して加速するという、西住流にとっては邪道である奇策に乗るお姉ちゃん。空砲とはいえ妹を気遣う顔を一瞬見せる。やはり表情の芝居がしっかりしているなと思う
  • 最後は「勝ったッ!! 劇場版完!!」って感じであまり余韻がなかったけれど、あれだけ詰め込んだから「その後」に振る尺がなかったんだろうな。そのぶん戦車戦が充実していたから問題なし
  • エンドロールも良かった
    • めっちゃ歌ってるアンツィオ。元気だな

 

 萌えアニメに対する多少の照れは一旦横に置き、はばかりなく感想を述べるなら。

 最ッ高に面白かったぞこの映画!!

 俺がベイマックスに求めて、遂には得られなかったものの全てがこの映画の中には詰まっていました。

 大小さまざま、車種を把握しきれない程の戦車が撃っては駆けては吹っ飛び転がりひっくり返る。上映時間の殆どが戦車戦に費やされていますが、全く飽きるということがない。そもそもこの作品が映画化される程に人気を博しているのはリアリティと躍動感のある戦車の動きに拠るところが大きいと思っているので、もっとやったって良いぐらい。

 リアリティ。いや、戦車はあそこまでスピード出ないしドリフトやスピンターンはしないし宙を舞わないことは俺だって知ってますよ。挙動でいったら大嘘もいいところでしょう。でも「リアルよりリアリティ」という言葉もありましてね。

 戦車を並べてみた時の重量や装甲の硬さの違い。加速・停止・砲撃・着弾時の重心移動。仰角を確保するためにリアをちょっと高いところに乗り上げたりする動作などに感じる本物っぽさ。当然誇張はされていますが、基本は実物に即しているのだろうなと。少なくとも素人目にはそう見える。ジェットコースター? いんだよ細けえことは。

 カメラもいい。多用されている砲塔カメラはチェイスや砲撃の緊張感・臨場感を煽るし、俯瞰のカメラで映される超接近戦はもはや戦車同士の鍔迫り合い。射線を捌き合いながら交錯する戦車の動きは「リベリオン」のガン=カタを思わせる。建物を挟んで並走しながら撃ちあう引きのカメラなんかも最高だ。

 そういう観せ方を鑑みるに、これは戦車そのものをアクターとして特撮スタントをさせたアクション映画と考えるのが一番しっくりくる。ならば多少物理法則を歪めたところで何の問題もあるまいよ。戦車かっこいいよかわいいよ戦車。

 戦車多すぎ、登場人物はさらに多すぎですが、先にも書いたようにどのキャラクターにもきっちり見せ場が用意されていて消化不良感はなし。どうしても時間あたりの情報量が多くなるので頭の中で状況を処理しきれなくなるという面もありますが、逆に言えば繰り返し観ても新しい発見があって絶対面白いと思われます。というかもっかい観たい。

 というか観る。作中で世界大会がどうのと言っていたし、興行収入が良ければ続編もあり得る話。それにちょっとでも貢献できたら、という願いもこめつつ。