ラミーサファリラブ

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 野帳のお供として買ったLAMYのsafari 万年筆。ひと月余り使ってますが、思わず1本買い足してしまう位にいい感じなので、何が良いのか聞かれてないのに語ります。

買った理由

 それまで使っていた4色ボールペンから万年筆に切り替えた理由。

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 ちまちま文字を書くにあたって、この掠れが結構なストレスの元になるんですよね。この画像だと「ボールペン」のボの字もちょっと怪しい。

 ノック式のボールペンは実質ペン先がむき出しですから、5分も放置すればすぐに乾いて掠れます。このぐらい小さく字を書こうとすると一画目どころか一文字まるごと書けないこともザラで、その都度手のひらでインクが出るまでぐねぐねとペン先を走らせる。そりゃストレスも溜まろうというもの。

 これが無くなるだけでも買い換えて良かったと思ってます。

見た目  

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 4色ボールペンと並べて。太さは同等ってところです。

 太いまま単色になってしまいましたが、俺は元々赤を時々使うぐらいで青や緑のインクはちっとも減らないという有様だったので殆ど影響はありません。リフィル見ても全然インク減ってないしね。

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 そもそもの成り立ちが「小学生が最初に使う万年筆」という位置づけだったということで、色も形も非常にポップ、かつ頑丈。グリップ部は正しい角度(万年筆は軸を立てすぎると書けない)で持てるように面取りがしてあって、万年筆に慣れていなくてもスムーズに使いはじめることができます。

 インクの残量が見える窓もデザインのアクセントになっていいですね。

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 そして最大の特徴といえばこの馬鹿デカいワイヤークリップでしょう。どこにでも挟んで持っていってちょうだいよ、と言わんばかりのこのゴツさ。ゆやーんとした曲線はペン全体の印象を丸くする効果もあります。

 これらの要素を鑑みるに、デスクの引き出しに常駐させるよりは一本そのまま持ち歩いて、いつでもどこでもメモOKといった使い方に向くと思います。実際問題として、ある程度ラフな扱いに耐えてくれなきゃ小学生には使わせらんないですよね。諺で言えば「タフすぎて そんはない」という奴です。

 そんな諺はありませんが。

 線、太いです。

 EF(極細)を買っていますが、方々のレビューによれば国産品よりもだいぶ太いという話。まあドイツ人は漢字書きませんからね。0.5mmのボールペンよりちょい太いぐらいですか。俺にはこのぐらいが丁度良いです。

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 参考文献:神聖モテモテ王国 新装版 6

 見ての通りで俺は字が上手くないのですが、線が太いとある程度ごまかせる、と信じています。文字の美しさとは空間のバランスです。太い線はそのバランスをほんの少しですが有耶無耶にしてくれると思ってるんですよね。極端な例を挙げれば、幅20mmのポスカで1mmだけ線がずれても気にならないでしょ、という。

 ちなみに俺は自分の字、結構好きです。0.5mmの線が0.7mmになったところで下手なもんは下手なんですが、このサイズで書くならこの太さがベストバランスだと俺字ファンの俺が申しております。

 また、万年筆はその構造上、筆圧やペンを走らせるスピードによりインクの流量が変わって線に強弱が付きます。それを味と言い張れば、歪な字にも説得力が出てくるんじゃないでしょうか。出てくることにしておいていただけますと幸甚です。

なめらか

 使い込んでいるうちに俺が惚れ込んだのは、そのペン先の滑らかさ。

 ボールを転がして粘性のあるインクを「擦り付ける」ボールペンに対して、万年筆は毛細管現象を利用してインクを文字の形に「流す」。俺の中ではそんなイメージが出来上がりました。

 紙面にペン先が触れてさえいればインクは流れていきます。とにかく筆圧がほとんど要らないものだから、ペン先が軽い軽い。文字を書くことに疲れを感じさせないというか、むしろスイスイ走るペン先が気持ちいいのでどんどん書きたくなります。

 ただ字を書くという行為に快感を覚える。俺は別に文具フェチじゃないんですけどね。

 それを考えると、このペンは勉強に使うと良いのではないかと思いました。大人なんで漢字書き取り練習の機会などもはや有りませんが、これだけスルスル書けたら同じ文字を繰り返し書くのもなかなかに楽しいものです。

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インクとか

 今回ホワイトを買い増したのは、赤インクを使いたかったからです。インクはiroshizukuの冬柿。

 あざとい!!

 平べったいインク瓶のデザインとか、飾り紐とか、和風の名前とか。たかが消耗品なのにモノ感出そうとしているのがありありと分かります。くそ、俺もカッコイイと思って買っちゃったよ。どうしてくれんの、このやり場の無い乗せられた感。(やつあたり)

 こういうものを買ってしまった時の悔しい気持ちに名前をつけたい。ドイツ語辺りにはきっとあるよ。シャーデンフロイデ的な。

 最初の方の写真でわかると思いますが、色は赤というより朱色。黒で書いたメモのハイライト用なので、この明るい赤は良い感じです。染料インクなのでゆっくり丁寧に字を書いたら裏抜けしそうですが、ざっとアンダーラインを引くぐらいなので問題なし。

 赤の顔料インクもあることはありますが、顔料は乾くと詰まってしまうので使用頻度の低い赤ペンでは避けています。 

 カートリッジ式じゃないインクは瓶から直接コンバータで吸い上げ。この作業は実に儀式めいていて良いですね。道具としての愛着が湧きます。

 コンバーターは透明なので、窓から透けて見える赤が軸の白に映えるかなと思っていたのですが、この小窓はそれほど光を通すものでもありませんでした。敢えて照明に透かしたりしないとパッと見で赤インクとは分かりません。

 使わない時にもインクの色を楽しみたいのならばスケルトンを選ぶのがよさそうですが、俺はホワイトでいいです。一見赤ペンに見えないペンから赤インクが出てくるのも面白いので。レッドを選ばなかったのもそんな理由です。

まとめ

 以上、他の万年筆を全く使ったことのない人間の感想となります。

 他は知りませんが、絶対値として良い物は良い。自信をもってそう言い切れます。基本、字ィ書くのが面倒くさいと考えている人間にさえメモを取らせる、落書きさせる。そんなペンです。

 そのポテンシャルは本能に訴える心地よさ。ザシュザシュザシュと紙上に線を流しこんでいく、それが最高に気持ちいい。

 高級品ではないから常に持ち歩いて気兼ねなく使えるし、だからと言って安っぽくもない。安価な素材であるプラスチックの軸がしっかりデザインとして昇華されていて、安心感すらあります。この形はプラスチックの質感だからこそ良いのだ、と。

 機能性と満足感、両方をお手軽に満たせる良い道具。使用開始からたった一ヶ月で、今後も末永く使っていけるという確信を持つに至りました。

 ちなみに書き心地の良さについては、店で試し書きした時点では重視しておらず、掠れずスッと線が引ける事だけに注目して購入。野帳を使いたくてメモを取りまくっているうちに、「このペン良いんじゃないか……?」と気づいた次第。

 そうやって意図していない部分から良さを見出だしちゃったらもはや虜ですよね。多分に感覚に拠るものなので思い込み補正も入っていると思いますが、思い込むだけで快適に使えるのだとしたら存分に思い込んで使えばいいと思います。

 最後の一文で「思い」という単語がゲシュタルト崩壊しました。おわり。