祈祷プリズムバトル「哭声 コクソン」他 ー 最近観た映画の感想

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観そびれていた「ドラゴン×マッハ!」の再上映に行けました。「哭声 コクソン」や「イップ・マン 継承」も公開。今回アジア映画が満足度高いです。

あとまたサメが降ってくる映画を観ました。主題歌付いてました。

ドント・ブリーズ

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盲目の老人宅に盗みに入った強盗3人組。相手は全盲の老人ひとり、いとも簡単な仕事だと思われたが、実は老人は超人的な聴覚を頼りに人を殺せる戦闘術の使い手だった!!

「音をたてたら捕捉されて死ぬ」という限定状況スリラー。「ドント・ブリーズ」というのは全てを言い表した良いタイトルだと思います。

普通の一軒家だが、出入り口は板を打ち付け塞がれる。音をたてずに逃れる術はなく、家の明かりは全て消されて状況は老人の圧倒的有利に。音をたてたら捕まる一方、音さえたてなければすぐ横に居ても気付かれない。老人の間近で息を殺して怯えるというシチュエーションが無理なく作れるのでいい感じに緊張感があります。

でもアレだね。普段ゲームやる人間は「物投げて気を引けばいいじゃん」とか考えちゃうので駄目ですね。「The Last of Us」あたりが正にそのもので、音に超反応するクリーチャーを空き瓶投げて誘導したり、ステルスで近づいて仕留めたりするので。最近だとゼルダもそういうことができる。

あと、いくら老人の異常性を強調したところで、そもそも強盗しなきゃいいじゃんって話だからね。彼らに己を重ねてハラハラドキドキするためにはもう少しシチュエーションへの説得力が欲しかったなあ。

ドラゴン×マッハ!

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ひどい邦題はさておき。「トリプルX:再起動」で不足していたトニー・ジャー分(トニー・ジャーのアクションを観ることで補充される成分)を摂取しに行きました。

アクションがもう、美しい!! と言っていいレベルで最高に見応えあり。「ドラゴン」担当のウー・ジンは初めて見ましたが、トニー・ジャーと向こうを張ってのダブル主人公で全く見劣りせず。

そればかりか敵の眉なしナイフ使いやインチキワイヤーアクションの刑務所長もキレッキレ。それぞれに個性的な格闘スタイルで、2時間てんこ盛りのアクションは退屈するということがありません。

脚本も良い。臓器密売組織の摘発というハードな状況を背景に、親子、兄弟、叔父と甥といった身内の情愛に動かされて登場人物たちはそれぞれに物語をドライブさせる。

登場人物は大体後ろ暗いところがあるのですが、基本的には自分以外の誰かのため。悪役サイドですら(ある意味)筋の通った理念に基づいて戦う。痛快アクション、というのとはちょっと違って話は重いけれど、登場人物の行動には納得感があって後味も爽やか。個人的にはトニー・ジャーとウー・ジンそれぞれの叔父さんコンビが好きです。

ごく序盤で明らかになる「ウー・ジンがトニー・ジャーの娘のドナー適合者である」という奇跡的な巡り合わせは出来過ぎにも程がありますが、まあそのぐらいは有っても良い。というか基本皆良い奴なのでどうぞご都合主義で終わってくださいという感じでした。娘と出会う前後でウー・ジンの顔つきが変わって見えるのがとても良かった。

あと唯一と言っていいギャグシーンがすげえ好きでした。スマホメールのやつ。

シャークネード エクストリームミッション 

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大量のサメが竜巻に乗って空から降ってきます。

3作目ともなると、前作、前前作で呆れるということをしなかったアレな人しか観ませんので話の早えこと早えこと。

「では始めます。サメでぇース!!」って感じで開始10分でワシントンDCが壊滅しました。不要な要素を極力削ぎ落とした侘び寂びの極致と言えましょう。

制作費が大分増えたとみえて、今回ユニバーサル・スタジオを派手にブッ壊してますが、相変わらずノペッと安っぽいサメのCGを見るにつけ、カネの使い所を的確に間違ってる感じがビシビシ使わってきてたまりませんね。

今回サメは宇宙進出を果たしました。あと宇宙なのでビームチェーンソーが出ます。スペースマチェーテのビームマチェットよりひどい。

哭声 コクソン

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田舎の村で多発する残虐な殺人事件。犯人は被害者の身内ばかりで、全員体に謎の湿疹が出ており、自我を失った混乱状態。原因不明の事件を捜査する中で、刑事は自分の娘の体にも同じ湿疹を見つけてしまう。

正直な話、結局作中で何が起きてたのは最後まで分かんなかったのですが、観てる間ずっと面白かったしもう一回観たいという不思議な映画です。何が起きているか分からない、しかし確実に真相に近づいているという感覚が常にある。

まあ、分かんなかったんですが。一つ一つのシーンに解釈の余地が山ほどあって、鑑賞後の会話が非常に捗りました。凶暴化の原因ひとつとっても病気や毒物なのか、はたまた悪霊や呪いといったオカルトなのか。登場人物の行動に関しても「あれは何だったんだ」「こう解釈すると」「いやでもあのシーンと矛盾しないか?」といった具合に。

冒頭に聖書の一節が引用されているので、キリスト教モチーフだと解釈するのが良さそうなんですがそっち方面明るくないので何とも。そんなモヤッとした感覚を残しつつもやっぱり面白いんだよな。各シーンのパワーが強すぎる。

國村隼の怪演が話題になっていましたが、殺人鬼や何かの直裁的な恐怖ではなく「得体の知れなさ」だけでクリーチャーめいた人物像が出来上がっているのが面白い。怪演というかパンツ一丁で森の中をうろついて鹿を生でまりまりと食べる姿が単純に面白すぎるだけの気もしますが。

演技という点で言えば娘役の女の子が殊勲。湿疹により凶暴化しつつある、でも正気も残ってる少女という難しい役どころを完璧にこなしていて、先日「お嬢さん」を観た時の記憶も相まって、韓国映画界は子供にひでえ役をさせるもんだと感心しました。

なお、この映画の一番の見所は中盤の祈祷バトルです。娘の湿疹を悪霊の仕業と断じて高名な祈祷師を呼びお祓いをする。一方そのころ國村隼も自宅でなにやら呪術めいた儀式を行っており、それらがグルーヴィーにシンクロする訳のわからんシーンが大変楽しく、俺も混ぜてもらいたいと思いました。

インドオブ・ザ・デッド

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ロンドンゾンビ紀行」より緊張感のないゾンビ映画を初めて観ました。

舞台は離島だし、登場人物がインド人ってだけでインドでなければならない必然性もなし。どうせネタ方面にするならインド映画らしくダンスさせれば良かったんじゃないですかね。冒頭にインド版スリラー流れてたし。

デス・レース2000年

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ツノや銃の生えたトンチキな改造車で、人を轢き殺すほどにボーナス得点が加算されるデス・レース。轢くなら若者や老人ほど高得点だ!!

ゲーム「カーマゲドン」シリーズの元ネタだということだけ知ってて観たら、悪役としてスタローンが出てきて吹いた。そりゃスタローンにも下積み時代はあるよな。

不謹慎すぎて今では制作不能なカルトムービー扱いですが、ゲームや漫画ではデスゲーム全盛の昨今ですからむしろマイルドに感じますね。大変に頭の悪いデザインのカーとおっぱいを見るための映画です。

西暦2000年が遠い未来だった頃の古い映画ですが、レース物として存外にスピード感があって面白かったです。

イップ・マン 継承

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ドニキ(ドニー兄貴)のイップ・マンとマイク・タイソンが戦うっつーたらそりゃ劇場で観ますよ。実際そのカードは最高でした。速い連撃が売りのイップ・マンに対して一発当たれば相手を数メートルは吹き飛ばすマイク・タイソンの重たいパンチ。演出としては漫画的ですが、くっきりとした好対照が浮かび上がって実にいい。

一方で話は全体的にまとまりがなくて、それも多分マイク・タイソンの影響。おそらく負ける役のオファーを受けたがらなかったのではないかと推測するのだけれど、地上げのためにさんざん悪辣な真似をしていたマイク・タイソンがイップ・マンと引き分けてあっさり手を引いたあげくに二度と出てこないという。おかげでタイソンの退場前と後で話が空中分解してる。変わってストーリーの主軸になる奥さんのエピソードもいい話なんだけど別々の作品で観たかったねこれは。

アクションは相変わらずいい。本当にいい。マイク・タイソン戦もさることながら、新しい異種格闘枠として登場するムエタイ使いの刺客は肘打ちメイン。これが超接近戦の詠春拳とガッチリ噛み合ってて本作の個人的ベストバウト。

そして別流派の詠春拳使いとして出て来るのが「ドラゴン×マッハ」で化物じみた戦闘力を誇ったマックス・チャン。この人も脚本の影響で悪役に落ちたり味方になったりライバルになったりと浮き沈みが激しいのですが、イップ・マンとは「技の1号・力の2号」って感じで同じ詠春拳でもスタイルの違いがはっきり分かって良かった。

総じてバトルは文句なし。これでもかと魅せてくれて満足感たっぷり。それだけで十二分に観る価値ありなのですが、それだけに色々と惜しい感じはありますね。

ちなみに前情報全くなしで観た嫁さんは「あの人マイク・タイソンにそっくりだったね!!」って言ってました。そりゃまあ本人だからね。

血まみれスケバンチェーンソー

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うん。映画化しちゃいけない原作ってのはあるよな、って思った。

いや、原作は面白いんだけども、そのテンションに人間のほうがついてこれてないよね。

ギーコ役の内田理央もネロ役の山地まりもどちらもちゃんと演技はできてるんだけど、役としてはどっちも狂人だからね。まともさが垣間見えるとどうしても違和感になる。

なお、登場人物が気の狂ったようなメガネをしているのですが、エンドロールに「メガネ協力:Zoff」というクレジットがあったのが一番面白かったです。

フリー・ファイヤー

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「人間は致命傷を負ってもすぐには死にません。その際の往生際の悪さを描いたのがこの映画です」って断りが冒頭にありまして。その通り、上映時間のほとんどがまばらな銃撃戦と悪態で占められています。

パァン!!

「Fxxk!! あの野郎俺を撃ちやがった!! 畜生痛え!!」

パァン!!

「Fxxk!! あの野郎俺を撃ちやがった!! 畜生痛え!!」

パァン!!

「Fxxk!! あの野郎俺を撃ちやがった!! 畜生痛え!!」

パァン!!

「Fxxk!! あの野郎俺を撃ちやがった!! 畜生痛え!!」

以下、永遠に繰り返し。

撃っては撃たれ、這いずり回り全員じわじわ弱って行きながら、自分だけは生き延びて逃げようという醜い人間模様。スタイリッシュさも爽快感も、観終わった後に得るものも何ひとつありませんが、これで90分退屈させずに持たせるのは大したもんです。人にはおすすめしませんが。

ミルピエ パリ・オペラ座に挑んだ男

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パリ・オペラ座での新作バレエ公演。プロデューサーのバンジャマン・ミルピエを追ったドキュメンタリー。

前半寝ました。映画のせいではなく、対象に興味の薄いドキュメンタリーを観た俺が悪いのです。

それでもやはりバレエのシーンには感じるものがあります。バレエという肉体のアートは興味を持っていなかった人間の目すら引きつける。俺にはバレエの精緻な動きは筋肉の躍動を美しく見せるためのもののように感じられました。

OK、ミルピエの横顔はわかったからバレエを映してくれ。頼む。(ラストの公演シーンでミルピエの横顔を抜いたカットがやたら長い)

オペラ座での公演というのは一大プロジェクトで、ダンサーだけではなく多くの裏方の尽力のもとに初めて成り立つのだな、というありきたりな感想など。そしてこの手のプロジェクトにおいて、トップに立つ人間が厳しく有りつつも常に上機嫌でいることの素晴らしさを思いました。

マイケル・ジャクソン THIS IS IT」を観た後の気持ちに似た何か。

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