読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Kindleで読んだ漫画 23~24

漫画

 f:id:baumkuchen:20141214181648p:plain

  • Helck/七尾ナナキ
  • つらつらわらじ/オノ・ナツメ

Helck/七尾ナナキ


Helck(1) (裏少年サンデーコミックス)

Helck(1) (裏少年サンデーコミックス)

 

 西洋人のニンジャ好きと同じくらい、我々は剣と魔法のファンタジーが好きすぎる。

 ドラクエの影響? ロードス島戦記? もっと遡って指輪物語やアーサー王伝説?

 日本人オタクの中世ファンタジー好きの起源は分かりませんが、もはやベタと言われてしまう位には「勇者と魔王」という題材はありふれています。数ある作品は多様性を極め、魔王視点の作品も少なくありません。

 ゲームならパッと思いつくのは「ウィザードリィ4」。スーファミの「ダークハーフ」。小説なら「アラビアの夜の種族」。そして漫画は「地獄戦士魔王」を連想してしまって台無し。あと挙げる作品で大体年がバレる。

 このHelckもそういった逆視点ものの一つです。

 勇者が魔王を倒し、人間は魔王軍との戦いに勝利。平和を謳歌する人間社会を尻目に、魔界では新魔王の座を賭けたバトルが繰り広げられる。

 魔王の座を賭けたバトルと言ったら「幽★遊★白書」というどメジャー作品がすでにやっちゃってる*1わけで、この界隈は本当にレッドオーシャン極まりねぇなあと思うのですが、この作品には「魔王選抜の優勝候補が人間の勇者」という一発ネタに近い独自性があります。

f:id:baumkuchen:20141209235944p:plain

  勇者ヘルク。この世界の勇者は「覚醒」するもので、複数人存在することもある。この国の魔王を倒したのは他の勇者なんですね。

 とってもイイ笑顔で「人間滅ぼす」と語るヘルク。

 戦闘では圧倒的な強さを誇り、試合後には対戦相手の健闘を讃えるスポーツマンシップも併せ持つ。人間を魔王にするわけにはいかないと、運営サイドが突然種目をチェスや料理に変更するも、単なる筋肉バカではない万能ぶりを見せつける。気さくな性格で魔界の民にも大人気。

 そのように逆転現象の可笑しみを描いたコメディ調で話を進めながらも、ヘルクの過去や人間界の現状を小出しにして、手堅く設定を描写している感じ。

 最近の連載で感心したのが、「しんでしまうとはなさけない」というお約束の取り込み方。曰く、人間の王というのは勇者と異なる「支援型」の覚醒者で、契約を交わした勇者は絶命後、王のもとで蘇るのだと。発動条件は王への絶対服従。

 それを設定だけに終わらせずキャラクターの動機に組み込んでいるあたりも上手いなーと。

 まだ話は全然序盤なのでこれから面白くなるのか尻すぼみになるのかは読めないのですが、画はスッキリしてて好みなんで続刊も買う予定。

 

つらつらわらじ/オノ・ナツメ


つらつらわらじ(1)

つらつらわらじ(1)

 

「連々草鞋」と書くのかな。長く連なる草鞋の行列、参勤交代のお話。

 前に書きましたけど、俺は「ちゃんとした大人」が出てくる話が好きなのですよ。先を行くその立ち振舞いひとつで若者を正しく導けるような。 

f:id:baumkuchen:20141213004016p:plain

 破天荒な殿様として世に知られる熊田家当主、熊田治隆。

 派手好き、酒好き、甘いもの好き。語りぐさになる逸話は数知れず。質素倹約を是とする幕府の方針に真っ向から対立し、老中からは目の敵にされている。

 そして共に参勤交代の旅をする家老・熊田和泉から見れば扱いづらいワガママ殿様。

 17歳で家督を継ぎ家老となって4ヶ月、初の大役が参勤交代の供家老。予定通りつつがなく旅を進める事が和泉の勤めであるのに、治隆は気まぐれに旅程を変えて寄り道するわ、宿で大筆を振るい部屋を墨びたしにするわ。挙句は途中の宿場に落とし胤まで作っている始末。 

f:id:baumkuchen:20141214174050p:plain

  表面だけ見れば豪放磊落な派手好き。しかしその実は繊細かつ、思慮の深さと懐の深さを持ちあわせた名君なのでした。周りの者を振りまわす治隆の振る舞いは、確かな理と人に対する優しさ、あとはちょっとした悪戯心から生まれているのです。

  未熟とはいえ聡明な若者である和泉は、教えられるでもなくそれを学び取っていく。先を行く者と後に続く者のこういう距離感が大変に好きなのですよねえ俺は。

 そしてもう一人、治隆に惹かれる若者、公儀御庭番・倉知九太郎。幕府の倹約令に従わない治隆を監視するため、中間(人足)として行列に潜り込む。治隆の弱みを握って幕府に報告し、その失脚のきっかけを作るのが任務であるのだけれど、今しばらくこの殿様を見ていたいという思いから、むしろ治隆の瑕疵を伏せるような行動まで。

 治隆という名君と共に過ごすことで和泉と久太郎という立場が真逆の若者二人が同じように糧を得て成長していく。あるべき姿を見せるという事は、多くの言葉を費やすよりも確かな説得力をもって浸透していく教えなのです。

 治隆以外にも小姓頭の山和木三郎左衛門や筆頭家老の行木長門など、「大人」組は大変魅力的な人物で固められており、参勤交代という壮大な旅を描いたロードムービー(ロードコミック?)は痛快の一言。

  前回のエントリにも書きましたけど、無料で配信していた1巻を読んで、最後まで買ってしまうくらい面白かった。こういう出会いが多くなるから電子書籍はありがたい。そして「無料版」タグを付けなかった講談社万歳。沢山買いますのでこれからもその方向でよろしくお願いします。

*1:中世ファンタジーじゃないですが