裏サンデーの投稿トーナメントの合格作品で月一連載中。今、裏サンデーの中で一番続きが待ち遠しい漫画です。
主人公のアンダーさん(の生首)。
有史以来、人間と魔人が戦争を続けている世界。人間のアンダーは「不死者」です。首をもがれようが灰にされようが、どこかの欠片から体組織を復元して蘇る。
これは旧人類のロストテクノロジーらしいのですが、この「不死者」を始め、世界情勢や歴史・技術等の詳しい設定は現時点では良くわかりません。説明的な台詞は用いずに会話やビジュアルで匂わせるに留まるんですが、これがなかなかワクワクさせてくれます。
魔人は魔術や念波を使い、巨大昆虫を操るファンタジー世界のそれ。一方人間は「腐鉄菌」による技術の後退が示唆されていますが、それでも科学技術が完全に失われた訳ではない様子。
互いに全く異なる技術体系であることを示すこのシーンなど、「説明的でない説明」の最たるものでホント好き。
「魔竜」なんていうファンタジーなものが出てきたかと思えばこんなんだし。
ちなみにロボではなくて生物です。変形するけど。
こういう風に小出しにされていく設定を追うだけでも先が期待できますし、ストーリーやそれに付随する人物描写も実に読ませる。
主人公アンダーは不死者ですが、本当に「死なない」だけ。蘇生には数日を要するし、超人的な戦闘力があるわけでもない。結果、アンダーは敵陣で爆死する特攻要員として使われ続け、感覚や感情をほぼ失っています。
ついには戦争自体どうでもよくなり作戦を放棄。魔人軍に捕われて、実験として処刑をされつづけるも心は死んだまま。淡々と処刑され、淡々と生き返る。
とあるきっかけでアンダーは感情を取り戻すのですが、捨て駒扱いをされたことで人間に対する執着はもはやなく、殺されても堪えないので魔人に対する憎しみもなく。飄々とした超越者としての振る舞いがいい。
基本ぼんやりとした天然ボケ。
魔人が敵対者であるという感情はすでにアンダーの中にはなく、実際に見て、触れたものを自分の世界の一部として判断する。そうしたアンダー目線に立ってみると、いつのまにか魔人に肩入れしている自分に気づきます。今んとこ魔人サイドの話しかないこともあるんですが、実に人間味に溢れている。
俺が好きなのが女性小隊のベテラン兵サウジーネさん。
裁縫上手、酒好き、分別のある大人で覚悟完了した軍人でもある。 全く美形ではない小太りのおばちゃんなのですが、いちいち言うことが素敵なんです。惚れる。
実際に読んでもらいたいので詳細は避けますが(今のとこ全話無料で読めます)、どのキャラも絵だけではなく性格や振る舞いの描き分けがしっかりできていて、行動原理にも納得がいく。設定だけではなく人物描写にも説明臭さが全くなくて鼻につかないんですよね。
ストーリーも「引き」が見事で、毎月毎月もどかしい思い。 ことに現最新話など、これまでの中でも最高の引きで終わっており、おまけに2ヶ月休載の3ヶ月待ち。生殺しかよ!!
繰り返しますけど全話無料で読めますんで、気になる人は俺と同じように生殺しの目にあって一緒に悶えましょう。単行本も最新話まで収録されてます。
デフォルメの少ない画風ですし、それでいきなり主人公の首がもげてたりするので好き嫌いが強く出そうな漫画ではありますが、俺は最初から注目してたぜ、と言いたいがためだけにここに紹介しておきます。
トーナメント勝ち抜き作品を即連載化、即単行本化するこのスピード感。裏サンデーはサンデー本誌の体たらくとは対照的に、挑戦的な試みが多くてWEB漫画誌の中でもかなり好きです。こういう少年誌では絶対に受けなさそうな漫画が発掘されていることからも、その試みはある程度成功してると言えるのではないかと思います。
あとは単行本が微妙に高いのをなんとかしてもらえれば。買うけどさ。