観て、応援してきました。
これは「プリティーリズム・レインボーライブ」という女児向けアニメ作品内で結成された「Over The Rainbow(オバレ)」という男性アイドルグループを中心としたスピンオフ作品です。当然ながら元のアニメは観てませんし、アニメのイケメンを眺めて愛でる趣味もありませんから、そもそも俺はこの映画のターゲットではありません。
じゃあ何故観たんだといえば、Web上での評判があまりにも不穏だったからです。
キンプリキンプリと話題になって久しいので、詳しいことは自分で調べていただきたいと思います。どのレビューを見ても何が書かれているのかさっぱり分からないと思いますが、この映画への興味がそそられることだけは請け合います。俺もそうでしたから。
作品そのものの突き抜けぶりも凄まじいものがあるのですが、加えて特筆すべきは本作品独特の「応援上映」。
動画を見れば一目瞭然、ペンライトやサイリウムを持ち込んで声援OKというライブビューイングにも似たイベント。これが当たって、熱烈なリピーターを生み出し来場人数はのべ30万人を超えたとか。
俺は近場の小さな映画館でも上映されることになったのをきっかけに通常上映、応援上映と鑑賞。女性客だらけの中で吹っ切れられなかったので応援上映は後ろの方で様子を眺めていたのですが、これは間違いなく大きいシアターが楽しいだろうと確信したのですね。
100円ショップのサイリウムを持って真ん中近くで観ていた嫁さんは応援上映が気に入ったのか、その界隈では最強と言われるペンライト「キングブレード」、通称キンブレを購入し再参戦。さらには既に応援上映を数回キメてる友達のMちゃんと一緒に川崎チネチッタにも行くというので、そんなに大きな劇場に行くなら今度は俺も応援するぞと付いて行きました。(キンブレは嫁さんが2本買ってたので貸してくれた)
以下、応援含めた感想。例によってネタバレありですが、この映画は初見だと確実に精神が処理落ちするので何が起こるか軽く予習してから観に行くのもいいかもしれません。
- 前説あり。スタッフによる諸注意のあと、お約束のようなコール&レスポンスが
- 「今回初めて観に来た人ー!!」
- \はーい!/
- ちらほら振られるキンブレ
- 「10回以上観に来てる人ー!!」
- \\\はーい!///
- 戦慄を覚えるほど多い
- 「じゃあ僕に会いに来てくれた人ー!!」
- \はーい!/
- 俺などはスタッフ調子に乗りすぎだろ、と思ってしまったが会場は優しさに満ち溢れ、いや、優しさにみなぎっていた
- ここで前説する仕事したい
- 戦いは予告から始まっている
- 客層を考えてかBLアニメ作品の予告など流れるが、この時点で既にキンブレの色が統一されており、キンプリエリートの練度の高さに恐れおののく
- (作法を踏み外そうものなら俺は消されるかも知れない……) *1
- 映画泥棒で赤いキンブレ振るの楽しい
- \ダンスキレキレ!!/
- 映画泥棒を応援しちゃダメだよ
- しかし使ってみるとキンブレが人気商品なのはよく分かる。軽いし、明るいし、色の切り替えも簡単
- これは100円のサイリウムなんか使ってられないな、と言ったら「でもここぞという所ではキンブレに追いサイリウムしている人は結構いるよ」とMちゃん
- オリーブオイルみたいに言うのやめてくんねえかな
- 上映前にメーカーロゴ。キンプリを創りたもうたメーカーの、その名を叫び感謝を捧げる儀式がとり行われる
- \エイベックス!!/
- \\\ありがとー!!///
- \タカラトミーアーツ!!/
- \\\ありがとー!!///
- \タツノコプロ!!/
- \\\ありがとー!!///
- \アリガトォ!!/\アリガトォ!!/\アリガトォオオオオオオオ!!/
- 会場がバキの最大トーナメント編みたいになっててすげえ面白い
- この作品の世界では「プリズムショー」というフィギュアスケートと歌を組み合わせたライブパフォーマンスが人気という設定。主人公のシンが生まれて初めてオバレのプリズムショーを観に行くことから物語が始まる
- プリズムショーの演者、プリズムスタァたちはそれぞれ独自のパフォーマンス「プリズムジャンプ」で観客を魅了する
- 舞台の上から放たれたハートの衝撃波を喰らい服がはじけ飛ぶシン
- 続けざまに客席へ撃ち込まれるプリズムジャンプ「無限ハグ」!! 無限の分身を生み出し会場全てのファンにハグをする放出系の荒業だ!!
- シン(全裸)「なんだこれー!!」
- 全くだ
- 「正気を保とうとすると殺られる」事が開始5分で分かる親切設計。生きて還るには会場の熱気に身を任せ心底楽しむより他にない
- 場面は突然オバレメンバーと女の子の自転車二人乗りシーンに切り替わる。これが応援上映の売りの一つ、アフレコシーン。女の子の台詞が画面に表示され、それを発言することで擬似的にオバレメンバーとのイチャイチャシーンを体感できるという
- 女の子の顔は墨塗りされており、声も当てられていないため存分に自己を投影できる
- 俗にいう「エロゲーの主人公」みたいな仕様
- 俺は男なのでこの辺はさっぱり分からんのですが、女性客も擬似恋愛というよりは、会場で声を揃える一体感を楽しんでいるように見えました
- これは分別のある大人のエンターテインメントであり淑女の嗜み
- というか子供にこんな狂気の沙汰を観せてはいけないね
- かと思ったらいつの間にか女の子は消えていて、3人並走で全力疾走するオバレ
- 「うおおおお!! 純愛!! ときめきサイクリング!!」
- 必殺技?
- 「公道での二人乗りは禁止だよ♡」
- \はーい!/
- 初っ端から本気で殺しに来てる
- なぜか自転車が4台ある
- プリズムショーを体験して世界が輝いて見えるようになったシン。その帰路でステージの真似をしてときめきサイクリングを敢行、土手から落下する
- ていうかあれリアル観客用の妄想とかじゃなくて実際にやってたのか
- 大股開きで倒れているシン
- \ありがとうございます!!/
- お礼を欠かさない礼儀正しいキンプリエリートたち
- たまたまその場に居合わせたプリズムショー界の名門アカデミー「エーデルローズ」の主催に見初められ研修生となる
- 「君、プリズムショーは好きかい?」
- \大好きでーす!!/
- エーデルローズ寮で他の研修生たちが出るたびに、彼らのイメージカラーでキンブレが乱舞する。声援(歓声・悲鳴)の大きさから緑色のタイガ君が一番人気だと思われる
- しかし一番の狂気を感じたのは料理上手のミナトさんに対する
- \ママー!!/\ママァァァ!!/ という絶叫であった事をここに記す
- 入寮を済ませ、指示された場所に向かうとそこにはオバレの3人が!! 憧れの先輩たちからユニットの誕生秘話を聞かされるシン
- \回想入りまーす!!/\はーい!!/
- 練度
- それは裏切りと友情の物語。具体的にはカズキ先輩がヒロ先輩を勇者の剣で真っ二つにすることで全てが丸く収まる
- かくしてオバレが結成されたのであった
- 寮に戻り、大浴場で遠慮のないドッキリシーン(全員男)など
- 場面は変わって、エーデルローズのライバル「シュワルツローズ」では非人道的なプリズムスタァ養成マシーンが稼働していた
- 個人用のプリズムショーシミュレーターであり、ノルマを達成できないと床が抜けて落下するシステム
- 何故そんな「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」みたいなマシンを作ってしまったのか
- シュワルツローズ主催は「笑顔を絶やしたら殺す!!」とか「ファンから金をむしり取れ!!」的なことを口走ってて超イカス
- 分かりやすい悪のアカデミーだがSMAPの公開処刑とか見た後だとあながちフィクションだからと割り切れない部分がある。芸能界怖い
- 自分で書いといてアレだが何だ「悪のアカデミー」って
- シミュレーター難度Sランクを軽くクリアし、つまらんと吐き捨てた長身褐色マッチョの大和アレクサンダー。オフの日にホームグラウンドの高架下で練習をするカズキ先輩にバトルをふっかける
- ストリートの誇りを賭けて、今にも殴り合いになりそうな険悪な雰囲気から始まるのは「EZ DO DANCE」に乗せたダンスバトル。ふたりでお揃いのピチピチスーツを蒸着してスッゲエ笑顔でクネクネ踊る(動画18秒~)
- このアレクのギャップに落とされたファンは多かろう。俺もこいつが一番好き。おもろい
- 同時にジャンプを決めるふたり。しかしアレクやや優勢でカズキ先輩の衣装が一部アーマーブレイク
- 格闘ゲームでよく見るやつだな
- 彼らはバトル開始前に「公平にダンスの審査が出来るマシン」という腕時計型の謎デバイスを装着している。歌やジャンプ技術を評価するのかと思いきや表示されるのはライフポイントなので笑う
- 先に相手のポイントを0にした方が勝ち。ダンスって何だろう
- ダンスにより巨大な剣「バーニングソードブレイカー」を召喚し、アレクに斬りかかるカズキ先輩
- アレクは輝きを放つ腹筋「鋼のシックスパック」で真っ向受け止める!!
- カズキファンは緑色のキンブレを縦に振り下ろし、アレクファンは紫のキンブレを横に構えて応戦。君ら本ッ当に楽しそうだな!!
- 俺は紫で受けました
- 俺もようやく分かってきたんですが、プリズムジャンプって要するに召喚術だよね。ステージではファンを魅了する小道具(自転車や土手など)を召喚し、バトルでは相手を殺すためのウェポンを召喚するという
- だからこの作品は男性向けのアイドルもの(予告でやってた「ラブライブ」とか?)を男女反転したというよりは遊戯王とかのジャンルにカテゴライズするのが妥当
- ブレイクダンスから紫色のドラゴンを召喚するアレク。その背に跨がりカズキ先輩に突撃
- 「地獄に落ちろ!!」
- ダンスですよね?
- 一方その頃、エーデルローズ寮の練習リンクではシンの実力を測るため、コウジ先輩との模擬戦が行われていた
- コウジ先輩の放つ赤い糸に絡め取られるシン。全裸で
- 「キュンキュンしますー!!」
- たたみかけるように尻から蜂蜜を生み出すコウジ先輩
- 「はちみつキーッス!!」 巨大な唇がシンめがけて襲いかかる!!
- 直撃!! 「うわあああああーッ!!」
- 「君の力はその程度か!!」
- 尻から蜂蜜出してた人に真顔でそんな事言われても!!
- ここでBGMが最高潮を迎える
- \3!/
- \2!/
- \1!/
- \\\EZ DO DANCE!!///
- 普通のシーンでは周りに合わせてキンブレを振るしかできない俺も、さすがに3回も見れば音楽のシーンはノリどころが分かるので、控えめに言っても楽しすぎる
- EZ DO DANCEみたいな既存のヒット曲だけではなく、オリジナルの楽曲もちゃんとアイドルっぽく作られていて、きちんと合いの手ポイントがあるのも非常によく出来ていると思う
- コウジ先輩の激を受け、「EZ DO DANCE!!」のシャウトと共に覚醒するシン。一度見ただけの「無限ハグ」を完全コピーした上に「全裸」というオリジナル要素を加えた「真・無限ハグ」*2を編み出すことに成功する
- そしてその才能を認められたシンはひとつの楽曲をコウジ先輩から託されるのであった
- シーンは高架下に戻って、佳境のカズキ vs アレク戦
- 「Go to hell!!」
- なんで英語で言い直したの
- アレクのドラゴンに対抗して、高速スピンによる竜巻を起こすカズキ先輩
- 「吸い込まれるッ……!! 自爆する気か!!」
- ダンス用語として「自爆」というワードが飛び出した世界初の瞬間である
- 大爆発によるダブルK.O.でバトル終了。スーツが消滅、一瞬の全裸を経て私服に戻る
- \ありがとうございます!!/
- キンプリエリートは全裸に対する感謝を忘れない
- 本作最大の山場であり、鑑賞後誰もがうわごとのようにつぶやくEZ DO DANCEを終えて物語は急展開。オバレの中心的存在、コウジにハリウッドからオファーが届く
- エーデルローズが抱える莫大な借金を返済するため、コウジはハリウッド行きを決意。「行かないでくれ」という言葉を飲み込み、コウジの選択を受け入れるヒロ、カズキ
- そして迎えるオバレのラストプリズムショー。古代ローマ風の衣装に身を包んだ3人はオバレの無期限活動停止を宣言。悲しむファンに贈るラストソングでハリウッド行きの電車を召喚する
- もはやこの程度では動じなくなっている自分が恐ろしい
- 涙をこらえて「体に気をつけて」としか言えないヒロ
- 「困ったときは時空を越えて駆けつける」とカズキ
- こいつら多分本当に越えるから洒落になってない
- コウジを乗せて発車する電車。遂に堰が切れるヒロ。コウジの名を呼びながら必死に追いすがり、泣き崩れる
- 画の異常性はさておき感動的なシーン
- オバレ結成の過去編から察するに、TVシリーズを追っていた人には感慨深いシーンなのでしょう。実際、通常上映を観たときには嫁さんの横に座ってたおっさんがガチ泣きしてたとか
- でもごめん、オバレ座は何度観ても笑う。特に骨組みの段階
- コウジが去り、悲しみに沈んだコンサート会場。客席のサイリウムは全て消え、聞こえるのはファンの嗚咽のみ
- もちろん劇場内のキンブレも全て消灯されており、先の展開を知っているにも関わらずきちんと嗚咽を漏らすキンプリエリートたちは精鋭としか言いようがない
- そしてシンに伝えられるコウジからのメッセージ。「君に託した歌でみんなを笑顔にしてあげてほしい」
- そうだ、プリズムショーはみんなを笑顔にしてあげられるんだ!! 覚悟を決めたシンは一人ステージに降り立つ!!
- 「誰?」「もういいよ……」とオバレファンの台詞を模しながらも手元ではしっかりキンブレを赤に設定*3しているキンプリエリート
- 尊敬の念を禁じ得ない
- シンのダンスと歌声で観客席は光を取り戻す。駆け抜けるシンを追いかけるように灯されていくサイリウム!! 劇場内のキンブレもグルグル色を変えて乱舞する!! そして召喚されるエーデルローズ寮!!
- その屋上に立つシン。「みなさんに、言いたいことがありまーす!!」
- \なーにー?/
- 「僕は、プリズムショーが大好きでーーーす!! (要約)」
- \\\私もー!!///
- いやー感動的ですね
- こうしてオバレの解散コンサートとシンのデビューは大成功のうちに幕を閉じるのであった
- 場面は転じてシュワルツローズの大浴場。主催は全裸に仮面を付け、孔明みたいな軍師扇を手にした変態にしか見えない格好で同じく全裸の少年たちを侍らせる
- 「山田くん、この辺のきらめき男子高生を根絶やしにしなさい」とか言い出しかねない
- この場とこの格好、スタッフのノリだけで決められているのだろう。大正解だよ!!
- ここで「私の若いころのようだ」と絶賛されるのが渚カヲル君的ポジションの如月ルヰ。ここまでもちょくちょく出てきてシンに意味深な言葉を残していくも、話にはほとんど絡まず
- なるほど、ここからライバルとして彼にスポットがあたるんだな、とこの時は思った
- 劇場内のキンブレは真っ青に染まり、一糸乱れぬ「グロリアス・シュワルツ」コール
- \グロリアス・シュワルツ!!/
- \グロリアス・シュワルツ!!/
- \グロリアス・シュワルツ!!/
- 鍛えられたキンプリエリートは(以下略)
- ここでエンドロール
- 終わりかよ!!
- どう見ても「これから後半入ります」って感じだったじゃねえか!!
- 通常上映のときは「ひとつの映画を分割して2回分金取る気かよ」と思ったものでしたが、応援上映を経験して考えを改めました。これ2時間やられたら身がもたない。魂的な意味で
- なお、エンドロール後には予告編があるのですが、全く続編の予定などないという話を聞いてさらなる衝撃を受けるなど。何やってんのこの人たち
- もっとも大ヒット御礼で続編の制作は確実でしょうけどね。俺は観に行くし、この調子でどんどん観客の脳を削っていっていただきたいものです
以上。
これは照れを振り払うことができる人向けの壮大な遊びですね。死ぬほど頭悪くて死ぬほど楽しかった!! こういう新しい地平を切り開いたという点でキンプリは素晴らしい功績を残したと言えるし、今後もこれに続く作品が現れることでしょう。大丈夫なのかこの国。
初回の通常上映こそ呆然とするばかりで事態が把握できませんでしたが、2回目で応援上映を見学し、3回目にして自分も応援することで、ああ、今なら俺にも言える。
「世界が輝いて見える」と。
その輝きが使っちゃいけないお薬によるものと同種のソレではないかという不安は未だに頭から離れないのだけれど。