Kindleで読んだ漫画 16

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 旧ブログからの続きです。1~15は下記エントリ参照のこと。

  

 

 

惑星のさみだれ/水上悟志


惑星のさみだれ (1) (ヤングキングコミックス)

惑星のさみだれ (1) (ヤングキングコミックス)

 

  少年画報社の水上悟志作品がようやくKindle配信になりました。10巻漫画の金字塔、惑星のさみだれ。ここに書くためだけにKindle版を全巻買い直せるぐらいには好きですよ。

 

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 地球をブッ壊そうとしている悪い魔法使いを討ち果たし、世界を救うために力を貸して欲しい。パートナーとなる喋る動物達から超能力を与えられ、集められた「獣の騎士団」はとある地方都市に住む大学生、小中高生、無職のおっさんエトセトラ。

 魔法使いの繰り出す12体の「泥人形」および地球を砕く超兵器「ビスケットハンマー」の破壊、そして魔法使い自身を倒すこと。それが地球を守る、魔法使いとのゲーム。

 なんですが、トカゲの騎士となった主人公の雨宮夕日くんは世をすねて斜に構えた若干厨二病の根暗メガネ大学生。修飾多いな。よくある巻き込まれ型の主人公は相手にペースを握られるからダメなんだと言いつつ

 

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 こういう事を言っちゃう位には屈折しています。まあ泥人形は騎士の思惑にかかわらず襲ってくるので否応なしに彼は命がけの戦いに巻き込まれていくのですが。人知れず、ひっそりと。

 さて、話は変わりますが、俺はヘタレがヘタレなりに頑張る話が好きです。そして大人がちゃんと大人としての振る舞いをしている作品が好きです。以前にもそんなような事を書きました。  

 

 この作品に頻繁に出てくるキーワードに「大人」があります。大人とは何か。登場人物それぞれの視点で語られます。

 

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 昔コンビニで立ち読みした雑誌にあった甲本ヒロトの「大人は菓子パンで夕食を済ませていいの」ってコメントが俺はすげー好きで、今でも行動の指針にしているようなところがあります。結果に責任を持つならばなんでも好きなようにやっていい。ならば選択肢はどの道が楽しいかで選ぶ。それが許される。大人だからね。

 この「大人論」はそれに通じるものだと思います。この辺、作者の主張を無理矢理話にぶち込んでる感はあるんですが、個人的には好きな考え方なんで嫌味は感じません。

 かようにこの作家は己の好きなもの、言いたいことがハッキリしていて、「俺はこういうのがカッコイイと思う!! お前はどうだ?」と問いかけてくるような作品を描きます。おう、俺も大好きだぜ!!

 獣の騎士としての戦いを通じてカッコイイ大人、ちゃんとした大人に出会った我らがひねくれメガネこと夕日。小中学生の騎士の前では自分も大人たらんと振る舞うようになります。

 

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 だから自分は彼らの手本になってやらなくてはならない。大人であろうとする者こそが大人であり、子供の前では必死で格好つけるからこそ大人はカッコイイ。

 

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   おおダサい。だがここに至る物語を知っている者にとってはこれ以上なくダサくてカッコイイのだ。

  本当は山程あるこの漫画の見せ場について微に入り細を穿った紹介をしたいところなのですが、それやっちゃうと凄まじいネタバレになるので控えます。

 裏返せば、この作品は盛り上げどころを外さないんですよね。各エピソードのクライマックスにちゃんとテンションのピークを持ってくる。だから印象に残るシーンを語ろうとするとほぼネタバレになります。

 ただ見た目に派手な画、耳障りのいい台詞を突っ込んでいるわけではなく、そこまでの日常パート、何気ない会話があるからこそ燃えるシーン。それが緻密な計算に拠るものなのか天然なのかは分かりませんが、この首尾一貫したストーリーテリングは描きたいものがハッキリしている(想像です)作家の強みだなと思います。

 Amazonのレビューを見てもらうと分かりますがこの漫画、最終巻だけ異様にレビュー数が多いんです。個々の小エピソードをきっちりきっちり盛り上げつつ、ラストバトルの9巻でそれまでの全てを出し切る最大のクライマックス。そして最終10巻で広げた風呂敷を全て回収する大団円のエピローグ。これだけ見事に畳んでくれたら、そりゃあ最終巻にレビュー書かずにいられないよね。

 伏線を撒いている3巻あたりまでは話の起伏も少ないんですが、騎士団が全員揃ってからはそりゃもう尻上がりに面白くなっていきます。繰り返しになりますが本当はネタバレ上等でもっと書きたい。「必殺技は叫ばなきゃ」の話とかいろいろね。ですがそれは未読の方の楽しみを奪うことに他ならないので我慢しております。

 とりあえず漫画喫茶でいいので(って俺が言っちゃいけないんだけど)4巻まで読んで、最年長「カジキマグロの騎士」コンビにしびれたら残りは買っても間違いないと思います。

 長くなったので今回は1作品の紹介で終わり。

 

余談


 ちなみに水上悟志作品は現在連載中の戦国妖狐もおすすめです。 

戦国妖狐 1 (コミックブレイド)

戦国妖狐 1 (コミックブレイド)

 

 あと2~3巻ぐらいで完結しそうなのでそれを待って一気読みしてもいいかも。

 

スピリットサークル (1) (ヤングキングコミックス)

スピリットサークル (1) (ヤングキングコミックス)

 

 スピリットサークルはまだ俺の中で評価が固まってません。輪廻転生ものなので現状ストーリーの8割が「過去編」なんですよね。少年誌でもストーリーが過去編に入るとアンケート順位が落ちるって言いますし。 

 個々のエピソードは面白いですよ。まだ全体がお話として繋がってこないだけで。今は様子見。

 あと短編集はそのうち紹介します。