メガネをかけるかかけないかで延々殴り合う映画 ー 最近観た映画の感想

ある用務員

f:id:baumkuchen:20211024192816j:plain

ベイビーわるきゅーれ』をいたく気に入ったので、過去の阪元裕吾監督作品をいくつか観ております。

恩義のあるヤクザの親分の娘を、高校の用務員に扮して密かに護衛する男の話。親分の死を機に大量に送り込まれた殺し屋から娘を守るアクション映画。

その辺の一般人っぽい殺し屋がわらわら登場する辺りが『ベイビーわるきゅーれ』にも通じる世界観を感じさせます。というか、『ベイビーわるきゅーれ』の二人組もコンビの殺し屋(別人)として出演しています。

阪元作品はこの後『黄龍の村』とか『最強殺し屋伝説国岡』なんかも観るんですが、中でもこれは一番シリアスでアクションに振った作品。

最近の作品だけあって完成度は高い方だけど、一番無難な感じでもあり。阪元作品の面白さってアクションやバイオレンスだけではなく、日常パートにおける妙なリアリティというか、それを生み出す小ネタのはさみ方や人物描写にもあると思うので、魅力の一部を自ら封じてしまっている気はします。

ニコニコしながら敵も部下もサックリ殺すラスボスのキャラクターとかすごく良いんですが、まあそこそこ普通の映画だなと。

ある用務員

ある用務員

  • 福士誠治
Amazon

サンズ・オブ・ザ・デッド

f:id:baumkuchen:20211024232540j:plain

ゾンビ禍の街から逃げ出すため、車で飛行場を目指し走る主人公と恋人。なんか色々あって車がスタック、単独で歩いてきたゾンビに恋人が食われる。

という導入を速やかにこなし、「砂漠のど真ん中でゆっくり歩くタイプのゾンビから延々逃げ続ける」という面白シチュエーションへ早々に突入します。

立ち止まると死ぬという点で『死のロングウォーク』を連想します。それと同様に極限状態に追い込まれた人間の心理がどのような変化を迎えるか、というのが見どころだと思うのですが。

諦めずにどこまでもついてくるゾンビに悪態をつきながら、孤独に耐えて歩き続ける主人公。ついには惟一の話し相手、健気なゾンビに情が湧きます。

いや、そうはならんだろ。

随所でそんな感じの変な笑いが出るんだけど、このずっと半笑いになってしまう感じというのが案外好きです。ゾンビつながりというわけではないですが『高慢と偏見とゾンビ』や『ロンドンゾンビ紀行』を観たときのような。あるいは無人島でバレーボールと喧嘩する人を観たときのような。

極限状態での狂気を描いている、というようなことは全然全くこれっぽっちもないB級バカ映画ですが、ずっと真顔でボケ続けてる人たちを眺めたい向きにはおすすめです。

いや、別におすすめではないわ。ごめん。俺は好きですが。

黄龍の村

f:id:baumkuchen:20211030190717j:plain

阪元裕吾監督作品3本目。これはめちゃくちゃ面白かったわー。

ミッドサマー』なんかと一緒に「村ホラー」というジャンルに括られるらしいんですが、人里離れたカルト集団の村に迷い込んだ他所者の恐怖体験を描くやつです。

確かにジャンルとしてカテゴライズできるぐらいには似たようなシチュエーションのホラー作品は多い気がします。が、この映画は途中からとんでもない方向に舵を切ります。

こんなもん絶対ネタバレしちゃ駄目なやつなので何も書けませんが、66分というかなり短い映画であるにも関わらず十分な満足感があるのは脚本の意外性からくる「盛りだくさん」感によるものだと思います。

ベイビーわるきゅーれ』や『ある用務員』と比べても低予算であることが露骨にわかる作りなのに、最早それすら面白い。

典型的な村ホラーのテンプレに則って、糞ウザいウェイ系の学生たちを殺していくんだけど、部分部分で妙にチープで「笑ってはいけない」みたいになってるのが逆にリアルに思えたりするわけです。

「昔から続けているけれど、もう理由も分からなくなってるので儀式の作法がだんだん適当になってきてる」的な。生贄の肉をバーベキューコンロで焼くんじゃない。笑うだろ。

上映館は少ないですが、観られる環境にあるのなら是非おすすめしたい。

ちなみに先日始めたポッドキャストの1回目がこの映画の感想になります。

ネタバレしかないので観てない人は聴かないほうがいいです。というか聴かないでいいので観ましょう。

自ら視聴者を減らしていくスタイル。

ゼイリブ

f:id:baumkuchen:20211030211857j:plain

異星人による地球侵略は既に始まっていた。人間に擬態した異星人を見抜くサングラスを手に入れて真実を知ってしまった男はレジスタンスの一員となる。

あらすじだけは知ってて前から観たいと思ってたんですが、そのストーリーはさておき、サングラスをかけることで明らかになる「真実の世界」のビジュアルがめちゃめちゃ面白いんですよね。

骸骨みたいな異星人もいいデザインですが、広告や新聞・雑誌の内容がアホほどシンプルに要約される画が非常に皮肉が効いていて良い。

f:id:baumkuchen:20211030212838p:plain

「OBEY(従え)」「NO THOUGHT(考えるな)」「CONSUME(消費しろ)」。こういうディストピアが現実ですよ、という資本主義に対する風刺は30年前の映画にもかかわらず未だ全く違和感がない。異星人のヒトたちは毎日これしか見えてないと思うんですがそんな星侵略してて楽しいんだろうか。

こういう唯一無二のビジュアルに加え、ワープしたり星間移動ができるほど文明が発達しているのに抵抗勢力を潰すのに警察権力を使う異星人とか、サングラスをかけるかけないで揉めて路地裏で殴り合うだけのシーンがやたらと長かったりとか、いい具合にツッコミを入れたくなるポイントも内包しており、カルト映画として語り継がれるのも納得の作品です。

この作品自体は飛び抜けて面白いというわけでもないのですが、引用のし甲斐があると言いますか。たまたまこのツイートがふと目に入ったときには大笑いしました。

どんなことでも知識として持ってると色々楽しめることが増えていいよね、という話。

ゼイリブ (字幕版)

ゼイリブ (字幕版)

  • ロディ・パイパー
Amazon

前の

一覧

『ベイビーわるきゅーれ』に最高すぎるアクションを見た ー 最近観た映画の感想

オールド

f:id:baumkuchen:20211005230442j:plain

初シャマラン。『シックス・センス』も観てません(オチは知ってる)。

超スピードで加齢する謎のビーチに置き去りにされたリゾート客たち。脱出方法を模索する間にも一人ひとりと死んでいく、というスリラー。

仕掛けは「加齢」一本で超シンプルなので、予告を観て想像したそのままの映画でした。人の一生がビーチで超加速。よってトラブルも2時間弱の映画に超圧縮されて発生しまくります。

髪や爪が伸びない理屈とか、排泄はどーなってんのとか、成長した子供たちが異様に賢くなってるとか、細かいツッコミを入れようと思えばいくらでもできてしまうのですが、そこはどうでも良いんだよ、と分かってやってるんでしょうからいちいち指摘するのは野暮ってもんでしょう。

眩しい夏の日差しのもと、次にどんなイヤな事が起こるかとワクワクしながら観るのが正しい鑑賞態度だと思いました。言いたいこと、見せたいものはよく分かりますが、個人的には「人生の意味」とか読み取るほど深いメッセージ性を感じる映画ではないです(そういうレビューを見た)。

繰り返しますが、良くも悪くもびっくりするほど予告の印象そのまんまの映画なので、予告を見て面白そうだと思ったなら、その想像通りの映画が観れると思います。

あと、当然ながら子供はメキメキ成長するので、それに応じて演者が入れ替わるのですが、「年取ったらこうなりそう」という役者をスムーズにつないでいるのがすごい。

f:id:baumkuchen:20211007231841p:plain

こんなにアレックス・ウルフ(『へレディタリー/継承』のクソ兄貴)に成長しそうな子供をよく見つけてきたな、という感想に尽きます。

ベイビーわるきゅーれ

f:id:baumkuchen:20211012215734j:plain

邦画で。アクションで。低予算で。今年ベスト級の映画が来たことに俺は感動してるのですよ。何これ面白え! 邦画でこんなの観れんの!? っていう。

とにかくクライマックスのアクションのクオリティが無茶苦茶高い。高い身体能力を活かした超高速格闘!! 邦画でこのレベルのを観るのは始めてだわ。主演の一人、伊澤彩織さんはスタント出身っつーことですが、こんなんもうアクションスターじゃん……。

よく引き合いに出されている『ジョン・ウィック』シリーズの近接ガンアクションや『ザ・レイド』の打撃戦はもちろんのこと、個人的には『イップ・マン』シリーズの高速連打や『リベリオン』ラストの射線の捌き合いなんかも連想しました。

それぐらい多くの要素が一つの殺陣に込められて流れるように展開していく。それがワイヤーアクションや特殊効果なしに身体ひとつで繰り広げられるわけですよ。

俺、マーゴット・ロビーのハーレイ・クインを観るたびにこのキャラクターの強さに納得いかねえ、って言ってるんですが、それに比べてこの映画の説得力ったらねぇですよ。だって実際に素人には出来ないレベルの動きをやってんだもん。低予算だからこそ嘘や誤魔化しが無いことが明らかなわけで。(殺陣つけてる時点で虚構ではあるのですが)

しかも「アクションが最高」は単なる一要素にすぎません。脚本や演出、出演者の演技のレベルも相当高い。

一般人に紛れて生活している女子高生殺し屋コンビが、高校卒業を期に「表の顔」としての社会人と殺し屋の兼業を組織から指示される。ふたりはこれまで通り殺しのお仕事をしながら、自活生活やバイトなど一般社会に適応するために悪戦苦闘していく、というお話。

「市井に潜む殺し屋」って設定は結構ありふれていて、日本の作品だけでも古くは『必殺シリーズ』、今なら『ザ・ファブル』や『バイオレンスアクション』、女子高生殺し屋なら『デストロ246』なんてのもありますし、他にも枚挙に暇がない。

ちょっとゆるめの日常と、殺し屋稼業のギャップを描く。うん、よくあるある。よくあるんですが、本作は日常の比重が非常に大きく、かつ「日常系」作品としてのクオリティまでもが異様に高い。

器用にそつなく人付き合いをこなして社会に適合していく「ちさと」と、コミュ障でバイトも決まらない「まひろ」という正反対のキャラクターの同居生活。「殺し」と「日常」に境界のない生活の中での掛け合いや、世の中のちょっとした生きづらさ、正反対のふたりの仲違いや仲直りなど、自然に軽妙にコミカルに描く。

アクションはまひろ役の伊澤彩織さん(と、ラスボス役の三元雅芸さん)の独壇場でしたが、日常パートはちさと役の髙石あかりさんが素晴らしい。

他人と絡むシーンが一番多いから目立ちやすいというのもありますが、とにかくこの映画の土台とも言えるギャップ・二面性といったところを見事に体現。

凶暴性をむき出しにする演技、ピンチに「スン」と冷静に振る舞う演技、ちょっと多動症っぽく相棒に絡む日常の演技。表面上はうまく社会に馴染んでいるが、うっすら漏れ出すヤバさをきっちり表現しており、絶対「やらかす」のはこっちの子だと思わせて実際そうなるの最高ですね。

ちなみに一番好きなのは二面性とか関係なく最初のバイトで生クリームの盛り付けにいっぱいいっぱいになってるとこです。

悪役やサブキャラも大変良い味でして、特に組織の事務方とのやり取りや「掃除屋」に説教されるところなど、殺しと地続きの異様な日常を脱力感と共に馴染ませつつ、この世界における裏社会のありようを感じさせて非常に上手い。このまま『ジョン・ウィック』のコンチネンタルみたいに膨らませて、今後の作品と合わせて独特の殺し屋ユニバースを構成していったら面白いなと思います。

よくある設定ながら、これまで見たことがないタイプの作品に仕上がっているのが素晴らしい。こういう気の抜けた感じというのは邦画ならではという感じがします。日本人は何でも日常系に仕上げる習性があるしね。

惜しいのは、台詞が聞き取りづらい部分が多々あること。まあ邦画にはありがちな話ですが、もしディスクが発売されるなら(ていうかしてくれ。買うから)価格が上がってもいいから日本語字幕をつけて欲しいところです。

しかしコレ撮った阪元裕吾監督が25歳と知って思わず声をあげるほど驚いたのですが、こうやって若い人が頭角を表してくるの最高ですね。出演した役者さんたち共々、ぜひとも売れていっていただきたい。そうすれば今後20年30年と楽しめるから。

フリー・ガイ

f:id:baumkuchen:20211017100227j:plain

犯罪ゲームで襲われるだけのモブキャラ銀行員、「ガイ」がプレイヤーに恋をする。決まったルーチンで動くだけだったはずの彼のAIには変化が生じ、やがてゲーム世界を救うヒーローへと生まれ変わっていくのだった。

死ぬほど前向きでいい映画だと思いますよ。「人はなりたいものになれる」的な。ただ『ベイマックス』のときにも思ったけどディズニー流のクソポジティブな映画はのど越し良すぎて俺はうまく味わえないのですよねえ。20世紀フォックスもすっかりディズニー色になったもんだ。

大迫力のカタストロフが繰り広げられても「ゲームのデータだしなぁ……」って思っちゃう。仲間との別れも「この映画なら後で復活するだろう」と確信できて、実際そうなるし、悪役は最後に打ちのめされるためだけに愚かな行動ばかり取る。

ずっと「予定調和」って言葉が頭にちらついて素直に楽しめなかったというのが正直なところ。こういう綺麗な映画は夢いっぱいの中高生が観るべきだな。普通に面白いですよ。普通に。

あと現実側から見たゲーム画面が中国スマホゲーのクソ広告みたいなのはものすごく面白かったです。

前の

一覧

ポッドキャストを始めたら、ほとんど誰も聞いてないのに既に楽しい

f:id:baumkuchen:20211009161017p:plain

最近嫁さんがポッドキャストをよく聴いていて、その影響で俺も聞く(「聴く」ではない)ようになりました。

芸能人やアナウンサーのちゃんとしたラジオもあれば、個人がただ雑談してるだけの番組も多いんですが、作業しながら聞くには丁度いいんですよね。

俺、Youtuberの動画がどうにも苦手でして。解説動画を見るぐらいなら字で読んだほうが早いと思ってしまうタイプの人間ですし、出演者が必要以上にテンションあげてはしゃいでたりするともう辛い。

それに動画は時間を割いてちゃんと観ていないと情報を拾いそこねてしまいますが、その点ポッドキャストは「ながら」でいいのが性に合います。

何よりYoutubeと違って個人が収益化する手段がほとんど無いので、現時点でわざわざ配信している個人は「ただ好きでやってます」って感じで不快になることが少ないんですよね。金にならなきゃ「迷惑系」の配信者なんて発生しようもないですし。

で、こんなんで良いなら俺もやれるな、と配信を始めた次第。

映画の感想をふたりでダラダラ喋るやつ

サムネは嫁さんが10分ぐらいで描いてます。

説明も何もなく本当に感想を言ってるだけなので、お題の映画を観てないと聞いても意味がわからなかったり酷いネタバレを食らうという、対象が狭すぎる配信。

もともと俺は嫁さんと映画鑑賞後の会話を録音して後で聴き返したりしていたのですが、それの雑音や無言の部分を切ってアップロードするだけです。

配信に使っているのはSpotifyのAnchorというアプリ。

Anchor – ポッドキャストを作成

Anchor – ポッドキャストを作成

  • Spotify Ltd.
  • ニュース
  • 無料

音声ファイルだけ用意すれば拍子抜けするぐらい簡単に配信がスタートできます。

調べればやり方はいくらでも出てくるので詳細は割愛しますが、自分の適当な配信がSpotifyやApple podcast、Amazon musicといったメジャープラットフォームに紛れこんでいるのを見るのはそれだけで楽しいです。こんなふうに。

そして誰が聞くんだよこんなの、というと俺と嫁さんが自分で聞きます。

どんな趣味でも後から面白かったところを語り合う、あるいはつまらなかったところを腐し合うというのは趣味そのものと同じぐらい楽しい部分だと思うのですが、それを追体験できるんですよね。

何を話したか覚えていても、聞き返すとその時の空気が蘇ってきて全然楽しい。オチまで分かってても落語が面白いのと同じで、むしろ内容が分かってる俺自身が一番楽しく聞けると思います。

考えてみるとこれはGoogleフォトなんかの共有スペースに撮った写真をアップする感覚に近いですね。その場にいた人と、楽しかった記憶を画像の代わりに音声でシェアするという。

自分たちで聞くためといいつつ、一般公開もしてここにURLも載せてるわけですが、これはブログに感想を書いて公開するのと一緒で、あわよくば同じ部分に共鳴する「同類」がそのうち見つからないかという期待を込めています。

実際、こんな「狭い」配信でも聞いてくれる人が少しはいて、それも嬉しいですね。

 

こんな感じで、ただの雑談を配信するだけでも「自分だけは」とても楽しいので、趣味の会話をよくする人は仲間内にシェアするつもりでとりあえず配信してみても面白いと思います。

簡単だし、HTMLを手打ちしてた個人サイト黎明期みたいな感じがあって楽しいですよ。「テキストサイト」という言葉すらなかった頃の。(一部のインターネット老人にしか伝わらない例え)

ディズニー製カンフー映画で俺が大歓喜 ー 最近観た映画の感想

ザ・ハント

f:id:baumkuchen:20210914225304j:plain

目が覚めたら見知らぬ森の中。集められた人間は武器を与えられ、正体不明の敵から攻撃を受ける。ここは金持ちが娯楽で人間狩りを行う「狩場」だったのだ。

また理不尽デスゲームかよ、と思わなくもないのですが、フォーカスの当たった登場人物がめきめき死んでいくというあまりにも手際の良い導入で引き込まれ、軽~いおやつ感覚で観ることができます。嫌なおやつだこと(序盤にグロあり)。

終わってみれば「獲物」があらかた狩りつくされて、生き残りの反撃が始まる30分ぐらいまでがピークだったな、という感じではあります。

とはいえ、「調子こいた襲撃者が反撃を受けて酷い目にあう話」というのはそれだけで一定の面白さがありますよね。『サプライズ』とか『バクラウ』とか。

「その辺のおっさんにロシアンマフィアが壊滅させられる映画」がいくつもあるのと同じように、今後も手を変え品を変え作られ続けていくのでしょう。

襲撃者がセレブ集団なので、虐殺のかたわらで健康に気を使っていたり、「黒人」と言うか「アフリカ系アメリカ人」と言うかで揉めたりと無駄な意識の高さを発揮しているあたりは結構ベタな皮肉ですね。

これで「国の2極化を煽る」とかいって一時上映停止になったとかいうエピソードは流石に苦笑せざるを得ませんが、こういう犯人像とか、終盤に明かされるターゲットの選定基準とかはいかにも現代的で嫌いじゃないです。

ザ・ハント (字幕版)

ザ・ハント (字幕版)

  • アイク・バリンホルツ
Amazon

Z Inc. ゼット・インク

f:id:baumkuchen:20210919173605j:plain

人間の本性を剝き出しにし、狂暴化させるウイルスにコンサル会社が丸ごと感染、会社は完全に封鎖された。散布されたワクチンが効果を発揮するまでの間、誰も外には出られない。

同僚のミスを押し付けられ、会社を追い出されるところだった男は「感染無罪」のうちに自分をハメた同僚と社長をブッ殺すべく、オフィス最上階を目指すのだった。

相棒は同じく会社の幹部をブッ殺したいサマラ・ウィーヴィング。俺がこの人を目にするときは大概ネジが外れた女の役ばっかしてる印象があるんですが、大変カッコいいので売れてもこういう役は続けて欲しいですね。

内容はといえば、「ホワイトカラーの会社員がオフィスの中で血みどろ大乱闘」の設定は面白いんだけど、他は特筆することもない並のB級映画という感じ。

感染者は別にゾンビになるわけでもないので、やたらと暴力的になるとは言え理性はある。オフィスにいる人間が見境なく襲い掛かってくるわけでもないし、何なら会話や交渉もできるので、暴れてるモブ会社員はただの背景でしかない。ポスターのメインビジュアルから期待するようなパニック映画の緊張感みたいなもんはほぼないです。

ちょっと良い話風に「成功への道は自分で掴み取るしかない」と、社長をブッ殺して幹部の座についた主人公に言わせて締めるところとか、助手に滅多刺しされてる上司を見て大爆笑してるサマラ・ウィーヴィングはとても良かったです。

Z Inc. ゼット・インク [DVD]

Z Inc. ゼット・インク [DVD]

  • スティーヴン・ユァン
Amazon

シャン・チー テン・リングスの伝説

f:id:baumkuchen:20210920141012j:plain

これは面白かった! これまでに観たマーベルの単独ヒーローものではトップクラス。

ブラック・ウィドウ』が毒のない「ディズニーの映画」って感じになっててあんまり好みではなかったので、本作もそれ程期待してなかったのですが、いい感じに裏切ってくれました。

後半は壮大な中華ファンタジーって感じで、これはこれですっかりディズニーの世界観を感じるものの、鼻につかないというか、新鮮さが先に来る。

俺、『ブラック・パンサー』のワカンダとか『アクアマン』の海底都市(DCだけど)とかの「独自の発展を遂げた近代文明」が大好物なのですが、中国武術の伝統的な武具に電撃を仕込んでいるテン・リングスとか、ター・ロー村の龍の魔力がこもった弓矢や縄鏢に同じ匂いを感じます。それだけでもう結構好きになれちゃう。

良さの大前提としてベースのカンフーアクションがハイクオリティだということもあります。ディズニーでこんなしっかりしたカンフー映画が観られるんだという驚きも大きい。

カーアクションと組み合わせたバス内での戦闘では慣性付きの閉所という環境を活かしたいかにも「らしい」アクションが見られるし、マカオの高層ビル足場での戦闘も鉄板のカンフー映画シチュエーション。カンフー映画と言えば竹の足場ですよ。ベタっちゃーベタだけど、マーベルヒーロー映画でスケールでっかくこれをやるってのがもう面白い。

そういう地に足の着いたカンフー映画から、空を飛んで戦う武侠もの、幻獣や龍が出てくるようなファンタジーへと大風呂敷を広げつつ、スムーズにこれまでのMCUと話を絡めてくるあたりも見事。新ヒーロー参戦の掴みとして文句なし。あんな地味なポスターと予告でこんな話になるとは思わなかったよ。

そしてサブキャラも魅力的。毒親のトニー・レオン、独学で強くなっちゃった妹のメン・ガー・チャン、いつ見ても強く麗しい叔母さんのミシェル・ヨー。

なにより親友ケイティ役のオークワフィナがめちゃくちゃ良いキャラでした。最初のシーンで中国映画にありがちなクソ厚かましくて空気を読まないタイプのコメディリリーフなのかと思いきや、明るく気さくで気遣いはできるわドラテクは一流だわ肝は据わっているわで一般人なのに頼れるサイドキックとしてどんどん好きになる。

ロマンスに持っていかずに親友ポジをキープしているのもいいし、今後のMCU作品にもぜひ登場させて活躍させて欲しいと思います。

とまあ、各種伏線や魅力的な新キャラの追加等、色々な面で今後のMCUの広がりを期待できる一本でした。

いや、本当こんなに面白いと思わなかったわ。想定外の喜び。

前の

一覧

神の啓示を受けたおっさんがレンチで人を殴って回る映画 ー 最近観た映画の感想

ゾンビランド:ダブルタップ

f:id:baumkuchen:20210822145955j:plain 

ゾンビランド』から10年ぶりの続編。作中時間も10年経過。

ゾンビ禍により荒廃した世界で仲間となった生存者4人は10年後も楽しく生き抜いていた。ホワイトハウスに安全な居を構え、愛車をいじり、本を読み、時折ヒャッハーとゾンビを狩る。

もはや生活の一部なのでゾンビ退治は全員手慣れたもの。どうしたって必死のサバイバルになってしまう他のゾンビものと違って余裕のあるアクションが小気味良い。

疑似家族として暮らしている4人の「末の娘」であるアビゲイル・ブレスリンが外に男を見つけて出ていってしまい、それを連れ戻しに行くというのがストーリーの軸になっているのだけど、男がバークレー出身の非暴力主義者と聞いてブチ切れるウディ・ハレルソンが面白すぎてここだけ何度も観てしまう。

f:id:baumkuchen:20210822182124j:plain

爆発寸前、過呼吸気味でいっぱいいっぱいになったこの表情よ。これだけで無茶苦茶笑えてしまった。演技が上手すぎる。

ウディ・ハレルソンはタフガイであることを誇りに思っているタイプの典型的アメリカン頑固親父。アビゲイル・ブレスリンのことは実の娘のように可愛がってはいるが、それゆえに年頃の娘からはウザがられてしまうという、10年間でしっかり家族をこじらせている描写がとてもいい。

相棒のジェシー・アイゼンバーグは理屈っぽいナード男だけれども、正反対のタイプのウディ・ハレルソンと馬が合う。今作ではこの二人のコピペみたいなタフガイ&ナードコンビがもう一組出てきて、互いに相棒を自慢し合ったりサバイバルのルールを披露し合ったりで意気投合する。ここも男2人がめっちゃ仲良いのが分かって良し。

あとはファミリーワゴンに我慢がならないウディ・ハレルソンとか、エルビスのコスプレではしゃぐウディ・ハレルソンとか、とにかく今回このおっさんが面白すぎてもう最高でした。エマ・ストーンはちょっと存在感薄かったな。

前作同様、意味のない雑談をしながら夜通し運転するロードムービーのカットも好き。いまだにビル・マーレイネタを引っ張ってたりして、前作を観ていればなお楽しい。良い続編だと思います。

ザ・スーサイド・スクワッド ”極”悪党、集結

f:id:baumkuchen:20210822192645j:plain

前作はクソつまんなかったんですが、続編はジェームズ・ガン監督でR15+ということでめちゃくちゃ楽しみにしておりました。邦題はダサいと思います。

流石の手腕で、とにかく出だしから異様にテンポ良く進む。

やたらと多いヴィランや、特別チームであるスーサイド・スクワッドの立ち位置・ミッションをあっという間に説明しつくす。

そしてババーンと格好良く合衆国国旗の前に集結させて、いわゆる「Gメン歩き」をさせてからあっさり全滅させて人員整理する。多いと思ったんだよ14人て……。 

f:id:baumkuchen:20210822203952j:plain

ただマッハで死ぬ人たち含めて格好いいイラストアイコンが用意されてて、これを見るだけでも分かる通り、みんなばっちりキャラ立ちしてんのですよね。半分以上をあっさり使い捨てるこの贅沢さ。

誰が死ぬかで賭けをしている司令部スタッフとか、前作では描かれなかったゲスい描写がいやが上にも期待を高めます。ディズニーの軛から解き放たれたジェームズ・ガンのやりたい放題を観に行く映画です。

誰が序盤を生き残って活躍するかは予告やポスタービジュアルからお察しなのですが、デッドショットとハーレイ・クインばかりが目立っていた前作と違って、チームの全員を万遍なく活躍させつつ、最後は予告の「ヤベー怪獣」でしっちゃかめっちゃかにしてから締める。

インパクト抜群の導入と終盤の突き抜けたバカバカしさで、最初から最後までずっと楽しい。悪役チームらしく躊躇のない残虐描写や不謹慎ギャグもキレが良いし、ジェームズ・ガンはR15+でやらせてもらえるDCに行って本当に良かったと思う(『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー3』も楽しみだけども)。

ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』の感想にも書いたようにハーレイの格闘戦の強さには相変わらず納得がいかないし、悪党は悪党らしくもっと身勝手な理由で世界を救って欲しかった(無茶振りだとは思うけど、ジェームズ・ガンならうまくやるかも、という期待はあった)というのはあるけれど、サメのナナウエたんが大層可愛かったので個人的には全部許した。

スターロ大王も「よいしょ」って感じの足運びがとてもキモ可愛らしく、グッズ売り場ではこの2人のポストカードを買いました。数え方は「2人」でいいのかこれ。

スーパー!

f:id:baumkuchen:20210822222535j:plain

スーサイド・スクワッドが楽しみすぎて、同じジェームズ・ガン監督作品のDVDを注文していたのでした。届くのが遅れて観る順番は逆になりましたが。

神の啓示を受ける幻覚を見たおっさんが手製のスーツに身を包み、ヒーロー「クリムゾンボルト」として悪党を巨大なレンチでボコって回る、ポップでたのしい暴力映画。

バットマンのような金も力もない、冴えないおっさんが自己認定した悪をたどたどしくブッ飛ばす。ヴィジランテ系ヒーローがどれだけ頭がおかしいかを見事に戯画化しています。

薬の売人、ひったくり、児童買春、行列割り込みなどの悪党に忍び寄り、死角から鈍器で殴り倒すヒーロー。悶絶する悪党。ドン引きするギャラリー。

Q.「なんでアンパンマンは技名を叫ぶの?」

A.「アンパンマンが無言でばいきんまんを殴り倒したら子供が泣くだろが」

を地で行くやつ。

同じく素人ヒーローものの『キック・アス』は、やがて本物の悪党と敵対して真のヒーローとなっていく物語でしたが、クリムゾンボルトのヒーロー活動は基本的に最後まで通り魔です。

「神の啓示」によって暴力をふるって回るクリムゾンボルトは平たく言って単なる狂人なのですが、ヒーローマニアの女がサイドキックの「ボルティー」として加わることで活動はさらに暴走。

彼女は正義の名のもとに人をぶちのめしたいだけなので、物語の中盤からはクリムゾンボルトはまだ良識がある方だったと分かる最悪のチームアップが誕生します。

そして最終的にはガチな裏社会の人間と本気の命の取り合いになるのですが、ガソリンで火だるまにしてからメッタ刺しとか、手製の爆弾で人間を粉々に吹き飛ばすとか、素人ゆえの過剰な殺し方が普通に怖ぇという。

通り魔同然だったヴィジランテがやがて真のヒーローになるのではなく、「すげえ通り魔」にクラスチェンジする物語。

スーサイド・スクワッドでも顕著だった残虐かつポップな演出やギャグはこの頃から健在で、ブラックではあるけれど笑えてしまうし、B級らしい(不謹慎な方面の)爽快感もばっちり。主人公がささやかな幸せと心の平穏を手に入れるラストも哀愁に満ちていて良いですね。

何でコイツ捕まらないんだろ、とは思いますが。 

前の

一覧

B級ホラービッチ無双『ファイナル・ガールズ 惨劇のシナリオ』他 ー 最近観た映画の感想

プロミシング・ヤング・ウーマン

f:id:baumkuchen:20210809225324j:plain

予告がもう面白い。

泥酔した振りをして、自分を「お持ち帰り」する男に鉄槌を下す女、キャシー。彼女は学生時代に巻き込まれた性犯罪によって自身の前途有望な将来を失っていた。

手当たり次第だったお持ち帰り男への復讐は、偶然学生時代の知人に再会することで一変する。かつて事件に関わった人間たちの幸福な現在を知り、キャシーは彼らにターゲットを定めた復讐を開始するのだった。

バカ学生が酒の勢いと集団のテンションで行った性暴力。「こんなこと」で将来有望な若者の未来を閉ざしてはいけない、とそれを庇護した大人。被害者に寄り添わず、自業自得とあしらった傍観者。復讐の対象は加害者のみに留まらない。

同じような事件が報道されるたびに吹きあがる「自業自得」論には俺は心底うんざりするのですが、そういった既視感を覚えるような映画がアメリカで制作されたことにちょっと驚く。女性の人権に関しては日本より余程進んでいる印象があるのですが、こうやって問題提起されているということは実際のところは日本と大差ないんですかね。

まあこの手の事件で被害者を責める論調は本当にクソだとよく分かる映画でございます。

痛快な復讐と、それに伴い徐々に明かされていくキャシーの動機。展開がスリラー映画としてよく出来ているのは勿論のこと、キャシーの復讐方法が決して加害はせず、相手と同じ所に落ちないということを徹底しているのが良かった。

それでいて自分が何をしたかを自覚させ、それを心底後悔するような恐怖をきっちり与えているし、そういう復讐だからこそ真に反省し悔いている人間には手を出さない。そのことが結末に綺麗に結びついているあたりも見事。

最終的に何もかも巻き込んで諸共に地獄へ落ちんとするかのような復讐を遂げるわけですが、キャシー本人含め誰一人幸せにならないラストには本当に気が滅入ります。だからこそこの結末には圧倒される。加害者連中が残らず燃やし尽くされるであろう未来に爽快感を覚えつつ、かつ悲しい。

あと音楽が良かったです。

ファイナル・ガールズ 惨劇のシナリオ

f:id:baumkuchen:20210813204802j:plain

亡くなった母親が20年前に出演していたカルトB級ホラー映画の世界に入り込んでしまったヒロインが、若き日の母と共にファイナルガール(ホラー映画で最後に生き残る女の子)となるべく奮闘するホラーコメディ。

殺人鬼の設定や映画の展開を知っていることを逆手にとって作戦を立てるメタ展開はホラー映画のお約束をいじり倒す『キャビン』を想起させますが、こちらは登場人物がそれに自覚的である分だけよりコミカル。

独特の効果音で殺人鬼が近くにいることに気づいたり、謎エフェクトが降ってきて回想シーンへ突入することが分かったり。

そしてヒロイン一行の介入でB級ホラーなら真っ先に死ぬはずのビッチさんが長生きしたりする。彼女の扱いが狂おしく好き。

一緒に映画に迷い込んだイケメンに対する特殊な求愛行動とか、現実から持ち込まれた向精神薬をバカ食いして最終決戦前にガンギマリになってたりとか。

ビッチが服を脱ぐと殺人鬼が現れて殺されるのがお約束だから、服の上からライフジャケットや手袋まで着こまされて待機。いざ殺人鬼との対決の準備ができたら「獣を解き放て!」の合図と共にリリースされて音楽に合わせて脱ぎ捨てていく。彼女がフラグ用アイテムとして作戦に組み込まれる展開が大変お気に入りです。

B級ホラー映画の世界だから人はバンバン死にますが、血はほとんど出ないしグロもなし。登場人物の雑でコミカルな死に様は笑いを誘いすらする。

ビッチさんがオッパイを出して殺人鬼をおびき寄せる瞬間もきっちり顔のアップにカメラを切り替えることでエロ回避。全編通して配慮が効いてて安心して観ることができる。無理に過激な展開なんか入れなくても面白い映画はちゃんと面白いんだよな。

B級ホラーらしく時間も短く、しっかりお約束を踏襲するオチもいいね。 

G.I.ジョー

f:id:baumkuchen:20210813232032j:plain

何だかすげえ装備の特殊部隊が大活躍する、何の変哲もないアメリカ万歳映画だ! ひゃっほう!

近々公開される3作目の「未曽有の忍者テロ」というコピーに惹かれて1作目のこれを観ましたが、これだけでお腹一杯になっちゃったよ。どうしよう。

「あらゆる金属を高速で腐食させる超兵器」が登場し、それの輸送任務が始まった時点で嫌な予感しかしませんが、言うまでもなく悪の組織に奪われて世界が征服されそうになります。

こういう投げやりな導入や、武力で世界を牛耳ろうとする悪の組織の陳腐さは様式美すら感じさせて嫌いじゃないです。脚本なんてどうでもいいからアクションと爆発だけ見てればいいというのが分かりやすいので。

どっからどう見てもCG丸出しのメカ戦闘とか、酸素マスクと片眼鏡をつけた古式ゆかしいデザインの悪のプロフェッサー等、2009年の映画とは思えない作りが逆に癖になる。

大作並みに金のかかった贅沢なB級映画ですねこれ。酒飲んだりスマホいじったりしながら適当に観ましょう。

パワードスーツで車を追いかけるカーチェイスは良かったです。なんか一杯爆発してました。市民めっちゃ死んでると思います。

あとはイ・ビョンホンが白いなあと思いました。登場するたびに「白い」「白いなあ」「ほんと白い」って。最後は無意味に脱ぎます。

刺されて海に落ちて死んだので多分続編で出てくるだろうなと思ったら、普通に2のポスターにでかでかと顔が載っていて面白かったし白かった。含みを持たせて退場させたんだから、ちょっとは隠そうとしてほしい。 

G.I.ジョー (字幕版)

G.I.ジョー (字幕版)

  • チャニング・テイタム
Amazon

前の

一覧

ATOM Cam2が安いし楽だしすげえ面白い

f:id:baumkuchen:20210722205857p:plain

うちの自治体、ゴミ出しは決まった曜日に自宅の前に出しとくと業者さんが回収していってくれるんですが、マナーの悪い人がうちの前に時間外のゴミを捨てていくことがありまして。

腹立ったんで監視カメラを取り付けました。ATOM techのATOM Cam2。

前身のATOM Camはクラウドファンディングで企画された格安のネットワークカメラなんですが、最近リリースされたこの2でIP67防水防塵になり、屋外でも使用可能に。監視カメラとして使えるようになったわけです。

うちは設置してから3週間ほどになりますが、2つ目を買い足すぐらいには良いです。

まず屋外に置けるカメラとしてはアホみたいに安い。1個2980円(送料別)。安いWEBカメラぐらいの価格なんで、ぶっちゃけ半年ぐらいで壊れても許せる。

そして一般的な監視カメラに比べて設置のハードルが非常に低い。

f:id:baumkuchen:20210722224618p:plain

この同梱品の右上の円盤はただの鉄のプレートですが、これをネジないしは両面テープ(赤いの)でどこかに固定してやれば、本体台座に仕込まれた強力な磁石がくっついて本体の固定も画角の調整も簡単にできます。本体が軽いのでそんなもんで十分なんですね。

f:id:baumkuchen:20210722225138p:plain

うちは玄関が引き戸でレール部分がせり出しているので、ひとつはその上に乗せてます。もうひとつは窓枠にプレートを両面テープで固定。

台風などでずれたりしないかという点は未検証ですが、位置を直すのは簡単だし、万が一落ちて壊れてもまあ安いし。

あとはUSB 5Vの電源を確保するだけ。「だけ」といっても屋外なのでこれが一番の難関ではあるのですが、見ての通り専用ケーブルはきしめん状の平ケーブルなので、窓越しに引っ張り出すのは簡単です。うちは普段開け閉めしない明かり取り用の高窓を利用しました。場所が合うなら換気システムの吸気口とかエアコンの配管用スリーブを使ってもいいですね。

ネットワークカメラなのである程度の強度でWi-Fiが届いている必要がありますが、その辺は中継器なりメッシュWi-Fiなりを使えば済む話なので、自宅設置の制約としては軽いものです。

ネットワークのセットアップも楽で、Wi-Fi接続済のスマホでアプリにログインしてバーコードを読ませるだけ。 

ATOM - スマートライフ

ATOM - スマートライフ

  • ATOM tech Inc.
  • ライフスタイル
  • 無料

電源を入れてものの数分で、スマホでリアルタイム映像を見ることができます。 

f:id:baumkuchen:20210722232627j:plain

場所が特定できそうな要素をぼかした結果、アスファルトしか残らず訳わからん事になってますが、自宅前の通りの映像です。これは深夜の映像なのですが、街灯のみの明るさなのにある程度アスファルトのディティールが分かるぐらいにはノイズは少ないので、監視カメラとしての役割は十分に果たせることがわかります。

f:id:baumkuchen:20210722234627p:plain

動体は自動検出してクラウドに保存。おかげで我が家の前は毎晩この茶トラさんがパトロールしてくださっていることが分かりました。最高かよ。

このクラウドデータは無料で14日間分保存。1回の記録は12秒間、一度記録するとその後5分間は検知OFFになってしまうので、イベントのタイミングによっては取りこぼしが出ます。

全てを記録しておきたければ月額500円のプランで記録無制限にするか、内部スロットにmicroSDを挿してローカル記録することになります。

f:id:baumkuchen:20210723000052p:plain

インターフェースはこんなんで、動体検出で記録されている特定の時間に飛んで再生開始。無料クラウドだけなら12秒で再生終了、SDがあれば12秒過ぎても再生が続くし、動体検出前にさかのぼって記録を見ることもできます。

ストレージはいつまでたっても満杯にならず、ずっと記録できているので、ドラレコのように古いデータを上書きし続けているのだと思います。

再生画をスマホに保存することもできますし、スマホからSDをフォーマットすることももちろん可能です。

このアプリ、Amazonを見るとものすごく評価が割れていて、まともに動かないというレビューも散見されますが、ありがたいことにうちでは今のところ大きな問題はありません。

時たまクラウドが重くて、なかなか再生が開始されなかったりコマ送りになることがあるぐらいでしょうか(時間をずらせば改善します)。基本的には外出先の4Gでもスムーズに動いています。

以上、安いうえに使い勝手のいい監視カメラとして、個人的な用途には申し分なしでした。何より設置が簡単で業者の工事が不要なのが一番嬉しい。耐久性がどんなもんかはまだ分かりませんが。

クラウドに情報を流すということに抵抗がなければ、とりあえず遊んでみるだけでも面白いかと思います。

先にも書いたように評価は割れているので、買う買わないはひとまずAmazonの高評価・低評価、両方のレビューを見て判断するのが良いです。

ちなみに買うなら公式サイトのストアのほうがちょっとだけ安いです。

(2021/08/22 追記)

Amazonも公式サイトと同じ値段(本体2980円+送料700円)になってました。

人を殺すタイプのバットマン『刑事グロム vs 粛清の疫病ドクター』他 ー 最近観た映画の感想

新感染半島 ファイナル・ステージ

f:id:baumkuchen:20210718060918j:plain

つまんなくはないんだけどね。

って最初に書いてしまうくらいコレジャナイ度が高い。

パンデミック発生の前作から4年後、半島はゾンビに埋め尽くされていた。香港へ避難して生き延びた主人公のチームは大量のドル札を積んだトラックを回収しに半島へ戻ってくる。

ミッションは成功するかと思われたが、暴徒化した民兵部隊の介入により回収チームは半島脱出の機会を失うのだった。

その結果展開されるのがゾンビサバイバルじゃなくて、ゾンビワールドでのマッドマックス。ゾンビじゃなくて、ヒャッハー共から逃げるカーチェイスがこの映画のメイン。それはそれで悪くはなかったんだけど、ゾンビがあんまり怖くないのですよね。

光や音に反応するというゾンビの修正を利用して車のヘッドライトで誘導したり、照明弾で敵にゾンビを集めるというのはいいアイデアで、ゲームならすげえ面白いと思うんですが、それはゾンビがある程度制御可能なオブジェクトに成り下がってしまっているということでもあるので。

悪役も無闇にヒャッハーしていて不快さがスリルを上回っちゃってるし、崩壊後の大都市を描くにはCGが安っぽい。車はマリオカート並にファンタジーな挙動をするからなおの事CGであるということが引き立ってしまう。

前作は特急列車内という閉鎖環境だから良かったんだなあ。 

トゥモロー・ウォー

f:id:baumkuchen:20210718065630j:plain

アマプラ独占配信。劇場で観たいという感想を多数見ましたが、俺はむしろ金曜ロードショー感覚でお茶の間で観たい映画だなと感じました。『T2』とか『エイリアン』とか、昔の大作映画の匂いがするので。

エイリアンとの戦争で世界人口が激減した未来。最後の手段として人類はタイムトラベルを開発し、エイリアン襲来前の世界(現代)に派兵を求めた。

タイムトラベルには適正があるため、軍隊をそのまま派遣することはできない。世界規模での徴兵が合意され、生還率20%のミッションに訓練を受けていない民間人が次々と送り込まれるのだった。行きたくなさすぎる。

ガバガバ戦略でいたずらに兵力を損耗させまくっている各国政府にはツッコミどころしかないのですが、アクション大作として初手から絶望的・いきなりクライマックスという話の早さは美点でもあります。細けえことはいいんだよ。

いきなり未来への転送座標ミスって派遣した兵士の大半が墜落死したのはあんまりだと思うけど。

エイリアンはでけぇわ速いわタフだわリーチが長いわ、おまけに圧倒的多数で人類を追い詰める。『スターシップ・トゥルーパーズ』を思わせる物量攻撃と紙クズのように死んでいく兵士。並の映画2本分ぐらいのエピソードがみっちり詰め込まれて、爆発炎上もドッカンドッカン。お茶の間で観るB級大作として文句なし。 

トゥモロー・ウォー

トゥモロー・ウォー

  • クリス・プラット
Amazon

ブラック・ウィドウ

f:id:baumkuchen:20210718082236j:plain

そつなく面白かった。けど優等生すぎてあんまり言うことがないな。

誰でも受け入れられそうな後味が『ベイマックス』とか『ズートピア』とかのディズニーアニメを観た後のそれにそっくりで、MCUはすっかりディズニー作品になったんだなぁと感じるなど。

事前に全く情報を入れていなかったので、まさかのファミリー映画だったのにも驚いた。「孤独な暗殺者は、なぜアベンジャーズになったのか。」というキャッチコピーは内容にかすってもいません。

Smells Like Teen Spirit」のダウナーなカバーで始まるオープニングに期待したら、コメディ要素たっぷりのほのぼのファミリー映画になるなんて思わないよ。面白いけど拍子抜けはしたよね。ヒーロー着地いじりはデッドプールでやってんだからもういいよ。

わだかまりを残しつつの姉妹のチームアップとか、パラシュートなしの垂直方向アクションとかすごく良かったですけどね。久々のMCUで観たかったのがこれかというと、俺は違いました。

刑事グロム vs 粛清の疫病ドクター

f:id:baumkuchen:20210718090205j:plain

NETFLIXオリジナルのロシア映画。邦題があんまりすぎるので思わず観ましたよね。

「自分がこの街を守らなければならない」という妄想に取り憑かれた金持ち(のツレ)が、財力にあかせて自作した装備で夜な夜な悪人を燃やして回る。

明らかにバットマンを意識した作りで、作中でもバットマンに言及しているのですが、触発された市民がマスクを被り模倣犯となることで治安が悪化する流れは『ジョーカー』もミックスされており、アメコミにおけるヒーローとヴィランの紙一重ぶりを思わせて良いです。

それを追うのが刑事グロムというわけで、特殊能力を持たない人間がどうやってヴィランを捕らえるのかという、アメコミヒーローものを逆転させたような建て付けの映画です。

こういう見た目も内容もコテコテにアメコミの影響を受けた映画がロシアで制作されているのがもう面白い。社会悪という「疫病」を火炎放射器で焼き払うペストマスクのヴィランというデザインはあまりにベタだけど格好いいし、ヴィジランテを追う刑事というのもド定番。

熱血刑事のイーゴリ・グロムは有能だが暴走しがち。犯罪者を捕らえはしたものの、街に大被害を出すところから映画は始まり、署長にクビだとなじられる。よくある「石頭の上司と目の敵にされる不良刑事」なのかと思いきや、この署長がすんげぇ良いキャラでして、次の登場シーンではイーゴリを自宅に招いて仲良くピロシキを包んでいたりする。

立場上、仕事で厳しく当たりはするけれど実際のところはイーゴリを実の息子のようにかわいがっている署長がめっちゃ好き。

加えてはみだし刑事と新人刑事のバディものでもあるし、自分の力しか信じない男が仲間の助けを借りることを覚える成長物語でもある。

ヴィランだけでなく、署長や仲間といった登場人物周りの造形が良かったので、続編が制作されるならぜひ観たい。だいぶ好みのやつでした。 

前の

一覧

IQが2になるやつ×2 ー 最近観た映画の感想

モータルコンバット

f:id:baumkuchen:20210711083319j:plain

観ているだけでIQが2になるやつ。

おっさんゲーマーないしは、日本語未対応の洋ゲーをゴリゴリやるヘビーゲーマーには説明不要の残虐格闘ゲームの映画化。

俺はシリーズ初期の実写取り込みキャラクターが真っ二つになったり爆散したりする、いかにも(当時の)洋ゲーといった趣の大雑把なゲームしか知りませんが、まあ映画もそんな感じだと思ってて差し支えありません。人の腕がもげたり人が真っ二つになったり人が消し炭になったりします。

説明。人間界と魔界の覇権を争う格闘大会「モータルコンバット」。人間界は既に9連敗しており、次に負けると人間界が魔界に支配されてしまうのだった。わかりましたか? わかりましたね?

このように初っ端からストーリーを投げ捨ててるあたり、「1ミリも頭を使わずにわかりたい」という需要をきちんと理解しているし最高と言わざると得ません。

わかりやすさと言えば、最近の映画って街並みに「モロッコ」だとか「ブダペスト」だとか、でっかい字幕で地名を乗せる演出をよく見ますが、荒れ地を映して「魔界」は流石にわかり易すぎて笑います。

ちなみにこの映画でモータルコンバットは開催されないんですが、我々は究極神拳の飛び交う格闘バトルが観られればそれで良いですし、その辺りは大会が開かれずとも十二分に満足させてくれるので全く問題ありません。

かように徹頭徹尾「わかり」の極まった映画でございます。

これまでもハリウッド映画では良く見かけたものの、ちょい役が多かった真田広之が主人公格の扱い(主人公は背景で氷を割る仕事)で、序盤から還暦とは思えない程のニンジャアクションを見せてくれるし、ラストバトルへの流れはカッコ良すぎて震える。さらに加えて火を吐くので100万点。真田広之100万点。

あと浅野忠信はずっと目が光ってました。

バクラウ 地図から消された村

f:id:baumkuchen:20210711105310j:plain 

今から数年後の未来。ブラジルのとある小さな村が地図から消えた。

それと時を同じくして、村では不可解な出来事が次々と起こり、ついには謎の襲撃者により村人たちが一人ひとり殺されていく。

しかし村人たちは逃亡奴隷をルーツに持ち、反逆の歴史と共に生きる戦闘民族だった。よって調子こいた素人揃いの襲撃者たちは悲惨な目に遭います。やったぜ。

「戦闘民族」といってもそれは気概の話。めっちゃ強い登場人物がいたり、組織的な戦闘技術があるわけではありません。しかしながら、村人を殺されてただ怯えるのではなく、皆が淡々と反撃の準備を整えるという乾いた感じが実に良きかな。

村人の行動原理はシンプルで「やられたらやりかえす」。明らかに主人公やリーダーという登場人物はおらず、村全体が一つの意思をもって動くこの感じ。襲撃者が不可侵の領域に手を出してしまったということがビシビシ伝わってきてたまりません。派手なアクションは全くありませんが、それだけにリアルだし村人側の静かな殺意が引き立ちます。

いかにも南米の田舎町という風景の中で微妙に近未来ガジェットが使われて展開をスムーズにしている一方で、昔から面々と続いているのであろう村独特の風習なども描かれることでその対比が鮮やかに。独自ルールをお持ちの方々に生半可な手出しは命取りとよーく分かる作りです。

黒幕の「ルールが分かってない」感といい、まるで村の催しのように処分される流れといい、俺は非常に好きな映画です。

(他の人にとっても面白いかはちょっと自信がない) 

ゴジラvsコング 

f:id:baumkuchen:20210711115116j:plain

観ているだけでIQが2になるやつ。

理屈も辻褄も人間ドラマも全部かなぐり捨てて、巨大生物同士のカッコいい殴り合いに全振りした映画。『シン・ゴジラ』の対極にいるようなゴジラ映画ですが、対決ものとしてはこれで大正解でしょう。

前作の『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』みたいな、極端な狂人思考でドライブされる人間ドラマなんて余計なだけだし、あれは怪獣バトルパートもガッチャガチャで俺はあんま好きじゃないんです(「お前が怪獣大好きなのは分かったけどさ……」ってなる)。

ともかく本作に関して「人間ドラマが」「脚本が」と言いながら低評価をつける人はそもそも観る映画間違ってるんじゃないかと思いますよ俺は。人間ドラマが観たいのならば、この世界にはもっといい映画がいっぱいあるので、そちらをご覧になるのが良いでしょう。

今回は身軽な動きと肉弾戦が信条のコングがメインの一方となるだけに、バトルが格闘主体になるのが良かった。前作みたいに熱線バチバチだと画面は派手になるけど、俺などはどうにも散漫な印象を持ってしまったので。

f:id:baumkuchen:20210711121924j:plain

翻って本作。予告で何度も流れたコングがゴジラをブン殴るこの瞬間など、全身のバネを使い、全体重を乗せてる感じの動きが最高だと思います。

事あるごとに熱線を封じられて、まさかの殴りで応戦するゴジラもまた至高。古代からのライバルという設定で、お互いの手の内を知り尽くしているという体の戦い方が本当にイイ。

ゴジラ有利な海上の戦い、ビルからビルへとコングが本領を発揮する香港での戦い。どの戦場でも双方の見せ場尽くしで、これを観た誰もが言っているようにどちらも主役、「どちらの格も落とさない」構成が見事です。

人間ドラマを完全に切り捨てた人間パートも、矮小な人間が地下世界で翻弄されるスペクタクルが描かれていて、これも『髑髏島の巨神』をさらにスケールアップさせた感じで良かったです。玉座とか斧とかのアホSF展開もワクワクが止まりません。

陰謀論者周りの話は見なかったことにします。

あと小栗旬の役は前作の渡辺謙の息子だったらしいのですが、その説明すらないレベルまで人物描写が削ぎ落とされているので白目剥く以外の役どころがなかったのがすげえ面白かったです。無理して日本人入れんでもいいのよ。

前の

一覧

ジャック・ニコルソンの顔芸映画「シャイニング」他 ー 最近観た映画の感想

シャイニング

f:id:baumkuchen:20210704164215p:plain

扉の隙間にお父さんの顔が挟まるシーンで有名な映画。

学生時代、聞いてもいないのに映像美がどうのこうのとキューブリック映画を語る知人が居たもので同監督の作品はなんとなく避けがちだったのですが、観たら普通に面白かったですよ。

冬の間、雪に閉ざされるホテルの管理を請け負った一家の父親が発狂して妻と息子を殺そうとする話。その過程でお父さんが挟まる。

映画版は要約すると本当にそれだけ。原作小説の内容をバッサリ切り落としているらしく、納得のいかなかった原作者のスティーブン・キング本人が改めて録り直した別バージョンがあるそうで。

実際、キングの長編だったらもっとしつこいほどに設定やディティールがあるはずで、こんなにあっさりした脚本にはならないよな、とは思います(原作未読)。

しかしながら、それはそれとしてこの映画は面白い。お父さんが完全に発狂して家族を襲いだすまでは大したことは起こらないし、発狂後もプロットとしては普通の殺人鬼スリラーなのですが、それでも2時間の映画を持たせるのがお父さん役、ジャック・ニコルソンの素晴らしき顔芸。

f:id:baumkuchen:20210704172410j:plain

盛りだくさんの顔芸で徐々に狂っていく → 完全に狂って殺人鬼と化した演技があまりにも見事で平坦な展開を全く飽きさせない。

画角への異様なこだわりも感じますね。通路をやたらとカッチリした左右対称の構図で撮ってるシーンが多かったり、ホテルならではの広い空間を思いっきり引きで撮ってみたりとか。この辺、ものを知らない俺が下手に語ろうとすると前述の「映像美さん」みたいになりそうなのでやめときますが。

あと、最近古い映画を観てると思うのですが、「このシーンどうやって撮ったんだろ」的な興味は尽きませんね。通路の向こうから大量の血がドバッシャア、と流れてくるところなんかは実際にやってるんですよね、あれ。

昔の映画を観る面白さって、そういったことを想像する部分にもある気がします。

シャイニング (字幕版)

シャイニング (字幕版)

  • ジャック・ニコルソン
Amazon

残酷で異常

f:id:baumkuchen:20210704174646j:plain

ちょっと前にTwitterのタイムラインで話題になってたやつ。フォント含め、ぞんざいな直訳邦題となげやりなサムネですが、なるほど、タイトル通り異常なシチュエーションサスペンスで結構好みのやつ(別に残酷ではなかった)。

妻を殺してしまった男が、タイムループで繰り返しその瞬間を追体験することになる。そして毎回、殺害後に送り込まれる謎の教室。そこには家族を殺してしまった人間が集められており、一人ひとり自分の罪を告白することを求められる。

で、何故か罪に関してグループディスカッションをさせられるあたりが大変に欧米らしい。何度も自分の罪を強制的に繰り返させては告白させて後悔と反省をさせるという新しいタイプの地獄でございます。

精神攻撃系ではありますが、罪に応じてエンドレスで苛まれ続けるあたりは東洋の地獄っぽさがありますね。血の池、針の山、グループディスカッション地獄。

妻殺しは不可抗力だったと罪を認めない男はこの世界から抜けだすためにあがき続ける。そのループの中でいろいろな事実を知り、心の底から反省したときに解放される、的な話かと思いきや、この男が反省しねぇわ脱走を諦めねぇわ、性格的にも共感できる部分がほぼ無い。

ループの中で手を尽くして悲劇を避けようとしても結末は変えられない。そんな1ミリも進歩のないループが延々繰り返されたあと、あるとき劇的な変化が持ち込まれる。

そこからの落としどころが良かった。男はきっちり報いを受けるが、本人的には満足しているし、最初の状態よりも不幸になった人間はいないという意味ではある意味ハッピーエンド。

こういうアイデア一本勝負で予算少なそうなワンシチュエーション作品が好物なので結構楽しめました。 

残酷で異常 (字幕版)

残酷で異常 (字幕版)

  • アニー・レノックス
Amazon

 ザ・ファブル 

f:id:baumkuchen:20210704203508j:plain

総じて原作再現度が高くてよく出来てました。特にジャッカル富岡は漫画からそのまま取り出して来たかのようなビジュアルとつまらなさで素晴らしいですね。別にそんなもん忠実に再現しなくていいんですが。

邦画でアクション映画というとどうしてもショボいんじゃないかと思ってしまうんですが。「殺さない」縛りゆえのパルクールや近接格闘を含めたガンアクションは岡田准一の動きの良さもあって見ごたえあり。

無双シーンのやられ役のためとはいえヤクザが兵隊集めすぎな気はするものの、まあそれはご愛敬。『虎狼の血』の時も似たような感覚がありましたが、洋画だと気にならないところが、邦画だとより身近なリアリティを感じやすい分だけ違和感を覚えたりしますね。

あと柳楽優弥と向井理がいずれも原作通りのクソ野郎役で登場するのですが、お互いに怪演といいますか、クズ役があまりにも上手すぎたため、そこそこの尺が取られているこの二人のバトルが全く盛り上がらないのは笑いました(どっちが勝っても心底どうでも良いため)。

岡田准一の佐藤アキラはやっぱりちょっと歳とりすぎなことを始め、ビジュアル的な意味では違和感のあるキャスト(特に向井理の砂川と安田顕の海老原)も多いんですが、観てるうちに慣れるというか、これはこういうモンとして受け入れればありですね。

佐藤二郎のタコちゃん社長は相変わらず佐藤二郎だったんですが、やりすぎないちょうど良い塩梅の佐藤二郎で良かったです。 佐藤二郎は用法・用量を守って使いましょう。

ザ・ファブル

 前の

一覧