ロシアンマフィアがブチ切れたおっさんに壊滅させられるやつ ー 最近観た映画の感想

移動都市/モータル・エンジン

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かつての文明を吹き飛ばした「60分戦争」の後、人類は移動する都市を作り出し、荒廃した世界でわずかな資源を奪い合いながら生き延びていた。

他の移動都市を駆逐し、捕食することで拡大を続ける巨大移動都市ロンドン。逃げる小都市とのクソデカだんじり祭りに始まり、水上都市や空中都市、人間を襲う自律機械や古代文明の超兵器。

ポストアポカリプス、そして元より俺が愛して止まない超巨大建造物ものが錆びたスチームパンクに彩られ、なおかつ変形しながらゴリゴリ動きまくる。

こんなん好きな要素しかないんですが、残念なことにびっくりするぐらい面白くねぇんですよねこの映画。この設定でこんなにワクワクしない映画が作れるのは逆にすごい。

ヒロインの過去と復讐、<復活者>との約束、だいぶ要らない恋愛要素に反移動主義や超兵器の復活阻止等々、エピソードが山盛りで妙に話がとっ散らかってる割にその運びがやたらと間延びしてるので一つ一つが異様に薄味です。だもんで登場人物にも共感できないし、ずっと茶番を見ている感じで話が全然頭に入ってきませんでした。

映像自体は頑張ってるので単純に作業用BGVとして流しっぱなしにしとく、というのはアリかもしれません。  

ラブ&モンスターズ

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NETFLIXオリジナル映画は面白くもつまらなくもない中途半端な映画が多い印象ですが、これは良かった。

化学物質で動物や昆虫が人間を襲うモンスターとなってしまった世界。95%の人口を失った人類は地下シェルターで助け合いながら生き延びていた。

観た映画が連続で世界崩壊してますが、人類同士で争っているモータルエンジンに対してこちらはずいぶん優しいです。

主人公のジョエルはパニックに陥ると固まってしまうため、地上での物資調達には参加できない。しかし仲間たちは彼が料理や機械の修理で役に立っている、とフォローしてくれる。

ゾンビ映画で閉じ込められたショッピングモールだったら必ず性格最悪の奴が一人はいてギスギス人間関係が話のメインになってくるのですが、この映画はそうではなくて、それがいい。

それでも自分が役立たずだと考え孤独を感じているジョエルは、遠く離れたシェルターに恋人が避難していることを知り、モンスターで溢れる地上を通って単身で向かうことを決意する。そんなジョエルの身を案じ、本気で寂しがりつつも送り出す仲間たち。いい奴らなんですよ。

地上で出会う生存者もジョエルにサバイバルの手ほどきをしてくれる頼もしい仲間だし、相棒になる犬のボーイはこれまで観た映画のなかでもトップクラスに賢い&かわいい。そして死なないので安心して観ていられる。

登場するモンスターのデザインにも愛嬌があり、狂暴な奴から人畜無害のものまで様々。それらとの遭遇を経てヘタレのジョエルがきっちり生き延びられる人間に成長していくのもド定番でよし。

人類の95%が死んだ世界にしてはだいぶヌルくて結構のほほんと旅ができてしまうのは拍子抜けなのだけれど、この映画で見るべきは命がけのサバイバルではなくて、前述のような優しい世界なので、これぐらいがちょうど良いと思います。必要以上に痛そうだったりハラハラさせられたりするのは合わない。

タイトル通り、全編にラブとモンスターが満ち溢れております。人間同士、ペット、果てはモンスターとの間にも確かに生まれる愛。ラブ。犬かわいいよ犬。

心に負担のかからないポストアポカリプスもの。人類が食物連鎖の頂点からころげ落ちてもなお自然は美しい。そして人がみんな優しいのがなんか嬉しくなってくるので、心身が疲れてるときに観ましょう。効きます。

Mr.ノーバディ 

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「ロシアンマフィアがブチ切れたおっさんに壊滅させられるやつ(ジャンル名)です。ハリウッド映画界におけるロシアンマフィアはいつだって手頃な巻き藁みたいな扱いをされていて、いっそ哀れになってきます。

「いつものやつ」と注文したらいつものやつが出てくるこの安心感よ。こういう映画こそ劇場の大スクリーンで観たいやつ。

ジャンル名が全てなので多くの説明は必要ありませんが、キレるまでの描写が非常にテンポよく進むのが良いです。にしても毎週毎週ゴミを出し損ねすぎじゃないでしょうか。

ボブ・オデンカーク演じる本作のおっさんは類似の作品とはちょっと毛色が違って妻子持ちです。求めて家庭を持ち、求めて「普通の生活」を送っているものの、心の底ではかつてのような戦いを望んでもいる、というようなキャラクターに見えました。

なので、偶然遭遇しただけのチンピラも必要以上にボコるし、自宅を襲撃した敵は死体か瀕死にしたあとソファーに並べて説教します。あと燃やします。スタイリッシュにスパッと敵を倒すアクションではないので、より一層「暴力」感が増している感じ。

同じく「ロシアンマフィアがブチ切れたおっさんに壊滅させられるやつ」である『ジョン・ウィック』や『イコライザー』なんかと比べても一番「普通のおっさん」をやっているのに、狂人度合いが頭一つ抜けているのが楽しいです。

クラシックカーでちょっと古い感じのポップスをかけながらのカーチェイスとか、ラストバトルの舞台にいきいきとお手製トラップを仕掛けているところも好き。

ラストバトルでしれっとおっさんが増えてるのも笑ったし、中でもBTTFのドクをやっていたクリストファー・ロイドがめちゃめちゃ元気かつ楽しそうに暴れるので最高でした。

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理不尽無理ゲーやりこみRTA「コンティニュー」他 ー 最近観た映画の感想

武器人間

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B級ホラーかくあるべし。ナチスお抱えのマッドサイエンティスト謹製・面白クリーチャーがソビエト兵に襲いかかる!!

もうナチスって言っときゃ何やってもいいだろってぐらい雑に扱われるB級映画界の万能食材・ナチス党。しかしながら本作ではトンチキ兵器×人体実験というお題があまりにもマッチしております。 

「おはよう!」「オッスオッス」「おかわり!」ぐらいの軽いノリで機械と人間の悪魔合体、というかニコイチにされたクリーチャー兵器が次々登場、ソビエト兵は戦い、そして逃げ惑う。

ほぼそれだけの映画ではありますが、博士の趣味だけに振り切って設計された実用性皆無のクリーチャー兵器は鉄分多めで悪趣味カッコイイ。

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これは公開時に先着でもらえたポストカードだそうで。超ほしい。

まあとにかく博士がウッキウキでバケモン量産しているのを見ると、これはまんま監督の心境を写してるんだろうなあと思います。こんなん作るの楽しすぎるだろ。

部隊の一人が記録映像を残しているという体のPOV映画なので、クリーチャーが出るときほどカメラが揺れがちでじっくり観察できないのが残念なのですが、脚本にもちょっとした捻りがあり、クソ野郎にきっちり因果応報が行く結末はどっかで観たことあるような気がするものの、結構好き。まあクソ野郎以外も大体死にますけど。

なお博士だけは最期までずっとウッキウキです。

グロは大分少なくて大体は安心して観られるんですが、時折生身の脳を出したがるので、その辺り苦手な人はご注意を。(俺は苦手です)

あとドイツ人もソビエト人もみんなめっちゃ英語で喋ってんのに、アイン・ツヴァイ・ドライだけ唐突にドイツ語になって字幕出るのがアホっぽくて面白かったです。 

武器人間

武器人間

  • カレル・ローデン
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コンティニュー

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最近本当によく見かけるようになった死に戻りループものなんだけど、これは本当に面白かった。

ある日突然、次から次へと殺し屋に狙われるようになった主人公は、必ず殺されて終わるその一日をなぜか何度も繰り返す。銃殺・墜落・首チョンパ。殺されると寝起きをマチェットで襲われる最悪の目覚めまで時間が巻き戻る。

フランク・グリロ演ずる主人公は元デルタフォースの戦闘のプロ、かつ映画が始まった時点で既に100回以上のループを経験済み。朝起きてからの一連の流れはアクションゲームで言うところの「パターン化」が完全にできており、ゲームのやりこみ実況解説のような異様にテンポのいいアクションが展開されます。

『マトリックス』のキアヌ・リーブスは超人的能力で弾丸を回避しましたが、本作のフランク・グリロは何度も死んで覚えた「安地」でくつろぐ。反射ではなく経験と学習によって成される落ち着き払った無双アクションが超楽しい。

それでも死に続ける難所を少しづつやり方を変えて試してみる、あるいは無限に繰り返される時間を利用して地道に訓練することで乗り越える。

『コンティニュー(原題:Boss Level)』というタイトルや昔のアーケードゲームのようなフォントといい、明らかにビデオゲームを下敷きにしながらも、全くゲームの話になっていないあたりもとても良い。

ゲーム的演出といえば『スコット・ピルグリムVS.邪悪な元カレ軍団』を連想しますが、1UPアイテムが現実に現れたり、格闘ゲームのような必殺技を繰り出す『スコット~』と違って、こちらはプレイスタイルがゲーム的なんですよね。随所で「あるある」と思わせてくれるのが本当に上手い。

加えて離れて暮らす息子とのコミュニケーションはゲーセンでの対戦プレイとか、もう本当にゲーム好きすぎだろこの映画は。ゲームをテーマにしただけのクソ映画とは比べ物にならないくらい「ゲームらしさ」を丁寧に扱っていると感じます。

殺し屋軍団のキャラ立ちっぷりもいいし、最終的にただの攻略からRTAになって彼らが雑にスキップされるのも、もう本当大好き。

結末があっさりしすぎで余韻がない、みたいな感想をいくつか目にしましたが、グリッチを駆使したRTAなんてそんなもん(なんの脈絡もなくいきなりエンドロールが始まる的な)なので、俺はそれも含めて「それっぽい」なあと感じました。

ゲームそのものではなく「ゲーム的なるもの」の映像化として満足度高し。 

ピエロがお前を嘲笑う 

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小物ハッカー集団が小物扱いにキレて大きなヤマを仕掛けたら大事になってしまい慌てふためく映画です。

ハッキングって画が地味なので、フィクションのスーパーハカーさんは無闇に大量のウィンドウを開いたり、自作の攻撃プログラムに「よーし、良い子だ」とか呟きがちなのですが、本作ではそういう定形表現がなくて良かったです。

地道なソーシャルハッキング主体だったり、ダークウェブのフォーラムでのやり取りをメトロ内に集まるアバターで表現するのもいいですね。

一方で、この映画の売りらしい(知らずに観た)「100%見破れないトリック」なんですが、俺は全くもって気に入らないというか、「騙された!」という気持ちがこれっぽっちも湧きませんでした。それをやる合理的な理由がなく、トリックを仕掛ける事自体が目的になってしまっているように思えるので。

この先はオチについての不満を書きますので、ネタバレが嫌な人は先に観てください。 

じゃあ書きます。

この映画のトリックは

  1. 主人公ベンヤミンが証言するハッカー仲間は実はベンヤミンが作り出した多重人格であり、実在しない
  2. と、捜査官に思わせることでベンヤミンは証人保護プログラムの適用外となり、気の毒に思った捜査官が5分間だけ警察のデータベースへの侵入を許可、自己の情報を書き換えることで単なる証人保護以上の自由を得て(でないと1.で単独犯だと証言しない理由が分からない)仲間と逃亡する

の2段オチ。

なんで作戦が警察の同情ベースなんだよって話だし、捜査官もそんな理由でハッカーに侵入を許すんじゃないよ。

100%騙される、ってそりゃ見破れないよ、必然性が全然ないんだもん。仕掛ける意味のないトリックでドヤ顔されても困るわ。

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ババアズ・バタリオン「デンデラ」他 ー 最近観た映画の感想

機動警察パトレイバー2 the Movie

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面白え!! & レイバー全然出ねえ!!

日本が戦争状態に陥るとしたらどんな状況か。その問いの答えがまさかの内戦、警察と自衛隊という治安機関同士のぶつかり合い。

横浜ベイブリッジで発生した爆破事件。その裏にはPKOでレイバー小隊を指揮していた元自衛官率いるグループの影が。

責任を警察に押し付けようとする政府によって実行される自衛隊の都内への治安出動。決定的となる警察と自衛隊の対立。抑えめの描写で話が進んでいるだけに、なおさらこの画が鮮烈で。

この瞬間、決定的に日常が崩壊しているのにいつもどおりに出勤していつもどおりの生活を送っている都民も皮肉が効いていていい。コロナ禍でも電車に乗って通勤せざるを得ない現状に通ずる、というか現実に日本人は全くこの通りの振る舞いををすることが分かったわけでね。

責任逃れに必死な警察上層部の図なんかも如何にもって感じで面白い。上の無能を現場がなんとかする美しき日本。「シン・ゴジラ」にも似た味わい。

特車二課が襲撃されて孤立する展開は漫画版の最終エピソードにもありましたが、自衛隊のヘリが警察の拠点を蜂の巣にしていく映像は、同じネタの焼き直しや使い回しとはとても言えない凄まじいインパクトがあります。

ここで整備中のレイバーがほとんど破壊されるし、使える数少ないレイバーも戦闘開始後、ほとんど格闘シーンもなく次のカットでは敵と相打ちでスクラップになっている。前作の感想でレイバーの戦闘が蛇足に感じると書いたけど、今回レイバーを活躍させる気が全くなくてちょっと笑えます。だってこの話にロボットの格闘はいらないもん、と。(わかる)

じゃあパトレイバーである必要はないのか、というとそうとも言い切れなくて、後藤隊長、南雲隊長、松井刑事といった漫画やTVシリーズを知っている人間にとってはおなじみの人たちがメインキャラとなっているというのが肝要。多少でもその人となりが事前知識として頭に入っていると、状況の理解がものすごく早くなるんですよね。(後藤さんが声を荒げるならそりゃあ大変なことだと一発で分かる)

一方で特車二課の隊員はほぼ空気でした。太田はクソウザかったです。

結局のところ、必ずしもパトレイバーである必要はないし、事前知識はなくても楽しめるのだけれど、パトレイバーの皮をかぶせているからより一層面白く感じるし、そもそもパトレイバーの企画じゃなかったらこの映画製作されてないよね。

その上でやりたい放題やってんだからもう最高ですよ。 

メン・イン・ブラック:インターナショナル

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映画には「可もなく不可もなく毒にも薬にもなんねぇ3日で内容を忘れるハリウッド大作」というジャンルがあると思っていて、これはそれでした。

可もなく不可もなく毒にも薬にもなんねぇ3日で内容を忘れるハリウッド大作が観たい気分のときにおすすめです(そういうときはあるので否定をしているわけではない)。

ちなみに観てから3日目にこの文章書いてます。明日には内容を忘れてしまうので急ぎ感想をしたためているのですが、忘れても「頭空っぽにして観られる楽しい映画です」とかなんとか言っとけばだいたい当てはまるので楽でいいです。

クリス・ヘムズワースにちっちゃいハンマーを持たせて勝ち誇らせてみたり、ポリコレに気を使って親指ビシィって立てたりしてとってもおもしろかったですね。わかりやすい。「ここが面白いところですよ」って付箋が貼ってある本みたいですね。

あとオーバーテクノロジーの超兵器を手に入れてワクテカしながら「ちょっと撃ってみようぜ!」って言うときのクリス・ヘムズワースの笑顔は完全にアホの顔でそこは掛け値なしに面白かったです。

クリス・ヘムズワース演じるアホといえば「マイティ・ソー バトルロイヤル」のときのソーとか「ゴーストバスターズ」のケヴィン等がありますが、今回は超有能なMIBのトップエージェントであるにも関わらず、魂から発せられたかのようなアホ面が最高でした。

変顔じゃないの。超絶イケメンの素敵な笑顔なのに「あ、コレ駄目なやつだ」ってすぐ分かるぐらい完全にアホがにじみ出てるの。トップスターの演技力半端ねえな。

あとはえーと、頭空っぽにして観られる楽しい映画でした。おわり。  

デンデラ

 

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口減らしとして姨捨てされた老婆たちは山奥で集落を作って生き延びており、村への復讐を果たすべく戦闘訓練を行っていた!!

なるほど、追放からの復讐譚。「なろう」とかで大人気のやつですね。俺は詳しいんだ。

最年少70歳(70歳になると山に捨てられるので)からのババア軍団による戦闘。そんなん面白いに決まってんじゃん。

往年の大女優たちによる美老女揃いの軍団ではありますが、過酷な雪山の中、ボロをまとって鬼気迫る表情で巻藁を突く彼女らの逞しさに敬意を表してここは「ババア」と書かせてもらいたい。「老婆」では足りない。

いざ決起せん、というところまでは本当にワクワクして面白い。途中で熊が乱入してきて復讐が有耶無耶になっちゃうのがちょっと残念ですが、熊大暴れ、血しぶきドバドバはちょっと予想外の映像で驚きました。おばあちゃんにここまで大量の血糊をあびせまくった作品ってのも他に例がないんじゃないでしょうか。

ちょっと安っぽいですが、おかげで過剰にグロくもないし、一風変わったアニマルパニックものとしても楽しめます。

ところで、アリ・アスター監督が「ミッドサマー」を撮る際に同じく姥捨伝説を描いた「楢山節考」の影響を受けていることを公言していますが、ひょっとしてこの映画も観てる? どうしても連想せざるを得ないシーンあり。 

デンデラ

デンデラ

  • 浅丘ルリ子
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ヘヴィメタル寿司 ー 最近観た映画の感想

激突!

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スピルバーグの初監督長編。これもU-NEXTにしかなかったのでとりあえず観とこうと。

タンクローリーに延々あおり運転をされるというサスペンス。煽り運転は昨今日本でも社会問題として取り上げられることが多くなっていますが、時代や洋の東西を問わず人間は全く進歩してないのがよく分かりますね。

如何にもアメリカ映画って感じの殺風景な一本道で、巨大なタンクローリーに殺意を込めて煽られまくる。なんとかやり過ごしたと思っても行く先で待ち受けているタンクローリー。最後までドライバーの顔が出ないことと、まるで幽霊船のように年季の入ったボロボロのタンクローリーの佇まいゆえに心霊現象や悪夢の類にすら思える執拗さで追跡は続く。

デス・プルーフ」終盤のカート・ラッセル側の気持ちになる映画。要は常に強いられる緊迫感で見る見るうちに憔悴していく主人公を眺めるだけの映画なのですが、やはり演出が巧みなのでオチが付くまで目が離せなくなるんですよね。結末まで観て煽られまくったストレスを発散させないことにはこちらの気持ちの収まりがつかないという。

全然ジャンルの違う映画なんだけど何故か「新感染 ファイナル・エクスプレス」を思い出しました。あれもずっと心の休まる暇がないんだけど面白い。

一緒に観ていた嫁さんは「毛根にクる」って言ってました。 

激突! (字幕版)

激突! (字幕版)

  • デニス・ウィーヴァー
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皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ

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俺は世代が違うしスパロボもやったことがないので馴染みがないのですが、「鋼鉄ジーグ」は昔のロボットアニメ。これが当時イタリアで大ヒットしたらしく、ある世代のイタリア人にとってはガンダムよりも馴染み深いそうで。ジーグ直撃世代の監督がオマージュのヒーロー映画を撮っても通用するぐらいには。

主人公は核廃棄物かなんか(適当)で意図せずスーパーパワーを手に入れてしまったおっさん。このおっさん、もともとケチな窃盗とか犯罪の手伝いでその日暮らしをしているゴロツキなので、力を手に入れてもやることは人目を避けてATMをもぎ取って帰ったり、現金輸送車を襲ったり。

超人として派手に力を誇示することもなく、奪った金で贅沢をするでもなく。大金を手に入れてもとのパッとしない生活をそのまま続けていたが、ひょんなことから同じアパートに住んでいるヒロインを助けることになる。

このヒロインは結構いい年なんだけどちょっと気が触れていて、何故か日本のアニメ「鋼鉄ジーグ」のDVDを連日繰り返し観て現実と区別がつかなくなっている人。主人公のパワーを見て「鋼鉄ジーグだ!!」と懐いてしまう。

鋼鉄ジーグ要素ってこの主人公とヒロインのつながりでしかないので、単なるマクガフィンの類だと考えれば仮面ライダーでもアメコミヒーローでも置き換え可能ではあるのですが、率直に言ってダサいデザインの鋼鉄ジーグだからこそヒロインの特異性が際立ってる気もします。 

最終的にはヒロインに絡んでいた地元のギャングと敵対するのですが、監視カメラの映像などで有名になってしまった主人公に嫉妬する、恐ろしく器のちっちぇえボス vs 怪力持ち腐れの小悪党という、スーパーヒーロー映画としては大変に地味な構図。

バトルを期待すると本当に映えない映画なのですが、このボスが本当に小物かつクズかつ頭が悪く、主人公と関係ないところで勝手にどんどん追い詰められて行くので楽しく観ることができます。

悪と戦わないヒーローとあまりにも魅力のないヴィランによる謎のシナジー。なんともしっとりとした空気の漂うヒーロー映画でした。ヒーロー映画なのか? 

リトルトウキョー殺人課

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「ニンジャスレイヤー」や「キル・ビル」のように、西洋人が考える「間違った日本」を殊更に強調して面白がる作品というものがありますが、そうではなく恐らく素で全部間違っているのがこの映画です。

海外文化を魔改造してしまうのは日本人も同じなので、いちいちドヤ顔でツッコミを入れるのは野暮(「カリフォルニアロールは寿司じゃない」と言い出すようなもの)だと思うのですが、本作は一から十まで間違っているところしかないので言及しないこと自体が不可能です。

日本育ちの刑事であるドルフ・ラングレンがLAの日本人街で起きた殺人事件の捜査でジャパニーズヤクザをフリーダムにブッ殺してまわる映画。ドルフ・ラングレンの何言ってんだかわからない日本語と、日本人役者の恐ろしく下手くそなカタカナ英語(逆に聞き取りやすい)が両方楽しめる欲張りセット。

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一方で日本人役者の喋る日本語は超適当に翻訳されており、唐突にヘヴィメタル寿司等の大変エッジの効いた単語が飛び出してきます。

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セップク・ブシドー・ニョタイモリ。ラストバトルに臨むドルフ・ラングレンの出で立ちを見れば内容は概ねご理解いただけると思うので詳細は省きますが、この手のボンクラ日本をネタではなくガチでやっている作品は実は初めて見ます(部分的におかしいのはよくありますが)。

ニンジャスレイヤーってオマージュとして良くできてるんですね。SFじゃないニンジャスレイヤーだわこれ。 

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無限ループって怖くね? 「パラドクス」他 ー 最近観た映画の感想

デビルズ・メタル

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メタルを聴くと救われる。

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時折Twitterのタイムラインに流れてきてたこのカットが面白すぎるのでずっと観たかったんですが、わりと普通の悪趣味スプラッター映画かなあと。

高校生メタルバンドがひょんなことから手に入れた魔王を召喚する楽譜を演奏してしまい、街中の人間が悪魔憑きになって襲いかかってくる。

あとはチェーンソーやら斧やらでバッサバッサと悪魔憑きを殺しまくるし、受肉した魔王も殺す。血ィドバドバ出る。内臓もボロボロこぼれる。

この手の映画、一応普通に観れますけども、基本的に俺はゴア描写好きじゃないんですよね。血がアホほど出るまではギャグの範疇でいいんですが、人間の断面とか観たくない。

それらを塗りつぶして有り余るほどの突き抜けた頭の悪さがあるかと言えばそうでもなく、ガワにメタルをかぶせただけのありがちな映画って感じ。というかB級スプラッターって全部内容同じなんじゃないだろうかと思うぐらい既視感がすごい。

ゴリッゴリのメタルをBGMに、手近な武器としてディルドーやバイブレーターといった大人のおもちゃで悪魔憑きに襲いかかる(そして勝つ)とか、面白がる人は面白がるんでしょうけどね。個人的には方向性が合いませんでした。

観た後で知ったんですが、これ「ガンズ・アキンボ」と同じ監督なんですね。いずれも悪趣味には違いないけれど、ガンズ・アキンボはきっちり一般受けするようにブラッシュアップされてるのがすげーなと、変な感心をしてしまいました。 

機動警察パトレイバー THE MOVIE

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パトレイバーは漫画版を既読。TV版は未見ですが、評価の高い劇場版を観てみたかったのです。

パトレイバーはレイバーが徹底して「汎用的な重機」として描かれているのがいいですよね。ロボットアニメとしてよりはお仕事モノの部分に軸足が置かれている。

公開は30年前、劇中内の時間でも20年前だというのに内容は全く古びない。漫画版にもOSがハックされる話がありましたけど、より大規模に首都壊滅レベルのテロ事件として持ってくるその先見性がスゲエし、それを刑事モノの「足で稼ぐ捜査」的描写で地道に進めていくのもいい。

なのでぶっちゃけレイバー同士の格闘は無用というか、最後の零式とのバトルは蛇足に感じます。ロボットアニメとしての建て付けを考えたら入れなきゃいけないのは分かりますが、個人的には警備ロボットと作業用レイバーまでで良かった。

30年前から見た「未来の東京(20年前)」という世界はちょっと良いですね。バラック街の中を進む人型レイバーとか再開発地区の廃墟とか。

実際の世界とは似ても似つかない風景なのに、今観ると20年前だったらこういう場所が本当にあったのではないかという気がしてくる。妙なリアリティがあるんですよね。

映像も脚本も好みでした。2はこれに輪をかけて名作だという話なので楽しみ。 

パラドクス

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ポスターがサイコホラーとかスラッシュホラーみたいですが、こんな人は出てこないし、こんなシーンはありません。

古くは「Cube」なんかを連想させる不条理系のシチュエーションスリラー。ループものなんですが、近年よく見る時間遡行のループではなくて空間がループする。

非常階段は1階の下に最上階が現れ、一本道は何度でも同じ看板とガソリンスタンドが現れる。そんな不可解な空間に囚われた人間たちのお話。

ループしているのは空間だけなので、時間は普通に経過する。食料などの物資は消費してもなぜか定期的に初期化されてもとに戻るので生存自体は問題なし。

数日、数ヶ月、数年。あるいは死ぬまで脱出できないかもしれない空間に監禁された人間の精神はどのような変貌を遂げるのか。個々の全く異なった振る舞いと、閉鎖空間・極小人数でも生まれる独自の文化、宗教じみたもの。思考実験としてめっちゃ面白い。あといかにも金かかってなさそうなのもいい。

一応ループの理由も説明されるけれど、まあ何の説明にもなっていません。元より超現実的なシチュエーションなので俺は全く気になりませんでしたが。

最近は少しづつ刻んで映画を観ることが多いのですが、これは最終的に一体どういうオチを付けるのかが気になって一気に最後まで。人によってはちゃぶ台ひっくり返すかもしれませんが。 

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エル・マリアッチ

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俺が愛して止まない痛快クソバカB級ガンアクション「デスペラード」を含むマリアッチ三部作の一作目。

ギターケースに銃を詰め込んだ殺し屋と勘違いされたギター弾き(マリアッチ)の兄ちゃんがギャングに命を狙われて追いかけ回される。

相当シンプルでありがちな筋書きなのにちゃんと面白くなるのが監督の力量、画作りの妙というやつなのでしょうかね。ザラザラのグレインノイズがメキシコの乾いた町並みによく似合う。

明らかな低予算映画なので続編2作のような派手なガンアクションはありませんが、必死で逃げ回りながら、時には敵を返り討ちにしていく、本当にただそれだけの映画がちゃんと面白い。

主人公がアントニオ・バンデラスじゃないのでデスペラードの原型になる別の話なのかと思ってたんですが、改めてデスペラードを見直すと設定上は同一人物っぽいですね(この映画での出来事を夢に見るシーンがある)。バンデラス自身がギターケースに銃を詰め込んだ「エル・マリアッチ」となるまでの前日譚。

このときはちょっと幼さの残る顔をした気のいい青年なのに、一体何喰ったらバンデラスに成長してしまうんだと思うと笑いが止まりません。 

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「ブルース・ブラザーズ」が楽しすぎた ー 最近観た映画の感想

トマホーク ガンマン vs 食人族

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アメリカ西部の田舎町で数名の住人が原住民に拉致される。さらったのはネイティブアメリカンの間でも人喰いとして恐れられる蛮族と判明。一刻も早く住人を救い出すためさらわれた女医の夫や保安官など、4人のガンマンが旅立つ。

なんとも描写が淡々としていて、2時間超えの作中の大半が移動と野営、それに伴う会話ばかりという渋い作り。

と、思いきや、何の前触れもなく野盗の襲撃やらなんやらの事件を差し挟んでくる。映画的な溜めの演出を設けずに、効果音やBGMをつけることもなくヌルっと事が起こるので逆に妙な臨場感があります。

ドラマというよりは蛮族と戦うドキュメンタリーを観ているような。何だ蛮族と戦うドキュメンタリーって。

長らくダラダラ旅をしていたかと思えば「目線をフッと横に向けたらそこに蛮族がいました」ぐらいの勢いでいきなり戦闘が始まって、そのまま一気にクライマックスまで。ペース配分がいろいろとおかしいのだけれど、だからこそ終盤が印象に残る。

それまで淡々と旅をしてきたように淡々と命のやり取りが始まって、淡々と大ピンチに陥る。それはもうスルッと絶望的状況に陥るので全く助かる気がしねぇ。露骨な伏線や溜めがないのがここでも逆に良い効果になっていると思います。

邦題がどうみてもB級バカ映画のそれなんですが、思いの外しっかりした映画でした。

前半のロードムービー部分は多くの人には退屈だろうし、敵は食人族なので食材として人体を解体するエグめの描写もある。なのでなんとも人にはおすすめしづらい作品ではあるのですが、ちょっと変わった後味の映画で嫌いじゃないです。

いや、本当はB級バカ映画を観るつもりで再生したんですけどね。 

ファイティング・ダディ 怒りの除雪車

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そんなわけで今度こそB級バカ映画を観ようと思ってこれを再生したら、これもシリアスかつ普通に良い出来の映画でした。配給会社は何考えてこんな邦題付けてんだよ。

重機での除雪を生業にする真面目で勤勉な男ディックマンはある日、一人息子を薬物のオーバードーズで失う。息子が薬物など使うわけがないと確信するディックマンは警察に捜査を求めるが、警察は自死として取り合わない。

そんな中、何者かによる他殺であるとの真相を知ったディックマンは真犯人を見つけ出し、復讐を果たすべくひとり孤独な捜査を始めるのだった。

この手の映画って復讐者が特別な戦闘技術を持っているってケースが多いのですが、この親父さんはもともと善良な一般市民。正面切ったバトルはできないので犯人グループの下っ端が1人きりのときに不意打ちで殴り倒しては情報を吐かせ、殺していく。死体は金網でぐるぐる巻きにして滝に捨てる。

これを必要な情報が揃うまで何度か繰り返すんだけど、妙にテンポが良くて笑えてしまう。

殴る→吐かす→殺す→捨てる。毎回同じコーラスをBGMにスローモーションで滝を落下していく簀巻き。天丼芸かよ。

さらには死人が出ると画面が暗転して十字架と名前が出る演出があって、異様なスピード感に拍車をかける。途中からは殺害シーンも省略して「彼は死にました」。とにかく分かりやすいんだけど、日本で言ったら遺影のアップにチーンと鐘の音が鳴るようなものなので、どうしても面白くなっちゃうのは仕方ない。

派手なアクションはほぼなし。肉体労働者ゆえワンパンで人を殴り倒すだけの腕っぷしはあるものの、殴りつづけると息が切れちゃうような親父さんが主人公なので。それでも前述の異様なテンポの良さや、妙な愛嬌のある第3勢力、重機のカッコ良さなどで終始楽しく観れちゃいます。

というか、そもそもこれアクション映画じゃないですね。サスペンスとかスリラーとかそっちのジャンルです。ジャケットも邦題も勘違いを狙って作ってる感じが気に入りませんが、中身は良作です。 

ブルース・ブラザーズ

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5月からNETFLIXが値上がりしたので、ひとまずU-NEXTの31日間無料に切り替えて様子を見ています。

月額は高いけど、さすがに作品数No.1を謳ってるだけあって、NETFLIXやAmazn Prime Videoで観られなかった映画も多数。最初に契約するVODサービスとしては全くおすすめしませんが、ある程度他のサービスを使ったあとに一時的に乗り換えるのは有りだな、と思いました。

で、名作と名高い「ブルース・ブラザーズ」。いまのところU-NEXTにしかないので早速観てみましたが、確かにめっちゃくちゃ面白いなこれ!

刑務所帰りのジェイクと弟のエルウッドが、経営難の孤児院を救うために昔の仲間を集めてバンドを結成、一攫千金を目指す。

バンドで金を稼ぐためには手段を選ばない兄弟。警察に追いかけ回され、飲み代を踏み倒した酒場の主人やステージを奪ったカントリーバンドからも恨みを買い、ネオナチや神出鬼没の謎の女からは命まで狙われる。

そうなるのも当然の悪事を働いている兄弟なのですが、視聴者的には音楽シーン(ミュージカル・ライブ)の楽しさで全部チャラになってしまうのが非常にずるい。

教会の牧師はジェームス・ブラウン。説法の最中にめっちゃ歌い出して参拝者は跳ねるわ踊るわの大騒ぎ。楽器店の店主はレイ・チャールズで、一緒に中古の楽器を試奏すれば街中がツイストする。クライマックスのライブシーンの熱狂は言わずもがな。40年前の垢抜けないダンスがダサいやら可愛いやら格好いいやらでずっと観ていられる。

コメディに関しても全力でスラップスティックをやってやろうという気概たっぷり。

VFXがない時代のスラップスティックを作り出すのは物量と破壊。カーチェイスはショッピングモールであらゆるショーウインドウをぶち抜き、商品を撒き散らしながら駆け抜ける。アパートは粉々に崩れ落ち、電話ボックスは空を舞う。あり得ない台数のパトカーは兄弟を追いかけ回し、跳んでぶつかりひっくり返る。しまいには狙撃部隊や陸軍が数百人規模で出動ときた。

コント的演出を過剰にド派手にビッグタイトルならではの金をかけまくった力技で押し切る。もちろん現代の映画ならもっと派手な画はいくらでもあるんだけど、全て実物・実写でここまでやるかってのがとてつもなく贅沢に感じられます。コメディ映画だよねこれ?

この映画に関してはまさしく「古き良き」という言葉を使いたい。昔は良かった、ではなく昔だからこその(今とは違う)良さが全編に詰まってる。

5日前に初めて観たこの映画、作業中のBGVとしてもう何度も流してます。音楽シーンのたびに見入って手が止まるのでBGVには絶望的に向いてませんが。 

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XBOX360版の獣王記 ー 最近観た映画の感想

ガールズ&パンツァー 最終章 第3話

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このシリーズは本当に面白いのだけど、人に勧めるのが困難で。どうやったら普通の人に「女子高生が戦車で戦うアニメ」を観させることができるのか分からない。俺自身、劇場版が話題になるまでは「またこういうのか」って思ってましたし。

「こういうの」。キャンプやら釣りやらの男性比率が異様に高い趣味を女子高生にやらせる漫画やアニメってのは大量にあって、多くはホンワカフワフワした日常系。

これもその亜流かと思いきや、劇中の殆どの時間は戦車で戦っているという。

足を止めて砲撃する移動砲台ではなく「高い機動性を持った戦闘車両」として、大量の戦車が錯綜しながら交戦し、主砲をぶっ放しあう。架空のスポーツ「戦車道」をでっち上げることによって実現したあり得ない絵面の戦車バトルが最高なのです。

この第3話は知波単学園の成長ぶりが観られて良かった。旧日本軍を模した突撃バカ共、劇場版での初登場時には足を引っ張る勤勉な無能というコメディリリーフだった彼女たちが思考停止の「突撃という伝統」と決別し、勝つために知恵を絞って行動する。

部活ものの王道、弱小チームの大躍進。今回、意図的にライバルチームを主役ポジションに置いているけれど、こういうの観ると他の対戦カードもじっくり描写してもらいたくなっちゃいますね。

1話48分は短いわ。

ガーディアンズ

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ロシアが頑張って作ったマーベル映画みたいなやつです。誰も困らないと思うのでネタバレしますけど、嫌なら読み飛ばしてください。

旧ソビエト時代の強化人間がロシアを崩壊させんとする科学者に立ち向かう。キャプテンアメリカや仮面ライダーに通ずる、ヒーローものとしては古典的といっても良いやつ。

どのシーンも静止画で観るとそこそこ格好いいのですが、動いた途端どうにももっさりする不思議な映画。上のイメージビジュアルの通り、凶暴化して暴れるというハルクのポジションにクマチャンの半獣人がいるのですが、彼が変身して暴れると「そうそう、XBOX360版の獣王記ってこんな感じ」と存在しないゲームの幻覚が見えてしまう前時代感がたまらない。

とにかくガーディアンズの面々が弱い。モブ兵に負けて全員拘束される。ちなみにメンバーの一人である念動力使いは「手ごろな石が無くなった(石しか動かせない)」という原始人のような理由で負けます。

そして救出されたあと石を沢山くくりつけたスーツなどの新装備と訓練でパワーアップするんですが、また普通に負けます。

最後はそれまで使っていた超スピードや透明化といったスーパーパワーに関係なく、4人ですげえ遠くからかめはめ波みたいなの撃って建物ごとラスボス吹っ飛ばしてました。

特別面白いわけでもなく、色々と雑なのですが、なぜか嫌いになれないこの味わい。続編作る気満々の終わり方してたけど本当にやるの? 観るけど。(見放題なら) 

ガーディアンズ(字幕版)

ガーディアンズ(字幕版)

  • アントン・パンプシニ
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ナイブズ・アウト / 名探偵と刃の館の秘密

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一代で莫大な財を成した有名ミステリー作家の自殺。警察の捜査では不審な点は見つからなかったものの、現場には依頼を受けた名探偵が現れる。

いざ殺人事件と疑ってみると、親族は殆どが故人とのトラブルを抱えており、遺産相続を前にして全員が容疑者として浮かび上がってくるのだった。

という長ーい容疑者紹介が終わってからのテンポの良さが素晴らしい。体感的には20分に1回ぐらいのペースで「おいおい、面白くなってきやがったぜ……」と思わせる展開や新事実、または新たな謎が。

邦題は名探偵だの館がどうのと本格ミステリーのようなトリックと推理を予感させますが、全くそういう映画ではないですね。

探偵が真相に辿り着くのは視聴者の知らない証拠によってだし、ノックスの十戒によれば推理ものとして反則。ただ、この映画で楽しむべきは推理じゃなくて立て続けに発生する急展開と、それらが全部つながる怒涛のネタばらしなので。

ミステリーの捜査シーンなんて、名探偵が推理を開陳する前のタメ、下手したら単なる情報提示だけのシーンに成り下がるわけですが(「オリエント急行殺人事件」なんかはわりとそんな感じ)、本作ではそれらがことごとく面白かった。

どうせ真相は最後まで分からないようになっているので、筋道立てて推理するのはダニエル・クレイグに任せて、我々はシーンごとに適当な憶測をしたりビックリしたりしてればいいやつです。

ちなみに俺は家が全然刃の館じゃないことにビックリしました。なんだこの邦題。

孤狼の血

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「ヤクザこええ」って思いました。小学生でももっとマシな感想言いそうなもんですが。

暴対法施行直前の昭和ヤクザによる抗争。それを食い止めるべく犯罪スレスレを2・3歩通り過ぎた違法捜査を行うベテラン刑事の役所広司。と、コンビを組まされた若手刑事の松坂桃李。

実際のマル暴の刑事さんもそうなんでしょうが、役所広司のガラの悪さが素晴らしいですね。大卒のエリートの松坂桃李がそれに振り回されつつも、最終的には立派なマル暴の刑事として覚醒する。まあそんな感じなんだろーなと思ってたらそんな感じでした。

そこに至るまでがなかなかに生々しくショッキングで、どうしても「ヤクザこええ」が一番最初に来る。この手の単純かつ理不尽な暴力の恐怖を映画で感じることってあまり無いので新鮮に感じます。

ヤクザによるバイオレンス描写は韓国ノワールでよく観ますが、やっぱり海外映画だと自然と現実離れしたファンタジーとして捉えちゃうんですよね。それが邦画で吹替ではない日本語を話しているだけで自分と地続きの世界と感じられてしまう。これは邦画ならではの楽しみですね。

松坂桃李は普通に演技上手いのですが、強面のおっさんまみれの宇宙にただ1人存在する若いイケメンなので画面内の違和感がものすげぇですね。そもそもそういう役どころなので仕方ないんですが。

本作で立派なマル暴として覚醒済みの松坂桃李が、近々公開されるらしい続編でどんだけスレて画面に馴染んでいるかが結構楽しみだったりします。 

孤狼の血

孤狼の血

  • 役所広司
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己嫁語り(おれよめがたり)

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書き置きのコレクションがだいぶ増えました。

※名川太郎さんは2019年3月で番組を引退されました

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狂気の沙汰のストップモーション「JUNK HEAD」他 ー 最近観た映画の感想

ルーザーズ

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なんのひねりもない映画が観てぇなぁと思って、NETFLIXのおすすめから何のひねりもなさそうなこの映画を選んで観てみたらなんのひねりもなくて良かったです。

これはべつに皮肉で言ってるわけではなく、シンプルな筋書きに銃撃戦と爆発があるだけの映画ってたまに観たくなるもんなんですよね。

何者かの謀略により、南米で爆殺された特殊部隊のメンバーたち。しかし彼らは生きていた。存在ごと表舞台から消された彼ら「ルーザーズ」がCIA内部にいるという黒幕に報復するため立ち上がる。

んで、この黒幕が大量破壊兵器でテロを企てて、気に入らない相手、ちょっとミスした人間をバンバン殺す「ぼくのかんがえたすっごいわるいやつ」なので、必然的に復讐劇が世界を救う戦いになります。がんばえー。ルーザーズがんばえー。

中身はメンバーがそれぞれ違った技能を活かして戦う「特攻野郎Aチーム」みたいなやつです。それ以上でも以下でもないですが、こういう映画、疲れてるときに丁度いいんですよね。 

ルーザーズ (字幕版)

ルーザーズ (字幕版)

  • ゾーイ・サルダナ
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星の王子ニューヨークへ行く

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30年ぶりの続編が話題になっていたので、まず1から観てみようと思い。

アフリカ・ザムンダ王国の王子であるエディ・マーフィが親に決められた結婚相手を良しとせず、自分で花嫁を探しに自由の国アメリカへ。

「大金持ちの王子」ではなく、「本当の自分」を愛してくれる女性を探すのだ、と身分を隠しオンボロアパートに居を構えバイト生活。貴種流離譚の一つのパターンでしょうか、結構既視感のあるタイプのお話。

古典的だけど鉄板なネタ満載のコメディ。今観ても普通に面白いのですが、30年前の価値観に基づいた人種差別、女性蔑視、拝金主義なネタは正直キツイ部分も多々あります。相手の素性を見てクルクル手のひらを返すタイプの登場人物をギャグとして使うのは俺は本当に苦手なんですけども、30年前ならウケてたんでしょうかこれ。

30年でどう変わるのかというのは興味深いので2もいずれ観ます。

あと、ちょい役で若かりし日(といっても当時39歳)のサミュエル・L・ジャクソンが出てました。出世したんだねぇ。

ところでこれは数年前に道端に落ちていたサミュエル・L・ジャクソンの特攻服です。

この映画とは全く関係ありません。 

JUNK HEAD

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その工程を思うだけで圧倒されます。ストップモーションで制作された長編映画。

自作のパペットを使い、微妙に動かして一コマづつ撮影、つなぎ合わせることで作成する秒間24フレームのアニメーション。それが5分のショートムービーではなく、99分の映画一本分。

個展を開けばそれだけで金が取れるようなクオリティのフィギュアやセット。それを「ひとりで」動かして映画を撮ろうなんて、思いついたとしても実際にやるかそんなこと。

……という狂気の沙汰が本当にスクリーンに映し出されているのがもう面白い。想像もつかないような面倒くささの結晶が映画館の大スクリーンで動いとる。

人類滅亡を回避するための生殖遺伝子を求めて、主人公は義体に乗り込み地下3000m以深の世界へダイブする。しかし途中で撃墜されて、頭を残して全身バラバラ。気がついたときには地下の住人たちによって非力なボディに換装されていたのだった。

地下はかつて人類に反旗を翻して戦った人造生物マリガンの世界。奇妙奇怪な生物で満たされたこの地下世界から、はたして主人公は目的を果たして生還することができるのか。

ということで、ストーリーはずっと地下世界で展開されるのだけれど、地下なのにとんでもない広大さを感じさせるセットの作り込みがすごい。これ、陽の光のあたらない穴ぐらの中の話でありながら巨大建造物ものなのです。

煤けたコンクリートと錆びた鉄、そしてグロテスクなクリーチャーと生体パーツで形作られる広大な地下世界。スチームパンクとも廃墟ともつかない薄汚れた風景。

CGではなくミニチュアセットで作られたことによって生まれるリアリティというものは確かにあります。なんというか「本物っぽすぎない」から「そういうものが実際にカメラの向こうにある」ことが良く分かるんですよね。

この映画のセットを眺める喜びって、巨大かつ複雑怪奇な構造体に興奮を覚える工場マニアのそれに近いと思うのですが、この風景がグリーンバックの合成ではなく現実のミニチュアとして存在していると知っているだけで、CGとは別種の感動が生まれます。

CGによるこういうボロけた鉄の世界といえば「アリータ:バトル・エンジェル」のクズ鉄街あたりも最高ですが、それとは別タイプの体験であるということが言いたいのです。どちらも素晴らしい。

実のところ、俺はアニメーションは置いといてこれらのセットが観られただけでも満足できてしまいました。

映画の半分ぐらいは野生のマリガンに追い回されているか、この世界の中を彷徨していたばかりの印象なのですが、この映画は主に風景とマリガンたちの奇怪な文化、そしてクリーチャーたちの動きを楽しむものだと思うので、個人的にはそれで十分です。

セットの素晴らしさだけじゃなくて、マリガンたちにも愛嬌があって本当に良いんですよね。ラボでグロいペットとじゃれ合う3バカとか、エレベーターを操縦しているマリガンとか本当好き。そして一度見たら絶対に忘れられないクノコ屋店内。

これはディスクが出たら一時停止しながらじっくり観たい。セットとマリガンを並べたJUNK HEAD展、本当にやってくんないかな。

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超美麗キアヌ無双「ジョン・ウィック:パラベラム」他 ー 最近観た映画の感想

ザ・ベビーシッター

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ガンズ・アキンボ」のサマラ・ウィーヴィングが良かったのでキャストで検索かけたらネットフリックスオリジナルのこれが引っかかり、そういやサムネはよく見るなと思って視聴。

主人公の少年コールは12歳になってもベビーシッターを付けられていることを同級生からからかわれ、いじめられている。彼自身それがコンプレックスではあるものの、ベビーシッターであるビーの事は大好き。

彼女はセクシーな美人で、どんなときにもコールを守り、いじめっ子を追っ払う。大切な弟のようにコールに接しながらも、決して子供扱いはせず、ガチで一緒に遊んでくれたり、大好きな映画トークに花を咲かせたりする。思春期の少年が恋をしてしまうのも当然の素敵なお姉さんなのです。悪魔崇拝者の殺人鬼だということを除けば。

両親不在のある晩、コールはビーが深夜に数人の仲間を連れ込んで悪魔召喚の儀式を行っているところを目撃してしまう。

なんでバイト先の家でそれをやるんだよという話はさておき、そのことを感づかれたコールは悪魔崇拝者の学生グループたちから命を狙われることになるのでした。

以降は負けたほうが死ぬ「ホーム・アローン」なんですが、普通のB級ホラーなら殺人鬼や化け物に順次殺されるバカ大学生グループが全員殺人鬼側に回る構図が面白い。返り討ちにあって順次死んでいくのは一緒ですが。

学生たちのキャラも立ってて、普通なら真っ先に死ぬ「ブロンドバカ女」が意外としぶとかったり、やはりすぐ死ぬタイプの「脳筋ジョックス男」が敵に回ると超手強い。ネタバレになるので内容は書きませんが、コールがいじめられているのを知った脳筋とのやり取りが面白すぎでした。

本気で悪魔を召喚しようとして人を殺す連中なので全員ノータリンではあるのですが、少なくともただ返り討ちに遭うためだけの有象無象ではなく、なかなかに良い見せ場と死に様があるバカ共です。

血はドバドバ出ますが、B級ホラーにしてはゴア描写は少なめ。コメディ寄りの一風変わったホラーとして気軽に観られます。

ジョン・ウィック:パラベラム

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2が個人的にいまいちだったので、劇場には観に行かず配信待ちしていたのを最近ようやく観れました。そしたらすっげえ良かったです。これなら劇場で観てもよかったな。

いつものキアヌ無双が観られりゃそれでいい、ぐらいの気持ちだったんですが、今回とにかく映像が綺麗なのが気に入りました。光の使い方、フレーミング、セットや小道具類を含めた画作り。ありとあらゆるシーンが美しすぎる。アクションそっちのけで見惚れるわ。

図書館やアンティークショップ(?)での戦闘とか、馬とバイクのチェイスシーン、無闇にアイテムにこだわったコンチネンタルのアカウント部など、序盤から美麗シーンの超ドカ盛り。うーん、好き。

その上でもちろんアクションも相変わらず極上で隙がない。馬のシーンとかマジでどうやって撮ったんだアレ。至近距離でヘッドショットを決める前にとりあえず足とか腹とか撃つのは良く分かりませんが、1作目からそうやってるので、ガン・フーとはそういうものなのです。たぶん。

そしてシリーズ化によって人間模様にも深みが出てきた。四面楚歌状態のジョンに手を貸すサブキャラたちはどいつもこいつも男前だし、完全に敵に回ったコンチネンタルという組織の概要もおぼろげながら見えてくる。

メインの刺客は怪しげな日本語とニンジュツを使う寿司屋という訳の分からない造形ですが、彼の部下(弟子)が全員長ドスで襲いかかってくるのは最高ですし、本人がなんだかんだでジョンの大ファンで戦ってみたいバトルマニアってのもいいですね。この辺、前二作に比べて多分にアメコミチックですが、個人的には好みの方向性です。まあ今作程度で留めておくのが良いバランスだとは思いますが。

絶体絶命状態から始まるストーリーに反してコミカルな要素もふんだんに盛り込まれていて、弾切れからのめっちゃナイフ投げつけあうバトルだとか、飼い犬に舐められまくってまともに話せないジョン、完全防弾装備の敵部隊とひとしきりやりあってから「ちょ、銃効かねえ!! もっと強いの!!」と武器庫に引き返すジョンなど、殺伐としているのに謎のほっこり感を振りまくシーンがちらほらとあって楽しいです。

今作で完結すると思っていたので、まさかの「第4作に続く」エンドに驚きましたが、今回はむしろ楽しみ。次は劇場で観ます。 

シン・エヴァンゲリオン劇場版:|| 

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公開直後に熱い感想文がアップされてまくっているのを横目に見てはいたのですが、いま人混みは嫌なんで、2週間ぐらい経った頃に観に行きました。

ネット上の熱量に対して、俺自身は「ちゃんと終わったねえ。よく出来てたねえ。面白かったねえ」ぐらいしか書くことがなくて驚いています。驚く程に感慨が沸かない。エヴァンゲリオンは結構好きなはずなんですが、それほど思い入れがあるわけでもないのだということを自覚しました。

全ての発端を語るゲンドウの独白。共感できるところも大いにあるんですが、同時に「お前こんだけやらかしといて言いたいことはそれだけか」と思ったのが正直な所。

俺は今まで「セカイ系」って言葉がどういうものを指すのかピンと来てなかったんですが、「ああ、これかぁ」って思いました(違ってたらごめんなさい)。

でもアニメーションとして眼福だったので劇場で観る価値は十分ありました。艦船を盾に使ったりミサイルにしたり、実にハッタリが効いていて良かった。ネルフ側のエヴァも大変にクリーチャーじみていて素敵。フランスのラインダンスみたいなやつが大好きです。

はい、こんな程度の感想しかございません。

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