ポッドキャストを始めて2年が過ぎました

最初のエピソードをアップしたのが2021/09/26。2年が経っても続いております。

最近気づいたんですが、自分のポッドキャストを聞く一番の楽しみって「お前は俺か」ってなることなんですよね。

実際俺なんですけども。

改めて、自分の話を聞くのは面白い。これは「俺のトークは面白いんだぜ」ということではなく。

評論家のように造詣が深いわけでもなく、特に気の利いたことも言えませんが、俺にとっては世界一波長の合う人間(俺)が喋っているので心の底から共感できるわけです。

自分の喋りをそんな他人事のように聞けるものだろうか、という疑問を持たれるかもしれませんが、少なくとも俺は聞けます。

録音した会話を編集していて常々感じるのは、「人は結構考えなしに喋っている」ってことなんですよね。いや、我々だけかもですが。

しょっちゅう論理は破綻するし、同じこと何度も喋ってたりするし、言いたいことをちゃんと言語化できずにグダグダになって諦めたりするし。

要はその場の思いつきだけの雑談ゆえに、聞き返すときには何を言ったかなんて完全に忘れているので、後から自分でも全然楽しめます。

そして、自分だから聞き返すとその時の思考の流れが完全にトレースできるのです。ぼんやり聞きながら「自分だったらこうだなぁ」と思っていたら、ポッドキャストの中の人(俺)が同じことをそのまんま言ってたりする。これは「思い出す」のではなく、過去と現在の思考がシンクロするイメージ。

この思考トレースの面白いところはきちんと言語化できなかった感覚までも言語化できないままに蘇ることで、これはブログ記事や鑑賞ノートにはできないことです。なぜなら言語化できなかった考えはそもそも文章にできないので。

これが5年や10年寝かせたあとに同じようにトレースできるかというと甚だ疑問ですが、それはそれでどう感じるのか楽しみではあります。

このように自分の鑑賞記録としての利用が主目的のポッドキャストではありますが、続けていれば聞いてくれる人も増えるもので、2023/9/26現在のエピソード数は131、Spotifyのフォロワー数は282。1エピソードあたり2人程度のフォロワー数というペースを保ったまま2年間続いております。

自分たち以外にも聞いている人がいる、と思うと多少なりともわかりやすいようにしたいという気持ちが湧いてきます。というか自信満々に間違ったことを喋ってたりして恥ずかしいので訂正したいと思って色々試行錯誤した結果、「Spotifyのチャプター機能を使って注釈をつける」というところに落ち着きました。

こういうフォーマットで()内にタイムスタンプを書いておくと自動的にリンクされてそこから再生できるようになります。

ファミコンのゲームや昔の漫画等、例えが古すぎるものや、ジャーゴン化してて話者同士にしか通じない単語などにも一応説明を。

聞き流すポッドキャストにこれはあんまり意味がないと思いますが、まあ気休めです。

なお、Youtubeに注釈字幕をつけてアップするというのも試してみたんですが、タイミングを合わせて字幕を付けるという作業がクソ面倒くさかったのでやめました。

動画制作自体は面白いんだけど、さすがに目的と手間が割に合わない……。

ところでこれは余談ですが、編集用にXPPenの左手デバイスを導入したらめちゃめちゃ便利になりました。

音声編集ツールはフリーソフトのAudacityを使っていますが、「再生/停止」と「Delete」を割り当ててやるだけでも左手の動きが激減しますし、ゲイン調整なんかは頻繁に使うのにメニューの深いところにあったりするので、マクロ登録すれば超快適。あとは普通にUndo/Redoとか上書き保存とか。

ペンタブレットメーカーのデバイスなので、基本的には絵描き用途として作られてるんでしょうが、そうでなくてもショートカットを多用しがちなツールを使う場合にはおすすめ。ホント便利。

あと、3年目を機にポッドキャスト用のTwitterアカウントを作りました。更新情報とかポストします。

twitter.com

ポッドキャストを始めて1年が過ぎました

夫がオオアリクイに殺された感じになってますが、上記の記事からだいたい1年です。正確には1年と1か月ぐらい。

これが鑑賞記録としてとても楽、かつ楽しいもんで、このブログには全く映画の感想を書かなくなってしまいました。

あとちょっといいマイクまで買ってしまいました。

基本、嫁さんと一緒に観た映画の感想を喋ってるだけ。そもそもが未見の人に面白さを伝えようと思っていないので、ただの言いっぱなし。ブログと違ってネタバレ回避だとか内容の推敲だとかしてないし、できません。ほんと楽。

2022/11/05 現在のエピソード数は74、主要なサイトにおける購読者数はSpotifyが140、Apple Podcastが72、Google Podcastが21。重複を考えてもだいたい200人ぐらいの人が定期的に聴こうとしてくれてるようです。

多いか少ないかで言うと少ないんですが、素人の駄話にこれだけ視聴者がついてりゃ十分だと思います。

「こんな素人ポッドキャストを聴く物好きが200人も!」みたいなことを言う気はなくて、需要はささやかながらあるのだと理解しています。

だって俺も知らない人の映画感想ポッドキャスト聴いてるもの。

何かに対する感想をポッドキャスト化することの良い点って、クソどうでもいい部分に対する素の感想が残ることだと思います。自他問わず。

思考は文章化する時点で要約されてしまいますから、とりとめもない会話からでないと拾えないような細かい情報と言うのは確かにあって、文章で読むのとは違った楽しみがあります。声のトーンからでないと分からない気持ちの入り方というものもありますし。

公開するにあたって気を付けていることがいくつか。

さっさと本題に入る

映画のタイトルで検索してくる人は知らん人(俺)の挨拶とか近況とかどうでもいいと思うので、一言目から映画の感想で始めるようにしています。

映画の背景だとか、監督だとかの説明も基本的にしない。調べればわかる事だし、元よりその映画を観てない人には何言ってんだか分からないことしか喋ってないので。

できるだけゆっくり喋る

誰だかもわからんオタク(俺)が早口でまくし立ててると気持ち悪いからです。

可能なかぎりは落ち着いて喋ろうとしていますが、やっぱり面白かった部分を喋ろうとすると熱が入ってしまってどんどん早口になっており、我ながら気持ち悪いです。

できるだけ気を付けたいと思ってはいます。

気のきいたことを言おうとしない

大して面白くない人(俺)が面白いことを言おうとしても大体失敗するからです。できるだけフラットに思ったことだけを喋るように心がけています。

自分がよそのポッドキャストを聴く側に回った場合を思えば、映画自体が面白ければ大抵の意見は面白く拝聴できるので、下手なサービス精神は発揮しないに限ります。

細かいことでもとりあえず言っとく

これはさっきも書いた通り、鑑賞直後の細かい感想を残したくてポッドキャストをやっているし、他人の細かい感想を聴きたくてポッドキャストを聴いているからです。

俺、『マリグナント』の感想「妹が車を停める位置が崖ギリギリすぎる」と、映画の内容からしたらものすごくどうでもいいことを言っているんですが、他のポッドキャストを聴いていたら同じことを言っている人がいてめちゃめちゃ共感したんですよね。

「そうそう! それ俺もそう思った!」となるのが他人の感想を読み聞きする醍醐味のひとつですし、それは細かければ細かい程よい。

大抵そういった部分は文章化するとそぎ落とされてしまう(めんどくさいから)ので、駄話ポッドキャストの出番となるわけです。

ひょっとしたらどこかに「『G.I.ジョー』のイ・ビョンホンめっちゃ白い」とか「『ジャッリカットゥ』で牛の足がぐねる瞬間がクローズアップされるのクソ笑う」とかに激しく首肯している人がいるかもしれないと思うととても楽しくなってきます。

音声での鑑賞記録、思っていたよりもずっとハードルが低く、作ってしまえば「ながら」で聴けて楽しいということがわかったので続いております。

ポッドキャストとして公開するために聴き苦しい部分は削って編集するので、あとで自分で聴き返す際のストレスが減るのも良いところ。

いわゆる「読書ノート」や「映画ノート」を音声でやっているようなものですが、より生っぽくてくだらない内容が残るのでおすすめです。

『マトリックス レザレクションズ』、俺は駄目でした ー 最近観た映画の感想

ラストナイト・イン・ソーホー

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服飾デザイナーになることを夢見てロンドンの専門学校へ進学してきたエリーは一人暮らしを始めたソーホーのアパートで1960年代の夢を見る。

エリーは夢に見た女性・サンディとシンクロし、精神的に現代と過去を行き来する。憧れの60年代ロンドンを楽しむエリーだったが、やがてサンディは夜の街に沈み、シンクロしたエリーも恐怖体験に遭遇することとなる。

心霊体験系のオカルトホラーではあるものの、怖さの質は一般的なホラーと全く違う。パンイチの男の霊とか、心霊現象はむしろちょっと笑っちゃうぐらいなんだけれど、それでも上映中ずっとじんわりまとわりつく不快感がある。

この映画が見せてくる恐怖って主に女性に対する性的搾取なんですよね。女衒に騙されて身を持ち崩していくサンディと、それに引きずられて憔悴していくエリー。

華やかなソーホーの風景に反して二人ともどんどん目が死んでいく。エリーもサンディも夢いっぱいに目を輝かせているところから始まるからそれが本当にしんどい。

俺は観ている間、完全に二人の少女側の目線になってしまっていたので、「男」そのものが怖い、気持ち悪いという普段全く感じ得ない恐怖感というか居心地の悪い不安を覚えました。それは俺にとっては新鮮な感覚で、ある意味最近観た映画の中では一番怖かったと言っていい。

レトロなロンドンの映像は文句なく美しい(最高!)し、エリーとサンディの行く末も良い落しどころだったと個人的には思うのですが、この系統のイヤさはしばらく味わいたくないので再見は当分なし。

ちなみに嫁さんは「程度の差はあれ、女は常にこういう類の不快感を感じているのでそれほど怖くなかった」そうです。日常がハードモードすぎる。

ジョジョ・ラビット

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10歳のジョジョは、イマジナリーフレンドの「アドルフ・ヒトラー」と仲良し。彼に励まされながらヒトラーユーゲントで立派なナチスの兵士になることを夢見るのだった。

ある日、彼は母に匿われて自宅に隠れ住んでいたユダヤ人の少女を見つけてしまう。

なるほど『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』を撮ったタイカ・ワイティティっぽい、と思わせるコミカルな演出と、淡い色彩のポップな画作り。加えて本人演じる妄想上のアドルフ君ときたせいで、俺はエンドロールが始まるまでこれが現実を描いた映画だと気づかなかったのです。

子供が憧れるイマジナリーヒトラー、イマジナリードイツ、イマジナリー戦争だったりするんじゃないかなーとぼんやり思っていたら、ネタバレ・種明かし的なものは何一つなくスッと終わって「これガチなやつじゃん……」とようやく気付いたという。

そう勘違いするぐらいにはポップでとぼけた登場人物たちのおかげでだいぶマイルドになってはいるものの、敗戦間際のドイツで起きている現実は相当にショッキング。

「全部妄想」説で頭がボケていたのでスルッと観れてしまったようなところはあるなぁ、と思います。おかげで現実と認識したときとのギャップが映画終了時にまとめて来てしまってダメージでかかったのですが。

こういうクソ重たい戒めをスムーズに叩き込んでくるのが創作の力というものか、とボンヤリ考えていたのですが、そうこうしているうちに現実の世界情勢の方がとんでもないことになっており、日々超絶ヘビー級のニュースが飛び込んでくる始末。こういう方面で現実が強すぎるの本当勘弁してほしい。

会うたびにジョジョとハグをする親友のヨーキー君が癒しでした。デブ眼鏡の親友キャラにハズレなし。

マトリックス レザレクションズ

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評価が大きく割れてますね。俺は駄目な方でした。もう全然駄目でした。

メタネタってのは隠し味、エッセンス程度に使うから良いのであって、こうも全編にこってりブチまけられたら鼻についてしかたがない。

「親会社のワーナーの意向だから続編を作らないわけにはいかない」「マトリックスといえばこれだろ、バレットタイム!」「スピンオフで会おう!」

これ全部作中の人物が言うんだよ。皮肉やジョークにしたって格好悪すぎでしょ。内輪受けの同人誌を読まされてる気分だよ。

あまりにも有名になってしまった赤い薬と青い薬のくだりが陰謀論界隈に勝手な解釈で使われたりして、旧作品の扱いに関しては監督が忸怩たる思いを抱えていた、というのは後から知りました。

だから「『マトリックス』はそんな映画じゃないんだよ!!」と再構築した気持ちは分らんではないけれど、焼き直すにしたってもっとスマートなやり方があったんじゃないの、と思います。

再びマトリックスに囚われたネオが赤い薬で現実を知るまでの流れとか、モーフィアスとの修行とか、どうしても「それもう観た」となるし、あれほど斬新で世界中に衝撃を与えたアクションはなーんかもっさり。

スーパーヒーローではないネオを描きたい意図はわかるけれど、それにしてもごちゃごちゃしたカメラワークで全然面白くねぇのですよ。20年分の進化を見せろとは言わないけれど、旧作の馬鹿馬鹿しい程の中二病アクションクオリティは保って欲しかった。

「監督が描きたかったものはそれではない! 否定派はテーマを読み解けていない!」という意見も見ましたが、読み解けてようがなかろうが俺が観たかったもんとは全然違うんだもんよ。面白くなかったって言ったっていいでしょ。

勝手に期待して勝手にがっかりしただけですよ。評論じゃないただの感想なんてそんなもんです。

良い所を挙げるならばクライマックスの映像とか、現代的にアップデートされた結末は好みだったのでちょっと評価が上がったのですが、ポストクレジットでどん底に叩き落とされました。

自虐や皮肉は作品の外でやってほしい。ほんとに。

好きな人には悪いけど、俺はこの映画はイヤイヤ作ったようにすら見えちゃったよ。

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絶賛されている『アイの歌声を聴かせて』が俺には全く刺さらなかったという話とか ー 最近観た映画の感想

ドロステのはてで僕ら

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理由は不明だが、カフェに置かれたモニターが突然「2分間の過去と未来を繋げるテレビ電話」となった。

このモニターの存在を知ったカフェの常連客たちが、なんとかしてこれを有効活用できないかと考える、というSFコメディ。

アイデアはめちゃめちゃ面白いし、話も綺麗にまとまっているとは思うけども、個人的にはそれ以上のものではなかったな。

出演者が劇団の人たちなので、演技も演出もまんま演劇なのですよね。折角ややこしい設定を映像で伝えられるというメリットがあるのに、全部口で喋っちゃうからどうにも冗長。演技も舞台上から遠くの客に見せるスタイルが板についちゃってるせいか、どうしても大げさで不自然に思える。

結果として過剰なリアクションによる不思議テレビの説明だけで短い上映時間の半分以上(体感)を費やしている感じ。勿体ない。

後半に起こるトラブルをこのテレビを使って解決するのがこの映画のメインですが、辻褄合わせをしているだけのあっさりしたものに思えてしまうのも残念。

この辺も演劇ベースで分かりやすさを優先した結果なのかもしれないけれど、俺には合わなかった。逆に演劇好きな人は楽しめるのかもしれない。映画というより映像化された舞台演劇なんですよね。

「2分後の未来」ってものすごく荒木飛呂彦的で面白そうだと思ったんだけどなー。作中では「藤子不二雄のSF短編」って言ってたけどね。

あとメイキング映像で全編スマホで撮ってるのが分かって驚きました。それは素直にすごい。

アイの歌声を聴かせて

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タイムライン上での評価がものすごく高かったので上映終了直前に駆け込みで観てきたのですが、俺にはびっくりするほど刺さりませんでした。

極秘プロジェクトとしてAIロボットの素性を隠して高校に通うシオンと、AI研究者である母のスケジュールを覗き見してしまい、シオンの正体を知っているサトミ。

シオンは何故か「サトミを幸せにする」ことにこだわるものの、人間の幸せが何かがわからないシオンは突然歌いだすなどの奇行を繰り返し、正体を隠そうとするサトミは振り回される。

何も知らない無垢なAIが「幸せ」を学習し、サトミのみならず周りの人間を皆幸せにしていくハッピーハッピーストーリーなのですが、ちょっと登場する大人たちの頭がハッピーすぎなのでは、というのが率直な感想です。

シオンはサトミの母親が進退をかけたプロジェクトなんだけど、分かりやすく嫌味な悪役として描かれた支社長がプロジェクトを潰したくて仕方ない人なんですね。それに関して作中で説明されているのが「男社会で出世しているサトミの母親は妬まれている」「AIを怖いと思う人もいる」ぐらい。

前者は実験都市を作ってしまうような大企業がそのレベルかよ、としか言いようがないし、そもそも課長がミスしたら大喜びで潰しにくる支社長って何? 部下の出した成果が自分の手柄になる立場でしょアナタ。しかも相手はたかだかいち課長。支社長ともあろう者が一体何やってんの? ばかなの?

後者に至っては、終盤でサトミたちの邪魔をするガードロボットに対して「初めて機械が役に立った」とか言うんですが、そんなに機械が嫌いな奴がなんで先端AI企業で支社長やってんの? って話なんですよね。

社会通念に照らしてみると何故その立場に居られるのか分からないレベルの無能オブ無能が訳のわからない理由で邪魔をしてくる。この悪役がどう見ても嫌がらせのためだけに作られたようないい加減な造形なので俺はこの映画全体が茶番に思えてしまったのですね。

アホすぎる悪役というのはただのご都合主義と大差ないです。支社長じゃなくて出世競争をしているライバルの課長とかならまだ分からなくもないですが。

シオンはシオンで「みんなの幸せのために一生懸命なポンコツAI」という扱いなんですが、実際はあらゆる電子機器を一瞬でハックするオーバーテクノロジーマシンだし、それがサトミの幸せのためなら善悪問わずに何でもしかねないのも怖すぎる。

あるシーンで「純粋で健気なAIが迫害される」みたいな描かれ方をするんですが、人間がやったら普通に逮捕されるような事をやらかしてんだからそりゃそうだろと。ポンコツというより「超高性能なのに一般常識を持ち合わせないAI」なので、傍から見ればただの暴走ですよ。

なのでこんなAIを野放しにすんなよという意味では支社長に完全同意なんですが、先に書いた通りコイツにも全く共感ができないので、どこまでもストーリーが上滑りしていくし、こんなガバガバ極まるプロジェクトに進退をかけているサトミの母親もアホに見えてくる。

高校生の青春ストーリーや、人とAIの共存や幸せを追い求める主題を味わう以前に大人が揃いも揃ってダメダメ過ぎて全く入り込めませんでした。

とはいえ各所のレビュー評価は全体的に高いので、こう感じるのは俺の根性がねじ曲がっているせいだと思います。ホントすいません。

ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ

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「悪」「残虐」を標榜して、実際は懐いた大型犬のようにかわいい宇宙生命体を描いた前作『ヴェノム』。

各方面からの「思ってたんと違う」の声をものともせずに、続編ではさらにかわいさを積み増してくるじゃないの。まあ前作のあの内容から急にダーク路線に移行されても困るので予想の範疇ではあるけれど。

エディとヴェノムの共存生活もすっかり板について、親友どころかもはやラブラブカップルというブロマンス路線を押しまくり。

俺はこれはこれで支持。だってヴェノムめっちゃくちゃかわいいんだもの。マーベル映画で一番かわいいヒーローですよこの子。

ヴィランはカーネイジ、しかも中の人はウディ・ハレルソンということで凶悪・残虐成分はそちらで受け持ってくれることを期待していましたが、思ったほど強くないし案外あっさりしたもんでした。クロスオーバーを考えてMCU準拠にしているのか、人は死ぬけどほとんど映さないし。

カーネイジはヴェノムとスパイダーマンがふたり掛かりでようやく撃退するような強敵という認識(メガドライブに基づく知識)だったのでやや拍子抜けではありますが、これはもうバトルじゃなくてエディとヴェノムのイチャイチャとか、かわいいヴェノムのほっこりライフを観る映画として全然有りなんだよなぁ。とはいえ、これがダメだって人の言うことも良く分かります。

いちおうダークヒーローなので画は全体的に暗いけど、内容はとことん明るいお気楽ムービー。初めからそれを期待して観れば超楽しいんですけどね。

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ガッデム病院 『マリグナント 狂暴な悪夢』他 ー 最近観た映画の感想

皮膚を売った男

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プロポーズ成功の喜びのあまり「革命」という言葉を使った動画が拡散され、投獄されてしまった男、サム。国外逃亡して難民となるも、海外へ移動する自由はなく、家に帰ることも恋人に会うこともできない。

サムはある有名アーティストからの提案で、背中をキャンバスとして提供することにより自らを「アート作品」とし、国外移動の権利を得るのだった。

アート、つまりは物品扱いされ続けることによってメリメリ削れていく人間の尊厳をシリアの内戦と難民問題に絡めて描いていく。

最初は良い生活に浮かれるも、展示を経るごとにみるみる死んでいくサムの目や、家族とのネット通話越し日に日に悪化していくシリアの内情、シンプルに美しい光の使い方など、見るべきところは非常に多いのだけれども、オチがちょっと。

ハッピーエンドは好きだけど、無茶苦茶取ってつけたような終わり方をして、それまで結構真に迫ってた脚本がいきなり嘘くさくなってしまった。

どっかに怒られて付け足したん? ってぐらい結末が分からん。なんでこんな終わり方にしちゃったの。

サムが飼ってる猫は最初から最後までかわいいです。

マリグナント 狂暴な悪夢

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連日悪夢に見る殺人事件が現実にも起こりだす、というホラー。

いやこれめっちゃめちゃ面白い。同監督の『死霊館』は正直ピンと来なかったのですが、全く別タイプのホラー映画である、ということだけ書いときます。

ポスターがなんかすげえ怖いんですが、映画本編はあんまり怖かったり痛かったりグロかったりはしません。ひたすらにエキサイティング。面白カメラワークも素敵だし、でっかい音でビックリ系でもないのでホラー苦手でも結構観られるタイプ。

そしてわりかし想像したものと方向性が変わらない真相が待っているものの、訳の分からん迫力と面白すぎる映像で圧倒してくるパワー型エンタメ作品です。

ばっちり完結しちゃってるけど、作れるものならこの作品の登場人物や施設を使って同一ユニバース作品とか作って欲しいわ。

(「魔城ガッデムみたいな病院」の意)

レッド・ノーティス

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豪華キャストで予算の大半を使い切ったんじゃねーかって感じ。

FBI捜査官と大泥棒と峰不二子が世界を股にかけてわちゃわちゃやる大活劇なんだけど、風景がグリーンバックのCG丸わかりなんですよねぇ。なんなら処理甘くて緑色の輪郭が見えちゃってるとこまであるし。萎える。

お話自体は警官と泥棒が追っかけっこしたりピンチには協力したり、峰不二子においしいところを搔っ攫われたりするド定番のやつなので好きな人は好きだと思います。

囚人ディリ

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パーティで犯罪組織に毒を盛られた警官たちを移送するために運転手として動員されたのは、たまたま居合わせた囚人のディリ。釈放を盾に取られてしぶしぶ協力することになる。

前後左右に分厚いおっさんが圧倒的暴力で戦うタイプのインド映画。インドのアクション映画はこうでなくちゃいかん。

腕力一発、って感じのアクションシーンは久々にこういうのが観たかったんだよ、と心が躍る。ダンスや歌もなく、非常にストイックな作り。

なんだけど、アクションシーンまでが長ぇんですよね……。

犯罪組織の妨害をかわしてトラックを走らせるロードムービーパートと籠城して犯罪組織の襲撃に耐える警察署パートが交互に展開されるのだけど、トラックは全然進まないし、警察署襲撃犯は「ドアが硬い木でできてる」とか言ってバンバン叩くばかり。猿なのかこいつらは。

膠着状態の描き方に無理があるので敵も味方もすっげえ愚鈍に見えちゃうし、話も間延びしてる。あと3~40分は切り詰めてもいいんじゃねーかって感じ。

こっちは戦うおっさんが観れりゃそれでいいんですよ。不死身に過ぎるディリや巻き込まれたビリヤニ屋の兄ちゃんとかはいいキャラだったし、最後の大暴れも無茶苦茶で良かったので非常に惜しい。

配信されたら自分でカットしながらもっかい観たい。

グリーンブック

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基本的に「感動的なイイ話」みたいな売り出し方をされてる映画ってあんまり観ないんですが、観たら観たでイイ話だったのでイイ話だなと思いました。

(だいたいこういう感想になるのが避けてる理由)

 

1962年、いまだ差別の根強いアメリカ南部で黒人ピアニスト、ドクター・シャーリー(ドク)が演奏ツアーを試みる。運転手に雇ったのはイタリア系白人の男、トニー。

金持ちインテリの黒人と、腕っぷし自慢のガサツな白人。正反対の凸凹コンビのロードムービーなんてのはこのサイトに書いたものだけでも『ノッキン・オン・ヘブンズドア』『ローガン』『バジュランギおじさんと、小さな迷子』といった具合で枚挙に暇がありません。

こういう属性が全く異なる人間同士のロードムービーはお互いの距離感の変化が見所のひとつだと思いますが、この映画は友情友情とベタベタしておらず、しかし確実に生まれていく互いへのリスペクトがいい。

最初はナチュラルに黒人を差別していたトニーが、旅のなかでドクが受ける理不尽を目の当たりにして本気で憤るようになる。それはドクの人柄に触れたこと、ドクの演奏に惚れ込んだことによるものだけれど、その変化が本当に自然に描かれているし、黒人差別という大きなものに対する憤りでないのもいい。

つまりは「こいつは立派ないい奴なのになんでそんな扱いをするんだ」という、素直な感情。偏見のフィルターが外れて、当たり前のように一個の人間として見ていることがわかる。それが個人へのリスペクトに立脚しているというのが非常にいいんですね。

トニーは「個人を尊重する」という差別の対極にあるスタンスに自然と変わっていき、ドクもそんなトニーを信頼する。

演奏旅行が終わり、旅の間に生まれた良い関係が結実するラストも本当に爽やかでよい。なにより、やってることが等身大で説教臭くないのがよい。

そりゃアカデミー賞とるわこれ。

グリーンブック(字幕版)

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風呂とチキンとマ・ドンソク ー 最近観た映画の感想

メランコリック

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ニートの和彦がバイトに入った銭湯は深夜に洗い場を殺人の場として提供していた。

掃除は簡単、遺体はボイラーで焼ける。新しい銭湯の可能性を見いだした意欲作。見いだすなそんなもん。

ある日現場を目撃してしまった和彦は否応なしにこの銭湯の「ビジネス」を手伝うことになる。

良心の呵責に苛まれたりや足抜けのために悪戦苦闘するサスペンスになるかと思いきや、和彦君は予想外の収入に浮かれるが早いか、あっという間にこの異常な環境に馴染んでしまう。サイコパスかな?

上司も同僚もいい人だらけの優しい職場における、日常系のほほんお仕事映画。ごろごろ人死んでるけども。

めっちゃ殺したり殺されるような目にも遭ってるのに、ふんわりとハッピーエンドに着地して何故かじんわり良い気分になる謎の作風。

心が荒んで、優しい気持ちになりたいときに観るといいかもしれません。

人いっぱい死ぬけど。

エクストリーム・ジョブ

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韓国映画はバイオレンスとかサスペンスばっかり観てますが、コメディも相当レベル高いですね。配信は自宅でゲラゲラ笑いながら観られるので相性最高。

麻薬組織の摘発のために、組事務所の向かいにある潰れかけのチキン店を買い取った捜査チーム。不自然に思われないように偽装営業を始めたら、メンバーの一人が料理上手だったおかげでオリジナルのチキンがヒット、大繁盛して捜査どころではなくなってしまう。

立て続けに放り込まれるギャグはネタとしては結構古典的なものが多い印象なのですが、テンポも演出も良いので普通に笑える。やっぱり笑いは「間」が大事。

終盤に向けてどんどん「暖め」られていってるのが自分でも分かるし、喜んでその流れに乗っていける。

なんだかんだで刑事ものとしても構成もしっかりしてて、最後の大量摘発へなだれ込む展開は痛快のひとこと。

嫌う人があんまりいないタイプのひたすら楽しい映画なので、年末年始に大勢集まったタイミングで観るのもよいかと思います。

クライマックスに押収物のドラッグでガンギマリになってる新人刑事のジェフン君がかわいいです。

 

エターナルズ

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いきなり知らんヒーローを10人もぶっこんで来ても全く混乱しないほどに構成がしっかりしてるし、各ヒーローのキャラも立っている。

最近のハリウッドの無理矢理なダイバーシティ化が本作では顕著で鼻につく、みたいなコメントも目にしましたが、俺は断然肯定派です。全員属性がばらっばらなので誰が誰なのか分かりやすくて、新しいヒーロー物語の導入として非常に良い効果が出ていると思います。

なにより意図的に属性を散らしたおかげでMCUでマ・ドンソクが観れたし、マ・ドンソクがそのままマ・ドンソクなのも良かったです。他のメンバーがスーパーパワーで空飛んだりかめはめ波を出したりする中で、マ・ドンソクの能力は「パンチめっちゃ強い」なので、観てるとそれただのマ・ドンソクですよねってなるの最高です。

遥か昔から人類の発展を見守るエターナルズたち。その彼らが恋愛だ友情だ仲たがいだとわちゃわちゃやっているのはギリシャ神話の神にも通じる人間臭さ。というか彼らのうち何人かは実際にギリシャ神のモデルになってる設定なので、誰がどの神なのか考えながら観るのも楽しい。

話が神話レベル、全宇宙レベルのわりには皆さんあんまり強くなさそうなんですが、いずれも好感度高し。その中でもマ・ドンソクとアンジェリーナ・ジョリーのように恋愛ではない仲良しコンビがいくつかあって、それがまた良かった。

MCU映画としてはやや地味ではありますが、俺はかなり好きな方です。フェーズ4はよく知らないヒーローばっかだなあと思ってましたが、いやー、どれも面白い面白い。

 

アンテベラム

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ゲット・アウト』『アス』(未見)と同じプロデューサーということで、前2作と同じく人種差別をベースにしたサスペンスホラー。

ロッテントマトなんかだと評価の高い『ゲット・アウト』に比べて、結構ボロカスに言われているものの、俺はこちらの方が好きだったりします。

興味を持たれた方は以下を読まずに観ることをお勧めします。ネタバレはしませんが、勘のいい人が何かに気づいてしまっても責任とれないので。

 

どちらもぶっ飛んだ真相にぶん殴られるタイプの映画ですが、ぶっ飛び過ぎてB級ホラーの次元にまで飛び去ってしまった『ゲット・アウト』に対して、この『アンテベラム』で起きていることは(ちょっとだけ)現実味が増しており、その分逆に恐ろしい。

南北戦争当時の黒人奴隷の女性と、現代の社会学者の黒人女性にフォーカスをあてて、ふたつの時代を行き来しながら、物語は進んでいく。

女性はいずれもジャネール・モネイが演じており、言うまでもなくこのふたりの人物になんらかの関係があるということが示唆され続けるわけですが、そのリンクが明らかになる瞬間、何が起こってるのか分からずに混乱するのが楽しいです。

ただでさえキツい奴隷虐待シーンが、真相を知ることで数倍エグくなる構成が見事。こういう風に一度観たシーンの印象が後から塗り替わる映画、好きです。

 

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仏版シグルイ『最後の決闘裁判』他 ー 最近観た映画の感想

DUNE / デューン 砂の惑星

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古参SFファン待望の超大作SF小説、ついに(ちゃんとした)映像化! ってとこなんでしょうが、原作や今回の映像化にいたる歴史を知らずに観た俺にとっては正直退屈でした。

壮大な設定、中世と未来が混ぜこぜになった巨大機械やSFガジェット、複雑な設定に裏付けされたであろう美術の数々。映像としてはとても壮大かつ美しいんだけど、上映時間2時間半もあるのになかなか話が進まねぇので眠くなる。

たっぷり時間をかけて「俺達の戦いはこれからだ」で終わり。前後編か3部作かは知らないけれど、これが未完の「Part1」だなんて予告で言ってなかったじゃん、って思いました。ようやく話が動き出した、ってとこで終わるんだよなぁ。まあここまで付き合ったんだから次もたぶん観ますけどね。

正直なところ、後から観た『ホドロフスキーのDUNE』の方が数倍面白かったです。昔DUNEを映画化しようしたけど断念した経緯をアレハンドロ・ホドロフスキー監督が語るドキュメンタリー映画。ホドロフスキーというおっさんはいちいち頭のおかしい人で最高なのでおすすめ。

先にこっちを観とけば今回のヴィルヌーヴ版ももっと楽しめたかもしれない。

ホドロフスキーのDUNE(字幕版)

ホドロフスキーのDUNE(字幕版)

  • アレハンドロ・ホドロフスキー
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それはそれとして嫁さんに描いてもらったポッドキャストのサムネはお気に入りです。

「こんな感じで」とお願いしたらそんな感じになったと思います。ニャーン。

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死霊館

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実在した心霊研究家、ウォーレン夫妻の事件簿になる死霊館シリーズの1作目。

この頃『死霊館 悪魔のせいなら、無罪』の予告をやたら観たのでサブスクにあったこれを試しに観てみたんですが、エクソシスト系のホラーってあんまりピンとこないな、というのが分かっただけでした。

へレディタリー/継承』のときも思ったんですが、宗教観が違うせいか悪霊やら悪魔やらの恐怖があんまり伝わってこないんですよね。死霊さんも突然目の前に現れてビックリさせる以外にはポルターガイストぐらいしかやってこないし。

エクソシストものなら聖痕から吹き出す炎で着火した後、聖水をくべて丸焼きにするとか、聖なるメリケンサックで悪魔憑きを殴り倒すとか、そういうトンチキ除霊アクションに振ってくれた作品が好きですね。それはもはやホラーじゃないですが。

死霊館(字幕版)

死霊館(字幕版)

  • べラ・ファーミガ
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最後の決闘裁判

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これは非常に良かった。

久々に「よし、お前らみんな死ね」となるタイプの胸糞映画。そして俺はあんまり胸糞映画好きじゃないんですが、それでも「これは観て良かった」となる作品はあって、この映画はそれ。

夫の不在中に知人に暴行された騎士の妻。濡れ衣だと訴える知人の男。双方の訴えを受けて、戦い、生き残った方の主張が真実と認められる「決闘裁判」が執り行われることとなる。

それを娯楽としか考えていない狂王の御前で、命と名誉を賭けた果し合い。シチュエーションは完全に『シグルイ』ですねこれ。男が勝手に盛り上がって女が振り回されるあたりも含め。

3部構成で夫の視点、暴行した男の視点、妻の視点と同じ事件が3回描かれるのだけど、まあ男共がどちらもクソ野郎でして。「妻は夫の所有物」という価値観のもとで、妻の人間としての尊厳は徹底的に踏みにじられまくる。

男共がどちらも自分に都合よく記憶している出来事の真実を第3部では妻の視点で見せられる。彼らのクソムーブはどこまでも傲慢かつ身勝手、そしてシンプルにキモい。

「ああ……決闘で刺し違えて両方とも死ねばいいのに……」と間違いなく思えるこの手腕。そして決着後のジョディ・カマーの虚無としか言いようのない顔。

経緯も結果も最悪に後味が悪く、そんな気分に人を叩き込める名作と言えます。

あと完全装備の重騎士同士による決闘は大変に野蛮で迫力があって良かったです。

男の都合で国家に裁かれる人の顔。

9人の翻訳家 囚われたベストセラー

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世界的大ヒットをしたベストセラー小説の完結編となる第3作目。世界同時発売のために集められた9人の翻訳家は発売前のネタバレ流出を防ぐため、契約への合意のもと、外部への通信不可能な閉鎖環境にカンヅメとなり各国言語への翻訳を行うこととなる。

資産家所有の地下シェルターを流用した巨大な地下室はふんだんな資料に加え、豪勢な食事や娯楽も完備、出入りの不自由を除けば仕事をするには支障のない快適な環境。翻訳家同士も打ち解け合い、快調に翻訳が進みつつあったある日、極秘のはずの小説冒頭10ページがネットに流出、500万ユーロの支払いを求める脅迫メールが出版社社長のもとに届くのだった。

殺人事件ではないですが、シチュエーションだけで言えば「密室」で「館」なミステリー。こういうのはどんなに伏せようとしても感想にネタバレの匂いが乗ってしまうので余計なことは書きません。観ながら勝手に真相を想像して、それぞれ騙されたり見破ったりしましょう。俺はトリックや犯人の目的など、結構好きな感じのミステリーでした。

ひどいパワハラ野郎の出版社社長がどんどんダメージを受けていくたのしい映画です。

ポッドキャストはネタバレ祭りで感想言ってます。

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面白殺し屋ユニバース『最強殺し屋伝説 国岡 [完全版]』他 ー 最近観た映画の感想

昭和歌謡大全集

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(※ネタバレです)

コスプレをして昭和歌謡を歌うのを趣味とする若者たち。

この時点でもう意味がわかりませんが、なんかそういう集団がいるんです。そのうちの一人が唐突に通りすがりのおばさんを刺殺したことから、血で血を洗う抗争が勃発しました。調布で。

仲良しおばさんグループは犯人を突き止め、包丁を棒にくくりつけスクーターで突進、ランスチャージよろしく報復。若者はチャンチキおけさのメロディーにのせて血と小便を撒き散らし息絶える。

そして仲間の死を悼んだ若者グループは遥か群馬県の金物屋でトカレフを入手、おばさんたちへの復讐を企て……。

その後は昭和歌謡と共に銃殺・刺殺・ロケットランチャーで数人バラバラになったりしながら、最終的には調布市が吹き飛んで全員死にます。

完全にオチまでネタバレしてますが、事あるごとに「なんだこれ……」って思いながら観るのが楽しいので、正直なところストーリーはクソどうでもいいです。

過去に何があったんだってぐらいおばさんを敵視する金物屋の原田芳雄や、ブリの美味しいところを力説する武器ブローカーの古田新太など、殺し合っている若者やおばさんよりもサブキャラのほうが遥かに面白い。

本筋と全然違うところの方が楽しめるという、なんというか面白いクソゲーみたいな映画でした。なんでこれ映像化したんだ。

クリスマス・ウォーズ

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日頃の行いの悪さでクリスマスプレゼントに石炭を贈られたクソガキがサンタクロースを逆恨みして殺し屋を送り込むお話。

一方のサンタも数百年オーダーでこういう仕事やってるとそういう輩がよく来るんだよね、と迎え撃つ。

近年はプレゼントを貰えるような「良い子」の減少により、出来高で政府から支払いを受けているサンタの生活は苦しい。

そのためおもちゃを作るはずのサンタ工房で軍需用品を作りだしたり、工房で働いている妖精さんたちの労働条件がブラックだったりするなど、ブラックジョークとして色々面白くなりそうな要素はあるものの、全体としてはハジケきれずに少々退屈。殺し屋がサンタの居場所を突き止めて対決するまでのくだりが長いんだよね……。

あとメル・ギブソンは一度もサンタ服着ませんでした。

↓ ポッドキャストで感想喋ったやつです

最強殺し屋伝説国岡 [完全版]

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1ヶ月の間に4たび阪元裕吾監督作品。

関西殺し屋協会に所属するフリーの殺し屋・国岡の生活に密着取材をしたという体のモキュメンタリー。これも面白いなぁ。

2018年に公開された無印版のアップデートになるのかな。おそらく撮影時期は観た4作品の中では一番古くて、予算もあまりかかっていないのは明白。

それなのにもうこの時点で『ベイビーわるきゅーれ』に繋がる世界観がしっかり出来上がっていて、日常と地続きの面白殺し屋ユニバースがそこにある。あまりにもあっさりとして緊張感があったりなかったりする命のやり取りにニコニコしてしまう。やっぱりこの監督にはバイオレンスだけでなく日常も描いて欲しい。

他の人のようにきちんと社会に適応できないから、仕方なく殺しで生計を立てているという国岡。しがらみが嫌でこの業界に入ったのに、殺し屋同士の仕事の取り合いや、ウザ絡みの説教したがりオヤジ、とんでもないクレームを入れてくるクライアントなど、殺し屋の世界にもしっかり面倒くさい人間関係はあるのだった。

ストロングゼロを片手に愚痴を垂れるシーンは迫真の演技というかおそらく素。友達とダベったり、地方での仕事の後に現地の居酒屋に入るシーンの会話やカメラの生っぽさなども低予算が逆に良い方向に行っているように思います。

ラストバトルはちょっと長くて似た動きが多く、少々ダレるなという印象。とはいえまだまだ経験が浅いはずの若い役者の皆さんがこれだけ動けるのだから、出演者の今後にはめちゃめちゃ期待しております。

むやみに飛んだり跳ねたりしないアクションが個人的に好みです。

007 ノー・タイム・トゥ・ダイ

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ダニエル・クレイグ版の007シリーズを1本も観ていないどころか、1作目の『007 ドクター・ノオ』の導入部だけを観たっきり放置している「007何も分からん」勢でしたが、いきなりダニエルボンド完結編のこれを観ても十分面白かったですよ。

やっぱり王道は強いというか、全然観たことないのに既視感を感じるわけです。あらゆるところで模倣されまくっている画角や演出を大変ゴージャスに見せつけてくる。

そうなると「なんか観たことあるなぁ、つまんねぇ」じゃなくて、「おお、これが本家本元か!!」ってなるの面白いですね。

とにかく1枚画にしてもその気合が伝わってくるかのような美しいシーンが多くてそれだけで結構満足できちゃう。

最初の街中のカーチェイスだけでも、あの古くて美しい街並みの中で実際に撮ってると思うんですが、どんだけ金と手間がかかってんだか。

もちろん金かかってるからいい映画とは限らないんですが、この時期低予算映画を立て続けに観ていたところだったので、大作映画がちゃんと大作映画であるというだけでちょっと感動してしまったようなところはあります。

これを2000円弱で観れるのだから、劇場で映画を観るというのはコスパのいい娯楽だと思うのですよ。

話自体はジェームス・ボンドという男に全く思い入れがないので特にこれと言って思うところはないのですけども。いろんなところで言われてますが、アナ・デ・アルマスのアクションが良かったです。床に寝そべって銃を2連射するところを真上からのカメラで捉えたりとか。

ダニエル・クレイグとアナ・デ・アルマスの組み合わせは『ナイブズ・アウト』でも観ていたので、ふたりとも役どころが全く変わっているのは面白かったですね。

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メガネをかけるかかけないかで延々殴り合う映画 ー 最近観た映画の感想

ある用務員

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ベイビーわるきゅーれ』をいたく気に入ったので、過去の阪元裕吾監督作品をいくつか観ております。

恩義のあるヤクザの親分の娘を、高校の用務員に扮して密かに護衛する男の話。親分の死を機に大量に送り込まれた殺し屋から娘を守るアクション映画。

その辺の一般人っぽい殺し屋がわらわら登場する辺りが『ベイビーわるきゅーれ』にも通じる世界観を感じさせます。というか、『ベイビーわるきゅーれ』の二人組もコンビの殺し屋(別人)として出演しています。

阪元作品はこの後『黄龍の村』とか『最強殺し屋伝説国岡』なんかも観るんですが、中でもこれは一番シリアスでアクションに振った作品。

最近の作品だけあって完成度は高い方だけど、一番無難な感じでもあり。阪元作品の面白さってアクションやバイオレンスだけではなく、日常パートにおける妙なリアリティというか、それを生み出す小ネタのはさみ方や人物描写にもあると思うので、魅力の一部を自ら封じてしまっている気はします。

ニコニコしながら敵も部下もサックリ殺すラスボスのキャラクターとかすごく良いんですが、まあそこそこ普通の映画だなと。

ある用務員

ある用務員

  • 福士誠治
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サンズ・オブ・ザ・デッド

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ゾンビ禍の街から逃げ出すため、車で飛行場を目指し走る主人公と恋人。なんか色々あって車がスタック、単独で歩いてきたゾンビに恋人が食われる。

という導入を速やかにこなし、「砂漠のど真ん中でゆっくり歩くタイプのゾンビから延々逃げ続ける」という面白シチュエーションへ早々に突入します。

立ち止まると死ぬという点で『死のロングウォーク』を連想します。それと同様に極限状態に追い込まれた人間の心理がどのような変化を迎えるか、というのが見どころだと思うのですが。

諦めずにどこまでもついてくるゾンビに悪態をつきながら、孤独に耐えて歩き続ける主人公。ついには惟一の話し相手、健気なゾンビに情が湧きます。

いや、そうはならんだろ。

随所でそんな感じの変な笑いが出るんだけど、このずっと半笑いになってしまう感じというのが案外好きです。ゾンビつながりというわけではないですが『高慢と偏見とゾンビ』や『ロンドンゾンビ紀行』を観たときのような。あるいは無人島でバレーボールと喧嘩する人を観たときのような。

極限状態での狂気を描いている、というようなことは全然全くこれっぽっちもないB級バカ映画ですが、ずっと真顔でボケ続けてる人たちを眺めたい向きにはおすすめです。

いや、別におすすめではないわ。ごめん。俺は好きですが。

黄龍の村

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阪元裕吾監督作品3本目。これはめちゃくちゃ面白かったわー。

ミッドサマー』なんかと一緒に「村ホラー」というジャンルに括られるらしいんですが、人里離れたカルト集団の村に迷い込んだ他所者の恐怖体験を描くやつです。

確かにジャンルとしてカテゴライズできるぐらいには似たようなシチュエーションのホラー作品は多い気がします。が、この映画は途中からとんでもない方向に舵を切ります。

こんなもん絶対ネタバレしちゃ駄目なやつなので何も書けませんが、66分というかなり短い映画であるにも関わらず十分な満足感があるのは脚本の意外性からくる「盛りだくさん」感によるものだと思います。

ベイビーわるきゅーれ』や『ある用務員』と比べても低予算であることが露骨にわかる作りなのに、最早それすら面白い。

典型的な村ホラーのテンプレに則って、糞ウザいウェイ系の学生たちを殺していくんだけど、部分部分で妙にチープで「笑ってはいけない」みたいになってるのが逆にリアルに思えたりするわけです。

「昔から続けているけれど、もう理由も分からなくなってるので儀式の作法がだんだん適当になってきてる」的な。生贄の肉をバーベキューコンロで焼くんじゃない。笑うだろ。

上映館は少ないですが、観られる環境にあるのなら是非おすすめしたい。

ちなみに先日始めたポッドキャストの1回目がこの映画の感想になります。

ネタバレしかないので観てない人は聴かないほうがいいです。というか聴かないでいいので観ましょう。

自ら視聴者を減らしていくスタイル。

ゼイリブ

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異星人による地球侵略は既に始まっていた。人間に擬態した異星人を見抜くサングラスを手に入れて真実を知ってしまった男はレジスタンスの一員となる。

あらすじだけは知ってて前から観たいと思ってたんですが、そのストーリーはさておき、サングラスをかけることで明らかになる「真実の世界」のビジュアルがめちゃめちゃ面白いんですよね。

骸骨みたいな異星人もいいデザインですが、広告や新聞・雑誌の内容がアホほどシンプルに要約される画が非常に皮肉が効いていて良い。

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「OBEY(従え)」「NO THOUGHT(考えるな)」「CONSUME(消費しろ)」。こういうディストピアが現実ですよ、という資本主義に対する風刺は30年前の映画にもかかわらず未だ全く違和感がない。異星人のヒトたちは毎日これしか見えてないと思うんですがそんな星侵略してて楽しいんだろうか。

こういう唯一無二のビジュアルに加え、ワープしたり星間移動ができるほど文明が発達しているのに抵抗勢力を潰すのに警察権力を使う異星人とか、サングラスをかけるかけないで揉めて路地裏で殴り合うだけのシーンがやたらと長かったりとか、いい具合にツッコミを入れたくなるポイントも内包しており、カルト映画として語り継がれるのも納得の作品です。

この作品自体は飛び抜けて面白いというわけでもないのですが、引用のし甲斐があると言いますか。たまたまこのツイートがふと目に入ったときには大笑いしました。

どんなことでも知識として持ってると色々楽しめることが増えていいよね、という話。

ゼイリブ (字幕版)

ゼイリブ (字幕版)

  • ロディ・パイパー
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『ベイビーわるきゅーれ』に最高すぎるアクションを見た ー 最近観た映画の感想

オールド

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初シャマラン。『シックス・センス』も観てません(オチは知ってる)。

超スピードで加齢する謎のビーチに置き去りにされたリゾート客たち。脱出方法を模索する間にも一人ひとりと死んでいく、というスリラー。

仕掛けは「加齢」一本で超シンプルなので、予告を観て想像したそのままの映画でした。人の一生がビーチで超加速。よってトラブルも2時間弱の映画に超圧縮されて発生しまくります。

髪や爪が伸びない理屈とか、排泄はどーなってんのとか、成長した子供たちが異様に賢くなってるとか、細かいツッコミを入れようと思えばいくらでもできてしまうのですが、そこはどうでも良いんだよ、と分かってやってるんでしょうからいちいち指摘するのは野暮ってもんでしょう。

眩しい夏の日差しのもと、次にどんなイヤな事が起こるかとワクワクしながら観るのが正しい鑑賞態度だと思いました。言いたいこと、見せたいものはよく分かりますが、個人的には「人生の意味」とか読み取るほど深いメッセージ性を感じる映画ではないです(そういうレビューを見た)。

繰り返しますが、良くも悪くもびっくりするほど予告の印象そのまんまの映画なので、予告を見て面白そうだと思ったなら、その想像通りの映画が観れると思います。

あと、当然ながら子供はメキメキ成長するので、それに応じて演者が入れ替わるのですが、「年取ったらこうなりそう」という役者をスムーズにつないでいるのがすごい。

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こんなにアレックス・ウルフ(『へレディタリー/継承』のクソ兄貴)に成長しそうな子供をよく見つけてきたな、という感想に尽きます。

ベイビーわるきゅーれ

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邦画で。アクションで。低予算で。今年ベスト級の映画が来たことに俺は感動してるのですよ。何これ面白え! 邦画でこんなの観れんの!? っていう。

とにかくクライマックスのアクションのクオリティが無茶苦茶高い。高い身体能力を活かした超高速格闘!! 邦画でこのレベルのを観るのは始めてだわ。主演の一人、伊澤彩織さんはスタント出身っつーことですが、こんなんもうアクションスターじゃん……。

よく引き合いに出されている『ジョン・ウィック』シリーズの近接ガンアクションや『ザ・レイド』の打撃戦はもちろんのこと、個人的には『イップ・マン』シリーズの高速連打や『リベリオン』ラストの射線の捌き合いなんかも連想しました。

それぐらい多くの要素が一つの殺陣に込められて流れるように展開していく。それがワイヤーアクションや特殊効果なしに身体ひとつで繰り広げられるわけですよ。

俺、マーゴット・ロビーのハーレイ・クインを観るたびにこのキャラクターの強さに納得いかねえ、って言ってるんですが、それに比べてこの映画の説得力ったらねぇですよ。だって実際に素人には出来ないレベルの動きをやってんだもん。低予算だからこそ嘘や誤魔化しが無いことが明らかなわけで。(殺陣つけてる時点で虚構ではあるのですが)

しかも「アクションが最高」は単なる一要素にすぎません。脚本や演出、出演者の演技のレベルも相当高い。

一般人に紛れて生活している女子高生殺し屋コンビが、高校卒業を期に「表の顔」としての社会人と殺し屋の兼業を組織から指示される。ふたりはこれまで通り殺しのお仕事をしながら、自活生活やバイトなど一般社会に適応するために悪戦苦闘していく、というお話。

「市井に潜む殺し屋」って設定は結構ありふれていて、日本の作品だけでも古くは『必殺シリーズ』、今なら『ザ・ファブル』や『バイオレンスアクション』、女子高生殺し屋なら『デストロ246』なんてのもありますし、他にも枚挙に暇がない。

ちょっとゆるめの日常と、殺し屋稼業のギャップを描く。うん、よくあるある。よくあるんですが、本作は日常の比重が非常に大きく、かつ「日常系」作品としてのクオリティまでもが異様に高い。

器用にそつなく人付き合いをこなして社会に適合していく「ちさと」と、コミュ障でバイトも決まらない「まひろ」という正反対のキャラクターの同居生活。「殺し」と「日常」に境界のない生活の中での掛け合いや、世の中のちょっとした生きづらさ、正反対のふたりの仲違いや仲直りなど、自然に軽妙にコミカルに描く。

アクションはまひろ役の伊澤彩織さん(と、ラスボス役の三元雅芸さん)の独壇場でしたが、日常パートはちさと役の髙石あかりさんが素晴らしい。

他人と絡むシーンが一番多いから目立ちやすいというのもありますが、とにかくこの映画の土台とも言えるギャップ・二面性といったところを見事に体現。

凶暴性をむき出しにする演技、ピンチに「スン」と冷静に振る舞う演技、ちょっと多動症っぽく相棒に絡む日常の演技。表面上はうまく社会に馴染んでいるが、うっすら漏れ出すヤバさをきっちり表現しており、絶対「やらかす」のはこっちの子だと思わせて実際そうなるの最高ですね。

ちなみに一番好きなのは二面性とか関係なく最初のバイトで生クリームの盛り付けにいっぱいいっぱいになってるとこです。

悪役やサブキャラも大変良い味でして、特に組織の事務方とのやり取りや「掃除屋」に説教されるところなど、殺しと地続きの異様な日常を脱力感と共に馴染ませつつ、この世界における裏社会のありようを感じさせて非常に上手い。このまま『ジョン・ウィック』のコンチネンタルみたいに膨らませて、今後の作品と合わせて独特の殺し屋ユニバースを構成していったら面白いなと思います。

よくある設定ながら、これまで見たことがないタイプの作品に仕上がっているのが素晴らしい。こういう気の抜けた感じというのは邦画ならではという感じがします。日本人は何でも日常系に仕上げる習性があるしね。

惜しいのは、台詞が聞き取りづらい部分が多々あること。まあ邦画にはありがちな話ですが、もしディスクが発売されるなら(ていうかしてくれ。買うから)価格が上がってもいいから日本語字幕をつけて欲しいところです。

しかしコレ撮った阪元裕吾監督が25歳と知って思わず声をあげるほど驚いたのですが、こうやって若い人が頭角を表してくるの最高ですね。出演した役者さんたち共々、ぜひとも売れていっていただきたい。そうすれば今後20年30年と楽しめるから。

フリー・ガイ

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犯罪ゲームで襲われるだけのモブキャラ銀行員、「ガイ」がプレイヤーに恋をする。決まったルーチンで動くだけだったはずの彼のAIには変化が生じ、やがてゲーム世界を救うヒーローへと生まれ変わっていくのだった。

死ぬほど前向きでいい映画だと思いますよ。「人はなりたいものになれる」的な。ただ『ベイマックス』のときにも思ったけどディズニー流のクソポジティブな映画はのど越し良すぎて俺はうまく味わえないのですよねえ。20世紀フォックスもすっかりディズニー色になったもんだ。

大迫力のカタストロフが繰り広げられても「ゲームのデータだしなぁ……」って思っちゃう。仲間との別れも「この映画なら後で復活するだろう」と確信できて、実際そうなるし、悪役は最後に打ちのめされるためだけに愚かな行動ばかり取る。

ずっと「予定調和」って言葉が頭にちらついて素直に楽しめなかったというのが正直なところ。こういう綺麗な映画は夢いっぱいの中高生が観るべきだな。普通に面白いですよ。普通に。

あと現実側から見たゲーム画面が中国スマホゲーのクソ広告みたいなのはものすごく面白かったです。

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